346 ランク不相応
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!
三百四十六
カードゲームで盛り上がるイリスと団員一号に感化されたようで、ミラもまたいつの間にかその対戦に交ざっていた。
使うデッキは、自らのセンスで新たに作り上げた召喚術士デッキだ。意地とプライドを賭けての勝負である。
だが、その結果は記録にすら残らぬほどの大敗で終わった。イリスだけでなく、忖度気味だった団員一号にすら自爆で負ける始末だ。
「手も足も出ぬ……」
「召喚ユニットの取捨選択が重要なんですよー」
愕然とするミラに、アドバイスを送るイリス。曰く召喚術士デッキの運用は、特殊で難しいそうだ。
と、そうして時間は過ぎていき、ミラのカードバトルセンスが壊滅的であると改めて知れた頃にアルマがやってきた。今日の夕食を一緒に食べるためだ。
夕食の間は、テレビで観戦していたカード大会の話で盛り上がった。
なお、ニルヴァーナの代表も順調に勝ち上がっているそうである。
「へぇ、イリスがそこまでいうなんてね。それじゃあ団員一号君、今度、私とも対戦しましょ!」
「受けて立ちましょうですにゃ!」
話は途中から、その後のイリスと団員一号の対戦についてとなっていた。
全敗とはいえ、今日始めたばかりでありながらイリス相手に善戦した団員一号にアルマは興味を示したようだ。気付けば、近いうちに対戦しようという約束が交わされていた。
ちなみに、同じく今日の日に初戦を飾ったミラについては、一切触れられる事はなかった。
そうして夕食も終わり、エスメラルダがアルマを慌ただしく連れ帰った後。ミラ達は魔導テレビで、夜から始まるというナイトライブを観賞した。
イリスが言うには、最近、破竹の勢いで人気が急上昇している『メイデンホロウ』なるバンドの他、世界的に有名な歌手が目白押しな注目のライブだそうだ。
「かっこいいですー」
「これは、ハートにぎゅんぎゅん響いてきますにゃ!」
「よもやロックやポップがここまで浸透しておるとは……」
異世界というイメージからはどこか遠く感じる音楽が、今は当たり前のように奏でられている。
だがそれでいて、演奏に使われている楽器はクラシックさながらというのだから面白い。
ミラは文化の侵略具合に苦笑しつつも、それでいて異世界情緒のある雰囲気を感じて、異世界ロックに心躍らせるのだった。
大いに盛り上がったナイトライブが終わったのは、夜の九時。
今日もまた夕食時にアルマより依頼が入り、イリスは巫女としての役目をこなすため仕事部屋に篭った。
護衛役が代わった事について、ユーグストがどのように伝え、どのように捉えているかを探るためだ。
そうしてイリスが仕事をしている間、ミラはというと、一足先に入浴していた。
護衛については、既に部屋のあちらこちらにホーリナイトを設置してあるため問題はない。加えて団員一号が、今もつかず離れずで護衛中だ。
更に鉄壁な巫女の部屋の中という事もあり、現時点においてミラ自身の出る幕はないのである。
「さて、どうなるかのぅ……」
ヨーグから得られた情報で、『イラ・ムエルテ』攻略はどのように進行するだろうか。アルマの策が、どのような結果をもたらすのか。
そして、きっとこの先に待ち構えている最終決戦に備え、ミラもまたどのような戦術でいこうかと、これまで思い付いた数々の案を更に詰めていった。
と、そうしてあれやこれやと実験したい──戦略を練る事に集中していた時だった。
「今日こそは、ミラさんと一緒ですー!」
そんな声と共に、巫女の仕事を終えたイリスが浴場に突入してきたではないか。今回は読み取る範囲が限定的だった事もあって、いつもよりもずっと早く終わったのだ。
「……なんじゃと!?」
それはもう大きく手足を伸ばし、湯船で頭だけを働かせていたミラは、その声に驚愕し現実へ引き戻されると同時に、全裸のイリスを前にして戦慄する。
それこそ、箱入り娘と言わんばかりの扱いなイリスである。アルマやエスメラルダ、またはノインなど、ミラの正体を知る者に今の状況を知られたら、どうなってしまうのか。
きっと、危うい立場になるのは間違いない。そう直感するミラ。
だが、そんな心配など当然知るはずもないイリスは、誰かと一緒にお風呂に入るのは久しぶりだと、それはもう嬉しそうであった。
加えて、もう一人。ミラの心配など気にした様子もない団員一号は、「団長、お背中お流ししますにゃー!」と、こちらもまた楽しそうだった。
「……いや、わしはもう上がるのでな。二人でゆっくりしていくとよい」
危機感を覚え、咄嗟にそう答えたミラ。すると次の瞬間、爛々と輝いていたイリスの表情が一転して寂しげなものに変わる。
だが、イリスは一緒に入ろうと食い下がる事はなく、「残念ですー……」と、ただミラの言葉を素直に受け入れていた。
その様子を前にして、そこはかとない罪悪感に苛まれるミラ。
するとその時だ。
「団長、そんな事仰らず、小生にお背中を流させてほしいですにゃ!」
これでもかとやる気を漲らせた団員一号が、タオルを手に[プロの技が今なら無料!]と書かれたプラカードを掲げた。何のプロかは不明だが、それはもう自信満々な表情である。
「──……ふむ。まあ、そこまで言うのなら頼むとしようか。それに、たまには皆で風呂というのもまた悪くはないしのぅ」
少し考えた末、ミラは何よりもイリスの笑顔を優先し、団員一号の言葉に乗る形で浴場に留まる事を選択した。後は野となれ山となれとばかりに。
その後ミラは、笑顔を取り戻したイリスと共に、のんびりとしながらも時折騒がしい入浴タイムを過ごした。
団員一号もまた、言葉通りにプロの技を披露し、ミラだけでなくイリスの背中も流していく。
またテレビで観戦したものの話やカードゲームの事などについて、三人で楽しく語り合った。
なお、カードゲーム大会は、明日で優勝者が決まるそうだ。
一緒に観戦しましょうねと、それはもう嬉しそうなイリス。団員一号はというと、「明日は絶対に見逃せないですにゃ!」と、こちらもまた気合十分といった様子だった。
「ふむ、そうじゃな。楽しみじゃのぅ」
いったい、決勝大会に出場するような者達は、どれほど強いのだろうか。
少しだけだが実際に経験した事もあり、ミラもまた試合の結果に興味を抱き始めていた。
それは、大陸のどこかにある屋敷の一室。隠された扉の奥にある秘密の部屋。
そこに一人でやってきた男は、部屋の中央にある通信装置の前に座り、手元の時計にちらりと目をやった。
時刻は、零時の少し前だ。
『──さて、時間だな。イグナーツ、いるか?』
零時ぴったりになったところで通信装置から声が響いてくる。どこか冷酷さを感じさせる、静かな声だ。
「ええ、ガローバさん。いますとも。さ、始めましょうか」
対する男──イグナーツと呼ばれた者は、物腰の柔らかい口調で答えた。ただ、それでいて浮かぶ表情には一切の愛想もない。
『では、俺が調べた分を──』
そうガローバが言いかけた時だった。
『おっと、すまないが、先に俺の話を聞いてくれるか』
二人の会話に三人目の声が飛び込むようにして交ざってきたのだ。
『ユーグスト、貴様どういうつもりだ?』
その声というより、現状において、この会話に交ざれる者は一人しかいない。名目上は仲間という事になっているユーグストだ。
ユーグストに話し合いの内容が知られれば、ニルヴァーナの巫女の能力で、それが全て筒抜けとなってしまう。だからこそ重要な会議は今、イグナーツとガローバだけで行われている。
だからこそそんな席に突如やってきたユーグストに対し、ガローバは隠す事のない怒りを声に表した。
『ああ、すまないすまない。また緊急で呼び出そうかと思ったんだけどな、二日連続ってなると、お前ら絶対不機嫌になるだろ。それでだ、今日は定時報告会があったなって思い出してね。ちょっとこの場を借りる事にしたんだよ』
まったく悪びれた様子もなく、そう言ってのけたユーグストは、二人の苦言が出てくる前にとばかりに『でだ──』と、用件を話し始めた。
ユーグストが、わざわざ定時報告会に顔を出した理由。それは、巫女の護衛についての追加情報が入ったからであった。
巫女を通じて知った、精霊女王について。
一つ。巫女が精霊女王から聞いた冒険者としての話は、どれもこれも特別ではなく、そこらの冒険者とさほど変わらないものばかりであった事。
更に一つ。精霊女王が召喚術を用いて巫女につけた護衛は、ケット・シー一匹のみである事。
そしてもう一つ。巫女は精霊女王に対して、召喚ユニットの扱いが下手であると感じている。と、ユーグストは伝えた。
『どうも、精霊王の威厳ばかりが独り歩きしている感があるな。俺が予想するに、召喚術士としての実力は、せいぜいが中の上ってところじゃないか? 精霊女王なんて大層な名前で呼ばれているようだが、実は大した事ないのかもな』
そこまで言い終えたユーグストは、最後に『あとは精霊王がどれだけ影響しているかだな。まあ、お前達なら問題ないだろう』と続け話を締め括った。
『なるほどな。そういう事か』
「精霊王については気になりますが、まあ、納得といったところですね」
何かに納得した様子のガローバ。そしてイグナーツもまたユーグストの話を聞き終えてから、どこか合点がいったとばかりな様子で答えて、ほくそ笑んだ。
『そういうわけで、役に立ててくれ。じゃあ、邪魔したな』
伝えるだけ伝えたユーグストは、そう言ってさっさと退室していった。通信装置からは、扉が開き、閉まる音だけが聞こえた。
そうして話し合いの場は、再びガローバとイグナーツだけのものとなった。
ここから先はいつも通り。二人で情報を交換し、次の作戦を決める流れに戻る。
『さて、まずは俺から調べた分を話す。一通り、組合にある情報を洗ってみたが──』
そう切り出したガローバは、ユーグストからもたらされた情報に加えるようにして、一日がかりで調べた精霊女王についての事を口にしていく。
『まず、組合の記録には、依頼の達成率どころか受理した履歴すらなかった。どうにも精霊女王とやらは、冒険者でありながら組合で依頼を受けた事がないようだ──』
そう前置きしたガローバは、続いてランクの事について触れた。
冒険者総合組合より認定される冒険者としてのランク。それを上げるためには、組合発行の任務をこなして自身の能力を証明する必要がある。
だが、そこには幾つか例外があり、精霊女王は、その特別な手段の一つを利用して今のランクを得たのだとガローバは話した。
『詳細に調べてみたところ、どうにも権力でランクを底上げしていた事がわかった。権力者が誰かまでは掴めなかったが、資料に残っていた痕跡からして、男爵以上の貴族か、それに匹敵する影響を持つものが関係しているのは間違いないな』
そう断定したガローバは、そこから更に、もう一つの件も挙げた。
それは、キメラクローゼンに関係する事だ。その件で何をしていたのかは不明だが、精霊女王は、これに関わっていたというだけの理由で、特別に二ランクも上がるという対応がなされていた。その結果、依頼を一つも受ける事無く、今のAランクという立場に上りつめたのだと。
「なるほど……。随分とまた、優遇されたものですね。それもこれも、精霊王という後ろ盾あっての事でしょうか」
ガローバが得た情報。それを聞き終えたイグナーツは、どこか忌々しげに口調を荒げた。
権力を笠に着ての特別待遇。イグナーツは、そういったものがすこぶる嫌いなようだ。
『ああ、そう考えるのが妥当かもしれないな。ユーグストが言っていた事が本当ならば、精霊女王の実力は本来のAランクに比べ、劣るものだと考えられる。しかも精霊女王は、依頼を受けた履歴が無いにもかかわらず、冒険者としての話をしていたそうじゃないか。つまりこれは、それっぽい箔をつけるために、聞きかじった程度の話を、さも自分の体験談として語った可能性がある。となれば、その程度もこなせないくらいの実力しかないのかもしれない。それで、あのニルヴァーナの女王にどうやって取り入ったのかはわからんが、情報を精査する限り、精霊王の威光こそが全てといったように思えるな』
ガローバは知り得た情報から、精霊女王という人物像を予想した。
大陸で最も力を持つ三神教においても、精霊王という存在は重要である。どういった関係かは不明だが、その精霊王と繋がりを持つからこそ、これほどの特別扱いを受けているのだろう。
それが、ガローバの出した結論だった。
「ええ、私も同感です」
そう答えたイグナーツは、そこに足す形で、別に調べた精霊女王についての情報を開示した。
「こちらでも色々と調査しましたが、どうにも精霊女王は、水精霊の力で水が使い放題だとか、どこにでも小屋やソファーが召喚出来るだとかいった事ばかり話しているようですね。戦闘以外で召喚術を活用する方法、冒険生活が便利になる使い方を、それはもう熱心に説いていたという話です。これは私の主観ですが、精霊女王自身は戦闘方面に関して大した事ないのではと、そのように感じました。だからこそ、それ以外でしかアピールが出来ないのでは、と」
最後に感想を付け加えて話を終えたイグナーツ。
冒険者界隈での噂や目撃証言を集めた結果、戦闘関係の情報はほとんど挙がらず、代わりに召喚術の便利な使い方ばかりが口々に挙がったという。その事から、彼は精霊女王という人物について、そのような印象を受けたようだ。
『ふむ、それは朗報だな。どれだけ生活環境が良くなろうとも、護衛役としては実力不足というわけか』
「ですね。つけ入る隙は幾らでもありそうですよ」
そう言葉を交わして、不敵に笑い合ったガローバとイグナーツ。
全ての話を統合した結果、浮かび上がったのは精霊女王の実力不足。
二人は、ノインという鉄壁の護衛から、よくぞ代わってくれたと感謝しつつ、ここぞとばかりに作戦を立て始めた。
という事で、2020年が始まりましたね。
そして大晦日のピザは、ニューヨーカーというやつを食べました!
直径が大きくて薄めの生地のやつです!
特別感があって美味しかったです!
いつもの年末特番を見ながら過ごす年越しは、やはりいいものですね。
さて、今年の年末は、何を食べようかな……。
※ここからFGOの話
回しました……星5確定を!!
キャスターのやつです!
イリヤちゃん可愛い。
マーリン、スカディこいこい。
ネロ強くて可愛い。
ダヴィンチちゃん宝具撃ちやすそうでイイネ。
と、期待していたら
特に注目していなかった紫式部でした……。




