表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
331/666

330 プロフェッショナル

公式ブログの方でも、抱き枕カバーとタペストリーについての情報が出たようです。

URLを活動報告においておきます!

三百三十



「時に、こういう時のための術などは研究しておらんかったのか? お主達ほどの国となれば、それなりの機関はあるじゃろうに」


 薬の効果が出るには、二ヶ月かかる。だが、そういったものなどに頼らず自白を促せる術があれば話は簡単だ。

 そんな例を一つ知っているミラは、ニルヴァーナ国くらいの規模と国力があれば、研究も捗っているだろうと、少し羨むように言う。銀の連塔でも、この国ほどの国家予算があれば諦めずに済んだ実験や研究が色々あったと。


「一応はね。でもじぃじが言うと嫌味にしか聞こえないんだけど……。そもそも、そっちの塔から、自由自在に自白させられる術が出来たとか伝わってこないのに、うちで出来るわけないでしょ」


 銀の連塔は、いつだって術士界の一歩先を進んでいた。そしてそれは現在もであり、アルマ曰くニルヴァーナの術研究機関は、銀の連塔から届く成果をもとにして発展、応用の幅を広げる事を主軸としているそうだ。また、成果を教わるために、かなりの額を支援しているとの事だった。


「というか、そこんとこどうなの? そういう術の研究は進んでいるの? 実験段階になったりはしてないの? じぃじならわかるでしょ? 研究途中とかでもいいから教えてよ」


 現状が余程もどかしいようだ。アルマは、ぐいぐいと迫るようにして言葉を重ねていく。


「ふむ……一応、塔でもそういった類の術は研究中じゃが、まだまだ実用度は低かったのぅ。今は、極度の酩酊状態にする、といった感じじゃったな。これがまた、まったく呂律が回らぬ状態で、聞き取りに重大な難あり、といった次第じゃ」


 ラストラーダとアルテシアを連れ帰った後、暫くの間、銀の連塔で落ち着き暮らしていたミラは、今の塔の様子を詳しく知るために各塔を見て回っていたりもした。

 その際に見学したのが、無形術の塔で行われた尋問用術式の実験だ。

 なお、その結果はミラが話した通り。まだまだ自白とは程遠い効果であり、加えて頭の回りまで悪くしてしまうものだから、聞き取れたとしても寝言のような言葉になっている場合がほとんどだった。


「そうなんだ……。んー……でも、もしかしたら勢いで話し出す事だって……。この際それでも……」


 ヨーグは、かなり重要な情報を握っていると思われる。だが現時点において、それを引き出す有効な手段がない。それを嘆くアルマは、藁にも縋るかのような様子で、そんな事を呟き始めた。

 確かな効果を得られない自白の術でも、何か偶然に訊き出せるかもしれないと。


「いや、あれに期待するのは止めた方がよいぞ。実験に立ち会ったが、それはもう一切要領を得ない返事しかせんかったからのぅ」


 そうミラがきっぱりと言い切った事で、相当に酷い術であると伝わったようだ。アルマは、がっくりと項垂れ「そっかー……」とぼやく。


「あんなものより、効果の確かな術があるのでな。そちらに頼る事を考えた方がよいというものじゃよ」


 そんなアルマの反応を前にして、にやりと笑ったミラは、そのように言葉を続けた。無形術の塔で研究中の術よりも、ずっと効果的な術を知っていると。


「……え? あるの!?」


 暗い顔から一転、ミラが口にした可能性に反応したアルマは、それはもう機敏な身のこなしでミラにすり寄った。そして「どんな術!? 教えて! アイス全部食べていいから!」と、それはもう激しく喰いついてきた。


「わかったわかった、まあ落ち着くがよい」


 ぐいぐいと押してきて、気付けば馬乗りになっていたアルマを宥めたミラは、「早く早く」とねだる彼女に、その詳細を語って聞かせた。


「わしが知っておる術とは、陰陽術なのじゃがな──」


 銀の連塔でも、まだ研究段階な自白の術。それを既に完全な形で実現してしまっている者が一人いる。

 効果は折り紙付きであり、実際にこの目で確認済み。その術を使えば、間違いなくヨーグが知る情報を洗いざらい引き出せる事だろう。


「じゃが、問題が一つある。その術は余りに高難度過ぎる事に加え、術への抵抗力なども影響してのぅ。これを使いこなせるのは、現時点において、この術の開発者しかおらんのじゃよ」


 ちょっと聞いただけならば、それはそれは極めて便利な術といえる。しかしながら、その効果を最大限に発揮させるには、厳しい条件があった。

 対象を完全催眠という状態にするのが、この術の効果。だが、それを成すには複雑な術式を操る技術と、何よりも相手の術抵抗を完膚なきまでに突破出来るだけの力量が必要であるのだ。


「つまり、その人に来てもらうしかないってわけね。それで、その人はどこに……って。あれ? じぃじがそこまで言う陰陽術士って、もしかして──」


 そこらの陰陽術士では、この術を扱いきれない。加えてミラの言い方からして、そこらの一流陰陽術士ですら、その可能性は薄そうだ。

 では、どれだけの者ならば可能なのか。少し考えたアルマは、そこで直ぐに唯一有り得る人物を思い浮かべた。


「──カグラちゃん!? ねえ、もしかしてカグラちゃんも見つけていたの!?」


 可能性があるとしたら、カグラしかいない。その答えに辿り着いたアルマは、同時に行方不明となっていたカグラの所在も判明したのかと、爛々とした喜びを顔に表した。女子仲間という事もあり、アルマはカグラとも仲良しだったのだ。


「うむ、その通り。先日に、ちょちょいっとな」


 興奮するアルマを前に、ふんぞり返るミラ。見つけていたのはアルテシアだけではないぞと、実に得意そうな表情だ。


「そうだったんだ! そっかそっか、カグラちゃんもかぁ」


 三十年も所在不明だった義理の姉だけでなく、友人も見つかっていた。ただただその事実を喜んだアルマは、「今は帰還の発表タイミングを計っている感じ? そっと迎えに行った方がいいのかな!?」と、予定を立て始める。

 友人との再会に加え、唯一無二の自白の術の使い手であるカグラを、今すぐにでも招待したいようだ。

 しかしながら、事はそう簡単ではない。アルマはカグラがアルカイト王国にいると思っているようだが、実際は違うのだから。


「あー、そこなんじゃが、ちぃとばかし問題があってのぅ。カグラは用事があって、まだ帰ってきてはおらんのじゃよ。それに、今はどのあたりにおるかというのも、ちとわからぬ状況でな……」


 現在カグラは天使のティリエルと共に、各地にある封鬼の棺──キメラクローゼンが生まれる原因となった鬼の墓所に異常はないか、調査して回っているところだ。

 そのため詳細については把握出来ておらず、その名を挙げたところで、さて来てもらえるかというと直ぐには答えられない状態にあった。


「え? そうなの!? まあ、そっちの事情とかカグラちゃんの事情もあるからあれだけどさ……」


 下手に希望を持たせるような事は止めてほしいとばかりな目で、じろりと睨むアルマ。対して、実はそんな術を知っていると自慢したかっただけのミラは、「うっ……」と息詰まり、そっぽを向く。

 しかし、そこで謝る──諦めるような性質ではないのがミラである。


「いや、あれじゃ。国にはおらぬが連絡さえとれれば、どうにかなるはずじゃ。今の状況を話せば、あ奴の事じゃ、きっと協力してくれるじゃろうからな!」


 悪の一大組織『イラ・ムエルテ』を壊滅させるため、重要人物から情報を訊き出す必要がある。

 かつて同じような組織、キメラクローゼンを相手に似たような事をしていたカグラだ。アルマの事情を汲んでくれる事だろう。

 加えて、彼女には式神と入れ替わるという、これまた唯一無二な術がある。事情さえ説明出来れば、それこそ飛んできてくれるはずだ。

 そんな確信を持って、言い切ったミラ。するとアルマは、期待半分、疑い半分といった目を向ける。


「それで、どうやって連絡をとればいいの!?」


 肝心なその部分を問われたところで、ミラは再び視線を逸らした。そもそも居場所がわからなければ、連絡の取り様もないというものだ。


「えーっと、まあ、そうじゃのぅ……」


 苦し紛れながらも、僅かな閃きにかけて方法を考えるミラ。何かないかと視線を巡らせれば、青い空が目に入る。

 そこから都合よく、ピー助でも飛んできてくれないものか。などと夢想し始めたところで、ミラの脳裏に妙案が過った。

 直接カグラにとはいかずとも、カグラに繋げられる方法はあったと。

 それは五十鈴連盟の本拠地だ。

 幾らキメラクローゼン関係の後処理が全て完了した後、全権をアリオトに譲渡するとはいえ、今はまだカグラが総帥だ。

 封鬼の棺巡りをしている間でも、状況確認のため定期的に本拠地と連絡を取り合っているはずである。

 つまりは本拠地に連絡を入れておけば、そこからカグラにも伝わるというわけだ。

 カグラの事である。事情さえ伝われば、きっとこちらにピー助を寄こしてくれるだろう。

 そうしたら後はもう簡単。入れ替わりの術でカグラ本人に来てもらい、そのまま尋問の術で、ヨーグから全ての情報を訊き出すだけである。

 そして本拠地に連絡を入れるのもまた簡単。本拠地直通の番号を教えてもらっているため、ワゴンの通信装置を使えば直ぐに繋がるのだ。


「ふむ、では教えてやるとしようか──!」


 そう、ふんぞり返りながら言ってのけたミラは、華麗に五十鈴連盟本拠地の番号を記したメモを……取り出そうとした。


「……む?」


 だが、アイテムボックスには見当たらず、研究ノートやらが入ったポーチをひっくり返すも出てこない。


「どしたの、じぃじ? 早く早く!」


「いや、そのじゃな……」


 顔に期待をいっぱいに浮かべるアルマに対し、自信満々だったミラは、徐々に焦りを浮かべ始める。

 そして服のポケットまでも徹底的に漁り尽くしたところで、番号そのものを思い出すという最後の手段に出たものの、ミラの記憶力では霧の中で遠くの看板を見ようとするようなものだ。

 ただ、その際に「……あっ!」と、ミラは致命的なやらかしに気付いた。

 五十鈴連盟本拠地直通の番号を控えたメモ。それを最後に使ったのは、ラストラーダとアルテシアを見つけた時。百人にもなる子供達を移送するため、カグラに精霊飛空船を寄こしてもらうよう要請した、あの時である。

 その後にメモをどうしたのか。あの日の事を振り返ったミラは、たしかそのまま服のポケットにしまったと思い出す。

 あの日着ていた服は、夏仕様の魔導ローブセットミラカスタムだ。

 けれど、今着ている服は秋仕様。

 そう、前の服にメモを入れっぱなしにしたまま、置いてきてしまったのである。


(……そういえば、マリアナが机の上に置いておくとか言うておった気が……)


 洗濯物として預けて任せっきりだったミラは、微かに残る当時の記憶を脳裏に浮かべ、大いに焦る。口を真一文字に結び、どうしようと言い訳──解決方法を模索する。


「もしかして、何か忘れた、とか?」


 勿体ぶったまま徐々に俯いていくミラの様子を前に、アルマは訝しむように問うた。


「いや、そ、そんな事はないぞ」


 誤魔化すように笑いながら、ミラはワゴンからの本拠地直通連絡に代わる手段を必死に考える。

 うっかり忘れたという恥を忍んで、召喚術の塔に連絡し、マリアナかクレオスにメモを確認してもらうしか。

 などとも考えたミラだが、一ヶ月の間にあれやこれやと研究に没頭していたため、それらのメモがどこにいったのか見当もつかなかった。

 散らかし放題の書類から小さなメモを見つけろとは、とても言い辛い。


(うーむ……どうやって本拠地に連絡を……ん? 本拠地にならば……!)


 あーだこーだと解決策を浮かべては沈めるを繰り返す。と、そこでようやく、もっと基本的な部分に戻る事が出来た。

 五十鈴連盟にはもう一つ、本拠地に直接連絡する手段があった事を思い出したのだ。


「えー、こほん。ところで一つ訊くが、五十鈴連盟という団体を知っておるか?」


 別に、ただ勿体ぶっていただけだと言わんばかりな様子で、ミラはそう口にした。

 五十鈴連盟は、キメラクローゼンに対抗するためにカグラが創設した組織だ。だがそれは、裏の顔。世間一般には、精霊の住む森を守るという目標を掲げる環境保護団体として広まっている。


「うん、知ってる知ってる。森で色々やってる人達よね。最近、なんだか特に活動が活発になってるって聞いたかな。ここ二ヶ月で、東の森が二%くらい広がったって報告が入っていたはず」


 思い出すといった素振りもなく、アルマは知っていて当然とばかりに答えた。大陸をまたぐほどの規模だけあって、表の五十鈴連盟はかなり有名なようだ。

 また、最近活発になっているというのは、最大の目的であったキメラクローゼンの討伐が完了した事が原因だろう。人や資財など、戦いに回されていた分が今、表の活動に続々と注ぎ込まれているわけだ。

 しかもアルマが口にした内容からして、この国でも存分に活動している様子である。それならば話は早い。どこかに必ずあるはずだと、ミラは次の質問を続けた。


「ではもう一つ、その五十鈴連盟の支部があると思うのじゃが、この国では、どの街にあるじゃろうか?」


 ニルヴァーナにある五十鈴連盟の支部。それがミラの思い付いた解決策だった。

 カグラから聞いた話によると、各地の支部には、本拠地と連絡をとるための通信装置が置かれているとの事だ。

 つまりワゴンの通信装置が使えずとも、支部から本拠地に連絡を入れてしまえばいいというわけだ。

 メモが無い事には焦ったが、支部があればどうにかなる。しかもここは、大国のニルヴァーナだ。

 きっとあると信じて、ミラはアルマの答えを待った。







毎週火曜日は、贅沢ご飯の日。

この日は、カロリーだなんだと一切気にせず、思いっきりご飯を食べるのですが……


最近、ふと思ったんです。

贅沢ご飯といいながらも、肉を焼くかカレーを作るくらいかしていないと……。


昨日もまた、贅沢ご飯用に、牛肉と野菜の甘旨炒めというパックを買っていました。


かといって、手の込んだものを作ろうとなると、

今度は贅沢ご飯の日が面倒ご飯の日になってしまう恐れが……。


次はどうしようかな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ