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302 ヴァルハラガーデン

なにやら公式ページの様子が……


https://gcnovels.jp/pupil/


なんとリニューアルしたようです!

三百二




「よし、そこまで!」


 特訓開始から三十分ほど経過したところで、ミラは終了を告げた。必殺技開発のための試合が、本格化し始めてきたというのもあるが、随分と夜も遅くなってきたからである。

 気付けば深夜。普段は、寝る準備をしている時間だ。

 ただ、やはりとでもいうべきか、まだ十分に続けられるとアルフィナが主張する。事実、それなりの疲労は見られるものの、まだこれからだといわんばかりな表情をしていた。


「私も、大丈夫です」


 続くようにセレスティナまで、そう口にする。これまで進展しなかった必殺技開発に光明が見えたのが相当に嬉しいのだろう。まだまだ気力は十分といった様子だった。

 だが睡魔に抗えぬミラは、二人の要望を却下した。


「いや、今日はここまでじゃ」


 今日の特訓は終了であると再度告げる。もう眠いというのが理由の一つであるが、それより何より、二人の事を思ってこその終了だ。

 上手くいっている時というのは、特に頑張れてしまう時であるため、自分で加減が出来なくなる事があるものだ。それはミラが、自分で何度もしでかした経験から得た教訓だった。


「休むのも特訓の一環じゃ。明日も訓練があるのじゃろう? ならば尚更というものよ」


 毎日訓練をしているというヴァルキリー姉妹達。いわば訓練のプロである彼女達ならば、休息が重要というのもよく知っている事だろう。

 ミラがそう告げたところ、セレスティナは「あ……そうでした」と、一気に疲労を全身に滲ませていく。どうやらこれまでの高揚から一転、明日の訓練メニューを思い出したようだ。

 確実に明日の訓練に響く。そう察したセレスティナは、素直に頷き「ご指導ありがとうございました!」と言って、素早く帰っていった。

 対してアルフィナはというと、明日の訓練と聞いたところで顔色一つ変える事はなかった。ただ、特訓相手のセレスティナがいなくなり、このまま継続は不可能と判断した様子だ。「主様が、そう仰るのでしたら」と、終了を受け入れた。

 だが、ミラは見逃さなかった。アルフィナのやる気が、まだまだ熱く燃えたままである事を。聖剣サンクティアを持つ手が、未だ活気に震えている事を。


「明日に備えて、今日はゆっくりと休むのじゃぞ」


 今一度そう告げたミラは、そのままアルフィナが持つ聖剣サンクティアを送還した。

 その瞬間である。「ああ!」と、悲鳴のような声がアルフィナの口から零れ落ちたのだ。やはり、戻ってからこっそり特訓しようなどと考えていたらしい。これまで、特に表情を変えずにいたアルフィナだったが、ここにきてようやく動揺を浮かべ、恐る恐るとでもいったようにミラへ振り向いた。


「よいな?」


「はい……仰せの通りに」


 ミラの言葉から、企みが見抜かれていたという事を察したのだろう。アルフィナは大いに焦りながら、ミラの前に跪いた。

 そうしてアルフィナのしょぼくれた後姿を見送った後、部屋に戻ったミラは、すぐさま寝支度を整えた。マリアナが選んでくれた青い寝巻きを着て、キングサイズのベッドに潜り込む。

 夜のヴァルハラは静まり返っており、唯一窓から望める星達だけが賑やかに瞬いていた。だがそれも目を瞑ると途端に消えて、静寂に落ちていく。先程までの騒々しい特訓が嘘のように思えるほどの静けさだ。

 残るのは、とても安らかな気配のみ。不思議な安堵感に包まれながら、ミラは眠りについたのだった。




「ふむ。なんとも気持ちの良い朝じゃな」


 ヴァルハラで迎えた朝は、爽快の一言に尽きた。力強くも優しい太陽の光によって目を覚ましたミラは、これまでにないほどの充実感に驚く。朝は何かと弱かったが、今日はすこぶる頭が冴えているぞと。

 更にミラは、現在時刻を確認してもう一度驚いた。なんと時間は六時。普段の起床時間より三時間も早かったのだ。それにもかかわらず、もう眠気など一切ない快調具合である。


「たまには早起きするのも悪くないのぅ」


 二度寝をするのももったいないと思えるくらいに、身体の調子が良い。そのまま飛び起きたミラは、まず朝一番の用を済ませる。そして手早く寝巻きから着替えると、早朝のヴァルハラへと散歩に繰り出していった。

 日の光はぽかぽかと心地良く、ヴァルハラは春めいた陽気に満たされている。はて、ここに四季はあるのだろうかと考えつつ、ミラは宮殿に沿って散策していた。

 ちょっとした準備運動程度に利用しているという第二訓練場や、服よりも鎧が多い洗濯場など。やはりヴァルキリー達の住まいというべきか、立派な宮殿ながらも、地上にあるそれとは違った設備が充実している様子だった。


「お、あれは……」


 他にも、物々しい武具が並ぶ鍛冶小屋などが見える中、ミラの行く先にそれはあった。


「これは見事なものじゃな」


 宮殿の規模からすると決して広いとは言えず、加えてここまでで目に入った場所に比べてしまうと随分な場違い感は否めない。だが、良く手入れの行き届いた庭園が、そこにはひっそりと広がっていたのだ。

 いったい、どんな技を使えばああなるのかと首を傾げたくなる惨状だった第二訓練場。

 いったい、どれだけの返り血を浴びればあそこまで呪われたような汚れになるのかと恐怖を覚えた洗濯場の鎧。

 いったい、何と戦う事を想定しているのだろうかと理解に苦しんだ、鍛冶場の超特大剣。

 そんな物々しさに彩られた宮殿周辺だからこそ、その庭園は、どことなく特異な存在に見えてくる。ゆえにミラは、色とりどりの花を眺めながらも、何かあるのではと、隈なく庭園を見て回った。

 綺麗に色分けされた花々が並び、そのどれもが立派に咲き誇っている。整えられた草に、凛と咲いた花のコントラスト。どれもが実に鮮やかでありつつ協調し合い、一つ一つでは成し得ない美しさを生み出していた。

 きっと、ここの手入れをしている者は、草花を良く理解しているのだろう。大切にするという愛情が垣間見える、そんな庭園だった。

 ただ歩いているだけでも、心が安らいでいく。そんな庭園の中央には、これまた立派なベンチが置かれていた。そこに座って眺めれば、きっと最高の安らぎが得られるだろう。

 そんな事を思いつつ、気付けば早朝の暖かな光と爽やかな草花の香りに誘われるようにして、ミラは庭園散歩を楽しんでいた。


「お、向こう側もありそうじゃな」


 庭園を一通り巡った後、立派な植え込みの切れ間を見つけたミラは、そこから更に奥の方を覗き込んだ。するとである。


「まあ、主様、おはようございます」


 そこには、どことなく農家のおばちゃんを彷彿とさせる恰好をしたフローディナの姿があった。それでいて、何とも上等そうな輝きを放つ銀のじょうろを手にしている。


「うむ、おはよう」


 そう挨拶を返したミラは、フローディナの姿をじっと見つめてから、「もしやこの見事な庭園は、お主が管理しておるのか?」と問うた。


「はい。館の周辺が、どうにも彩りに乏しいと思いまして、十年ほど前から始めました」


 見事な庭園というミラの言葉が嬉しかったのだろう、フローディナは少し照れた様子で答える。


「彩りか……。この周りをぐるりと巡ってきたが、この庭園以外は何とも殺伐とした雰囲気に満ちておったからのぅ」


「ですよね……」


 ミラが見たままの感想を述べたところ、フローディナは苦笑交じりに頷いた。ずっと前から、同じ印象を抱いていたようだ。そのため、花が好きだったという事も相まって、空地でガーデニングを始めたという。そしてそれが、いつの間にか規模が大きくなり、今ではこれだけの庭園になったと笑った。

 また、フローディナが言うには、意外にもアルフィナがこの庭園を気に入っているそうだ。訓練でとことんまで身体を酷使した後、庭園の中央のベンチで休息するのだという。なんでもあのベンチは、アルフィナがどこからか持ってきて置いたものらしい。


「あのベンチに、そんな経緯があったとはのぅ。普段からは想像もつかぬな」


 戦いと己を鍛える事こそが生きがいとばかりな印象のアルフィナだったが、意外と乙女な部分もあるようだ。そう、アルフィナの新たな一面を知り驚いていたところ、フローディナが、何やら閃いたとばかりな様子で「主様……実はですね──」と、薄ら笑みを浮かべながら更に秘密を暴露する。

 その話によると、なんでもアルフィナはトマトが苦手だという事だった。


「ほぅ! アルフィナに、そのような弱点があったとはのぅ」


 どことなく完璧なイメージのあったアルフィナ。そんな彼女に、なんとも可愛らしい弱点があったものだ。その意外性に驚きつつも、そこはかとない親しみを感じるミラ。するとである。


「それでですね──」


 何やら警戒するように周りを確認した後、フローディナは小さな声で、「アルフィナ姉さんのトマト嫌い克服作戦に、ご助力いただけないでしょうか?」と口にした。


「ふむ……詳しく聞こうではないか」


 ちょっと面白そうなどと半分思いながらも、もう半分はアルフィナの事を思ってミラは頷き答える。

 アルフィナのトマト嫌い具合だが、フローディナいわく相当なようだ。トマト嫌いでも食べられるように色々と調理法などで工夫をしてきたものの、トマトが入っているとわかると、アルフィナはその時点から決して口にしなくなるというのである。


「特に種のある、あのぶよぶよした部分が嫌いでして。綺麗に取り除いたとしても、残っているかもしれないという理由だけで逃げてしまう次第で……」


 そう話しながら、ふと溜め息を漏らすフローディナは、それでも料理自体に問題はないはずだと自信を込めて主張した。アルフィナ以外にも好き嫌いのある姉妹はいたが、工夫する事で食べられるようになったのだと続ける。特にクリスティナの好き嫌いっぷりは相当で、お菓子が主食だった頃もあったそうだ。

 けれど、そんなクリスティナでも食べられるようにと色々勉強しているうちに、料理の腕がみるみる上達したのだとフローディナは語った。そして遂には、全ヴァルハラ合同料理大会で殿堂入りしてしまったと苦笑してみせた。


「なんというか……よう頑張ったのぅ」


 全ヴァルハラ合同料理大会がどのようなものかはわからないが、きっと凄い事なのだろう。思わぬところで思わぬ苦労話を知ったミラは、そう労いの言葉をかける。するとフローディナは、少し照れながらも嬉しそうに「ありがとうございます」と微笑んだ。




「と、そういう訳でして、きっとアルフィナ姉さんも口にさえしてくだされば、どうにかなると思うのです」


 トマト嫌い克服料理には、確かな実績がある。そうフローディナは胸を張った。

 事実クリスティナも、かつてはトマト嫌いだったが、フローディナが開発したトマト料理によって克服出来たらしい。今ではトマトとチーズのピザを、それはもう美味しそうに食べてくれるそうだ。

 更には、全ヴァルハラにいる他のヴァルキリー達に声をかけ、トマト嫌いを捜し、トマト料理を食べてもらうという実験まで行ったらしい。しかもその結果は大成功。多くの者達がトマト嫌いを克服した。また一部は、克服とまではいかずとも、そのトマト料理だけは食べられるようになったという。

 ゆえに、口にさえしてもらえれば、きっと食べられるようになる。そう自信をもって言うフローディナだが、何をどうしてもそこまでいけないため、お手上げだったと肩を落とす。


「そこで、主様のお力添えをお願いしたいのです」


 フローディナが思い付いた作戦。それは、単純明快。アルフィナは主様至上主義であるため、きっとミラからそれとなくトマト料理を食べるように誘導すれば、きっと口にするだろうという事だった。そして口にさえしてくれれば、後は料理の力でどうにかしてみせる。そうフローディナは闘志を熱く滾らせた。


「ふむ、なるほどのぅ。まあ、よいじゃろう。そういう事ならば手伝おうではないか!」


 どこかパワハラめいたやり方ではあるが、美味しいトマト料理を味わえないなんて不幸というものだ。なんて建前を掲げつつ、ちょっと楽しそうだと快諾したミラは、その場でこっそりフローディナと作戦会議を始める。

 なお、アルフィナがトマト嫌いであるという事実を知る者は、フローディナのみだそうだ。よって作戦は、なるべく他の姉妹に気付かれないよう行う必要があるとの事だった。







フフフフ……

フフフフフフフフフ


先週は、あの日がありましたね。

そう、自分にとっては縁のなかった、それどころか別次元の事にさえ思えた、

あの、バレンタインデーです!


しかし、今は違うのですよ。

なんと、プレゼントが届いたのです!


しかも煎茶という、今どんぴしゃなチョイスでした。

ビタミンEがイイとアーモンドを食べておりますが、

何やら煎茶もイイという事を知り、そっちも飲み始めたところでございました!


ありがとうございます!



いやっほう!

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