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250 所長の推理

二百五十




「ちなみにだが、買うとしたら三百万リフはする代物だ」


 対魔獣用潜伏マントとは何かという説明を終えた後、所長は、そう付け足した。一見すると地味だが、相当に高価な代物だったようだ。


「なんと! それで、あの状況というわけじゃな……」


 そっと隅の方に目を向けたミラ。その視線の先では冗談が冗談を呼んだ末、いつの間にか冒険者達がマントの持ち主決めじゃんけんを始めていた。誰の落とし物かをじゃんけんで決めるという、実に不思議な状況だ。

 落とし物だとしたら、一先ず組合に預けておくべきではないだろうか。そんな事を思いながら、ミラは気を取り直して『ロックオンM弐型』の表示を再確認する。


「む……これは」


 じゃんけんの勝者がマントを掲げる中、ミラは登録対象を示す印の方に目を向けた。するとどうした事か、先程まで依頼の掲示板あたりを指していた印が、別のところに向いているではないか。

 そしてその印は、何を隠そう、じゃんけん勝者を示していた。


「ほぅほぅ……なるほどのぅ……やはり……」


 ミラは『ロックオンM弐型』を手に、じゃんけん勝者の周りをぐるぐると周回する。するとやはり、表示は常に勝者を捉えるように向けられていた。


「えっと……何かな?」


 ミラの不可解な行動に不安を感じたのだろう。勝者は、恐る恐るといった様子で問いかける。それに対しミラは、少しにやりと笑みを浮かべて答えた。


「どうにも、ファジーダイスを登録したこの術具が、お主を指し示しておるのじゃよ」


 その言葉を聞いて、マントを拾った男が「どれどれ」とミラの手元にある『ロックオンM弐型』の表示を覗き込んだ。


「確かに。これでもかってくらいに指しているな」


 男もそう証言した事で、そこにいる全員の目が勝者に向けられた。その瞬間、マント獲得の喜びから一転して、勝者はびくりと震える。そして「待って待って。僕じゃないですよ!?」と、必死に主張し始めた。

 違うと言えば、余計に怪しくみえてくる。徐々に鋭くなる視線。しかし、それは次の瞬間、笑いに変わった。


「まあ、あれじゃな。状況から考えて、問題はそのマントの方じゃろう」


 初めに『ロックオンM弐型』が示した方向を探したらマントがあり、次に確認したらマントを手にする勝者を指し示していた。それはつまり、マントに反応しているのだと、少し考えれば予想は付くものである。じゃんけんに負けた腹いせか、冒険者達は、そう誰もがわかっていながら勝者を睨んでいたようだ。

 当然、その可能性に気付いていたミラは、茫然とする勝者の手から、するりとマントを掠め取る。そして、それを適当なテーブルの上に置いて、今一度『ロックオンM弐型』を確認してみた。

 するとどうだろう。案の定、その表示はひたすらに、そのマントを指し示し続けているではないか。

 ファジーダイスは、マントにも化けられるのだろうか。そんな想像が頭を過ったが、流石にそれはないだろうと、ミラは所長に振り向いた。この状況を、どのように推理するのかと。

 また、他の冒険者達もそう考えたようで、自然と所長に視線が集まっていった。


「これはどうやら、私の作戦が読まれていたようだね」


 所長は、テーブルに置かれたマントを見つめながら、そう淡々と口にした。その口振りは、ファジーダイスならばこそ、このくらいの対策はしてくるだろうと予測していたかのようであった。

 そしていつものように、所長が事の顛末を語り始める。

 ファジーダイスのマナを記録し、追跡するための術具『ロックオンM弐型』。型落ち品であり使用条件の他、色々と制約のある術具だが、その性能は確かだ。現役で使用されていた頃も、一度記録してしまえば、その犯人を逃す事はなかったほどに。

 ただ、一つだけ欠点というものが存在した。それは、何のマナを記録したかが判別出来ない事だ。

 マナを持つものは、何も生物だけではない。自然界の様々なものにマナは宿っている。そして、付与効果を持つ装備品というのは、強力であればあるほどマナも強く、時に『ロックオンM弐型』が間違って記録してしまう場合があるそうだ。

 つまり状況によっては、身に着けている装備品を捨てる事で、『ロックオンM弐型』の追跡から完全に逃れる事が可能であるというわけだ。

 とはいえ、それは容易な手段ではない。基本的には、装備品が秘めたマナは表に出辛く、人が自然と纏っているマナの方が優先されるからだ。これを逆転するには、相当に強力な装備が必要となり、それだけの代物を捨てるなどそう出来るものではないだろう。


「そこで、そのマントの出番だ」


 所長は一呼吸おいてから、『対魔獣用潜伏マント』の効果を再確認するように話し、そして結論を口にした。着用者のマナを隠し、ありきたりなマナを纏うそのマントこそ、『ロックオンM弐型』にとって最大の天敵であるのだと。

 しかも数千万から億を超える強力な装備品に比べると、マントならば三百万程度で済む。ゆえに、『ロックオンM弐型』から逃れる囮として使うにはもってこいというわけだ。


「ふむ……。つまりファジーダイスは、あの時既にこれを身に纏っておったというわけか」


 いつの間にかどこかで、『ロックオンM弐型』を使うという所長の作戦がばれていた。だからこそ、ファジーダイスはこれだけ完璧な手段を用意出来たのだろう。

 いったい、どこで情報が漏れたのだろうか。ミラは、それらのやり取りをしていた時を思い返し……そこでふとした違和感を覚えた。思えば、初めてこれらの話をした場所は、大通りの片隅であったと。そのような場所で話す作戦に、機密性など存在するだろうか。

 その事にミラが気付いた時、所長がきらりと笑みを浮かべた。

 マントを手にした所長は、ゆっくりと車椅子を進ませて、ある一人の冒険者の前で止まる。そして、その冒険者を見据え、問いかける。


「ところで、そこの君に訊きたいのだが、これは……君のものではないのかね?」


 言葉と共に、マントをそっと差し出した所長。するとどうだろう、言葉をかけられた冒険者の顔に、まざまざと焦りの色が浮かんできたではないか。しかし冒険者は答えない。

 そこへ更に、所長が続けた。そのマントを扱っている店全てで事前に聞き込みを行い、ここ数日、正確には今回の作戦を確かに口にしてから今日までの間に、『対魔獣用潜伏マント』を販売した店を見つけていたと。


「この正面の大通りを暫く西に進んで、角に喫茶店のある横道に入った先。スカウトクラスに人気のある『サバイバー術具店』で、このマントを購入した客の話を聞いたのだが、どうにもその特徴が君と瓜二つなのだよ」


 そう所長が指摘したところ、どうやらそれは真実だったようだ。男の様子は、誰の目にも所長の言葉で追い詰められた状態にあるのだとわかるほどだった。


「まさか、お前が……!?」


 組合を封鎖した事と結界の効果によって、まだファジーダイスがこの中に潜んでいる事は確かなはずである。となれば、囮にしたマントを脱ぎ捨て、冒険者として紛れ込んだと考えるのが妥当だ。

 皆もそう思ったのだろう、次々とその男に疑いの視線が集まっていた。


(ふむ……やはり怪しい反応はなしじゃな)


 ミラは念のために、《生体感知》によって組合内を調べた。もしかしたら、誰かに変装したと見せかけて、どこかに潜んでいるのではと考えたからだ。しかし、その様子はない。となればやはり、目の前の冒険者達の誰かがファジーダイスである可能性が高い。

 そして今、最も怪しいのは、所長が指摘した男であろう。『対魔獣用潜伏マント』自体は人気商品であるため、それなりの値段ながら、そこそこの売り上げがあるそうだ。しかし、所長の調べによると、ここ数日で買われたのは一枚だけだという。

 大勢の冒険者が行き交う組合だからといって、問題の一枚を買った者が、今このタイミングでここにいるというのは、なかなかの確率なのではないだろうか。


「ま、待ってくれ! 俺じゃない! 俺は……俺はただ……!」


 所長が疑う理由には、確かな説得力があった。ゆえに冒険者達の視線は、より強く男に向けられていく。すると追い詰められた男は、まるで追いやられるかのように、一歩二歩と後ずさり、いよいよ壁を背にしたところで、「聞いてくれ!」と叫ぶ。

 男は「俺は……ただ頼まれただけなんだ!」と続け、必死に弁明を口にし始めた。

 彼は言う。二日前に見知らぬ男から声をかけられて、『対魔獣用潜伏マント』の調達を頼まれたのだと。しかもその報酬は高額であり、マントを購入するための代金も先払いだったため、二つ返事で引き受けたそうだ。

 更に、報酬の半分は前払い。残り半分も、今日のこの場所このくらいの時間に支払うという約束だったため、ここで待っていた。

 と、男が口にした言い訳は、そのような内容だった。


「頼まれた、ねぇ……」


 冒険者の一人が、疑いの眼差しそのままに呟く。また、他の者達もほとんどが似たような反応であり、苦し紛れの出まかせを話したとしか思っていない様子だ。

 実際、ミラもまた、随分と浅はかな言い訳だという印象を抱いた。頼まれて、など容疑をかけられた者の常套句である。

 しかしだ。本当にこの男がファジーダイスだったとしたら、このような言い訳をするだろうか。

 どうやら所長も、ミラと同じような違和感を覚えたようで、男の弁明を聞いてから、ずっと難しそうに眉間にしわを寄せていた。

 ミラは思う。所長から聞いたファジーダイスの印象は、もっと大胆不敵であったと。もしも見破られたとしたら、むしろよくぞ見破ったとばかりに正体を現す。それが、ミラが抱くファジーダイスの人物像だ。

 そう感じたミラは、男をじっと見つめてみた。そして、気付く。


(む……これは)


 ミラは、そのまま他の冒険者達も見回し、そして確信を得たとばかりに、にやりと微笑んだ。しかし、それを明かすのは早いとして、ミラは沈黙を保つ。今は、探偵と怪盗が勝負している場面であるからだ。男と男の戦いに横から口を出すなど、野暮というものである。


「こ、これが証拠だ!」


 疑いの視線の中、疑惑の男は一枚の紙片を荷物入れから取り出してみせると、それを所長に突き付けた。

 それはどうやら、割符のようだった。残り半分の報酬を受け取るために必要だと言われ、渡されたのだそうだ。


「ふーむ、これはジョーカーのトランプか……?」


 半分に破られたジョーカーの片方。それを所長がまじまじと見つめていたところで、ふと冒険者達の中から、一つの声が上がった。


「って事は、貴方がそうだったのか」


 そんな言葉に振り向くと、そこには如何にも新米冒険者といった姿の男がいた。その男は集まる視線に物怖じせず前に出てくると、小さなポーチから紙片を取り出してみせる。

 すると、その時。彼のポーチから、ひらりひらりと一枚の紙が舞い落ちて、所長の車椅子脇にするりと滑り込んでいったのだ。


「あっと、すみません」


 男は慌てた様子で駆け寄り、その紙を拾い上げた。そして改めるようにして、初めに取り出した紙片を、所長の持つ破れたジョーカーに合わせる。


「ぴったりじゃな」


 割符代わりのトランプが、ぴたりと合わさった。つまりは、報酬についての云々に嘘はなかったという事だ。

 その証拠に新米冒険者は、この場所のこのくらいの時間に割符の片割れを持つ男がいるので、その者に渡してほしいと頼まれ、小さな小袋を預かっていたと証言した。しかも、彼もまた、その役割と共に、高額な報酬を受け取ったというではないか。

 なお、先程落とした紙が、その詳細な指示書だったという。見せてもらったところ、確かに報酬のやり取りについて書かれていた。


「達成出来て、ほっとしました」


 新米の男が、そうにこやかに言うと、疑惑をかけられた男もまた、君が出てきてくれて助かったよと安堵の表情を浮かべる。そして二人は、互いに一仕事やり遂げたとばかりに笑った。

 と、そこでふと、一人の冒険者が疑問を口にする。


「けどよ。マントをわざわざ用意していたって事はよ。もしかしたら、こうなる事も予想出来ていたんじゃねぇのか?」


 男が言った言葉の意味。それは、疑惑をかけられた後、予め用意しておいた報酬の渡し役を登場させる事で、『頼まれて買った』という理由を確かなものとする作戦だったのではないかというものだ。


「うむ、その通りだ。奴の事だからね。その線は十分にありえる」


 男の言葉に所長もまた同意する。事実、先程の報酬のやり取りによって、疑惑の男にかけられていた嫌疑は、その瞬間、見事に晴れていた。しかもそれは、この中にファジーダイスがいるという、誰もが等しく疑いの残る中での状態だ。

 そんな状態を、ファジーダイスが一人の人物を登場させる事で生み出したかもしれない。しかも、その登場人物に依頼主の事を訊いてみたところ、特にこれといった特徴のない男であったという。

 特徴のない男。それは、ファジーダイスが変装する定番の姿だ。

 所長は言う。かけられた疑いを完全に晴らせた場合、もう一度疑われるなんて事は滅多にない。また、疑ってしまったという後ろめたさもあり、誰もが自然と、彼の者を選択肢から外すようになる可能性が高まると。


「ファジーダイスは、それを狙ったとも考えられる」


 所長は今一度、観察するような眼差しで疑惑の男を見据えた。それから少しした後、所長は何かに気付いたかのような表情を浮かべ、疑惑の男に一つの質問を投げかける。「ところで、君のクラスを訊いてもいいかな?」と。


「見ての通り、剣士ですけど」


 疑惑の男は僅かに首を傾げながらも、そう答えた。言葉通り、疑惑の男は軽装ながら長剣を帯びており、如何にも剣士ですといった典型的な格好をしていた。ゆえに、所長の質問に疑問を抱いたようだが、次に所長が口にした言葉によって納得する。

 所長は語った。これまでの経験からして、ファジーダイスは降魔術士であるはずだと。


「それなら、こいつで俺の疑惑を晴らせますかね」


 ファジーダイスが降魔術士ならば、術士でないという証を示す事が出来ればいい。そう解釈した男は、組合内の空いたスペースに移動する。そして剣を抜き放つと、一つの《闘術》を繰り出してみせた。高めた闘気を駆使して放つその技は、戦士系のクラスでなければ使えないものだ。


「どうでしょう。僕の疑いは晴れましたか?」


 どこか自慢げに振り向いた疑惑の男は、所長に言いながらも、ちらりとミラの様子を窺っていた。何気なくみせたようだったが、実は自信のある技だったらしい。


「疑いようのないほど、実に見事な技だった」


 男の技は確かなものであった。

 剣を扱える術士というのなら、幾らもいるだろう。しかし、《闘術》を使える術士というのは存在しない。つまり、彼は申告通りに剣士であり、ファジーダイスではないと証明されたわけだ。

 所長は、そんな疑惑を晴らした男に真っ直ぐ向き直り、疑ってすまなかったと謝罪した。そんな所長に男は、全然気にしていないと答える。そして、あの状況なら自分も同じように誰かを疑っていたはずだと苦笑しつつ、疑われる役回りになった分、高額の報酬が手に入ったから良しと笑った。




 そうこうして、一人の疑惑が晴れた。となれば、残る冒険者達の中に、未だファジーダイスが紛れているという事になる。推理は振り出しに戻ったわけだ。

 しかしながら先程のやり取りによって、一つの解決策もまた浮かんでいた。


「出来れば、こういう虱潰しな方法ではなく、ズバリと当てたかったのだがね……」


 若干、不満そうな所長ではあったが、それはそれである。疑いの残る冒険者達は、率先して、その証明を始めた。

 方法は簡単だ。疑惑を晴らした男のように、自身のクラスを証明するだけでいい。つまりは、それぞれ《闘術》を披露するわけだ。

 この時、ミラは少しだけワクワクしていた。術士であり、銀の連塔の賢者だったがゆえに、術については詳しい。だが、《闘術》については、まだまだであるのだ。

 そのためミラは、現在の冒険者達が使う技というのに興味があった。しかしながら、今回はミラの欲望が叶う事はなさそうだ。

 十数人いた冒険者のうちの半分は、先程と同じようにして、《闘術》を披露した。ただゲーム時代には、人の数だけあるといわれていた《闘術》だが、長年をかけて研鑽と効率化が進んだようで、似たような技が多く見られたのだ。


(ふむ……。まあ、室内じゃからな。そう大きな技も使えぬか)


 違う得物を使いながらも、似たり寄ったりな技ばかりだったため、これはどうかと考えたミラ。しかし場所が場所であり、状況は《闘術》が使える事を証明すればいいだけだ。

 昨今の《闘術》事情に触れる機会が、あっさりと終わっていく事に残念がるミラ。だが、最後に披露した冒険者の《闘術》によって、少しだけ気持ちが盛り返す事となる。


「私のは、皆さんのようにわかり易い感じじゃないんですが──」


 そう初めに前置きした女性剣士は、ミラに協力を求めてきた。何でも、リンゴを一つ放って欲しいとの事だ。


「うむ、投げれば良いのじゃな」


「はい、思い切りお願いします」


 頷き答えた女性剣士は、そのまま目を閉じた。すると次の瞬間、ミラはふと、彼女が何かをした事に気付く。それは目に見えず、感じもせず、先程までとの違いは一切なかった。しかし、直感が働く。傍に近づいては駄目だと。

 また、この場にいた冒険者達も、それを感じたようで、ざわりとした空気が辺り一帯に漂い出した。

 その時、女性剣士が、「投げる方向とタイミングは全て任せます」と口にする。


(おお、これは何やら凄そうじゃな……!)


 何か期待出来る。そう思ったミラは言われた通り、タイミングを計り、更には死角になる方向から、受け取ったリンゴを全力で投げつけた。

 次の瞬間、女性剣士は身を翻し、見事リンゴの直撃を回避する。しかも、その直後に剣を抜き、飛び去っていくリンゴを後ろから斬りつけ両断してみせたではないか。

 真っ二つに割れたリンゴを、丁度良くその向こうにいた男が受け止める。そしてまじまじとリンゴを見つめてから、これは凄いなと声を上げた。


「何か……どちらかといえば達人って感じだったな」


 見事なものだと盛り上がる冒険者達。その中で一人が、そんな感想を述べた。つまり、闘気を使った《闘術》ではなく、剣を究めた者の感性的なそれのようであったと。

 ミラもまた、何か研ぎ澄まされた感覚による達人技みたいだと感じていた。そして所長も、純粋な剣客の技にしか見えなかったと言った。

 しかし女性剣士は、それらの賛辞を全て否定して、今のは確かに《闘術》であるのだと話す。


「私達の村では、これらをまとめて《天勁》と呼んでいました。そして《天勁》は、術士の才を持たぬ者だけが習得出来る力だと──」


 どうやら女性剣士の話によると、彼女の村では闘気の扱いが独自に進化していたようだ。その効果は、《内練》方面に突出しているという事である。そして先程、彼女が見せたものは、自身を中心とした一定の範囲に入った全てを知覚する、というものらしい。


(なるほどのぅ。確かに《闘術》のようじゃが、それでもやはり達人技といっても過言ではなさそうじゃな)


 術士がマナによって攻撃や回復、補助といった様々な術を扱うように、戦士もまた闘気を使い、攻撃以外も行う。とはいえ術のように万能ではなく、能力強化が主だ。

 一時的な筋力強化、敏捷性強化、耐久力強化といった身体的な能力の向上が出来る《闘術》。それが《内練》だ。

 ミラが知っている《内練》は、単純な各能力向上の他、とある友人が使う全能力強化の《残火の法》。そしてソロモンが使う、出血するほどに全ての耐性が上昇する《血晶鎧》だけであった。

 しかし、どうやら女性剣士の話からして、《内練》系の《闘術》は、他にも色々とありそうだ。

 ミラは術士であるため、それを知ったところで使う事は出来ない。だが、そういうものがあると知っていれば、いざ、そういった者と対峙した時の立ち回りに役立てる事が出来るというものだ。


(今回の相手は術士のようじゃが、いつどこで戦士とやり合う事になるかわからぬからな)


 これは良い情報を得る事が出来た。ミラは、そう女性剣士に感謝するのだった。






週に一度の贅沢ご飯。

いつも豚バラか牛バラを買ってきていたですが、最近少しワンパターン過ぎるかなと思い始めました。

美味しいのでいいんですけどね。折角なので、色々堪能したいと思い付いたわけです。


そこで今週は、贅沢色々ご飯にしてみる事にしました!

コロッケ、粗びきソーセージ、鮭の切り身、からあげ

という、魅惑のメニューです!


今から、火曜日の贅沢デーが楽しみです!

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