242 吟味
コミケについてですが、
なんとGCノベルズ様のブースに来ていただいた方に配られるチラシには、QRコードがついているそうで……。
詳しくは活動報告に書いておきました!
よければ見てやってください。
二百四十二
少女となった今の身体は本意ではない。しかしながら、現状を受け入れたミラに妥協はなかった。存分に理想を追求する構えだ。
「パンツ隠しと一言でいうても、色々とあるのじゃな……」
流石は品揃えが豊富な店だろうか、ミラが求めるようなものも数多くの種類が用意されていた。そんな数ある中から、ミラは自身の魅惑的な脚のシルエットを邪魔するものを除外して吟味する。
ミニスカートの魅力を損なわないまま、パンツを隠せるもの。ショートパンツにレギンス、スコート、タイツなどなど。一通り確認しただけでも多くの種類があり、ミラはどれがいいのかと悩む。
「まあ、ものは試しじゃな」
頭で考えるよりも、実際に穿いて確かめた方が早そうだ。そう直感したミラは、手近なものから試してみようと姿見の前に向かった。フィッティングルームには気付かずに。
初めにショートパンツを試す。スカートの裾からは見えず、今まで通りの可愛さだ。
続いてミラはスカートの裾に手をかけて捲り上げてみる。するとやはり、そのままで外出も出来るショートパンツだけあって、下着のパンツは完全に隠れていた。ショートパンツはズボンに続き、スカートがなくなろうが問題ないほど、パンツを気にせず動き回れそうだ。
「鉄壁と言うても過言ではないのぅ」
ミラはその場で足踏みをしたり飛び跳ねたりしながら、スカートの捲れ具合とショートパンツの隠蔽具合を確認した。そしてパンツを隠すという目的を達成し、動き易さを邪魔しないという利点がある事に納得する。
「これは第一候補で良さそうじゃな」
ミニスカートの中にショートパンツ。もしもそんな組み合わせをしている女性がいたら、本来のミラならば憤慨していた事だろう。どこかで偶然見えてしまうという可能性の芽を悉く刈り取ってしまうからだ。けれど今回は自分自身の事であり、しかも目的がその芽を刈り取るというものである。
ミニスカート姿という可愛らしさを保ったまま、パンツを気にする事無く動ける。なるほどこれは実に効果的な組み合わせだと、女心を理解した気になったミラ。だがやはり、がっかり感は否めないとスカートを捲りながら思うのだった。
次にミラが試したのは、レギンスだ。ミラはスカートの下に穿いた後、先程と同じようにして姿見の前で確認する。
今回ミラが手にしたのは、数あるレギンスの中でも特に短いタイプ。丁度ミニスカートの丈と同じ程度のものとなる、俗に言うスパッツだった。
「ふむ、これもなかなか悪くはないのぅ」
程良い密着具合と軽快な穿き心地。そしてショートパンツと変わらない動き易さに、これも候補に入れて良さそうだとミラは判定する。
姿見の前で自身のスカートを捲り上げるミラ。その結果、黒のスパッツはミラのパンツを見事に隠していた。しかも、ショートパンツの時に生じた僅かな隙間すら、そのぴっちりとした密着加減で完全に消し去っているではないか。
パンツを見せないようにするという効果は、ショートパンツよりも上である。
しかし代わりに一つだけ浮かぶ問題もあった。
「確か、あ奴も一喜一憂しておったのぅ……」
かの奇特な友人が語っていた事があった。スパッツがどれだけ良いものかを。尻と脚のシルエットを邪魔する事無く、むしろより際立たせ、何よりも薄らと浮かぶパンツラインが至高である、と。
「なるほど、確かに……」
かの友人の言葉を思い出しながら自身のスパッツ姿を確認したミラは、一理あると納得する。一見、色気が何も無いように見えるが、これには極めて繊細なエロスが潜んでいると。
ミニスカートの下のパンツを隠すだけとはいえ、こうまで奥深いものだとは。そしてパンツを隠すという目的を達成すると共に新たな属性へと派生するその見た目に、改めてそれを実感したミラは、より真剣味を増して選別に挑んだ。
続いてミラが手に取ったものは、定番中の定番、アンダースコートであった。生パンツを隠すための見せパンとして名高いアンダースコート。パンチラを防ぐため、スカートが捲れてもいいように穿く場合がほとんどなそれは、キングオブパンツ隠しと言っても過言ではないだろう。
「オシャレなオムツみたいな感じじゃのぅ……」
そう見た目のままを感想として呟きながら、ミラは姿見の前でアンダースコートを穿いてみた。
「ふむ。バッチリじゃな」
少し大きなパンツとでもいった形状のため、スカートの裾から見える事もなく、脚の動きにも影響はないようだ。ミラは適当に足踏みしたり、飛び跳ねたりしながら、穿き心地を確かめる。
そうして一通りの機能性を確認したミラは、ここからが本番だとばかりにスカートの裾を摘み、おもむろに持ち上げた。
「なるほどのぅ……。あ奴の言った通りかもしれぬ」
スカートの下には黒のアンダースコート。姿見に映ったその姿は、一つの芸術にも近い魅力が詰まっていた。今ミラが穿いているものは、レースでオシャレに飾られている。むしろ見せるためのもの、見える事で一層その魅力を際立たせるものへと進化しているのである。
見せパンとはよく言ったものだ。ミラはそう感心しながら、再びかの友人の言葉を思い出す。
生のパンツを隠すためのアンダースコートだが、それでもパンツの形をしているから十分に興奮出来る。という言葉を。
「どう違うのじゃろうな……」
姿見をまじまじと見つめながら、ミラは考え込む。そこに映る自身の姿、スカートの下に見えるのはパンツそのものに見えた。けれど、これは見られても大丈夫な見せパンだという。
生のパンツを見せないようにするための存在であったアンダースコート。だが、それは一見すると勝負パンツと見紛うほどの出来栄えな逸品だ。しかしパンツではなく、生のパンツを隠すためのものだという。
ちらりと見えた時、その光景に違いはあるのだろうか。肌に直か、そうでないかで心持ちが変わるのだろうか。
姿見を見つめるミラは、不思議なものだと首を傾げながらも、これはこれでより自分の可愛さが際立つなと確信していた。
ミラの模索はまだまだ続き、今度は黒のタイツを手に取った。
伸縮性の高い素材で作られたそれは、爪先から腰までを丸々と覆ってしまう事が出来る。ゆえに、パンチラどころか生脚すら許さぬ鉄壁のガード力を誇るレジェンドオブパンツ隠しといえるだろう。
「ふむ……これは……! そうか、うむうむ」
早速黒タイツを履いてみたミラは、姿見に映る自分の姿をじっと眺める。その表情は実に真面目であり、その目は一切の妥協も認めぬという気迫が篭っていた。
ミラは、自身の全身をくまなく確認する。頭から顔、首、胸、腰、そして腹部より下がっていき両脚へ。
何度も何度も繰り返した後、ミラは「何でも似合ってしまうのぅ」と自画自賛する。
ミニスカートから魅惑の生脚という利点はなくなったものの、代わりに脚のシルエットがより際立っており、また別のエロスがそこには生まれていた。
そして何よりミラ自身が、その際立ったシルエットに負けぬほどの魅力を持つため、その相乗効果は計り知れない高みまで突き抜けているではないか。
「やっぱり、わし、かわいい」
流石は理想を顕現した姿だと、改めて自身の可愛さを認識したミラは、次に黒タイツを履いたまま動き回ってみた。
「うむ、支障なしじゃな」
伸縮性のバツグンな生地であるため、激しい動きでも十分に耐えてくれそうだ。
と、そこまでの確認を終えたミラは、スカートの裾を手に、いよいよ最後のチェックに入る。
「……スパッツに似ておるが、違う」
ぺろんと捲り上げたスカートの下は、どこまでも黒だった。スパッツとタイツ。どこか似ているその二種類は、途中で生脚が見えるか見えないかの違いだけ。一目見てそう感じたミラだったが、うっすら浮かぶパンツラインを見ながら深く考え込む。脳裏を過った違いとは何なのだろうかと。
そうして思考をフル回転させる事暫く、ミラは悠久の時を漂う友人の言葉を思い出した。
『スパッツってさ、元気なイメージあるよな。で、黒タイツってどこか知的な感じだろ? これ、入れ替えたら入れ替えたでまた堪らないと思うんだよなぁ』という、とてもとても希望溢れる言葉を。
「そうか……。これに眼鏡でもかければ、クールビューティになりそうじゃな」
スパッツ娘は元気で、黒タイツ娘は物静か。いったいどこで培われた知識、印象なのだろうか不明だが、ミラは先程のスパッツ姿と今を比べ、そういう事かと得心した。
「しかし、今回は見送りじゃな」
スパッツと黒タイツの違いを男目線から解き明かしたミラは、どちらも好みだと思いつつも、今回の購入リストから黒タイツを除外する。その理由はとても簡単で、非常に重要な事だった。
「今の季節には合いそうにないからのぅ……」
季節は夏。先程、多少動いたからか僅かに熱を持った身体。そして今、ミラが履いている黒タイツは、丈夫さ重視なのだろうかそこそこ生地が厚いものだった。そのため保温性バツグンであり、それが季節と合わさって中が結構蒸れていたのだ。
服の中は、ディノワール商会で購入したクルクールで快適に出来るが、タイツの中にまでは及ばない。夏の間、下半身が蒸れっぱなしなど、不快極まりないだろう。現状からそう判断したミラは、黒タイツと一緒に勢いあまってパンツまで下ろしてしまったりしながら、ふと友人の言葉を思い出す。
『蒸れたスパッツとタイツって──』
思わず浮かんできた度を過ぎた変態の言葉を振り払い、パンツを穿き直したミラは脱いだ黒タイツをそっと元の場所に戻すのだった。
(今気付いたが、冬物も幾らか置いてあるのじゃな)
ふと店内を見回してみたところ、うず高く積まれた棚やショーケースには季節を問わずに衣服が置かれていた。全体の割合的には夏物が多いものの、冬物も幾らか残っており、幾つかの棚にまとめられている。そして、ミラが黒タイツを調達した棚は、見事に冬物が集まった棚であった。
それは蒸れるはずだ。そう納得しながら夏物の棚を改めて確認したところ、そこには黒のパンティストッキングが置かれていた。
「ふーむ……。これは試すまでもないじゃろう」
薄手のパンティストッキングは向こう側が透けている。これではパンツを隠す事など出来るはずもない。そう即座に判断したミラは、『パ・ン・ス・トは──』と思わず浮かんできた友人の言葉に蓋をして、その場を立ち去った。
一通り試した後、他にもパンツ隠しの候補はないかと探し回っていたミラは、丁度店内を時計回りに一周したところで再びマジカルナイツの領域に足を踏み入れていた。
同じ場所にありながら、がらりと雰囲気が変わるマジカルナイツの売り場。魔法少女は既に十分過ぎるほど間に合っている。そう王城の侍女達を思い出しつつ、ミラはその場を通り過ぎていく。
と、その時である。マジカルナイツに隣接するようにして、インナーパンツ売り場が壁際にどんと置かれているのが目に入ったのだ。更にマジカルナイツ側の棚にも、魔法少女用インナーパンツなるものが負けじと並んでいるではないか。
「なんと、専用のコーナーがあったとは……」
魔法少女風衣装にはデザイン上、際どい丈のミニスカートが多い。パンチラしない不思議な魔法など存在しないこの世界では、やはりインナーパンツといった存在が必要不可欠のようだ。悩める全ての愛用者達に、また安心して着てくださいとでもいうほど沢山の種類のインナーパンツがそこには揃えられていた。
そのコーナーにはショートパンツからストッキングまで、ミラが先程試していたものの他にもペチコートパンツやら何やらといった様々な種類が置いてあった。遠目に見た限りでも、フリル付き、レース付き、キュロット風、キュートやセクシー系など、幅広い商品がその一帯に揃っているのがわかる。
(しかしまた、これまで以上に女子力の高そうなコーナーじゃな……)
初めからここを見つけていれば。ミラはそう思いながらも直ぐに駆け寄る事無く、ちらりとそのコーナーの前で戯れる三人の少女を見やった。
まるで女性用下着売り場にも似た雰囲気を漂わせるインナーパンツ売り場。そこには年の頃は十四から十七ほどであろうか、魔法少女風衣装をばっちりと着こなした三人の少女がおり、あれやこれやとインナーパンツを手にとっては真剣に意見を交わしていた。
やはり、スカート丈が短くなる傾向のある魔法少女風衣装。その愛用者である正真正銘の女性達は、ミラとは違い、しっかりとその辺りにも気を遣っている様子だ。
「こっちの方が、可愛いよー。ほらほら、こうして見えちゃった時も、この色の方がいいしさー」
「そうかなー? 私はこっちがいいと思ったんだけど。だめー?」
「だめじゃないけど、ここにギャップがあると、凄く可愛い」
そんな会話をしながら、少女達はインナーパンツをその場で試着していた。そして互いにインナーパンツの仕事ぶりを見せ合っては、あれやこれやと議論を交わす。
その際、場所が場所だけに周囲には女性しかいないからか、少女達のスカートは実に無防備な状態であった。というより、姿見の前に立っていたミラと同じように自らスカートを捲ってみたり、またなびかせるようにひらひらさせたりしているのだ。
(わしはまだまだ未熟じゃからな。女の先輩として参考になるかもしれぬ。うむ、ここは一つ参考にさせてもらうとしよう。そうあくまで参考にさせてもらうだけじゃ。参考じゃ)
ひらひらなびくスカートは、まるでマタドールのマントのようだ。黄色い声に誘われ……否、女子の感性とはどういうものかを知るために、ミラはやましい気持ちなどは一つもないと心の中で誰かに言い訳しながら、その一団に歩み寄っていった。
インナーパンツコーナーの端っこ。そこに、自分はただの客ですよとばかりに張り付いたミラは、適当に選ぶ仕草をしつつ、そっと少女達を窺い、声に耳を傾ける。
少女同士という事もありミラの存在を一切怪しむ素振りもなく、少女達はインナーパンツ選びを継続していた。ミラが近くにいようとも、無防備にスカートの中を晒し合う事を止めなかったのだ。
あれやこれやと夢中な様子で、色々な種類を試着している三人。その若くて瑞々しい会話を傍で聞くミラ。一応は彼女達がどのようにインナーパンツを選んでいるのかを参考にするつもりはあった。何もかもが言い訳だけではなかったのだ。
確認のため、無防備にスカートを捲り上げる少女達。それを目端で捉えながら、さも勉強しているだけですとばかりに「なるほどなるほど」とミラは呟く。
そうしているうちに、女性目線によるインナーパンツ選びのコツの他、少女達の事についても色々とわかってきた。
少女達の会話には時折、魔物やダンジョン、そして組合といった言葉が出て来ていた。どうやら彼女達は、冒険者グループの仲間同士であるようだ。
(しかしまた何とも……)
遠くからと近くでは、こうも見え方が違うのか。より鋭さを増したミラの目は、その光景を鮮明に目撃していた。
冒険者というのは過酷な職業である。時として男女の違いなどが意味をなさなくなるほど。ゆえに、その世界で生きる少女達は、若干羞恥心というのがずれてしまうのだろう。そしてそれは見たところ、同性同士においては特に働かなくなるようにも思えた。
片隅にフィッティングルームがありながらも、その場で試して見せ合うなどという事をしている少女達。きっとそこには、男が来る事のない場所であると共に、インナーパンツだからこそという前提もあったのだろう。だからこそ今の無防備な光景が広がっているわけだ。
(これほどとはのぅ……!)
結局のところインナーパンツとは見られてもいいパンツであり、男が真に求める下着のパンツとは根本が違う。見えたからとてぬか喜びとなる、言ってみればパンツ詐欺にも等しい存在だ。
ゆえにミラは、少女達のインナーパンツ装着済みの下半身を幾ら見たところで、真の喜びを得てはいなかった。ただ、太ももは素晴らしいとは感じていたりもしたが、そもそもミラは、そこに広がっていた黄色い空間に身を置き、その雰囲気を楽しみたかっただけである。女の子達が楽しそうにしている空間というのは、どこかで憧れてしまうものなのだ。
しかし今、ミラは、その光景を前に確かな興奮を覚えていた。その理由は、インナーパンツや下着といったものではなく、また太ももでもない。何より、少女達の行動にあったのだ。
スカートを自らたくし上げる少女の姿。それがミラの感性に直撃していたのである。
(なるほど、なるほど。参考になるのぅ)
本来は望めぬ領域であり、またその主によって固く閉ざされた聖域が、あろう事かその主自らの手によって解放されている。その御姿の何と尊い事か。
あくまでも女の子の先輩として、拝見させていただく。そのような言い訳を思い浮かべながら、ミラは少女達の動向を眺める事に注力した。そこに僅かでも恥じらうような表情が加われば無敵だなと妄想しながら。
と、その時である。流石に長時間その場で見つめ続けていたからか、とうとう少女の一人と目が合ってしまったのだ。こっそり覗いていたミラの存在が、彼女達に気付かれたわけである。
(しくった!)
これは、まずい。だがここで急ぎ視線を逸らせば、余計に怪しまれてしまいそうだ。そう一瞬で判断したミラは、どうするべきか、どう言い訳するべきかを全力で考える。下心満載だったミラは反射的にそのような思考に至り、頭を空回りさせて無難な方便を探す。
しかしだ。今の美少女そのものな容姿というのは、ミラが思っていた以上に都合よく働くものである。
「あ、ごめんなさい。もしかして邪魔だった?」
初めにミラの事に気付いた少女、一番年長そうな青い髪の彼女が、申し訳なさそうにそう言ったのだ。どうやら彼女は、自分達が邪魔になりミラが棚に近づけなかったと考えたようだ。これだけの状況においても、ミラが下心満載で見つめていたなどとは露ほども思っていなかったという事だ。
(この状況で、そうなるのか……!)
瞬間、ミラは自身の性能を改めて認識する。女性としての魅力に加え、未熟さも兼ね備えた少女の容姿。初見で、その中身がエロオヤジなどと見抜けるものなど、きっといないだろうと言えるほど完成されていたのだと。
ゆえに、かのフリッカほど直接的に表現しなければ、そう易々と心の内はばれないと思われた。
「いや、邪魔ではない。ただのぅ……知り合いからパンツの上に何か穿いた方が良いと言われたのじゃが、どうにも初めての事でわからなくてのぅ。詳しそうなお主達を参考にさせてもらおうかと思っておったのじゃよ」
ミラは心の中でほくそ笑みながら首を横に振ってみせると、そう思い付いた言い訳を真実として口にした。ここで逃げようとすれば、むしろ怪しまれそうだという懸念が僅かにあったからでもある。
まだ気付かれてはいないようだが、今のミラは精霊女王などと呼ばれる有名人だ。もしも、精霊女王がいやらしい目つきで少女三人を見つめていた、などという噂が立ってしまったとしたら、ミラにとっては死活問題である。何よりも、それがマリアナの耳に入ったら。そう思ったミラは、勘違いした三人の言葉にとことん乗ってしまおうと決意したのだ。
「今まで穿かずにいたって事!?」
「本当ですか!?」
「もしかして、見られるのが好き、だったり?」
するとどうだろう、堂々と答えたのが功を奏したのか、少女達はミラの言葉を素直に受け取ったではないか。けれど、だからこそ三人の反応は、余計に激しいものとなった。痴女扱いにまで及んでいるほどに。
どうやら魔法少女風衣装着用時には、インナーパンツを穿くのが愛用者の間では当たり前のようだ。ほとんどのスカートが短いのだから、当然といえば当然かもしれない。今までのミラが特殊だっただけといえよう。
ただ三人の驚きは相当なものであり、ミラを見る目には好奇と若干の憐憫が浮かんでいた。
「うーん……もしかして魔法少女歴が短かったりするのかな?」
深く考え込んだ末、年長の少女が探るように問うた。
魔法少女風衣装を愛用する者にとってみれば、インナーパンツ選びもまたその延長線にある一つだった。だがミラがその域にまで達していないとするなら、すなわち初心者以外には考えられない。少女はそう考えたのだ。
「そうじゃのぅ……二、三ヶ月ほどじゃろうか」
正確には、インナーパンツなど一切気にしていなかっただけであるが、それはそれだ。ミラは初めての日を苦笑気味に思い出しつつ答えた。
思えばリリィ達に専用衣装を着せられた日から、気付けばそれだけの月日が経っていた。短いようで長いような、そして気付けばもうこの衣装を着るのが当たり前のようになっている事をふと振り返り、ミラは心の中で笑った。随分と染められていたのだな、と。
「なるほど、ならやっぱり新人さんだね! それなら仕方がない、かな? 折角だから教えてあげるよ」
少女達いわく、魔法少女風衣装は相当に奥が深いようだ。三年経った自分達でも、まだまだだから、一緒に勉強していこうと三人は笑った。
「あーっと、よろしく頼む……」
嘘から出た実というべきか、何を穿けばいいのかわからないというのは事実である。今後の勉強についてまではわからないが、一先ず今は、少女達の厚意に甘える事にしようとミラは決断した。
「でも、それだけ見事に着こなしているのに新人だなんて……全然わからなかったよ。将来は、きっと私達を代表するようなモデルさんになっちゃっているかもね」
ミラの容姿を引き立て、更にミラに引き立てられるようにとデザインされた侍女達謹製の衣装は、愛好家達の目にも完璧に映ったようだ。ミラがベテランの魔法少女風衣装愛用者だと思わせてしまうくらいに。
「あ、あー、それは……無理じゃろう。わし以上などそこらにごろごろいるはずじゃ」
魔法少女風衣装愛好家の代表。それだけは勘弁してほしいと、ミラは心の底から他の愛好家達を応援する。
「可能性は十分あると思うんだけどなぁ」
そんな事を話しながら、ミラは少女達に案内されるままマジカルナイツの奥へと入っていくのだった。
さて……いよいよ当日になりました。
数時間後、私はリア銃達がひしめく戦場へと繰り出していきます。
歴戦の戦士ですら油断すればあっという間にハチの巣にされてしまう今夜。
それでもきっと死線を潜り抜け、戦利品をこの手に掴んできます!




