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204 地上へ

さて、もう幾つ寝ると書籍版7巻とコミックス版1巻の発売日ですね!

購入特典なども色々とあるようです。

詳しくは活動報告の方に記載しておきました!

あと、同時発売キャンペーンなどもあるようです。

よろしくお願いします!

二百四



「しかしまあ、あれじゃな。このファンタジー溢れる世界で、それを見ずに閉じこもり、世界のために頑張っておるとか、殊勝な者達じゃのぅ」


 大陸図の研究所がある場所を見つめながら、ミラは感心したように呟く。危険も多いが、それ以上にこの世界は新たな驚きに満ちている。あちらこちらを冒険して、それを強く実感していたミラは、そんな世界を見ず研究所に篭っている者達の事を憂う。

 だが、それは杞憂というものであった。


「いや、そう深く考えなくていいと思うぞ。あいつらは、ただ冒険よりも開発が好きってだけだ。まあ、元々がそんなんだったからこそ、トップクラスの生産職として名を馳せたんだろう。むしろ、今の長老以上にエンジョイしてるように見えたな」


 研究所の職人達の事を、戦争に利用されないため山奥に引き篭った、といった捉え方をした場合、何とも不憫な気持ちになるものだ。しかし、そこを直接訪れた事のあるソウルハウル曰く、実際には、そうでもないらしい。


「中には、当時の生活環境が忘れられないから、ってのもいたな。魔動石で動くエアコンとか試作してたぞ。テレビと、テレビカメラを研究しているのもいたな。ファンタジー世界のテレビ番組とか、どうなるか見てみたいってさ」


「エアコンにテレビか。うむ、それは必須じゃな」


 設備だけでなく、様々な環境が整っていた現代日本。それをこの世界に再現するという目的を掲げている者も、結構多いとソウルハウルは言う。だが、それもまた立派な動機だとミラは笑い、現代で見ていたあのドラマの最終回が気になるなと、苦笑した。




「さて、一先ずは用事も済んだからな。地上に戻るとするか」


 ちょっとした雑談も落ち着いたところで、そう切り出したソウルハウル。ミラが「そうじゃのぅ。そうするか」と同意して歩き出したところで、もう一度ソウルハウルが声をかける。


「ところで長老。これはもう回収しなくてもいいのか?」


「む、何をじゃ?」


 ミラが振り返ると、ソウルハウルはそこらに散らばるマキナガーディアンの残骸を指し示していた。回収といわれても、主なマキナガーディアンの戦利品は根こそぎ集めた後である。ミラがはてと首を傾げていたところ、ソウルハウルは、「なるほどな」と呟いた。


「この残骸自体だ。そこらの鉄より遥かに強固で、ミスリルに次ぐほど軽いぞ。しかも、これだけの量がある。金属素材として結構使えそうだろ? これを放置するのは勿体ないと思うんだがな」


 足元に転がっていた残骸の一つを拾い上げたソウルハウルは、その金属片を簡単に観察してから、ひょいとミラに向けて放り投げた。

 ミラは、放物線を描いて飛んできたマキナガーディアンの金属片を受け取ると、それをじっと見つめた後、「そうか、確かにそうじゃな!」と、目から鱗とでもいったような表情で、周囲に転がる残骸を見回した。


「わしとした事が、アポロンの瞳に気を取られ過ぎておった……」


 まだどこかにゲームの時の感覚が残っていたのだろうか。それとも、最上級素材であるアポロンの瞳を初めて手にしたからか、ミラはマキナガーディアンのドロップリストにはないものを、戦利品から無意識に外してしまっていた事に気付く。

 ゲーム時代は、素材として入手出来るものではなかったが、現実となった今ならば、金属で構成されたマキナガーディアンの身体の全てが、金属素材として再利用出来る可能性がある。


「ソロモンへの土産に、良いかもしれぬな!」


 軍備なり何なりと、国ならば金属資源は幾らあっても困るものではないだろう。前に見せられた魔導工学による兵器、アコードキャノンやら、単純な武器防具など、用途はそれぞれだ。


「すまぬな、ソウルハウルよ。ちと集めてくる!」


 マキナガーディアンの装甲やらパーツやらを、片っ端からアイテムボックスに詰め込んでいくミラ。しかし、大き過ぎるものは規格外となってしまいアイテムボックスに入れられない。そのため、いつの間にか召喚されていたダークナイトが、聖剣サンクティアを振るい、大きな金属片を丁度いい大きさに切断するという作業に従事していた。

 マキナガーディアンの身体を構成する金属。これまでドロップに含まれる事がなかったので、それがどういった金属素材であるかは不明のままだ。そのため活用するには、まずこれを特定する必要がある。

 直ぐに使えるとは限らないが、これだけ大量の金属素材だ。ソロモンに届ければ、きっと有意義に利用する事だろう。そう思い、徹底的に集めるミラ。


「じゃあこっちも、整理しといてやるか」


 何かと大量の金属素材が必要になる国の運営。ソウルハウルもまた、ミラと同じようにソロモンへの土産に丁度いいと思っていたようで、ミラの回収を手伝い始めた。

 ソウルハウルの足は、マキナガーディアンの残骸が散らばるところとは、また別の場所に向かっていた。

 それは、機械仕掛けの守護者の残骸が転がる場所だった。これも今は、立派な金属の塊だ。


「十分、使えそうだな」


 状態を確認したソウルハウルは、ゴーレムを作り出して、守護者をミラの傍に運ばせた。守護者の数は数十に及んだものの、ソウルハウルのゴーレムにかかれば、物の数ではなかったようだ。


「これはまた、何とも沢山来たのぅ……」


 山のように積まれていく守護者の残骸を見つめながら、ミラは更に踏ん張って、素材回収に勤しむのだった。




「では、今度こそ帰るとしようかのぅ!」


 残骸やら何やらを戦利品として粗方回収し終わったミラは、多少傷が残るだけで、他にはもう何もないボス部屋から引き上げる。数十トンにもなる金属の残骸集めは中々に骨の折れる作業だったが、やり遂げたミラの表情は明るい。危うく無駄にするところだった金属素材を無事に回収出来たと、どこか貧乏性な根っこがそれを喜びにしているようだ。


「思った以上にかかったな……」


 作業開始から終了まで、気付けば一時間ほどかかっていた。律儀に付き合ったソウルハウルは、相当なお人好しらしい。

 そうこうしてミラとソウルハウルは、ボス部屋を後にした。それから二人は黒く煤こけたままの通路を戻り、途中に散らばっていた徘徊者の残骸もまた回収して更に進んでいく。

 暫くしてボス部屋に一番近い場所にある扉の前で立ち止まる。

 その扉には、取っ手がなかった。それどころか起伏もほとんどなく、代わりに一筋のスリットが端の方にあるだけだ。

 まずソウルハウルが、アイテムボックスから取り出したカードを、そのスリットに差し込んだ。するとどうだろうか、スリットを中心にして光の線が扉全体に走り、直後、目の前の扉が音もなく開いた。

 そしてその扉は、ソウルハウルが通り抜けると同時、素早く閉じる。一人ずつでなければ、通れない仕様というわけだ。


「思えば、こういうところもSFじゃのぅ」


 改めてといった様子で、その扉を見つめながら、ミラは一枚のカードを取り出した。そのカードは、七層にある重要な場所のセキュリティを解除するために必要な認証キーであった。入手には色々と手間がかかる代物だが、当然ミラは攻略済みだ。

 その認証キーをスリットに差し込みながら、ミラは考えれば考えるほど、どこぞの施設っぽいと、今更ながらに思っていた。

 扉の先は、小さな部屋だった。金属の壁に囲われたそこには、幾つかの装置らしきものが並び、中央には天井を突き抜けて地上まで続いているチューブがある。そしてその中には、人一人が乗れそうなカプセルが、誰かを待つかのように待機していた。


「じゃあ、また五分後にな」


 そこにあったチューブとカプセルが、ここの脱出装置となっている。地下深くだからだろうか、脱出には五分という微妙に長い時間がかかった。ソウルハウルはどこか皮肉めいた言い方をして、カプセルの中に入る。

 カプセルの蓋が閉まると、それはまるで吸い込まれていくかのように、勢いよくチューブを昇っていった。


「ハイテクといえばハイテクなのじゃがのぅ……」


 チューブには、即座に次のカプセルが設置されていた。ミラもまた、続いてそのカプセルに入りながら、皮肉染みた言葉を呟き、身を任せる。

 蓋が閉まり、カプセルが動き出す。外から見た時の勢いは相当なものだが、カプセルの中は、実に静かなものだった。

 見た目からして、かなりの重力加速度がかかるはずだが、内部にその様子はない。SF技術のたまものであろうかと考えつつ、ミラは地上に出るまでの五分間をのんびりと待った。



 約五分後。カプセルの動きが止まり、その蓋が開く。停止時の慣性もまた感じる事はなく、「やはりハイテクなのじゃろうなぁ……」とぼやきながら、ミラはカプセルを降りた。


「ほんと、何でここだけこれなんだろうな」


 先に到着していたソウルハウルが、カプセルの隣を見つめ、そう口にした。文句でも言っているかのような口調でだ。


「嫌がらせにしか思えぬな」


 そんなソウルハウルの言葉に、ミラもまた同意するように応える。

 脱出用カプセルが辿り着いた先。そこは、大きな石室の端だった。カプセルを出て中央方面に目をやると、向こう側の端から手前までに、六つの小さな祭壇のようなものが確認出来る。

 その祭壇は、それぞれが四本の石柱に囲まれ、その中央には魔法陣が刻まれた石板が埋まっていた。

 ミラとソウルハウルが、恨みがましくそれを見ていた時、ふと奥から二つ目の魔法陣が輝いて、次の瞬間、冒険者であろう五人の姿がそこに現れた。その五人は、戦利品の分け方について話し合いながら石室の出口に向かっていく。と、その途中、チューブ前にいたミラ達と目が合う。


「そこの二人ー、それは出口専用だから、どれだけ待ってても開かないぞー」


 頭髪が心許ない男が、そう言って笑いながら石室を出ていく。余程稼げたのだろうか、随分と上機嫌そうだ。対してそれに続く四人は、一様に申し訳なさそうな表情でミラとソウルハウルに一礼していった。


「まったく、わかっておるわい」


 ミラは五人グループを見送ってから呟く。頭髪が心許ない男が言うように、チューブは出口専用。そしてここは、古代地下都市の脱出用出口が集まる場所となっているのだ。しかし七層目以外は、一瞬で地上に戻れる転移魔法陣であり、五分も待つ必要はないのである。と、これこそ、ミラとソウルハウルが皮肉を口にしていた理由でもあった。


「このご時世、七層目から戻って来たなんて思う奴もいないって事か。ますます高く売れそうだな」


 七層目まで下りて、尚且つ認証キーも入手している事が、この脱出口を利用出来る条件だ。先ほどの反応を見る限り、ソウルハウルが言う通り、どうやらこのご時世では、非常に珍しい事のようである。

 だがその分、七層目での戦利品は値上がりしている事だろう。ミラはソウルハウルの一言に、不敵な微笑みをもって返した。




 出口専用の石室は、三環都市グランリングスにある最も古い神殿の地下にあった。

 ミラとソウルハウルは、石室を出てから長い階段を上り、その先にあった扉より神殿の礼拝堂に出る。

 古いながらも手入れの行き届いたそこは、年季を感じさせないほど荘厳であった。それでいて歴史の長さを物語るような彫刻や壁画が全体に飾られており、蝋燭の明かりによって、より神秘的に煌いている。そこは、信仰心がなくても感心してしまうほどの神々しさで満ちた空間だった。

 そんな礼拝堂には、多くの参拝者が並んでいる。そしてその奥、祭壇の前には、とても位の高そうな祭服を纏った司祭が信者達に何かを語り聞かせていた。

 実に厳格な雰囲気であり、このような場に出てきたミラ達は実に場違いであったが、それを気にする者は誰もいない。

 ふと見ると、ミラ達が出た扉の前に立つ柱に、『古代地下都市よりお戻りの冒険者の方々へ』と初めに書かれた一枚の大きな張り紙があった。その内容は、以下の通りだ。


『怪我や病などで治療が必要な時は、左手側へと進んだ最初の部屋が治療所となっておりますので、是非ご利用ください。当教会でも指折りの聖術士が、いつでも待機しております。

 平日の昼は、二時から四時までは礼拝の時間となっております。際しましては、静粛にしてくださいますようお願いいたします。

 祝日の夜は、六時から七時まで、三神教にまつわる物語の講演会を行わせていただいております。ご興味のある方は、是非ご参列ください。お急ぎの際は、どうぞ静粛にご退出をお願いいたします。

 礼拝や講演会など、時間、または日によっては様々な行事を行っている場合がございます。これらの行事の最中に戻られました冒険者の方々には、真に恐縮ですが、正面扉を使わず、右手方面に記してあります矢印に従い、側面の扉より御静粛のままご退出くださいますようお願いいたします。』


 張り紙には冒険者に向けた内容が、つらつらと書かれていた。


「なるほど、のぅ……」


 張り紙に一通り目を通したミラは、周囲を見回しながら、そう呟いた。

 かつては、このような張り紙などされていなかった。とはいえ、それもそのはずだ。当時は、冒険者というものがいなかったのだから。つまり、これもまた時代の流れによるものである。

 冒険者総合組合が生まれ、冒険者の数が爆発的に増加し、その結果、古代地下都市へ潜る人数もまた増えた。そして潜る人数が増えれば、当然戻ってくる人数も増える。

 この古代地下都市、潜るには時間がかかるが、戻るには専用の脱出用転移魔法陣がある。となれば、当然誰だってそれを使うだろう。そうした結果が、この張り紙という事だ。無視出来ないほど騒々しい冒険者が、何度も何度もこの出口専用の石室から出てきたのだろう。


「書き方が、やたらと丁寧だな。これは相当、腹に据えかねたとみえる」


 ソウルハウルは、静粛にという言葉が頻繁に出てくるぞと小声で笑いながら、礼拝堂の様子を覗き込む。

 と、そんな時、また別の冒険者達が、石室から礼拝堂に出てきた。するとその者達は、「あ、講演会中だ」「げ、鉄拳司祭じゃねぇか」「絶対物音立てるなよ」「説教は二度と御免だからな」などと小声で騒ぎながら、そそくさと右手沿いの矢印に従って、逃げ出すように退出していった。


「何やら、随分と怯えておったのぅ……」


 冒険者達の囁き声を聞いたミラは、一体何がそこまで彼らを震えさせたのだろうかと、祭壇の前で熱心に語る司祭にそっと目を移す。年の頃は五十代半ばといったところだろうか、落ち着きのあるその表情は穏やかで、一見した限り、決して『鉄拳』などという字名の印象は窺えない。


「何がどうしてこうなったんだか、調べて(・・・)みると面白い事がわかるぞ」


 ふと司祭を見つめていたソウルハウルが、どこか楽し気な笑みを浮かべてそう口にした。その言葉にミラもまた、どれどれと司祭を調べて(・・・)みる。


「なるほどのぅ。これはまた、随分と愉快な事になっておるではないか」


 司祭の能力値は、フィジカル面においていえば上級冒険者すら上回る数値であった。しかし二人が注目したのは、その能力値ではない、名前の方である。


「流石は大陸一冒険者が集う街ってだけはあるな。司祭までこんな事になっているとは驚きだ」


 冒険者と一括りに言っても、その性質は十人十色。行儀の良い者もいれば悪い者もいる。そんな冒険者が集うこのグランリングスでは、彼らが関与する問題が毎日のように発生する。ゆえに、時にはそれをねじ伏せられるだけの力も必要なのだ。

 そして、古代地下都市の出口となるこの教会は、冒険者総合組合に次いで冒険者の出入りが多い施設であろう。

 そんな問題発生率の高い場所に、司祭としてその身を置く者の名は、ザッツバルド・ブラッディクリムゾン・キングスブレイド。かつて、オズシュタインの地下闘技場で千勝無敗を誇っていた歴代最強のチャンピオンであった。

先日、ビーフシチューとカレーのルーを買ってきました。

そして、ミックスシチューカレーを作りました。

しかもそれだけではありません、

買い物中にふと目に入ったのです。


早ゆでペンネマカロニという商品が!


今までのシチューでは少しボリューム不足だと感じていたこの頃。これはと思い試してみる事にしました。

ルーを投入する少し前に入れるのです。


結果、見事に大成功でした。かさ増しが出来て美味しさもアップです!


マカロニ……。独り暮らしを始めてから初めて買いましたが、

これは便利そうです!

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