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193 イリーナ

百九十三



 虐殺のイリーナ。物騒な二つ名をもつ彼女は、今よりずっと昔、戦乱の時代に名を馳せた傭兵団の副団長だった。

 少数精鋭で、三十人ほどからなるその傭兵団『黒獅子旅団』は、魔獣殺しの異名を持つ団長ベオウルフを筆頭に、大陸中で活躍していた。

 そんな傭兵団の団長であるベオウルフは、魔獣すら容易く斬り伏せる強さを持ちながら一切驕らず仲間想いであり、依頼者も含め誰からの信頼も篤い人物だった。

 そして密かに、イリーナの想い人でもあった。

 そんな大活躍の黒獅子旅団に舞い込む仕事は、ベオウルフの異名通り、というよりそれを期待されての魔獣討伐が主だ。

 そのため旅団の全員が対魔獣に特化していき、気付けば傭兵稼業よりも魔獣退治屋としての名の方が大きく知れ渡っていた。


 ある日、そんな黒獅子旅団に、大国の公爵という大物から魔獣の討伐依頼が届いた。しかも報酬は破格ともいえる額だ。

 その内容は、古代の王が眠る聖墓に突如現れた魔獣を迅速に討伐してほしいというものだった。このままでは、四年に一度執り行われる祭儀に支障をきたすのだそうだ。

 ベオウルフはこの依頼を引き受ける。そして詳細を聞いた後、イリーナも含め完全武装で黒獅子旅団は聖墓に赴いた。

 そこで見た魔獣は、むしろ神々しくさえ見える銀狼だった。そして今まで相対した中で、最も恐ろしい強敵でもあった。

 けれど黒獅子旅団は一歩も引かず、長期戦となりながらも、遂に活路を見出す。最も銀狼の警戒を受けていたベオウルフを囮にして、見事イリーナが戦斧でその首を切り落とす事に成功したのだ。

 歴代最強ともいえる強敵を、負傷者多数ながらも死者を出さずに打ち倒せた。いつの間にか、対魔獣戦に矜持を持っていた旅団員達はその結果に喜び喝采をあげる。


 しかし次の瞬間、それは起こった。切り落とされた銀狼の頭から白い靄が噴き出して、イリーナを包んだのである。途端に、イリーナの悲鳴が響いた。

 叫び駆け出そうとするベオウルフ。しかし彼は直後、仲間達によって押さえ込まれた。あの白い靄は何なのか、状況が把握出来ていない今、下手に動くのは危険だと。

 しかしベオウルフは、仲間の忠告を振りほどきイリーナの元へ走る。何が起こっているのかはわからない。だからこそ、早く救い出す必要があると。

 彼もまた、イリーナを愛していた。だからその足を止める事が出来なかった。

 そしてベオウルフは直後、イリーナが持つ戦斧によって両断されたのである。

 誰も言葉を発する事が出来ず、それを見ていた。薄れていった白い靄の中から歩み出てきたイリーナの姿を。表情を失い、生気のない目で仲間達を見据えるその顔を。

 上下に分かたれたベオウルフの骸を。

 初めに出た感情は戸惑いだった。旅団員は全員知っていた。イリーナがベオウルフに向ける想いを。そしてベオウルフがイリーナに返す想いも。

 たまにその事でからかうと、真っ赤に顔を赤らめていたイリーナの表情は今、青白く凍り付いている。

 いつ告白しようか、などと照れたように仲間に相談していたベオウルフの表情は今、目を見開いたまま冷たくなっていた。

 なぜ、こんな事を。誰かが叫ぶ。するとそれを合図にしたかのように、イリーナは戦斧を振るい、仲間の一人をまた一つの骸に変えた。

 聖墓に悲鳴と怒号が飛び交うと同時、イリーナが駆け出す。そして混乱の中、遂にはイリーナだけを残し、旅団員全ての命が消え去った。


 この悲劇を遠くから監視していた者がいる。依頼を出した公爵の手の者だ。虐殺のイリーナとは、彼が報告した結果に付いた渾名である。

 そんな悲劇の末、イリーナはこの地に留まり、聖墓に近づく者全てを襲うようになった。銀狼の朽ちた胴体を従えるイリーナは、これまで以上の強敵となり、暫くの後、聖墓は忌み地として封じられる事となったのだ。



 それから数百年。その封じられた地に足を踏み入れた者がいた。そう、ソウルハウルである。そこに不死の乙女がいるという話を聞きつけやって来たのだ。

 その話とは当然イリーナの事であり、その内容は、虐殺という二つ名に相応しいものであった。

 聖墓について書かれた文献には、こう記されている。財宝を狙い聖墓に踏み入った盗賊団が、その宝を巡って仲間同士で殺し合ったと。そして仲間を全て殺害したイリーナはその後、手にかけた仲間達の恨みによって命を奪われ、不死の魔物に変じたという事だ。

 そして今でも、イリーナは聖墓で犠牲者を待っている。文献はそう締め括られていた。

 その文献と様々な資料から、この封じられた聖墓を見つけたソウルハウルは、望み通り、その最深部で不死者となったイリーナを見つける。

 戦斧を軽々と振るうイリーナは、強かった。しかし、この時既に九賢者として名を馳せていたソウルハウルは、それを容赦なく組み伏せる。

 そして自身の手駒に加えるべく、不死者を浄化する術を行使した。しかしそれは、不発に終わる。

 強過ぎる不死者は、弱めてから術をかける必要がある。初見の手応えから効くはずだと判断したソウルハウルだったが、弱らせる必要があると思い直した。

 なので幾らか戦い力を削いで、再び術を行使する。けれどまた不発に終わった。

 何か、特殊な条件があるようだ。そう思い至ったソウルハウルは、一度その場を離れ、聖墓について、そしてイリーナについて調べ直し始める。

 その結果、一つだけ判明した。イリーナは盗賊ではなく、黒獅子旅団という傭兵団に所属していたと。

 これにより、文献に記してあった事が出鱈目だとわかった。聖墓に戻ったソウルハウルは、その片隅、白骨が散らばる場所を調べた。白骨は全て黒獅子旅団員の亡骸だ。

 そこには、ボロボロになった武具も残されていた。どれも使いものにはならないほど朽ちている。

 しかし一つだけ、一本の剣だけが、まだ原型を留めており、そして僅かな輝きを残していた。

 ソウルハウルは上半身だけの骸の手にあったその剣に、今にも消えてしまいそうなほど小さな念が篭っているのに気付く。それを拾い上げたソウルハウルは、死霊術によってその念を読み解いた。

 念は微弱であり読み解けたのはほんの僅かであった。けれどそれは、突破口に成り得る力だった。

 ソウルハウルは、その剣を手に再び虐殺のイリーナと相対する。そして戦いの末、手にしたその剣でイリーナの心臓を貫いた。

 瞬間、それはまるで奇跡のようであった。剣から光が溢れイリーナを優しく包み込み、そして白い靄のようなものを打ち祓ったのだ。

 直後、ソウルハウルの目の前に、幻影のような二つの人影が現れる。その一人はイリーナ。そしてもう一人の男は、ベオウルフと名乗った。

 ソウルハウルは、その二人から聖墓で起きた真実を聞かされた。


 黒獅子旅団は、公爵家から聖墓に現れた魔獣の討伐を依頼された事。しかし、そこにいた銀狼は魔獣などではなかった。それは聖墓を護る聖獣だったのだと。

 それを討ってしまったため、聖獣の亡骸の一番近くにいたイリーナが次の墓守として選ばれる事となり、不死の呪いを受けた。

 そして、墓守にされてしまったイリーナは意思も奪われ、その場にいた黒獅子旅団の仲間達を、侵入者として手にかけた。それから今まで、こうして侵入者を屠り続けていたという事だ。

 この聖墓で起きた真実を語り終えた二人は、名誉を託すとソウルハウルに一礼してから光となり消えていった。

 直後、イリーナの骸に刺さっていた剣は、役目を終えたとばかりに崩れ落ち、塵となって消えていく。

 その剣に込められていた念。それは、イリーナへの愛だった。ベオウルフの深い愛が長い年月を越えて、遂にイリーナを解き放ったのである。

 けれど、そんな事は関係ないと、ソウルハウルはようやく手に入れたイリーナの骸に上機嫌だ。

 するとそこへ、今度は銀狼が現れる。しかしその姿は、二人の話にあった聖獣、巨躯の狼とは違い、少し大きな犬程度のものだった。かつての聖獣の子供だろうか。けれど小さいながらも銀狼は、確かな神々しさをその身に秘めていた。

 その銀狼が問う。汝は、聖墓を荒らす不届き者の仲間かと。

 当然ソウルハウルは、否と応えた。

 ならば、何用で来たのかと銀狼が続ける。

 ソウルハウルは応える。聖墓にきた目的は、虐殺のイリーナという上質な骸を手に入れるためだったと。

 その言葉が通じたのかどうか、銀狼はソウルハウルに鋭く向けていた視線を和らげる。そして静かに、早く立ち去るようにと告げた。


 ソウルハウルは、直ぐには帰らなかった。そして気になった事を口にする。聖墓には何があるのか。そして、その不届き者とはどのような者達かと。

 銀狼は言う。何があるのかは答えられないと。

 けれど不届き者については語った。曰く、どこかの貴族の私兵だったそうだ。

 話し終えた銀狼は、どこからともなく古びた鎧の一部を咥えて来る。見るとそこには、確かに貴族のものらしい紋章が刻まれていた。

 そして再び、銀狼が告げる。去れ、と。

 ソウルハウルは、イリーナの骸と共に、その場を後にした。


 聖墓を出たその時、ソウルハウルの目の前に数多くの霊が姿を現す。ただ、それらに悪意はなかった。その者達はイリーナの仲間、黒獅子旅団の団員達であったのだ。

 霊達は、イリーナとベオウルフを解放してくれた事にそれぞれ感謝して、天へ還っていく。だが、一人だけはそこに留まっていた。

 その霊から、魔獣討伐と偽って聖獣を討たせた公爵家についての話を聞かされる。そしてどのような形であれ、この恨みを晴らしてほしいと頼まれた。

 恨みに取り憑かれたその霊は、ベオウルフの母だという。彼女は、もしもこの願いを叶えてくれたなら、黒獅子旅団がアジトとして使っていた秘密の場所を報酬代わりに教えると約束した。話によるとそこには、旅団員達の私財などが数多く保管されているそうだ。

 ベオウルフの母は言った。きっとイリーナの遺品もあるはずだと。

 その言葉は、ソウルハウルを死霊術士と見抜き、そしてイリーナの骸が目的だったと知ってのもののようだ。彼女は、死霊術に関する造詣が深いらしい。

 遺品。それは《英霊の棺》の条件を無視して納める事が可能で、様々な効果をもたらすため、《英霊再誕》を使う場合は非常に重要な要素であった。

 願ってもない条件だと、ソウルハウルはその頼みを引き受ける。


 手掛かりは古びた鎧の一部にあった紋章だけだったが、そこそこの時間をかけて、ソウルハウルは公爵家について調査した。文献を漁り、街を巡り、歴史設定が大好きな知人の手も借りて調べ続ける。

 なおこの時、ソウルハウル以上に歴史好きの知人は、特に張り切っていたりした。虐殺のイリーナに関する隠された真実というのが、好奇心を刺激したようだ。

 そうして知人の活躍もあり、遂にソウルハウルは、その公爵家を発見した。

 ベオウルフの母の恨みを晴らす。その手段を途中で色々考えていたソウルハウル。だが、その真実を前に、どうしたものかと悩む。

 魔獣と偽り黒獅子旅団に聖獣を討たせた公爵家は、二百年以上前に断絶していたからである。恨みを晴らそうにも、子孫どころか親類縁者の全てが既に亡くなっていたのだ。これでは、恨みを晴らすなど不可能だろう。

 けれど流石にここまで調べてこの結果では諦めきれず、ソウルハウルは既に廃墟となった元公爵家の屋敷を見て回った。そして、固く閉ざされていた書庫で、公爵家の歴史を知る。

 それによると、公爵家が断絶した原因は、呪いであったそうだ。血縁の全てが、ある時を境に次々と非業の死を遂げていったという。

 聖墓に手を出し、聖獣を討たせた報いか。最初はそう思ったソウルハウルだが、続く記述によって、そうではないと思い直す。

 そこには、この呪いを解くために、聖墓に眠るアーティファクトを何としてでも手に入れなければいけないと、そう書かれていたからだ。


 つまり公爵家は、家族を、血縁者を救うため聖墓に手を出した訳だ。しかし、そこは聖獣が護っていて近づけない。足踏みしている間にも、血縁は次々に死んでいく。

 黒獅子旅団を雇ったのは、最後の希望だったのだろう。そしてあの結果である。何とやるせない事実だろうか。

 そしてこれ以上はどれだけ調べても、他の真実は見つからず、結局は恨みも晴らしようがない。けれどそれが真実であるため、ソウルハウルは、それをありのままベオウルフの母に伝えた。

 するとどうした事か、それこそ憑き物が落ちたかのように、彼女の表情がふと軽くなった。

 公爵家の行いは、決して赦せるものではない。けれど、家族のために、という点が、母である彼女の心に少しだけ響いたようだ。

 その結果、ソウルハウルは見事、黒獅子旅団のアジトの情報を得る事に成功する。

 ベオウルフの母が天に還っていく場面を早々に切り上げ、ソウルハウルは早速そこを訪れた。

 しかし当時から長い年月が経っていたため、そこは既に誰かによって荒らされていた。財宝の類は一切合切持ち去られた後だ。

 意気消沈するも、ソウルハウルは荒れた床に転がるそれを見つけた。髪飾りだろうか、木を削って作られただけのそれはとても質素で、財宝に目が眩んだ者達にはガラクタにしか映らなかった事だろう。

 けれどソウルハウルは、その髪飾りに宿る強い想いが見えていた。誰の想いかはわからない。けれど、髪飾りの持ち主だけはわかった。

 それこそがソウルハウルの求めていた、イリーナの遺品だったのだ。




「今日はなんだか顔色がいいね」


 仮初の身体では飽き足らず、《英霊の棺》を呼び出したソウルハウルは、そこで眠るイリーナにそう語り掛けていた。当然、誰の目にもそうは見えないが、彼からしたらイリーナもまた再会出来た事を喜んでいるそうだ。

 普通より随分と大きな棺の中には、白く薄い衣を纏ったイリーナの遺体と、その脇に埋葬品である武具が並べられていた。イリーナは美しい姿のまま、そして埋葬品はどれもこれも伝説級に勝るとも劣らぬ輝きを秘めた代物ばかりだ。

 その中で唯一、脇に並んでいないものは、遺品である質素な髪飾りだった。それは今イリーナの儚くも美しい金髪を、そっとサイドでまとめている。

 ソウルハウルは、その髪飾りに触れながら、愛おしそうにイリーナを覗き込む。そして怪しい笑みを湛えた。ソウルハウルの性癖を知っているかどうかなど関係なく、誰が見ても一歩引く様相だ。

 なお、遺品である髪飾りの効果は、割合による攻撃力の上昇というものだった。流石は縁の品というべきか、大きな戦斧を振るうイリーナにとって実に相性が良い。それに加え強化を繰り返した埋葬品と、ソウルハウルの能力も相まって、イリーナの戦闘力は生前を遥かに上回り、今ではミラが知る時代よりも更に強くなっているそうだ。


(いつもの病気が始まったのぅ……)


 最愛の者と長く逢えない辛さは共感出来るものだが、今回は相手が相手だけに、理解者は負けず劣らず奇特な者だけだろう。理解はしていないが、ソウルハウルという人物を良く知るミラは、仕方ないと呆れ気味に苦笑する。


『ミラさんミラさん。彼女はいったい誰なのかしら?』


 いつ終わるのかとソウルハウルを見守っていた時、ふとミラの脳裏にマーテルの声が響いてきた。白亜の城で時を止めた女性を助けるため、苦難の道を選んだソウルハウル。そこに生まれたラブロマンスを信じてやまないマーテルにとって、今の光景は少々見過ごせないようだ。


『あーっと。なんといえばいいじゃろうな……』


 神妙な様子のマーテルの気配を感じつつ、ミラはかつてソウルハウル本人の口から聞いた、妻との出会い(黒獅子旅団の最期の一件)を簡潔にまとめて伝える。


『とまあ、あ奴は不死っ娘……不死の女性愛好家でのぅ……』


 出会って以来、第一夫人などと言って、今のように可愛がっているのだとミラは締め括った。


『そう。死に別れた本当の奥さんや恋人ではないのね……。つまり彼は、死者に恋しているのかしら?』


 流石に衝撃的だろう。というより、誰が見ても衝撃的のはずだ。死者を愛でるその姿は、明らかに特殊過ぎるのだから。


『まあ、そういう事じゃのぅ』


『死なない女性に恋を……』


 真実は真実としてミラが肯定すると、マーテルはどこか悲しそうに呟く。

 幾ら寛容そうな彼女でもいよいよ呆れるだろうか。そう思ったミラであったが、マーテルの恋愛脳は、これでも挫けなかった。


『大切な人を喪う事を恐れてしまったのね。それで、死によって別たれる事のない死人に……。そうよね、辛い旅だったのね。けど大丈夫よ。ソウルハウルさんの努力はきっと報われるわ。私にはわかるもの。彼女が再び時を取り戻したその瞬間、その生を喜び、そして気付くの。真実の愛に!』


 どこまでも愛を謳うマーテルの言葉に、ミラはもう訳がわからないと、ただ苦笑する。そして精霊王もさりげなく、ミラに同意した。



「して、調子はどうじゃ。いけそうか?」


 久方ぶり過ぎたからか、偏愛が止まらずどんどん深みに落ちていくソウルハウル。その様子に、このままでは話が進まない事を察したミラが声をかける。

 するとソウルハウルは、また今度と声をかけてから《英霊の棺》を戻し、振り返った。


「万全だ。違和感もない。明日は存分に戦えるだろう」


 大好きな嫁成分を補給出来たからか、ソウルハウルの表情は必要以上の自信に満ちていた。


「それならば良しじゃな。では早速、明日のマキナガーディアン戦について、作戦を練ろうではないか」


 ミラはそう口にしながら、精霊屋敷の扉を開く。ソウルハウルが上級の術を使えるようになった事で、戦略は大きく広がった。更にはミラの知らない時間で、より力をつけている。その辺りも擦り合わせるために作戦会議は必須だろう。


「ああ、そうだな。これでもうちまちま削る必要もなくなった。一気に片付けちまおう」


「ほぅ、強気じゃのぅ」


「まあな。上級が使えればこっちのもんだ。それに長老も何か、隠し玉があるんだろ?」


 相手は最上級クラスのレイドボス。けれどソウルハウルは、それも問題ないとばかりに薄ら笑う。ミラが知る当時の実力では、まだ不足だっただろう。しかしどうやら、知らない時間に身に付けた力に相当な自信があるようだ。

 そしてミラもまた、戦況をひっくり返せるような手段を胸に秘めていた。


「まあ、そうじゃな。では、明日で決める方針でいくとしようか」


 ミラは特製寝袋の上に、ソウルハウルは適当な場所に腰を下ろすと、作戦を本格的に練り始めた。もしもその作戦を誰かが耳にしていたら、それが有力な上級冒険者であっても、夢物語を語り合っているようにしか聞こえなかった事だろう。

正月が過ぎて、早一週間。テレビ番組も、もういつも通りになりました。

まだまだ若かった頃は、正月や大晦日などが特番ばかりであふれる事が嫌でした。いつもの番組を見せろと思ったものです。

けれど今は、それを楽しく感じております。ああ、年末年始だなぁと。


いったい自分の中で、どんな心境の変化があったのか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] ソウルハウルも(一般的には)引くがマーテルもなかなか。 割といいコンビ? 召喚出来ないけどね!
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