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169 攻略、北の神殿

賢者の弟子を名乗る賢者以外も色々読めるコミックライドが、もうじき配信開始ですね!

7月28日からですね。

なにやら、配信スタート記念なるものもあるようですね。

http://comicride.jp/camp2016/


楽しみですね!

百六十九



 リーダーのトライドは、ここを百回以上は攻略しているようで、作戦会議はとても慣れた進行だった。大抵の質問には即答し、その全てが理に適っている。

 今回の攻略に参加するグループは十組。それぞれの人数は四人から六人まででまちまちだが、その半数が操者の腕輪を持っているため、戦力に不足はないだろう。ちなみにアライアンスリーダーのトライドはAランクであるという。

 作戦内容に関しては、とても簡単で分かりやすいものだった。

 まず、北の宮殿の水晶球がある最上階の扉を開けるためには、二つの特殊な扉を抜けた先にある器に火を点ける必要がある。そして、その特殊な扉の開け方だが、東と西の宮殿と同じようにトーチの火によるものだ。

 ただ問題はその数で、広大な宮殿内に百は設置されている。これら全てに火を灯せば、第一の扉が開く。

 続いて、扉の先にある部屋のトーチに火を点ける。これで、第一の扉が閉まらなくなる。そうしたら今度は、百のトーチの火を消していく。全てを消し終えたら、二つ目の扉が開くという仕組みだ。この二つ目の扉の先には器守が五体いる。これを倒して『器守の核』というものを、同じく五つある器にそれぞれ入れる。すると、ようやく最上階の扉が開き、水晶球から三つ目の文字を入手出来るという仕組みだ。

 人海戦術が使えなければ、実に面倒なギミックである。数という点でみるなら、ミラの得意とするところだが、問題は火だ。場所が場所だけに遠く離れる事になるので、ダークナイトでは、トーチを見つけて火を灯していけという細かい指示が出来ない。出来るのはせいぜい、敵を倒せくらいであり、そもそも、火を灯す手段がダークナイトには皆無だ。

 無形術などもありミラにとっては必要ないのだが、ディノワール商会で着火用のグッズは購入している。だが一つだけ。器用に使えるかどうかも怪しいところだ。

 ただ、ヴァルキリー姉妹を召喚するという手もあるにはあった。彼女達も火を灯す手段は持っていないが、そこは着火用のグッズを渡せばいいだけだ。これで一人に比べ効率は二倍になった。もしかするとアルフィナなら、剣撃の速度で炎を生じさせるなんて達人技を持っているかもしれない。そうなれば三倍である。加えて炎の精霊サラマンダーも、なかなかに賢いので、姉妹の誰かに同行させれば四倍。知恵者で魔法を操る賢獣、梟のポポットワイズも充分に任をこなせるはずだ。なので五倍。

 などなど。召喚術はゲーム時代の頃、そこまで融通は利かなかった。だが、皆が確かな意思を持つ今なら、この人海戦術もきっと可能だろう。これが当初にミラの考えていた北の宮殿攻略法だった。

 しかし、これだけの冒険者が揃っているなら、任せてしまっても問題はないだろう。

 ミラは攻略に参加する冒険者達の面々を見回しながら、かつてのレイドダンジョン攻略を思い出しつつ、トライドの説明に耳を傾けた。

 トーチに火を灯す際に効率の良いルートや、スケルトンが出現する位置とその種類、注意点など。詳細な説明が終わったあとは、グループ毎に担当する場所の振り分けだ。

 地上部分と地下部分。そして、最短ルート上に出現するスケルトンの種類に対策し易いグループ、魔法タイプのスケルトンが多いなら遠隔攻撃持ちがいるグループなど。そういった部分も含めて、トライドはとても手際よくグループを配置していく。それは、多少宮殿について覚えているミラにとっても、納得のいく采配だった。


「それで、ミラさんだけど。僕等のグループと一緒に、器守戦を担当でいいかな。僕以外にもAランクがいてくれるなら心強いから」


 作戦会議の時、グループをどう配置するか決めるため、全員の戦力について話していた。その際にミラは召喚術士でAランクだと言い、全員から驚愕の視線を向けられたのだが、それはもう過ぎた事。


「うむ。構わぬ。わし一人でも充分なくらいじゃからのぅ!」


 なのでミラは、目いっぱい自信満々に言ってみせた。四層目は所詮Dランク相当の難度。ミラにとっては確かに容易いものだ。


「それは頼もしい。それじゃあ、任せちゃおうかな。って言いたいところだけど、ここの器守は結構油断出来ない相手だからね。及ばずながら、僕も頑張らせてもらうよ」


 ミラの言葉を受けたトライドは、冗談めかして笑う。四層目の器守は、やはり最後の宮殿のボスだからか、その強さはCランク相当だ。しかもそれが五体同時にである。トライドの言う通り上級の冒険者でも油断は出来ない戦いだが、実質、それを更に上回るミラにしてみれば、冗談でもなんでもない事だ。


(ふむ……。ここは一つ、召喚術の素晴らしさを、しかと理解してもらおうではないか!)


 トライドのグループは、Aランクのトライドを筆頭にBランク三人の編成だ。なかなかに高ランクが集まっている。これは召喚術の喧伝に都合が良さそうだと、トライドの冗談に笑う者達を見回しながら、ミラもまた薄らと微笑んだ。




 北の宮殿に入ると同時、各グループが担当の区画に向けて進行を開始する。それを見送ったミラとトライド達は、宮殿の入り口から、最上階の真下にある特殊な扉で封じられた部屋に向けて歩き出した。


「しかしまあ、面白いのぅ。このようなものもあるのじゃな」


 全員がBランク以上の編成のためか、道中の魔物はトライドの仲間達が危なげなく片付けていくため、ミラが活躍する機会がない。けれど、本番は器守戦だと決めていたミラは、ボスは全て自分がいただくので、今の内に好きなだけ暴れるといい、などと考えてたりもした。作戦としても、前線はミラとトライドで、他がサポートに回る形で話はついている。正確にはミラではなく、ミラの直ぐ傍から離れないペガサスであるが。

 なので特にする事のないミラは、箱の形をした二つの道具を手に遊んでいた。その道具とは、作戦会議中にトライドが各グループに配っていたもので、遠く離れていても、最低限の連絡が出来るという代物だった。


「大規模攻略の時や、ここのように分散して仕掛けを解除していく必要がある場合は、必須なんですよ」


 ミラの呟きに、そう応えたトライドは、ミラが手にしていた箱の一つを、人差し指だけで簡単に操作してみせる。すると、もう片方の箱がバイブレーションのように震え、その表面に、赤、青、黄の点が幾つも浮かび上がった。

 ちなみに今ミラが手にしている箱は、実行中の作戦とは関係のない予備のもの。そして片方が親機、もう片方が子機となる。特徴は、親機からの発信は全ての子機に伝わり、子機からの発信は親機のみにしか伝わらないという点だ。


「この並びで、キタノキュウデン、と読むんですよ。といっても、一部の冒険者の間でしか使われていない特殊な使用方法ですけどね」


「なるほどのぅ。こういうのも必要になるのじゃな」


 三色の並びによって言葉を伝える。手旗信号やモールス信号といった通信手段と同じような使い方が出来るようだ。

 しかし今回の作戦では、もっと簡単である。まず、各グループがトーチ全てに火を灯す事に成功したら、一つ目の扉が開く事になる。その頃にはミラ達が扉前で待機しているはずであり、そのまま部屋に入り器に火を点ける。

 連絡はこの時だ。トライドの持つ親機から、第一の扉突破の合図を送信する。それを受けた各グループが、今度はトーチの火を消していく。

 そして消し終わったあとは、器守戦。ミラ達が戦っている間に、他のグループは水晶球がある最上階に向かうという流れだ。とにかく攻略時間を短縮する事に特化した作戦であった。

 なお非常事態が発生した場合、子機から親機に連絡するように伝えてあった。事前にトライドが各グループの色パターンを決めていた。なので連絡がきた時にどのグループが非常事態なのか直ぐに分かる。そしてグループは区画毎に割り振ってあるので、場所も簡単に見当がつけられる。その万全の体制から、トライドが相当に慣れている事が窺えた。


(色々と工夫しておる。しかし思えば、これが現実では普通の事じゃからのぅ。今思えば、チャット機能は充分にチートじゃったというわけか)


 単純な信号しか送れない、二つの箱。それを上手く利用して連絡をとる冒険者達。ミラは、しみじみとした様子で箱を見つめながら、かつてのゲーム時代を思い出す。

 まだゲームだった頃。距離など関係なく会話が出来る、チャットというシステムがあった。タイミング合わせや雑談、そして今回のような複雑なギミックの解除など、タイムラグなしに連絡を取り合えたこのシステム。今もなお生きているとしたら、北の宮殿を攻略しながら、ソロモンと馬鹿話に興じるという事も可能だったわけだ。

 ミラはそんな事を考えながらも、チャットがあったらあったで、色々と追加で頼まれそうだったなと苦笑した。




 そうして暫く。一つ目の扉の前に到着したミラ達は、扉が開くのを待つ間に器守戦についての話し合いを始めた。


「ミラさんには、一人で一体任せてしまってもいいかな?」


 出現する器守は五体。ミラとトライドのグループを全員合わせた数も丁度五人。トライドの立てた作戦は、それぞれの敵に一人ずつ相対するというものだった。そして、Aランクであるトライドとミラは積極的に攻めて、なるべく迅速に敵を撃破し、Bランクの三人の誰かに加勢。そうやって堅実に五体の器守を倒す。これまでは、トライドが二体を同時に相手していたという事だが、今回は同じAランクのミラがいるという事もあって、少し嬉しそうな様子だ。

 そんなトライドに、ミラはまた自信満々に言ってみせる。「なんなら全て任せてくれてもよいぞ?」と。


「うんうん、それは助かるよ。でも皆がいるから、無茶はしなくても大丈夫だからね」


 やはり、ちょっとした冗談だとでも思っているのか、トライドはやんわりと微笑む。

 けれど、駄目だとは言っていない。その部分だけを、しかと確認したミラは、召喚術士達で賑わう召喚術の塔の未来を思い浮かべながら、にやりとほくそ笑んだ。




「お、問題なく進んでいるようだ」


 話し合いが終わった後、何気ない言葉を交わしながら待っていたところで、まず一つ目の扉が開いた。扉というよりは城門に近いそれが音を立てて開いていく様は相当な迫力で、思わず気が引き締まるものの、まだ敵はいない。あるのは、左右の壁に備え付けられたトーチだけだ。とはいえ、そのトーチは壁一面で、数は五十もある。


「よし、手分けして点けよう」


 言うが早いか、トライドは即座に壁に駆け寄り、トーチに火を灯し始めた。他の三人も同様に作業を開始している。その様子を見て、ミラはある事を思い出した。


「いよいよこれの出番じゃな……!」


 トライド達が火を灯すために使っていた道具。それと同じものを持っていたミラは、壁のトーチと向かい合うなり、その顔に喜色を湛えながら、それを取り出した。ディノワール商会で購入した、冒険者御用達の一品。『魔動式着火器プチクリムゾン』を。

 どことなく銃火器にも似た形状のプチクリムゾン。折角購入した道具なのだから試してみようと、ミラはその銃口をトーチに向けてトリガーを引く。すると、思ったよりも大きな火が生じる。


「ほぅ。これは、なかなかの一品じゃな!」


 一瞬驚いたミラだが、いざという時は魔物相手の牽制にも使えそうな火力に、流石は冒険者用だなどと笑う。

 それからミラは、次々にトーチへ火を灯していった。ミラにとっては無形術で事足りる作業だったが、カチリとしてポッと火が出るそれが楽しくなったようだ。ミラは軽快にトリガーを引き続けた。




「これで全部のようじゃな」


 最後のトーチに火を灯したミラは、銃口の先に息を吹きかける。気分はどこぞのガンマンだ。


「ああ、また暫く待機だ」


 トーチの全てに火が灯った事を確認したトライドは、箱型の道具を使って、他のグループ達に完了の合図を送った。これで、攻略は折り返し。今度は百のトーチを消していく作業が始まる。それが終われば、いよいよ北の宮殿のボス、白夜の器守戦だ。

 各自がそれぞれ戦闘準備を整える中、ミラはペガサスにもたれかかり寛いでいた。そしてペガサスはといえば、実に機嫌良さそうに翼をふわりふわりと揺らしている。これからボス戦だというのに、そこだけ完全に場違いな雰囲気だ。


「ミラさんは準備をしないで大丈夫なのですか? Dランクのエリアとはいえ、大きな相手ですから油断は禁物ですよ」


 ボス戦を前にして緊張した気配はなく、緩みきったミラの様子が気になったようで、トライドは準備運動をしながら、そうミラに問いかける。


「心配は無用じゃ。油断などせぬよ」


 簡単そうに応えたミラは、「まあ、乞うご期待じゃな」と呟き、小さく口端を吊り上げた。


「そうですか。分かりました。ですが、問題が起きたら直ぐに言ってくださいね」


 数が少ないために召喚術士がどのような戦い方をするのか、余り知らないトライド。ただ、明らかに強者な佇まいのペガサスを見て、納得したように頷いた。ペガサスが前線で戦うのだから、確かに術士であるミラはゆっくり休んでいた方がいいのかもしれないと。

 そんなトライドは道中で長剣を手にしていたが、今は槍に持ち替えている。どうやら彼が一番得意な武器は槍のようで、ただの準備運動でありながら、それはもう鮮やかで力強い槍捌きだった。見ただけでも、その腕前が頭一つ抜けていると分かる。


「見事なものじゃのぅ。時に訊きたいのじゃが、お主は二つ名というものを持っておるか?」


「二つ名ですか? まあ、そうですね。いつの間にか『紅蓮輪舞』などという名がつけられていました」


 手は止めないまま、トライドは少々照れくさそうに答えた。それを聞いたミラは、「ほぅ。格好良いではないか」と口にして、より一層ほくそ笑んだ。二つ名持ちならば知名度も高いはずであり、召喚術の実力を見せ付けるには好都合だと。

 その後、ミラは内心で独自の作戦を立てながら、時折トライド達と言葉を交わしつつ、扉が開くのを待つ。

 そして一つ目の扉が開いてから三十分ほどが経過した頃。大きな音をたてて、二つ目の扉が開いていった。


「さあ、気を引き締めていこう」


真っ先に立ち上がったトライドは、緊急用の薬などを用心深く再確認してから、扉に向けて歩き出す。トライドの仲間達も同じように再確認すると、それに続いた。


「さて、インパクトが大切じゃからな。ペガサスや。初撃は任せたぞ」


ミラは、そうペガサスに囁いてから、トライド達のあとを追う。そして、奥に五つの大きな器が並ぶ部屋に踏み込んだ。

先日、赤味噌を使い切りました。

味噌煮込みうどんはもう鉄板ですね。


なので今度は、仙台味噌を買ってきてみました。

モンドセレクション金賞、だそうです。

モンドセレクションというのが何なのかは知らないのですが、なんか凄そうなのでこれを選びました!

仙台味噌の味噌煮込みうどんも、美味しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 火を点けることは分かってたんだし、着火器を人数分用意しとくべきだったのでは? 結果的に必要なかったんだけど。 個数が無駄になるというならレンタルは無かったのかな? ヴァルキリーとサラマンダー…
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