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Episode5 〜友情の誓い〜

「暇だ〜。城の生活ってこんなにも暇だったの。こんな所にすんでる人の気が知れないわね。」

ウィングストニア城にリアがきてから一週間がたった。まあ、彼女が暇だというのも無理はない。何しろ国王は彼女がこの城にきたとき、彼女を国王専属の小間使いとしてしまったのだ。もちろん、城内は上を下への大騒ぎになった。当然のことながら、国王には既に身の回りの世話をするものは何人でもいる。それを今更になって、専属の者を欲しがるとは、普通の人は考えない。そんなのは口実で、実は想いをはせているのではないかと考えるのだ。しかし、相手は出身もしれぬ庶民である。もちろん、妻になど当然できないし、愛妾にすることすらかなりの反対を受けるだろう。だから、小間使いとして側に置いたのだ、と考えればすべてつじつまが合うからだ。だから、国王の愛人?かもしれない人にそんなに仕事が回ってくることはないし、だいたいそもそも国王の身の回りの世話をする者はすでにいるのだから、リアがきたところで彼女がすることなど何もないのだ。そして、特に国王が暗殺されるような様子はない。だから、彼女はものすごく暇なのだ。数少ない仕事といえば、興味本位で自分と国王との関係を聞いてくる小間使いに納得のいくような適当な返事を聞かせてやることと、国王が暗殺されないか見張っていることぐらいである。

「まあそういうな。私だって好きでこんなところに住んでいる訳じゃない。」

そう国王が聞くと、リアは少し驚いた様子で、

「え、国王という身分は好きじゃないの?」

と聞いた。当然である。国王という身分は誰もが喉から手が出るほどほしいと思うのが普通だと思っているからだ。

「ああ、前王が亡くなったとき、不幸なことに跡継ぎが誰もいなくてな、国王不在の状態が長いこと続くと国の存続が危うい。ということで当時絶大な国民の支持を得ていた私が飽くまで(とりあえずの)国王になった訳なんだ。」

「でもそれって変じゃない?普通跡継ぎのいない国王なんているの?」

「まあ普通はいない。だが前王の場合は就任してたった一年で急病で休止してしまったのだ。心臓の病だったらしい。まさか就任して一年で亡くなられてしまうとは誰も考えなかったからね。当然陛下本人も跡継ぎのことなんて全く考えてなかったのだろうよ。」

「でも、ギリアは飽くまで仮の王様なんでしょ。どうしてまだ玉座に収まっているの?」

リアは国王のことを呼び捨てでギリアと呼ぶ。もちろん、国王に向かって敬語も使わずこんなになれなれしく話すのは普通なら許されないことだが、リアは『私は本来ウィングストニアの国民じゃないからウィングストニア国王に敬意を表す必要もない。』というほとんど無理矢理な理論を生み出してしまったのだ。因みに、彼女の出生地はウィングストニアの北に位置する国サウスライトの辺境の村、スノフリーブスらしい。そして、ギリアもそれを許容しているのだから、彼もかなりの心の広さである。『国王になってからというもの、皆に敬われまくるのが少し嫌になってきてな、ちょうどよかった。』と言っていた。悪く言うと変人である。しかし、この無粋さも彼が国民の支持を集めた理由の一つでもある。因みに、彼の名はギリアリス=ウィングストニアである。ウィングストニアでは、国王一族は代々ウィングストニアの名字を持っていたので、彼は国王就任時に就任中だけと言うことで名字を変えたのだ。しかし、彼女がギリアと親しくすればするほど、ギリアとリアは恋愛関係説が確信を得ていってしまうのだが。

「うん、それはだな、私はすぐにもっと適任者が現れるだろうと持っていたのだが。」

「当てが外れてしまったわけだ。」

「ああ、当てが外れ続けて早3年だ。」


ところ変わってここはウィングストニア城下町の一般人にはあまり知られていないが彼らの生活に必要不可欠な場所。もしここがないと生活排水が溢れてしまい衛生に非常に悪影響が出る場所である。つまりは地下下水道である。ここに一週間前からある人が(いやいやながらも主君のために)暮らしている。

「くっさ〜、もう、ここ、嫌。」

ギルスである。彼は町中に出るわけにはいかないので、ここで暮らしているのだ。国王は、『そんなところで暮らさなくても町の近くのシュリーブス村あたりでいて、異変があればすぐ来てもらえらればいい。』と言ったのだが、忠誠心が非常に強い彼は、『いえ、そんなところにいたのでは、陛下の元へいくのに数時間はかかってしまいます。陛下のためなら少々の生活の不便くらい、何とも思いません。』と言ったまではよかったのだが、彼自身、ここまで地下下水道が酷いところだとは思っていなかったのだ。で、このざまである。

「はあ、こんなことなら陛下の言ったとおり、シュリーブスに居ればよかったかなあ。」

後悔先に立たず、である。そこで彼はふと、自分の剣に目をやる。そしてその柄に刻まれた文字をみて、溜息をつく。

「エシル・・・・・。」

その文字は、彼が将軍に就任したときに、エシルと二人で互いの剣に友情を誓い合ってそれぞれの剣に文字を刻んだのだ。

「必ず、決着をつける!」


"この剣に賭けて、この刻み込んだ文字よりも深く俺たちの友情は刻み込まれ、続いていくだろう。"

Metallic Feathersを読んでいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

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