opening
彼は夢を見ていた。子供の頃の夢だった。彼は、親しい友人と遊んでいた。彼は、この友人とはずっと親友だと思っていた。この友情は不変だと。だがその友人であるはずの人物は、いきなり剣を抜き、彼に斬りつけてきた。
「え、ど、どうして!?」
「御前は悪だ!」
悲しいとか、悔しいとか言う感情は覚えなかった。ただ、彼がどうして自分のことを悪だなんて言うのかが分からなかった。
-どうしてなんだよ!?訳わかんねえよ!-
当時の街としてはかなり大きな街の一つである、シンクス。そこから東へ歩いて、3日ほどのところに、草原がある。見通しもよく、盗賊などもあまりでないので、日が落ちるまでにシンクスにたどり着けなかった旅人達の絶好の野宿の場になっている。そこで、一人の旅人らしき男が、あまりすがすがしくない朝を迎えていた。
「・・・・・、今日もあの夢を見てしまったか。」
男はそう言い、頭を強く振ってその悪夢を振り払おうとした。しかし、まるで影のようにどうしても振り切ることができなかった。仕方なく、彼は出発の準備を整えた。
「さて、行くか。」
男は独り言を言って出発しようとした時、思い出したように、空を見上げて呟いた。
「正義と悪、世の中が、この二つにはっきりと分かれていれば、俺はどんなに楽だっただろうか。」
そして男は上りつつある朝日に背を向け、シンクスへ向けて歩き始めた。
同じ頃、そこから徒歩で10日ほどの国の首都の城で、一人の男が物思いに耽っていた。
「俺は・・・、正しかったのだろうか。」
この男こそが、彼の親友で「あった」人物である。彼らの関係については、後に語るとしよう。
「・・・・・・いや、正しかったんだ。そうに決まっている!」
そう思わないと、自分が保てないから、やりきれなくなるから、彼はこう思い込むことによって自分を納得させているのだ。
「将軍、会議の時間です。」
部下の声が、彼の思想の時間に終わりを告げる。
「分かった。今行く。」
そう言い、彼は考え事を中断して、重い腰を上げ、会議室へ向かおうとしたが、ふと、立ち止って窓から明るんできた空を見上げた。
「あいつも、今頃この空の下の何処かにいるんだろうか。」
これから始まる伝説を、そしてその中心的立場になることを、彼らはまだ知らない。
時は旧ムルグ歴356年。やがて、Silver Cryと呼ばれる長き動乱の、まだ序章に過ぎない時期である。
今回の作品が初めての投稿なので、いろいろと未熟な部分もあるかもしれませんがご容赦下さい。二年ほど前から小説を書き始めて、もっと大勢に人に読んでもらいたい、という想いのもとで投稿してみました。これからも執筆を続けていきたいと思いますので、宜しくお願いします。