【ブーメラン】
私の名前は椿 瞳。
午前7:30分 目が覚めた。
カーテンを開け窓を開け
朝の心地良い風を全身で浴びる。
ふと、下の道路を見た。
するとそこに見知った人物が居た。
大橋 仁である。
同じクラスでよく遊ぶ親しい友人である。
手には何故かブーメランを持っている。
こんな朝早くに何処に行くというのだろうか。
声を掛けようかと思ったが今日一日特に用事もないので
こっそり、尾行をする事にした。
私は急いで着替えを済まし、口に生の食パンを咥え
見失わないように急いで家から出た。
幸い、ここの道は長い一本道なので
仁はギリギリ目視出来る位置に居た。
気づかれないように小走りで途中にある電柱で身を隠しつつ
距離を縮めていった。
何度か仁が後ろを振り向いたが何とか気づかれないように
約10mの位置までは近づける事が出来た。
生食パンはまだ咥えたままである。
距離を縮める事に必死で食べる余裕が無かったのだ
水分が無いので喉を詰まらせたら一巻の終わりだからだ。
ここで、一旦小休憩とし生食パンを食べる事にした。
片手に瓶牛乳を持っていれば張り込み刑事感が出たのだが
瓶牛乳は流石に常備はしていなかった。
それに、追いかけるのに必死でそれどころでも無かった。
とそんな事を考えていると
左右の分かれ道を右に進もうとしている所だった。
右の方向にある建物といえば、、、
小学校だがまさかそんなところに用があるわけでもないだろう。
一体何処に行こうというのか。
行先にまだ見当もつかないまま後を追うことにした。
しばらく後を追い続けていると
辿り着いたのは小学校だった。
(え?ほんとに、小学校なの!?仁はまさかロリコン?いやいやそんな事ないよね
きっと、何か理由があるに違いない)
小学校といっても今日は祝日だ。
誰も居ない筈。
何故、仁は学校に来たのか。
仁にバレないように注意しながらそのまま追うことにした。
着いた場所は体育館。
賑やかな話し声がする。
人が居るのか?
しかし、先程も言ったように今日は休日だ。
恐る恐る中を覗いてみる事にした。
しかし、誰も居ない。そう居ないのだ。
人一人いない。
仁が体育館に入った姿をしっかりと確認したが居ない…
何処にも…何故だ?
仁は何処に消えた?
私はその場で考え込んだ。
突然、目の前をブーメランが横切った。
「ごめん、大丈夫だった?怪我してない」
何処から現れたのか目の前に男が現れた。
そして、その男はこう言った。
「折角だし、一緒にブーメラン投げてく?」
「え?」
2秒ほど思考停止してしまった。
すると、体育館の床下から仁が出てきた。
状況を飲み込めずに困惑している私を見て仁は言った。
「あ、椿さん!まさか追ってきちゃったのか(笑)
実はここの体育館の床下にブーメラン闘技場があってね
誰が綺麗な弧を描けるのか勝負してるんだけど参加してく?」
ブーメラン闘技場?聞きなれない言葉だ。
しかし、仁が居るなら危険はないだろうと思い参加する事にした。
その後、ブーメランにめちゃくちゃハマった私であった。