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ただ幸せに、なりたかった【なろう版・コミカライズ】  作者: 香田紗季


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【コミックス発売記念】SS11 白い鳥は見た 

読みに来てくださってありがとうございます。

本日「婚約破棄された魔法薬師は炎の騎士に溺愛される~ただ幸せに、なりたかった~」第1巻発売です。

このSSは、コミックス内の特典SSの続きとなっております。単体でもお楽しみいただけると思いますが、合わせて読んでいただくと対になるように書きました。

よろしくお願いいたします。

 白い鳥はクレアとジュリアのティータイムを眺めると、ドニャソル川に従って南へと下った。そして遠くにロターニャの海が見えたところで体を左に傾け、ロターニャの王都へと方向を変えた。


 王都の外にある不死鳥騎士団の訓練場まで飛ぶと、騎士団にある時計塔で翼を休めることにした。


 騎士団の訓練場では、火魔法も使える部隊と魔法なしの弓部隊・歩兵隊がチームを組み、実践演習を行っている。


(この暑い中でご苦労なことだ)


 白い鳥は半分呆れ顔だ。熱中症というものがあるのに今日のような暑い日にわざわざ火魔法を使うとは、よほど火が好きなのだろう。


 実はこの白い鳥、ロターニャの神獣である不死鳥の(しもべ)である。各地にこの白い鳥のような鳥がいて、不死鳥の「目」となっているのだ。


 白い鳥は、先端に魔法で火を点けた矢を放つ者、火魔法をそのまま火球として投げつける者、剣に火を纏わせて行く者、三者三様のその戦いに見入った。


(あそこに飛び込んだら、焼き鳥になるのかなあ。それはいやだなあ)


 白い鳥がそう思った時、一際大きな火球……いや、あれは小さな太陽にも思える大きさと熱の塊が、時計塔の横を通り過ぎた。


「団長、危ないじゃないですか!」

「すまない、思わず力が入ってしまった」


 白い鳥は時計塔の鐘の中から恐る恐る顔を出した。訓練場からは笑い声が起きている。


(いや、笑い事じゃないから!)


 白い鳥は丸焼けになるところだったのだ。怒りの余り、白い鳥は復讐を決意した。そして、時計塔を飛び立つと、大きな火魔法を使った男の上空でホバリングした。そして、上空から()()を投下した。


 大きな火魔法を使った男にヒットする! 


 そう思ったが、他の男が体当たりした結果、ただ地面に落下しただけとなった。


「団長、上空から落ちてきていたので……失礼しました」

「くくっ、やってくれるな」


 一瞬、団長と呼ばれた男と目が合った様な気がした。怖くなった白い鳥は、さりげないふうを装ってその場から去った。


・・・・・・・・・・


「それにしても、暑いな。体が冷える方法は何かないのか?」

「氷で冷やしますか?」

「この時期に、怪我でもないのに氷を使うわけにはいかないだろう」

「確かに、先ほどの演習で火傷を負った者もいますからね」

「何かいい考えはないか」


 フレデリックはジルに尋ねた。ジルはしばらく首を傾げた後、ああ、と思いだしたように言った。


「そう言えば、ペパーミントには体の熱を冷やす効果があるとどこかで聞いたような気がします」

「よし、ではペパーミントを持ってこい!」


 フレデリックは団員たちが入る大風呂の用意をさせながら、ジルが医務部から戻ってくるのを待った。そして、もらってきたペパーミントのエッセンシャルオイルが入った小瓶を奪い取ると、全部入れた。


「あ」


 ジルの顔が引きつった。大風呂とはいえ、ペパーミントのオイルは普通のバスタブでも3~4滴で十分に冷却効果があると言われている。それを、全部入れてしまったらどうなるのだろうか。だが、フレデリックはご満悦だ。


「さあ、体を冷やせる風呂だ。しっかり入ってこい!」

「押忍!」

「あざーっす!」


 団員たちが次々と風呂に飛び込み、そして微妙な顔をした。


「さむ……」

「ん? 寒いのか? どれ、俺も入ってみるか」

「団長は駄目です!」

「いいじゃないか!」


 ジルや他の団員たちの制止を振り切って風呂に飛び込んだフレデリックは、一瞬にしてゾクゾクと背中に寒気を感じた。


「何だ? どうして寒気が?」

「入れすぎですよ。みんな、早く体に付いたペパーミントオイルを流した方がいい、早く上がれ!」

「ういーっす」


 団員たちが次々と上がっていく中、フレデリックは5分耐えた。そして、「寒い、寒い」と言いながら、必死になってオイルを落とそうとした。が、時既に遅し。


 その日の夜から、フレデリックは熱を出した。風邪をひいたのだ。診察した医師はこう言った。


「体温調節がうまくできなくなっております。2度とこのような愚かなことをなさらぬように」


 フレデリックはハーブの恐ろしさを知った。安易に自分勝手な判断で手を出していいものではないのだとよくよく理解した。


 白い鳥はそんなフレデリックを見ながら「バカだなあ」と思った。同時に、ミントを使いこなしていたジュリアとクレアを思い出し、「少しのことにも、先達はあらまほしきことなり(ささいなことでも、詳しい人に教えてもらうべきだ)」という格言を思いだした。


 クアー、と一声鳴いて飛び立つと、白い鳥はロターニャの海岸の漁師町へと戻っていった。

読んでくださってありがとうございました。

フレデリックは元々とても明るい人だったのです。

コミックをお手にとっていただけるとうれしいです!


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