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1時間後に24、2時間後に25を更新して完結します。
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クレアは泣き疲れて眠ってしまった。クロリスとジルはこの段階でデニスにクレアが目覚めたことを報告し、オスカーの死までは伝えたこと、そして今は泣き疲れて眠っていることをと報告した。
「そうですか。それでは、胃が驚かないような柔らかい食事を用意しなければなりませんね」
デニスはどんな時でも冷静だ。いや、冷静でないこともあるのだが端から見れば冷静なのだ。公爵家の家令として努力して身につけた技術の1つである。
「デニスさん、団長のことをどう説明しようかと思っているんです」
「そうですね。難しいですね」
デニスは考えた。だが、いい案が出そうにない。
「公爵閣下とも相談して、時期を見計らい、話す内容も考えましょう。ですが、まずはクレアさんに回復していただきましょう。ね?」
デニスの微笑みに、クロリスとジルが頷いた。
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真っ暗な空間。窓がなく光が入ってこない。上下の感覚さえおかしくなりそうだ。地面に激突した時に、肩の骨が砕けたのかもしれない。グラシアールとの合同作戦の途中、敵を一掃した所で空から落ちたフレデリックは、グラシアールの魔法薬も、ロターニャの通常医療も受けずに王都に運ばれた。運んだのは、不死鳥騎士団に紛れ込んでいた王直属の特殊部隊である。彼らはフレデリックが寝返った時に暗殺せよという国王の密命を帯びていた。だが、一兵卒と同じように戦う王弟に悪い感情をもてなかった。「不死鳥の騎士」としての力を見せつけられ、畏怖していた。それに、「不死鳥の騎士」は特別な存在だ。意識を失ったフレデリックを医療施設に運ぶという名目で攫い、王宮へ運んだ。彼らは、炎の翼でその地の敵を殲滅したことを報告した。
王は恐れた。元々第1王子だったからという理由だけで王太子、王になった人物である。学問、武術、性格、外見、全てにおいて第2王子だったフレデリックに勝るものはなかった。あるとすれば、それは王位への執着だけだ。中央のことは私が直接見ると言ってフレデリックを中央騎士団である不死鳥騎士団の団長にしたが、その目的は応援要請に応えて辺境各地を駆け回らせ、中央に寄りつかせないことにある。難民キャンプでの戦闘によって不死鳥に呪われたと聞いた時は、狂喜乱舞した。あの顔が焼けただれたと知られれば、2度と女性に囲まれることはないだろう。
フレデリックを公爵に預けるという名目で監禁させた王は、晴れ晴れとした心で日々を過ごしていた。それなのに、である。そのフレデリックが回復し、「不死鳥の騎士」にまでなったという報告が上がり、王は震え上がった。王よりも「不死鳥の騎士」の方が神獣である不死鳥の祝福を受けた存在であり、国を守る能力を持つ英雄として粗略に扱うことができなくなる。王はスタリオンと裏取引をした。それが、スタリオンによる宣戦布告であった。王はスタリオンの魔術師にフレデリックを殺すよう依頼していたのだ。
それなのに不死鳥騎士団はグラシアールとの合同作戦で圧勝し、グラシアールとの連合軍が他の戦地にも回って連戦連勝し、とうとうスタリオンを降伏させてしまった。間もなく始まる講和会議で王の裏取引がスタリオン側から暴露されるのは確実であり、退位あるいは外患誘致の罪で処刑されることになりかねない。
王は怪我の処置もせずに地下牢に放り込んでおいたフレデリックにスタリオンから来る使者たちを襲わせ、その責任をフレデリックに負わせることで目くらましにしようとしている。フレデリックが逃げ出さないよう、フレデリックの弱みを探し、ついにクレアの存在を知った。王は公爵家に特殊部隊を入れ、フレデリックが王宮で暴れればクレアの命はないと脅したのだ。フレデリックは動けなくなった。クレアが目覚めたかどうかも分からない中で、フレデリックは身体も精神も病んでいった。兄である王からなぜそこまで目の敵にされるのか分からなかった。今はただ、クレアの顔が見たかった。オスカーのことも未だに自分の中で消化し切れていない。真っ暗な地下牢の中で、フレデリックが少しずつ壊れていった・・・。
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数日経って体力を回復させたクレアは、フレデリックが理不尽に拘束されたことを知った。そして、逃げ出せないのはおそらく王がクレアを脅迫の材料にしているから、そしてそれは公爵邸に裏切り者がいることを示している、とデニスが小声で教えてくれた。
「助けに行きます」
「どうやって?」
「今、戦争の講和会議のために、外交団の出入りが激しいんですよね? その隙を狙っては?」
「公爵閣下に相談します。それまではクロリスとジル以外には心を許さないように。いいですね?」
「はい。デニスさん、いつもありがとうございます」
「いいえ、殿下を助けてくれたクレアさんのためなら、できることは何でもしますよ」
信頼できる人がいて良かった。クレアは静かにその時を待った。
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