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クレアが、そこにいる。
オスカーが探し求めたクレアが、そこにいた。
オスカーが知っているクレアよりも少しだけ血色がよくなって、頬もふっくらとしてる。
「もう少し健康な身体になったんだ。だが、眠り続けている間に少し痩せた。水分は何とか取らせているが、どうやって生きているのか俺たちには分からない」
フレデリックの言葉に、オスカーがつぶやく。
「随分大事にしてくださったんですね。あんなに痩せ細っていつも寂しそうな笑顔だったクレアが、こんな顔をしている……」
オスカーがそっとクレアの手を取った。フレデリックの肩がピクッと動いたが、フレデリックは耐えた。
「クレア、迎えに来たって言いたいところだけど、クレアがどうしたいか聞いてからじゃないと、クレアをグラシアールに連れて帰るわけには行かないね」
オスカーはフレデリックを見上げた。
「デリック、わがままを1つだけ叶えてほしいのです。右手でいいから、この指輪を着けさせてください。目が覚めた時に、俺が来たって分かるように」
断る、と言いたかった。だが、オスカーはクレアを連れ帰るのを諦めてくれた。
「俺の指輪も付けさせる。それでいいのなら」
「ありがとうございます、デリック」
オスカーは、あのエメラルドの指輪を取り出すと、右手の薬指に填めようとした。
「あれ、はまらない……」
「それだけクレアに食べさせたからな。最初の頃は、もう寝ろと言わなければ24時間おれの世話をするつもりだったようだ」
「クレアらしい……仕方ありません、小指に着けます。それなら左手でもいいですよね? デリックも、小指にしてくださいね?」
「保証しかねるな」
2人で選んだ指輪を、オスカーが左手の小指にはめた。「願いを叶える」という意味を持つ左手小指の指輪。
「クレアが俺たちのどちらかを選ぶのか、そもそもどちらも選ばないのか、それは分からない。でもね、クレア。君の願いなら、俺もデリックも叶えるために全力を尽くすよ」
小さくフレデリックも頷いた。
・・・・・・・・・・
オスカーは、グラシアールに戻った。クレア探しの旅だったのだから、見つかったなら戻らねばならない。フレデリックは、グラシアールの「氷狼の騎士」と友人になれたことがうれしいらしい。軍事同盟を結ぶよう国王に進言しようと思う、とオスカーに言った。
「いつクレアの目が覚めるか分からないから、時々来いよ。また一緒に鍛錬しよう」
「いいですね。不審者にならないように、デリックが身元保証人になってくれますか?」
「ああ、いいだろう。一筆書いてやる」
オスカーは、もしクレアが目覚めたら連絡してほしいと何度も念押ししてグラシアールへ帰って行った。ロターニャに来る時には歩いてきたが、帰りはフレデリックからプレゼントされた軍馬に乗る。友情の証だとフレデリックは言った。
「それに、これだけの馬を贈られたとなれば、王都の近衛騎士団やらお貴族様たちからの誘いをはねつけられるだろう」
隣国の王弟の友人という、錦の御旗というわけだ。
「但し、ロターニャと通じている、なんて言われないように気をつけろよ」
「承知いたしました。大事にしますよ、この子」
馬が元気よく嘶く。
「ありがとうございました。また会いましょう」
「ああ、待っている」
2人の騎士の間に芽生えた友情がこの後両国を救うことになるとは、まだ誰も知らない。
・・・・・・・・・・
その頃、スタリオンでは軍事作戦の変更が完了し、出撃命令を待つばかりとなっていた。ロターニャの不死鳥騎士団の団長が復活したのは痛いが、今回はしっかり対策も立てた。同時にグラシアールにも攻め込み、一気に両国を攻め取る。スタリオンの青龍騎士団団長ルシファーは、遙か遠くを見やった。青い海を手に入れるのは、もうすぐだ。
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