表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/44

第01話 ギャルゲー転生を果たしました

「フッ、遂にこのときが来た……」


 とある住宅街の北側に位置する丘の上。そこに聳えるのは、歴史深く由緒正しき中高一貫の学園――私立、姫野ヶ丘学園だ。近年改修・増築工事が行われて新しくなった校舎は、レトロな風貌を残す赤茶色の外壁。しかし、ガラス窓を多くして校舎内に日光を取り入れる仕組みが施されていたり、何に使われる場所なのか一面ガラス張りの建物があったりと、近代的なデザインも窺える。


 桜舞う季節。そんな学園の校門前で佇み、意味ありげな笑みを湛えている少年の姿があった。名前は桐谷(きりたに)奏斗(かなと)、十五歳。今日からこの姫野ヶ丘学園に通う新高校一年生だ。


 奏斗と同じように校門で一度立ち止まる新入生も少なくはない。この美しく映える校舎を前にして、一度立ち止まって見てみたい気持ちが起こるのは自然なことだ。しかし、奏斗はそうではなかった。

 美しい校舎? 高校生になった感動? 期待を胸に一歩踏み出す? 奏斗は微塵もそんなことを思ってはいなかった。では、なぜ周りから怪訝な視線を向けられてまでこうして長い間立ち止まっているのかと言うと――――


(やっと来た……ガールズ・ガーデンの舞台っ! 姫野ヶ丘学園! やっと青春(シナリオ)が始まるんだっ!)


 そう。ここは有名恋愛アドベンチャーゲーム『ガールズ・ガーデン』――通称GGの舞台と同様の世界なのだ。有名企業によって売れっ子作家、神絵師、超人気声優らを総動員して制作された豪華に豪華を重ねた超豪華絢爛美少女ゲームであり、その洗練されたシナリオやキャラクターの圧倒的ビジュアル、本当に命が宿っているかのような声ゆえに、空前絶後の人気と大ブームを巻き起こした傑作。


 しかし、あくまでゲーム。画面越しにその世界を見詰めるということに変わりはなく、実際に体験なんて出来やしない。が、奏斗はこうして今ここに立っている。なぜなら、転生した先がGGと瓜二つ――いや、完全一致のこの世界だったからだ。


 教育熱心で厳しい家庭に生まれ育った奏斗は、勉強も運動も完璧に出来ることを義務付けられた人生を送っていた。友達と遊ぶこともなく、ただ親の言われた通り、親の敷いたレールの上を進むだけの人生。そこに自由なんてものはない。あるのは、生きてる意味を見出せない虚無感と、この人生は正しいのかという疑問。

 やがてレールは難関国立大学受験へとたどり着き……終着駅となった。死んだのだ、奏斗は。試験会場で一人の青年が包丁を取り出して暴れ、たまたま目の前にいた奏斗が刺されたのだ。


 そんな呆気ない幕切れを果たした人生。しかし、その中でも唯一生き甲斐とも呼べたのが、GG(ガールズ・ガーデン)だった。勉強の合間、運動の休憩時、移動中。そんなちょっとした時間に親に隠れてプレイしていた。


 どのヒロインも魅力的で甲乙付けがたいが、奏斗は姫川(ひめがわ)詩葉(うたは)というヒロインが一番好きだった。多くのヒロインの中で一番難しいルートだったため印象に残りやすかったというのも一つの要因だが、それ以上に、その声や見た目が奏斗の好みドンピシャで、何より創作物とは思えないほどに作り込まれた人間性や(キャラクター)の有り様が、琴線に触れた。


 そして、今世。いかなる幸運か。

 生まれ変わった奏斗は、GGのゲームシナリオでは出てくることのなかった、詩葉の幼馴染という立場だったのだ。


(この幸運……活かさない俺じゃない!)


 奏斗はチラリと視線を隣に立つ少女へと向ける。その少女こそが、GGの攻略ヒロインの一人であり、奏斗の最推しキャラクターであり、幼馴染である、姫川詩葉だ。


 中背で華奢な身体。編み込みを入れたセミロングの髪は桜の花弁を運ぶ風になびき、亜麻色に煌めく。雪をも欺く瑞々しい白肌。無垢で幼い印象を与えるものの精緻に整った顔は見惚れる程に可愛らしく、灰色の瞳が二つ瞬いていた。

 そんな彼女が身に纏うのは、この姫野ヶ丘学園の制服。上品な茶色を基調としたセーラー服で、スカートにはプリーツがあしらわれている。そして、新一年生のトレードマークである、赤色のリボン。まさしくGGで見慣れた詩葉の姿であった。


「んもぅ、何でずっと立ち止まってるの? 変な目で見られてるし早く行こうよぉ……」


 詩葉が不満と呆れ半々といった具合に頬を膨らませ、半目を向けてくるので、奏斗は「くっ……」と胸のあたりのシャツを掴み、呻く。突然どうしたのかと詩葉が心配する中、奏斗は…………


(可愛すぎるっ! 尊みが深いぃいいい~!)


 心の中で叫んでいた。しかし、このまま詩葉を心配させておくのも忍びないし、ずっと立ち止まっていても入学式に遅れるだけなので、奏斗は精神を整えるようにふぅ、と息を吐き出すと、気合いを入れるために頬を両手で挟み叩いた。


「よしっ、行くか」


「決めるの遅いよ……」


「あはは。悪いって」


「んもぅ、カナ君は~」


 不満の声を漏らす詩葉を隣に、奏斗は校門を潜る。多くの新入生がこれからの学園生活に期待し、胸を膨らませて敷地へ一歩を踏み出す中、奏斗は一人異なる決意を胸に抱いていた。


(俺の推しヒロイン……詩葉のハッピーエンドを叶えてみせるッ!!)


 そう。奏斗は決めていた。詩葉のハッピーエンドのために全ての青春を捧げる、と。自由がなかった前世。ゆえに今世では自分のやりたいことをやりたいようにやる。


 奏斗の()()()()()()()()()の始まりを語るには、およそ六年前、奏斗が小学校四年生の頃まで遡る――――

 本作品を手に取っていただきありがとうございますっ!

 引き続き頑張って投稿して参りますので、是非ともお付き合いくださいませ~!

(五話までは、詩葉と奏斗の関係性を深めるための過去編となりますっ!!)


 また、気軽にコメントや星評価、ブクマ登録をお待ちしております!!

 作者のモチベーションに繋がりますのでぜひぜひどうぞ。泣いて飛び跳ねて喜びます!!


 ではっ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ