悪さし放題! あなたを立派な不良にしてみせます!
2066年、この崎取大学に新たな学部が設立された。その名も『非行応援学部』。定員10名の小さな学部である。
キャッチコピーは『悪さし放題! あなたを立派な不良にしてみせます!』だ。
これらのことから分かる通り、この学部は不良を育てることを目的として設立された。一見気が違ったような学部名とコピーだが、これは国による命令で作られたものであり、一切隠すことなく表立って運営されている。
この学部は全国に数百作られる予定であるが、この崎取大学だけは1年早く試験的に設立されることとなった。名前がたまたま『さきどり』だったからである。
たった10名分しか用意されていないこの枠数に対し、応募者90065名。実に倍率9000倍である。
この90065名の応募者の選別は『悪テスト』と呼ばれる試験と、親の年収の多さによって行われた。
9000倍の戦いを勝ち抜いたのは、すでに相当な悪であった、金持ちの親を持つ少年少女たちだった。つまり、親のいない子は必然的に入学不可となる。
彼らの親は全員が若い頃に悪いことをしており、全員が前科持ちである。
しかし、そこからのし上がって今の地位にある、非常に頑張り屋な大人たちばかりである。
そんな彼らには共通する想いがあった。
『自分の子どもも立派な悪になって欲しい』
自分たちも悪いことを教育してきたが、さらに悪いことの出来る立派な大人に育つようにこの学部に入学させたのだ。親の夢を背負っているともいえるだろう。
「みなさんこんにちは! あなたたち10人は倍率9000の争いを見事制した〈選ばれし学生〉です! この学部に入ったからには何をしても怒られません! 思う存分悪いことをしましょう!」
担当の教授の挨拶が終わると、緊張していた入学生たちが一気に騒ぎ始めた。
「罠かと思ってたけど、本当にやらせてくれるみたいだな!」
「そりゃそうだわよ、いくら積んでると思ってんのよ」
あまりに都合のいい話すぎて、疑っていた学生もいたようだ。
「それにしても悪テストのあの問題やばかったよな! 『祖母の財布から1万円以上抜いてきなさい』ってやつ!」
「あーあれはやばかった! うちのババアはマジで金にがめついから、1万も減ってたらすぐに気づいて騒ぎやがるんだ! ぶん殴って歯2、3本折ってやったら大人しくなったがな!」
「どこのババアも同じだなぁー!」
彼らの中では当たり前のことなのである。
「お前可愛いなー、後で1発やらせてくんね?」
「あ? あんたあたしの好みじゃねーし! ぶっ殺されたいの?」
「おーこわっ!」
見ての通り肝の据わった悪ばかりである。
「さー授業はじめるわよー」
教科書を持った中年女性が教室に入ってきた。『悪語』担当教授の悪田 三湯である。
「リピートアフターミー、『うるせーババー!』」
「うるせーババー!」
「けっ、こんな甘っちょろい授業を真面目に受けてるやつの気が知れねぇや」
他の9人がちゃんと授業を受けている中、1人だけ反抗する男子がいた。悪テストで2位の成績を収めた九頭 龍二だ。
「基礎が大事ってのを知らねぇのか、ゴミが」
悪テスト断トツ1位の天才、弓架 居が九頭に紙くずを投げて言った。
「なにしやかんだてめぇ!」
「悪かったな、ゴミはゴミ箱のはずなのに、ゴミにゴミ投げちまった」
「ぶっ殺す!」
「はいそこまで!!!!!」
悪田の渾身の大声により、教室内にいた学生全員の鼓膜が破れた。
「よーし大人しくなったね、次行くよー! 『あぁん? やんのかコラ!』はい!」
「⋯⋯⋯⋯」
この場にいる人間の中で鼓膜が破れていないのは悪田だけである。
「チッ、クズどもが。私の授業は受けたくねーってか? おーおー勝手にしやがれ! 帰るわ! じゃあなゴミども!」
「⋯⋯⋯⋯?」
突然教室を出ていく悪田を不思議そうな顔で見送る一同。その後は全員鼻をほじって過ごしたという。また、全員の鼓膜が破れたことにより来週まで授業は休みとなった。
「ちぃーす! 早速行くぞ!」
1週間ぶりの授業は殺死 舞殺死による課外授業だった。
「購買で適当に買っていけー!」
「おー!」
各々おにぎりやお茶、サンドイッチや日本酒などを買っている。
「まずは歩道の歩き方だ! この中に歩道の歩き方を知っている者はいるか!」
「はーい! 『道いっぱいに広がってガン飛ばしながら、ゴミを落としながら歩く』です!」
自信満々に答えたのは、裏で教育委員会のお偉いさんたちと@@@@@や×××××、あぁ〜ん♡やバキューンなどをして入学を勝ち取った金髪美少女、魔食羅 泳魚だ。
「正解! 模範解答だ! お前、後で俺の部屋に来ないか? ご褒美あげるぞ?」
「あ? あたしとヤレるつもりでいるわけ? おめー三下だろーが、死ねっ!」
道いっぱいに広がり、おにぎりやサンドイッチを食べながら歩いた。
大声で下らない話をしつつ、食べ終わったゴミをその辺に捨てていく。
そんな中、1人だけゴミをポケットにしまっている男がいた。この中で成績最下位(しかし、全国的に見れば天才)の安安 黒甘炭酸である。
「おい安安、なぜ道にゴミを捨てない?」
「あ? 別に良いだろうがよ」
「後のこと気にしてるなら大丈夫だぞ、ボランティアの奴らが拾いに来るから」
「サイテーだなおめェ⋯⋯」
「あいつらは好きでやってんだよ。だから俺たちが仕事を与えてやってんだろ?」
「チッ⋯⋯」
安安は軽く舌打ちをし、殺死を睨んだ。
「分かった。捨てねぇんならもういい。お前は退学だ。退学処分だ」
「あ? んなの聞いてねーぞ?」
「俺たちにはお前たちを退学させる権限が与えられているんだ。俺はそれを使ったまでだ」
「なんで頑張って入学して1週間でクビになんなきゃいけねーんだよ!」
「お前の話は聞かん。さっさと消えろ」
「クソ⋯⋯! チッ、分かったよ。こんなクズの集まりみてーなクソ学部なんぞこっちから願い下げだ!」
「消えろ」
「チッ」
残りの9人は怯えていた。あんなに頑張って入ったのに、あんなにお金を払っているのに、こんなことで追い出されてしまうのかと。
「どうした、元気が足りないぞ」
殺死の鶴の一声で彼らは元気になり、大声雑談を再開した。
それからは滞りなく授業が進み、1ヶ月が経った。この頃、数々の授業を乗り越えてきた彼らは1人残らず強者の顔になっていた。
1ヶ月が経つと、学生と両親に学生生活を継続するかしないかという確認をすることになっている。誰か1人でも反対するものがいた場合、その学生は中退することとなる。
その確認の日が今日なのだ。
保護者会という名目で全員の両親が集められ、本人が書類に判を押す。この確認は1ヶ月目の今日だけではなく、これからも毎月行われる。
残念なことに、初回にして1人だけ中退者が出た。ヤクザを自称していた寿地 文である。彼の母親が反対したのだ。
次の日から彼はいなくなり、8人になった。
「けっ、どんどん脱落していきやがる」
「仕方ねぇ、あいつらには素質がなかったんだ」
九頭と弓架が2人で話している。
「お前、最後まで残る覚悟はあるか?」
「親が反対しなきゃ余裕だな」
「そうだよな、俺もだ」
なにやら友情のようなものが芽生えているようである。
「ほーいみんなおはよーっ!」
元気の良い挨拶とともに教室に入ってきたのは真ん丸体型の中年おじさん、管 剛である。
「課外授業行くよーっ!」
今日も課外授業である。
「あそこの路地行ってみっかなーっ!」
外でも元気の良い管の声が響く。
「あいつうるせーな」
「爆音だるまって呼ぼうぜ」
「それ良いわね」
うるさいヤツは嫌われるのだ。
「あ、あそこにボインボインの金髪美女がいる! 矢賀くん、どう?」
「どうって、なにが?」
「あの美女とヤりたくない?」
「そりゃヤりてーけど」
「犯してきなよ!」
「はぁ!?」
この課外授業は強姦の練習である。立派な悪になるための必須科目なのだ。
「やんないの? 見失っちゃうよ? あそこにいい感じの狭い路地があるから、そこに連れ込んで犯っちゃいなよ」
「そ、そんなことしたらオレが捕まっちまうだろ!」
「大丈夫大丈夫、揉み消すから。何のために君たちのパパママから大金貰ってると思ってんのよ〜」
「お前、マジで言ってんの?」
「やるの? やらないの? どっち?」
「狂ってるわ、お前ら狂ってるわ」
「質問してるんだけどなー? 答えたくないのかなぁ?」
「クズが⋯⋯」
矢賀が管を睨んだ。そうこうしているうちに、女性はいなくなっていた。
「きゃあーっ!」
「うるせー! 大人しくしろっ!」
「うっ!」
先ほど管が言っていた路地裏から男女の声と、人を殴るような鈍い音が聞こえた。
皆が駆けつけるとそこには、衣服が乱れ、口から血を流して目に涙を浮かべている先ほどのボインボインの金髪美女と、彼女に覆い被さるような体勢の九頭の姿があった。
「じれってーんだよおめーは! 短小か? 包茎か? 女ってのはこうやって悦ばせんだよ! 見とけ童貞!」
そう言って九頭は泣き喚く女性の衣服を剥ぎ取り下半身を露出させ、行為に及んだ。
「狂ってやがる⋯⋯!」
「君、退学ね〜」
「ああもういいよ、こんなのに付き合ってらんねーわ」
こうして3人目、矢賀 未来の退学処分が確定した。
「それにしてもあの時はあんた盛ってたわね〜、あんなオバサンのどこが良かったのかしら? あたしの方が100倍可愛いしナイスバディじゃない?」
魔食羅が九頭とあの女性をバカにしている。
「でもお前ヤらせてくんねーじゃん」
「当たり前じゃない」
「じゃあそういうこと言うなよ」
「実際あのオバサンとヤってたから言ってんのよ。耳腐ってんの? 理解力がない脳みそのほうが問題かしら?」
「調子乗りやがって! ぶっ殺す!」
そう言って九頭が魔食羅を殴った。
「殴ったわね! 退学になるわよあんた!」
「あ? ここは悪育てるとこだろーが! 退学になんてなんねーよ! だから今から殺してやるよ!」
九頭は魔食羅が動かなくなるまで顔を殴り、衣服を脱がせ、溜まっていたものを全て発散した。全てを魔食羅に注いでやった。
やがて目覚めた魔食羅は両手で顔を覆い、泣くことしか出来なかった。当然九頭は処分されなかった。そういう学部だから、むしろ褒められるべきことだ、とのことだった。
魔食羅の顔の傷が治ってきた頃、実習というものが始まった。
「魔食羅と木喪はこの前レイプ出来なくて可哀想だったから、こっちで力を発揮してもらおう」
強姦の管から引き継いだ授業の説明する教授の汚子 面伍子。
「今日は初めてだから簡単なのから行こうか。このプリントに書いてある番号にかけて、ここに書いてある通りに喋ればいいから。最初のターゲットはちゃんと下調べもしてあるから、若い人とかいない時間狙ってるから安心してかけてくれ」
オレオレ詐欺である。彼女たちの場合はワタシワタシ詐欺になるのだろうか。一人称が「朕」だったらちんちん詐欺なのだろうか。
「こんなの余裕よ、任せなさい! 早く立派な悪になって、九頭に目に物見せてやるんだから!」
いつのまにか「悪になる」という目的が「九頭に復讐する」ための手段になっていた魔食羅。
「喋ってねーでさっさとやれよ」
九頭の野次が飛ぶ。
「ふん、言われなくても分かってるわよ! 黙ってなさいよクズ男は!」
初めてのオレオレ詐欺を気合いで乗り切ろうとする魔食羅。
その隣では、木喪 紫音が浮かない顔をしていた。
「どうした? 早くかけなさい」
木喪の様子を見て変に思った汚子が言った。
「私、弱い人を狙うのは⋯⋯」
「はぁ⋯⋯。いいか? お前らはヤンキーみたいなお遊び連中とは違うんだぞ? お前らは全国から選られたエリートなんだぞ? 相手が誰だろうと踏みにじる。そして唾をはきかける。これが出来なきゃ本当の悪とは言えないぞ?」
「正直、私はそこまでは⋯⋯」
「はい退学」
「えっ」
「はいもう終わり。出てけ」
こうして非行応援学部は6人になった。
それから季節は巡りゆき、1年が経った。この時点で残っていたのは九頭 龍二、弓架 居、魔食羅 泳魚の3人だった。
「それでは卒業試験を始める!」
「えっ!?」
萌邪萌邪森森森校長の突然の発表に言葉が出ない3人。
「大学って4年制じゃないの!?」
「そのはずだよな? 1年って早すぎるだろ!」
「まぁ、俺はその方が楽だけどな」
口々に不満や感想を語る3人。
「1年でも大変だったろ? これクリアしたら卒業だから、最後にこれだけ頑張って」
校長はそれだけ言って立ち去った。
静かな教室に残された3人。
「まさかお前も残るとは思わなかったなぁ。俺に中出しされて泣いてたやつがよ」
「あんたをぶっ殺すために血反吐はいて、さらにそれを啜り飲みながらここまでやって来たのよ! 卒業したら絶対にぶっ殺してやるんだからね!」
「やってみろよ。今でもいいぜ? あ? また身体ン中掻き回されてぇか? そんなに俺のがよかったのか?」
「やめねぇか2人とも。ここで何かあって卒業試験が延期とかになったらめんどくせえだろうが」
2人の言い合いを止めたのは弓架だった。これまで目立つことなく生き抜いてきた猛者である。
「待たせちゃってごめんねぇ、ほいさっ」
入口の方から男の声が聞こえたかと思うと、真っ黒な長細い袋が投げ込まれた。
「う〜〜!」
その袋は、クネクネ動きながらなにやら呻いていた。
「もしや、これは!」
「黒クネクネ!?」
「違うだろ、人間だよ!」
「冗談よ」
黒い袋に入れられた人間。それが何を意味するか、3人は判っていた。
「あたしたちがやるのよね、これ⋯⋯」
「それしか考えらんねぇだろ、ビッチが」
「ここに来て初の共同作業とはなぁ」
これまでの試練を乗り越えた彼らには人殺しをする覚悟は十分にあった。この先どんな試練があっても乗り越えてゆけるだろう。
「ほいさっ!」
2袋目が投げ込まれた。声からして、今度は女性のようだ。
「割り切れねぇな」
「1人でも割り切れないけどね」
「もう1袋あればなぁ」
「ほいさっ!」
3袋目が投げ込まれた。
「おっ! やっぱ1人につき1人なんだな!」
「ほい⋯⋯さっ!」
4袋目。
「えっ」
「ほ⋯⋯い⋯⋯さっ!」
5袋目。
「えっえっえっえっ」
「ほ⋯⋯ほいっ⋯⋯さぁ⋯⋯」
6袋目。
「おいおい何人来るんだよ!」
「いや⋯⋯もう⋯⋯終わり⋯⋯死ぬ⋯⋯疲⋯⋯れた⋯⋯」
汗だくの中年男性がゼイゼイ言っている。
3人の前には呻きながらクネクネ動く袋が6つ。
しばらくして、呼吸を整えた男性が口を開いた。
「今から君たちには人を殺してもらいます」
「いや、分かるわ」
「ていうか、人って普通に言うんならわざわざ袋に入れなくてもいいのでは?」
「この方が雰囲気出るでしょ」
汗だくの男は不敵に笑った。
「殺し方はなんでもいいからね。あっちの部屋から色々持ってきて拷問してもいいし、一思いに殺しちゃってもいいよ」
「女もいるみてーだが、ヤっちまってもいいのか?」
「ほんとクズねあんた」
「下を使うのはいいけど、口は使わないでね。君たちが顔を見たらビックリするような裏の有名人ばかりだからね、公にはしたくないんだ。だから顔に被せてあるマスクだけは取らないでね」
「分かった」
「そいじゃ、説明終わり! 九頭くんは1番と2番、弓架くんは3番と4番、魔食羅さんは5番と6番の袋ね! さ、よーいドン!」
男の説明が終わると、3人は勢いよく教室を飛び出した。
最初に戻ってきたのは弓架だった。手にはペンチと釘が握られていた。
「やっぱり苦しめてやんないとな。お前ら裏の人間なんだろ? 他人に散々やってきたんだよな?」
そう言いながら袋の適当なところに釘をあてがい、ペンチで叩く弓架。
「うぅ、うぅぁあああああああ!」
こもったような叫び声が教室中に響き渡る。
「抜け駆けはさせねぇよ!」
次に帰ってきたのは九頭だった。右手にはメリケンサック、左手にはコンドームがあった。
「お前、コンドームなんかいらねぇだろ」
「ビョーキあるかもしんねぇだろ!」
「確かに」
女の方の袋を下半身の部分だけ破る九頭。
「裸なのかよ!」
1人が裸ということは、恐らく残りも全員裸だろう。
「うーん、このマンコは⋯⋯ババアだな」
悔しそうに言う九頭。
「当たり前だろ。裏の世界で顔が売れてるようなヤツらだ、若いわけねぇ」
「確かに」
互いに「確かに」を1回ずつ引き出したところで魔食羅が帰ってきた。数十種類の薬瓶を抱えている。
「お前薬品使うなら外でやれよ!」
「うるさい! あたしに指図すんなクズが!」
「毒ガス出るかもしんねーだろが!」
「うるさい! レイプ魔クズ人間!」
「喧嘩してる場合じゃないだろ! うるさくするならよそでやってくれ!」
弓架の言葉に少しだけ怯む2人。
「確かに、毒ガスなんて出たらあたしも危ないし、塩酸だけ使うわ」
爪を剥がしたり、塩酸で焼いたり、ぐちゃぐちゃに犯したり、殴ったり、刺したり、3人は6つの袋に対して、ありとあらゆる暴力を振るった。
最後の呻き声が消えた頃に、九頭が「2番」のマスクに手をかけた。
「やっぱ見といた方がいいよな! そうすればすげーやつをぶっ殺したって名が売れるかもしれねぇ!」
「ちょっと待て、それで卒業出来なくなるかもしれないぞ!」
「大丈夫大丈夫! 行くぜぇ!」
勢いよく覆面マスクを外した九頭は、その顔を見ると途端に青くなった。
「母⋯⋯ちゃん?」
「なに?」
九頭の覇気のない声に弓架が反応し、3番の覆面を外した。
「オヤジ⋯⋯! てことは⋯⋯」
4番も外す弓架。
「お袋!」
「どういうことだよ! おい教師共! どっかで見てんだろうが! 出て来やがれ!」
九頭が喚くも教師からの応答はない。
「そんな⋯⋯パパ⋯⋯ママ⋯⋯!」
ショックで訳が分からなくなる魔食羅。
「はいはいおつかれ〜」
先ほどの男が入ってきた。
「このやろーっ!」
九頭が男飛びかかった。メリケンサックをつけたほうの腕を振りかぶっている。
「死ねぇー!」
殺意を込めて放った九頭の拳は、謎の板に弾かれた。
「あぁん?」
九頭の前には、「POLICE」と書かれた盾を持った男が立っていた。
「大人しくしろ。さもなくば撃つ」
「あ? やってみろよ!」
「やるとも」
「はぁ? ⋯⋯うっ!」
どこからか飛んできた銃弾に太ももを撃ち抜かれる九頭。
「うぅ⋯⋯ぐああああああ!」
「九頭! ⋯⋯分かった、大人しくする。だから撃つな」
弓架が両手を上げて降参した。魔食羅も同じ行動をとった。
『君たちをどうしようもない悪党であると判断した。もちろん君たちの両親もだ。君たちには
一生牢屋に入っててもらうことにするよ』
校内放送のスピーカーから校長の声が聞こえた。
「どういうことだよ! 俺たちを立派な悪に育てるんじゃなかったのかよ!」
腿を押さえながら必死に叫ぶ九頭。
「分かんねぇのか、俺たちは嵌められたんだよ」
弓架が静かに言った。
「は⋯⋯?」
「この学部は俺たちを親諸共世間から排除しようと作られたものだったってことだ」
「よく分かってるじゃないか」
機動隊の後ろで男が言った。
「じゃあ、あの時のボインボインの金髪美女も⋯⋯?」
「もちろん、仕込みだ。でもいいだろ、ヤれたんだし」
「役者とヤったってなんも気持ちよくねーよ! 素人を無理やり犯してこその悪だろうがよ!」
「あんた、最後までそんな風なのね⋯⋯」
全てを諦めた魔食羅がゴミを見るような目で九頭を見て言った。
こうして警察に捕まった3人は刑務所に送られ、全員その月のうちに自ら命を絶ったという。