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8.模擬戦やってみた、、らしい

こちらにしてやったりという顔で了承を迫るオーレン。


「あ、もしその隣の女が心配だと言うならこっちで預かってもいいぞ?丁重にもてなしてやる。」


あの裏路地の性犯罪者と同じ顔だ。

今度は嗜虐的な笑みがセイに向けられ、セイはうぇ、みたいな顔をする。

ってかやっぱりセイはどこ行っても真っ先に狙われるんだからやっぱり美人だよな。


「いや、結構。お前らのそばより俺のそばの方が安全だし。」

「なに?」

「それと、その役を受けるか受けないかを伝える前に、まず、彼女らに謝ってもらおうか。」

「なぜだ」


オーレンは半笑い、馬鹿にしたようにニヤケながら理由を問う。


「どうせその小さい頭では、『亜人差別は禁止されていない』とか考えているんだろうが、それ以前の問題だ。亜人も人。人に物を頼む時に相手を馬鹿にするなど、お頭の足りない行動としか思えんぞ。それに、、」


あえて少しの間を置いて注目を惹きつける。


「ダサい。」


ぶふっ


セイが吹いた。

あーあ、だめだよ、シリアスな感じなのに。


「ははぁん、さてはお前、囮役が怖いのか?」


セイの反応で顔を真っ赤にして怒っていたオーレンが突然落ち着き(?)再び余裕の、性格の悪い笑みを取り戻して聞く。


「論点がズレているな。俺はお前に謝れと言っている。」

「やはり怖いのかこの腰抜けめ!」


オーレンはキャッキャキャッキャと猿のように笑い、班員がそれに続く。

あぁ、いいや、そんなに我慢しなくても。

俺の手が自然に腰にまわり、一瞬で鞘走った脇差がそのまま風をきって進み、オーレンの制服の襟、首の数ミリ左を貫いて、黒板に貫きとめた。


「ひっ」

「きゃっ」


教室の所々から悲鳴にも似た声が聞こえる。


「おい、こんなのも避けられないのか?お前は、お前のいう腰抜けにも劣っているようだな。」


オーレンはワナワナ震え、俺への恐怖とプライドが衝突しているのが窺える。


「早く謝らないとなぁ、次は手元が狂って、、、イッチャウカモネ、ハハ」


後日談だが、セイ曰く「あの時のノア、本当に悪魔みたいな怖い笑みしてて、実はちょっとチビった。と同時にカッコよかった。うん。萌えた」だそうだ。


「わ、わかった。すまなかった。謝る。ごめん。」

「最初っから言わなければこんな恥ずかすぃー思いしなくてよかったのにね。」


ぷぷーと俺が見下して笑うと、オーレンは複雑な表情をしたまま、なんとか復讐の機会をつなげようとする。


「でも、囮役は受けてくれるよな。」

「もちろん。俺たちしかできないみたいだし。」


いいだろう。正面からお前のくだらないやり口を叩き潰してやるよ。


「ああ、よかった。ありがとう。」


オーレンはどうせ碌でもないことを考えているのだろう。




「あ、ありがとう、私たちのためにこんなに」


俺が席に着くと前の席に座っていたフィーエが泣きそうな笑顔で礼を言った。

それに「私からもお礼を言う。ありがとう。」とユエルも続く。


「いやいや。仲間が言われてたら腹たつからさ。」

「そんな余計なこと言って関係拗らせるより黙って引いた方がよかったのに。私たち亜人がどれだけ同じような目にあってるかわかってるの?これぐらいなんてことないわよ。」


やはり完璧なツンデレ。バニラ。いいよ。そーゆーの大好きだ。かわいいなぁ

俺が孫を見るような目でバニラを見ていることに気づいたフィーエはホッとした表情をした後、バニラにとっては赤っ恥な解説をつけ始めた。


「関係が拗れるってわかっているのに私たちのために怒ってくれてありがとうございます。今まで差別しない人にあまり合わなかったので、とっても嬉しかったです。って言ってます。」

「ちょ、ちょっと、何勝手に、、、」


あぁ、かわいい姉妹だ。




作戦会議は解散となって昼食会となった。

脇差を回収した俺は、俺のチームだけで食堂に向かった。

まぁ食堂と言っても出しているメニューはたった二つ。

600ファムのセットと800ファムのセット。

600ファムの方はパンと野菜スープだけ、800ファムのセットはハムのサンドウィッチに野菜スープ、果物が一つついていた。

俺はセイと共に5人のうちの先頭側に並んだ。

俺たちが買うのは600の方。

金銭的に余裕がないわけではない。俺とセイだけが800の方を買ったらなんか嫌な感じするからだ。

亜人は職に就かせてもらえず、貧困家庭が多い傾向にある。

あまり負担をかけたくない。


俺の右にセイ、左にフィーエ、セイの正面にユエル、俺の正面にバニラが座る。



俺は一足先に食べ終わり、セイがもぐもぐしているのを横から眺めていた。


「あのー、つかぬことをお伺いしますが、、」


不意に左のフィーエからごく小さく声をかけられた。


「何?」

「ノアくんとセイちゃんは、その、、お付き合いしてるんですか?」


こしょこしょっと年相応のかわいらしさを持ったフィーエが顔を赤くして聞いてきた。


「うーん、してないよ。」

「じゃあ、その、いずれ」

「わかんないや、」

「そう、、ですか。」





意味深な会話の後、俺たちは準備運動に外に来ていた。


「そういえば、ノアは後衛だよな。なぜ刀を持っているんだ?」


ユエルが俺の腰に帯びた刀を珍しそうに見る。

そういえば、ユエルはとても綺麗な声をしている。落ち着きがあって、淀みなく、穏やかな抑揚で、無感情なわけでもなく。この声、かなり俺のタイプだ。


「ああ、まぁ、どっちもできるし。そこそこだけど。」

「「「ん?」」」


セイ以外の3人が露骨な驚き方をしてこちらを見る。


「なんか変なこと言った?」

「ごめんねみんな。ノア、ちょっと変な子だから。」

「え?待って、何、俺普通だし。」

「あぁ、あぁ、なるほど、あぁ」


フィーエが諦めたような、目でこちらを見てくる。


「はぁ、そのような変わり者もいるのだな。覚えておこう。」

「ほんっと気持ち悪い。」



グサグサグサっ

えなんで?気持ち悪いって、もはやツンとかじゃないよね、、え?俺セクハラでもしたか?




精神攻撃から復活した俺は、4人に簡潔に作戦を伝えた。

囮なんてしない。全員叩き潰す。

まだ仔細は始まってから臨機応変に対応していくが、俺たちが敵を連れてくると相手が思っている間に敵を全滅させる。


「そんな大それたことを、、」

「全く、目立ちたがり屋ね。」

「わ、私にできるでしょうか」


ユエル、バニラ、フィーエの順に俺の作戦に後ろ向きな感想。

セイは「ノアが守ってくれるし」なんて呑気なことを言っている。


「まぁ、みんなの実力次第で動き方は決めるし、痛いもんは痛いから負担がかかるようなら全滅は断念するし、最悪最低限のことは俺1人でできるから。気楽に参加すればいいよ。」



と、フォローはしてみたものの、帰ってきたのはジト目だけだった。




「それじゃあ、頼むぞ。」


オーレンの指示で、俺たちは深い森の中に入っていった。


フィールドの中央に向かって急ぎ足で進んでいると、早速俺たちを囲うように敵が近づいてくる。

鶴翼陣か?

俺たちを中心に半円を描くような布陣。

敵数18。


「ノア?」


少し速度を落とした俺に疑問を抱くセイ。

一方で感覚が鋭敏なフィーエとバニラはすでに臨戦体制。

やっぱりこの3人、かなりの実力者だ。


「じゃあ、俺が正面、フィーエ、バニラが向かって左翼、セイとユエルが向かって右翼。まぁ、倒されなければなんでもいいよ」

「「「「了解。」」」」


俺たちはごく自然に進み、合図で一気に散開した。


正面は7人。と、かなり遠くにアーチャーがいるな。

よほど腕に自信があるか、ただのチキンか。

ここは折角だし正面からぶつかってみようか。

最も近い敵までは12mほど。

向こうもこちらに向かってくる。

他の4人は左右に展開して敵の両翼を散らす形になったので、包囲は免れたようだが、俺の場合そうはいかなかった。


「いや、燃えるな。」

【雷鳴掌】


俺の両手に赤黒い雷が宿る。


直後、ヒュッと音を立てて三本の矢がほぼ同時にこちらに向かってくる。

少しずつずらされたその矢は、逃げ道をうまく塞いでおり、受けが最善策らしい。


風属性の魔力のこもった矢を左手で払い落とす。


「レベル高いね。」


俺に急速に接近した2人は、左右からそれぞれ、俺にはぎりぎり当たらないであろう軌道で、剣を振り始める。

今の体勢から体を動かすとヒットするが、動かさなければ当たらない。学院生ともあろうものが空振り。そんなわけない。答え合わせをするかのように、動かない俺めがけて再び矢が飛んでくる。

動けば剣、動かなければ矢の餌食。こういった多重攻撃はそう簡単にできるもんじゃないし、そもそもこの距離でここまで正確なタイミングと狙いで矢を放てるアーチャーは大人にもそういない。


俺は右側のバスタードソード、左側の直剣を掴んで体の前に無理やりひっぱって矢をガードする。

体勢を崩した前衛2人は引っ張られた勢いで俺の目の前で顔面から激突。

バランスを崩した片方の心臓を手が貫いたところに再び矢が飛来。

もう片方の体を盾にして防ぎ、心臓から手を引き抜く。

すると間を開けずに残りの5人が同時に襲いかかってきた。

何で最初からそうしなかったんだよ。

構成は大槌使い、直剣使い2人、斧使い、槍使い。

囲うように現れたいそいつらは、ジリジリと間合いを詰めてくる。


〈抜刀術〉【鳥の舞 四閃・鴎】


高速突進を伴う居合技が、音もなく大きな斧ごと斧使いを両断した。


「速っ」

「そりゃどうも、」


視界から俺を外してしまった不幸な直剣使いは背後から袈裟懸けに斬られ、倒れ伏す。


すると次の瞬間、残された3人が同時に襲いかかってきた。

間合いの取り方もガバガバ、下手したら互いの攻撃が当たるかも知れないような連携のなさだが、対応せざるを得ない。

抜き放した刀で正面の槍使いを槍ごと叩き切り、次は大槌と思って体の重心を変えた時、

始めに斬った槍使いが崩れ落ちた背後から、風を纏う矢。

前射、前々射に比べて数倍の魔力がこもっており、速度、重さ共に、かなりの差があった。

それもこの距離。

完全に意表を突かれた。

こりゃ、詰みだな。




並みの剣士なら。


体にそわせた左手が脇差を引き抜いて、その矢を受ける。

これが抜刀術最大級の隙である突進後の無防備な瞬間を埋める、二の太刀。


窮地は脱したとはいえ、その一瞬の動作は襲い掛かる2人に多少の隙を見せた。


「いい連携組むね、いや、いいように利用されてるのか。」


〈金剛体装〉


俺の肘から先の皮膚が一瞬にして変質する。

名の通り、体や武器を硬化させる効果を持つこのスキル。

体術使いにはほとんど必須のスキルで、これがあってこそ体術使いは刃物に正面から立ち向かえる。


背後から迫る肉厚のロングソードは人差し指と親指で、正面の大槌は五指で、ぴたりと止まる。


「爪が甘かったな。」

ロングソードを思いっきり引き寄せて大槌にぶつけると、2人仲良く団子になって転がっていったので、

デザートに雷魔法をプレゼントしておくことにする。


〈雷魔法〉【雷剣墓(セイバートゥーム:雷)


お空から降ってきた雷属性の黒い大剣が2人をまとめて地面にピン留めして、2人は成仏していった。

さて、残るは弓使いちゃんだけど、逃げたかな?

先ほど補足した魔力矢をもとに、500mほど離れた地点で疾走する弓使いを発見、追跡を開始した。




「状況的に最良の判断だと思うけど、ほんとに逃げられると思った?」


あれからちょっと経った。

弓使いちゃんはなかなかの高AGIで、思ったより追いつくのに時間がかかったけど、まぁ、何とか追いついて、たった今、背後から忍び寄って話しかけてみた。


「きゃっ」


可愛い声出すじゃん。

深緑の長髪をポニーテールにまとめた、何ともアーチャーらしい髪型に、同じく深緑色の怯えた目。

俺は彼女の腕を掴んで捕捉したのだが、なんかまるで、ねぇ、襲ってるみたい。ハハハ


「まぁ、女の子をいたぶる趣味はないし。バイバイ、また後でねー」

【爆拳】


俺は背中に右手を当てて、彼女の心臓を爆破した。



俺がおおよそ元の場所に戻った頃には、すでに全員が戻ってきており、済ました顔で立っていた。


「あ、お待たせー、一匹逃しちゃって、追っかけっこしてた。」

「一()て、、」


「早く行こう」とユエルに急かされてさらに森の奥に進んだ。


先鋒隊を倒してまだ間もないせいか、いや、流石にここまで会わないとおかしいが全く会敵しない。


「みんな何人倒した?」

「右翼は5人」

「左翼は4人」

「中央、あれ、何人だっけ、、、8か。7だったかな。」


大体17人倒したとして、向こうの戦力はあと23。

早めに全滅させないと今度は後ろから襲われそうだな。主に味方だが。


「えー、このままずっと歩いてるのもなー。」

「え、音出して敵呼ぶとかやめてよ?」

「ナイスアイデア。」

「あ、」


セイが折角墓穴を掘ってくれたので乗ってやるか。

でも同時に23人はちょっときついかな。


「まぁいいや。やっちまえ何とかなる。」

「「「え、ほんとにやるの?」」」

「やらないの?」

「あんたはいいかもしれないけど、私たち死ぬ。」

「じゃあ死ぬな。」

「鬼かお前は!?」


セイはほんとにノリがいいな。

それじゃあ遠慮なく。


〈雷魔法〉【雷崩落(サンダーフォール)


張り詰めた静寂が包む森を漆黒の雷光と共に轟音が切り裂く。


「あー、やっちゃった」

「バッカじゃないの!?」


バニラがブチギレているが、まぁ、敵が来たら何とかするだろ。


「5人で20人以上に勝てるとでも思ってんの?バッカなのあんたは、ヴァッカなの?」

「まぁまぁ、バニラ?きっとノアくんも考えが」

「あるわけないでしょ!戦場のど真ん中で敵に僕はここでーすなんて言うそのどこが考えなのよ!」


バニラが真っ赤になってぷりぷりやっているのをゆっくり鑑賞するのもいいが、接敵のお知らせだ。

敵数、、一名?


「ちょっと、バニラ黙ってろ。」

「えっ」


「えー、バレちゃった?僕隠密には自信ありなんだけどなぁ、」


森からふっと現れたのは細身で長身な青年。

制服のブレザーは腰に巻き、半袖に肌に張り付くようなスウェット素材の服。

長い指は黒い手袋に覆われていた。

顔の左半分は複雑なタトゥーが彫られており、左の糸目は怪しく紫に光っていた。


「こんにちは」

「あぁ、こんにちは」

「お前が大将か。」

「よくわかったじゃん。鋭いね。さすが東部の美鬼。」

「ん?ビキニ?」

「え?」

「なんて?」

「東部の、美・鬼。」

「が?」

「あ、なるほど。自分のこと何も知らない感じね。オーケーオーケー。」


男は少し長めにたれた黒髪を左耳にかけ、右手は剣のつかにおいた。


「つまりは一騎討ちと。」

「うん。大将戦ね。」

「んなこと言われてもなぁ。俺が勝手に大将戦受けたらギャーギャー文句言いそうな奴がいるんだよな。」

「なるほど。」

「まぁ、普通に一対一なら。」

「えー、賭けるものがないと燃えなくね?」

「え、それ病気。」

「え、初対面。」

「え、ごめん。」

「え、許す。」


他の4人が首を傾げる中、痛い静寂が流れる。


「じゃ、ヤろうか。」

「うん、ヤろう。」

「あ、名前は?」

「ノア」

「カイ」

「じゃ、ノア、刹那の闘争に命の薔薇を。」


え、決め台詞だっさ。

と思った次の瞬間にはカイは目の前にいて、二本の剣が両方首に迫っていた。


両方ミスリル製の上質な両刃剣。


〈抜刀術〉【花の型 七閃・向日葵】


周りに立ち上がる斬撃が双剣を弾き、カイは間合いをリセットしようと反発力に逆らわず後ろに重心を流す。


「そんな抜刀術見たことないね。」

「我流だからな。」

「え、すげぇ、マジモンの天才じゃん。」


〈土魔法〉


バックステップを踏むカイの足元が突然盛り上がり、カイの体勢が崩れる。


〈旋風脚〉【突風】


出の早い前蹴りがカイの咄嗟のガードにめり込み、距離が空いた。


〈火魔法〉【火炎散弾(ファイアバレット)

〈抜刀術〉【鳥の舞 二閃・鶯】


大量に撒き散らされた火の粉な同然の超低ダメージの【火炎散弾(ファイアバレット)】。目的はただの視界阻害で、火の雨の中を突っ切るように翠色の居合の太刀筋が尾を引く。


「ぐっ」


鈍い音を立てながら双剣で居合を受けるカイ。

一撃、二撃をそれぞれ受けて、両手の剣は弾かれた。

そこに三撃目。


「えぐぉ」


〈金剛体装〉

〈体術〉【彗星掌】


金剛体装の乗った彗星掌。この局面では満点に近い回答だ。

彗星掌は衝撃貫通カウンター型の特性を持つ攻撃で、つまりは真っ向から受けたダメージをカウンター対象として判定し、ダメージを減殺しつつ、相手にもカウンターを仕掛けることができる。優秀な技。

当然そんなこの技には致命的な弱点がある。

技後硬直の異様な長さだ。

次の技に移行するには、それこそ間合いを切るぐらいの間が必要になる。

連撃は不可能だ。


「チッ」


〈抜刀術〉【鳥の舞 五閃・燕】


俺が、最速の出の技でとどめを刺そうとした。


スチャ


のだが

刀が抜けない。

後ろに飛んだ体勢だったカイの残り足が、俺の刀のつかを抜かせまいと押していたのだ。


〈体術〉【柔技・一本背負い】


腕や袖、襟ではなく足をもち、力任せに無理やり背後に投げる。

燕を即諦め、次に相手に武器を取らせないように武器と反対方面に投げたわけで、カイの思惑は半分ほどしか達成できなかった。


投げられた衝撃をうまく流して即座に立ち上がる。


〈旋風脚〉【大竜巻(1080°回し蹴り)


咄嗟に上げた両手がミシミシ音を立てながらカイの顔面を防御した。


「やるね。なかなか詰めさせてくれない。」

「煽ってんのかよ、こちとらやぶれかぶれだっつーの」

「そうは見えないけど。」


〈木魔法〉【締殺木(ガジュマル)


「ほれみろ」


フィールドの木が一斉にこっちに向かって伸びてきて拘束しようとうねって絡みついてくる。

その数、数百。

並の剣士ならこれで罪であった。


〈抜刀術〉【花の型 ・睡蓮】


薄紫の太刀筋がゆらゆらと戦場を流れると、そこに触れた木々はボロボロと灰になったように崩れ落ちていく。


「えー、なにそれ、もはや抜刀術の域こえてるでしょ。」


顔を引き攣らせて自らの技が崩壊していく様子を眺めるカイ。


〈木魔法〉【食人植物:巨人の腕(タイラントアーム)


カイの後ろに二本の巨大な木が成長し、先端が筋骨隆々の如来のごとき腕になった。


「うわぁ、」


じゃあ俺もおんなじようなことしないとね。


〈雷魔法〉【雷神の拳骨(トールコング)


俺の背後にも黒雷が収束して巨大な拳を形成した。


「おいっ!なんだそのひどいパクリようは!?」

「あ、気に障ったなら謝るよ。」

「なんなんだお前は、、」


黒い拳骨と巨樹、爆拳と金剛体装が正面から衝突する。

ズガガガガガガガガガガ


ひどい轟音とともに、決着がついた。

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