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7.お金持ちになったけど、初日からバチバチ、、らしい

「ちょっと待ってねー。」


ガヤガヤガヤガヤ


次の日の夕方。

早めに昼食を終えた俺は宿でゴロゴロするつもりという2人と分かれて、屋台市で長蛇の列と格闘していた。


一袋500ファム。

多少高めだが、ウケ出したら止まらなくなった。

最初のうちは誰もうちには寄り付かず、1時間ほど客がつかなかったのだが、最初に揚げたポテチが萎び始めたので新しいのを揚げ始めたところで、匂いに釣られた客が夏のよるの電灯に群がる蠅のように集まってきた。

最初は1人、2人と地味に増えていったのだが、1人無駄に大騒ぎしながら王都の大通り向かって走っていった若者がいて、その後から波のように人が押し寄せてきた。

宣伝してくれたのだろう。

他の屋台の邪魔になる程の長蛇の列に、さらに回転効率を上げて次々に袋と金を交換していく。

列は夕ご飯どきになるまで収まることなく、店を畳んだ時には手が油のハネで火傷まみれになっていた。


かなり稼げたな。

スキップしながら集合場所のギルドに向かった。

今日の収支合計は456300。

利益率は高い。

さすが俺、大成功と言っていいだろう。


「なぁ、お前なんかいいことでもあった?」

「あったよ。」

「あ、こないだ言ってたお金稼ぎ?」

「うん。」

「どれぐらい稼げたの?」

「450000。」

「え?」

「え?」

「さすがだろ。んでね、明日から2人にもーー」

「「え?」」


2人にはしばらくかけて事情を説明し、翌日から3人体制での営業が始まり、その次の日には喫茶店も提携開始。

入学前のたった七日で、稼いだトータル収支合計は驚愕の四百万。

とうとう算用数字表記を脱したのだ。


そして入学式当日、宿を引き上げておじさんにはお礼を言い、昼前から始まる入学式に向けて、学校を目指して歩き出した。


俺たち3人は制服を着て荷物を持ち、学校の敷地に向かった。

寮生活になる俺たちは入学式の30分前に招集され、寮の部屋割りと荷物の移動を済ませることになっている。

王都の城壁付近に建てられた巨大な敷地に巨大な校舎。

門も立派で黒鋼製の緻密な細工がなされている。

壁はレンガのクラシックな作りで、高さは3mほど。

街中をその壁に突き当たるまで歩き、次はその壁に沿ってずっと進む。

すでに数十人の生徒たちが集まって、半開きになった門から列になって入っていく。

俺たちもそれに倣って列に並び、王国最高峰の教育機関に足を踏み入れた。


敷地の最東端にある大きな建物が寮の建物。

北側に女子寮、南側に男子寮。

男子寮と女子寮、その隣の座学教室棟の間にはそれぞれ中庭があり、花壇やらベンチやらが設置されていた。


「豪勢なもんだなぁ。」

「お、お城みたい。」

「おい、田舎もんみたいな反応すんなよ。」

「まぁ、田舎もんだし別にいいんじゃない?」

「うんうん。」


どうやらリオンは田舎もんを隠したいらしい。


「お前らァ」


恨めしそうにするリオンをよそに、俺たちはキョロキョロ魔人モードを止めず、寮につく頃にはリオンはげっそり、周りは苦笑いだ。


「じゃあ、ここでちょっとお別れだな。」

「うん、後でね!」

「じ、じゃあな、、」


セイは思ったより元気に他の女子たちと共に寮に向かった。

寮の建物はこれまた煉瓦造りで、窓の数から部屋の多さが窺える。

二、三階は特待生と呼ばれる成績上位者専用の個室になっており、四階から上は4人一部屋の一般生徒用の部屋だ。

一般生徒用の部屋は一つの階に40部屋。

長い中央の廊下を挟んで20部屋ずつ向かい合うように並んでいる。

寮生活の生徒はそれなりに多いので男女棟それぞれ十階建てで、大体同じような構造になっている。

俺は寮の玄関で割り振られた部屋番号通りに進み、六階でリオンと別れて七階の18号室に入った。

リオンと別れて多少心細いが、それはみんな同じ。

長い廊下の真ん中あたりの部屋だ。


「こんにちは〜」


俺が部屋に入るとそこにはすでに2人が荷物を下ろしていた。

部屋は二段ベッドが二つと、それぞれの両サイドに机付きの棚が一つずつ。

奥にはロッカーが四つ完備されていた。


「よぅ、俺はライラ。よろしく。」


陽気でガツガツ肉食系っぽい少年が荷物を置いて握手を求めてきた。

クリーム色の長髪を後ろでまとめていて、髪色よりもう少し暗いトーンの右眉毛は真ん中でざっくり途絶えていた。

昔の怪我なんだろうな。

大きい口をニッと開いて笑う。

身長は俺より少し低い程度。

目線の高さはそんなに変わらない。

ただ、向こうは制服の上からでも目に見えるほど頼もしい筋肉がついていた。


「僕ノア。よろしくね」


こちらも柔和な笑みで返す。

ぎゅっと強めに握られた握手から、向こうの手の硬さに驚く。

この年でタコや豆がガッチガチに固まった。一流戦士の手をしてる。


「おう。」


俺は握手を解いて荷物を二段ベッドの下に置くと上から声がかかる。


「俺、ジェイ。よろしく。」


今度は薄紫の髪をしたダウナーイケメン。

深いアメジストの様な紫の瞳でこちらを見つめ、その後オーバーサイズの制服の袖からぴょこっと手を出し、握手する。

今度は年相応の柔らかいてだ。

魔術師みたいだな。

寮の部屋割りは受講する科目も関係なく割り振られるらしい。


「よろしくね。」


俺を含めみんなの準備がすっかり終わった頃、いろんな意味で派手な少年が駆け込んできた。


「あっぶねぇぇっ。いよっすみんな、俺はオクトー。特待生になって即刻この部屋を出る男だ。よろしく!」

「俺、ジェイ。」


突然の派手少年は、金髪をオールバックにし、首には金のネックレス、指にはいくつもの指輪、耳飾りも結構な量つけた、ド派手な少年だった。

目は真紅色、不敵に笑うその姿は、どこか組手の時のリオンに似ていた。

多分本人は否定するだろうが。

まぁ、何より、ドタバタ現れたその少年に、俺とライラは一瞬動揺して反応が遅れた。


「俺はライラ。お前、派手だな。いいな、かっこいいぞ。」

「おぉ、わかるか?きらきらだろ!」


馬鹿同士が通じ始めた。あーこういうノリでいくのね。


「俺はノア、話盛り上がってるとこ悪いけど、そろそろ時間だし行こうぜ。」

「おう。よろしくな。」


オクトーは手早く荷物を置いてその派手派手な格好のまま入学式に向かった。



入学式はバカみたいに広い講堂に新入生400名が集められ、生徒バッチが先輩方の手でつけられ、代表者が挨拶をして、クラス分けが発表され、そこで終了となって、体感でもかなり短く感じた。

式典名物のお偉いさんの長話がないのは非常に好感が持てるが、日本人として、多少の寂しさを感じていた。


ホームルーム教室は科目に関係なく分けられており、俺はDクラスに割り振られた。

講堂がある座学棟の五階が一年生の教室だ。

校舎は隅々までしっかり手入れがなされていて、日本の学校にも引けを取らないほどのものだった。

まぁコンクリートは使っていない、あ、これ、商機だな。コンクリートで建設業とかもいい。


教室は大学の講義室のようになっていて、つながった長テーブルが三列、七本ずつ並んでいた。

ひと学年10クラス、ひとクラス40人。

ホームルーム教室の存在意義は科目を超えた交流と、クラス対抗戦に向けたチームワーク作りだそうだ。

結局ルームメイトも別のホームルーム教室になってしまって、再び孤独。

俺は人もまばらなホームルーム教室で窓際の席に座り、王都の空を眺めていると、隣に誰かが隣に座った。


「ノア、さっきぶりー!」


にっこり笑ったセイだった。


「はー、知り合いがクラスにいてよかった。」

「リオンはBクラスだってさ。」

「へぇー、会ったの?」

「うん、さっきね、移動中にあったんだ。私もノアと一緒のクラスでよかったー!」


俺たちが喋りながら時間を潰していると、続々と人が集まってきて、ガヤガヤと盛り上がり始めた。

各自、席の近くの人とグループを作っているみたいだ。


「ほい、席につけ。」


突如、気配もなしにある男が教壇に現れた。

爽やかな印象を受ける銀髪の青年で、魔道士のローブを身に纏い、目は琥珀色。

先生の一声でみんなが自席にわらわらと戻り、自己紹介を聞いた。

彼がDクラス担任、レイモン・セルだ。

元Aランク冒険者で、つい最近ここで働き始めたらしい。


「と、俺の自己紹介は終えたところで、あーとーは、今後の予定についてなんだけど、まず明日は能力測定日ね。受講科目に関わらず全ての能力を測ります。そんで、明後日は科目ごとのオリエンテーリング、後で科目の開催時間は張り出しとくな。そんでそんで、その次の日は委員会、部活動の新歓。その次は、新入生総決戦が二日間、で次の二日は休日だ。その次から授業だな。詳細はそれぞれ前日に伝えるつもり。ここまで何か質問ある?」


周りの生徒は何も言わない。

みんな内容は大体理解しているようだ。

俺ほとんどわかってないけど大丈夫か?


「はい、じゃぁ、今日は親睦会兼ねて即興団体戦を、やります。」


レイモンは爽やかな顔をニヤリと歪め、そんなことを言い出した。

団体戦というと、なんだろうか。

生徒たちがざわざわし出した。

入学時の技量が見たいのかな?

今後の予定もテスト系が多いみたいだし。

なんのための試験なんだか。


「まぁ、正確に言うとね、隣のC組とクラス対抗で団体戦をやるんだ。14時に森林型フィールドで開戦だから、後四時間ぐらい?まぁ仲良くやってよ。」


生徒の大半がキョトンとしている。


「模擬戦ってことですよね、だとしたら訓練用の装備でやるんですか?」


前の方に座っている誰か出て行こうとする先生に質問した。


「あ、いやいや、フィールドだから。自分の武器使っていいよ。」


フィールド。

入学式の時に渡されたパンフレットの施設紹介に書いてあった。

模擬専用の地形生成システムで、フィールドリングをつけて中に入ることで、フィールド内で死んでも外の敗者ゾーンに転送されるだけで済むというシステムで、いわば仮想空間訓練のようなものらしい。

もちろん痛みはしっかりあるし、現実で起こる諸々のことはある。

フィールドのシチュエーションはいくつもあり、今回は森林というありがちなフィールドに決定したらしい。


「俺は引っこんでるからあとはまぁなんとかやってよ〜」


先生は嵐のように去っていった。

普通生徒に自己紹介させたりここはこういう学校ですよ〜とかいうだろ。

大学教授のつもりかっ!

こいつら小学四年生だぞ。。

案の定先生が去っていったあと、教室は再び無秩序なガヤガヤに包まれた。

小学生ってこんなもんだよねー。

なんか静かだなと思ってセイを見ると、寝てた。

救いがないわこのクラス。


「おーい、こっち見て。」


と思っていたら、1人の男子生徒を先頭に計4人の男子グループが教壇に立っていた。


「俺はヨークトーン公爵家嫡子、オーレン・ヨークトーン。このクラス対抗戦、勝つために俺の指示に従ってほしい。」


公爵家のお坊っちゃまか。

燃えるような赤い色をした柔らかそうな髪は目の上で揃えており、瞳は緋色。身長は俺と同じか、もしかしたら俺より高いか。

どちらにせよかなりの高身長。

顔はかなり整っている方で、女子生徒の中にはうっとり眺める者もいた。

まぁ、確かにリオンと並ぶくらいのイケメンだな。

リオンが不器用ツンデレ系イケメンだとしたら、こっちはイケイケアイドル系イケメンだ。

あれ、俺、もしかして、そっちの気ある?いや、そんなことない。そんなことない。


彼は普通の生徒が言ったら嫌われそうな言葉を放つが、公爵家というバックがあるが故か、社交界で人気者かなんかだったのか、誰1人文句を言う奴はいない。

俺としても誰かが勝手に仕切ってくれるなら万々歳なので害がない限りは好きにさせておこう。


「まず提案したいのは、五人一組で8つの班を作ってそれを基礎単位に動く戦略。思うに、この四時間で全体で連携を取るのは難しい。だから8つのグループに分けて、そのグループの内での連携とグループのリーダー同士の連携の二段階に分けて全体の連携を取りたい。」


全員がおおむね反対しないことを確認して、オーレンは続けた。


「ヨークトーン家は知っての通り、将軍の家系だ。全体指揮は俺に任せてほしいんだが、異議のあるやつはいるか?」


もちろん、誰も何も言わない。

このクラスは比較的穏健派なのかな?普通なら「何仕切ってんだよ、あ゛ぁ゛?」みたいな輩が出るところだと思うんだが、うんうんと頷くか、ぼーっとしてるか、寝てるかに分かれていて、諍いの気配など一切ない。


「それじゃあこれから10分、5人一組を組んでくれ。」


その言葉を合図に、再び教室がガヤガヤに包まれた。

セイは相変わらず呑気に寝ている。

机に突っ伏して、腕を枕に眠るセイ。ムニッと腕に押し潰されるほっぺ、微笑んだような寝顔、あまりの可愛さに頭を撫でてやると、さらに嬉しそうな顔をする。

チーム分けはあぶれた人たちとでいいや。なんてこっちまで呑気になりながら座ったままでいると、目の前に赤毛のお坊っちゃまが現れた。

お坊っちゃまは俺の前の席に反対向きに座ってこっちを見る。


「なぁ、君。名前はなんて言うんだい?」

「ノア。よろしくね。オーレン君。」


俺があえて座ったまま挨拶を返して反応を見た。

俺をクラスメイトとして扱い、対等な立ち位置で挨拶したことを当然と捉えるか、俺を自分以下の身分と捉え、立たずに挨拶を返したことに腹を立てるか。

オーレンは一瞬プチッとした顔を見せたがすぐに取り繕った。

キレたな。一応取り繕うだけの忍耐力はあるみたいだが、こいつはダメだ。器が小さい。

全員平等、身分関係なしを掲げるこの学校では全員が平等なはず、そこにこいつは身分の上下関係を持ち込もうとした。


「君、強いでしょ。」

「んー、そんなことないよ。」


俺はあえて興味なさそうに、セイの頭を撫でながら返答する。

目も合わせない態度に、オーレンの俺に対するヘイト値はぐんぐん上がっていく。


「、、目ぐらい合わせたらどうなんだ?」

「ごめん、人見知りなんだ。目を合わせるとうまく喋れなくて。君みたいに自信家じゃないんだ。」


おそらくオーレンは自分の班に俺を入れたいんだろう。

自分の班に推薦枠の俺を取り込み、団体戦で活躍して特待生への道を進もうとしている。

彼の親の力を持ってすれば生徒には明かされていない推薦枠の生徒など容易にわかる。


「そうか、まぁ、いいや、俺の班、一枠だけ空きがあるんだけど、入りたい?俺の班は俺が認めてる実力者だけを集めてるから必ず活躍できる。君が入りたいって言うなら俺たちは歓迎するよ。」


オーレンはニヤリと笑う。

確かに普通の生徒からしたらオーレンとは金も地位も持っている男だ。

そしてその権力と金のために、今から関係を築こうとしている猛者たちがその班員にあたる。

そんな班に入れば大した仕事もなしに貢献値を稼げる。

みんなが求める地位だ。

しかし俺は普通の生徒ではない。

そのパーティーに入るメリットもあまり感じないし、ここで目立つメリットも感じない。

よって、恩着せがましいこの男の手下になることは論外である。


「いや、いいや。僕はあぶれた人と組むよ。」

「え?、、お前、俺の誘いを断るのか?」


おいおい、ボロが出てるぞお坊っちゃま。なんて言おうとしたけど流石にちょっと自制した。

いくら強がった態度で出ても、自分の班の枠をちらつかせれば頭を下げるだろう、屈服するだろうとでも思っていたのだろう。

だとしたら頭が寂しすぎる。

あ、ハゲって言ってるわけじゃないよ?


「うん。ごめんね」

「なぜ?」


オーレンは今までの優しげに取り繕った声を忘れ、ブチギレ寸前の声で、低めに脅すように次を問う。


「僕はこの子となるべく一緒にいたいから。それに、僕じゃ力不足だよ。」

「そうか、大切な人か?」

「うん。」


オーレンは怒りに歪んだ顔を、ニヤリと悪い顔にしてすぐさま去っていった。


「入りたくなったらいつでも声をかけてくれよ?」

「はは、そうだね」


オーレンが負け惜しみをして帰っていくのを見送ってしばらくすると、3人の女子生徒が俺の目の前に現れた。


「ノアくん、、ですよね。」

「うん」

「すみません、さっきの話、聞いちゃって。」

「ヨークトーン君に誘われてるってことは相当な実力者ですよね。」

「それで、もしよかったらちょうど3人なので、組んでいただけませんか?」


3人が交代に話していく。

彼女たちは先ほどは七、八人の女子のグループの中にいたので、あぶれたのだろう。


「名前は?」

「わたしフィーエです」

「バニラ」

「ユエルです」


猫型の獣人のバニラ。狐型獣人のフィーエ。鬼人族のユエル。

なるほどね。あぶれるのも納得がいくわ。

現在、王国では亜人差別が横行している。

それゆえだろう。


「俺、さっきオーレンの機嫌を損ねたから俺の班員ごと酷い扱いを受けるかもよ?」

「じ、じゃあ、それでもいいって言ったら組んでくれますか?」

「もちろん」


3人は顔を見合わせて笑顔になる。


「さてと。じゃあ仲間内で能力をすり合わせるか。」

「そうですね。」

「おい、セイ、そろそろ起きろ。」


俺がこれだけ会話を続けても起きないセイをくすぐると、んひゃっと奇声を上げながら飛び起きた。


「あ、こんにちは」


「こんにちは」


一通り互いに自己紹介を済ませた。


バニラは黒髪ボブに黒の三角耳、ヘーゼル色の瞳で、比較的小柄な少女だ。

言動に棘があるのはネコ科のツンデレ性格を再現しているのだろうか。

紫がかった胸まで伸びる黒髪を持つフィーエはどうやら幻獣種と呼ばれる陰陽狐の獣人らしい。

出会った頃のセイのように、どこか人に対する怯えや警戒心が残っており、心が痛む。

フィーエはかなりの長身で発育も良く、セイが人形のような可憐な美しさを持つとするならフィーエは妖艶な美しさを持った女性だ。

ユエルは長い2本のツノが額を飾っており、真っ白な髪を分けて突き抜けている。

目は赤く、つり目気味なので初対面からしたらちょっと怖い。


バニラとフィーエは同じ村の出身で、亜人の地位向上のために来たらしい。

というが、おそらく厄介払いか何かだろう。

つまり2人に関わると何か不都合があるかもしれないと言うことだが、乗りかかった船だしなんとかなると思って進むしかない。

ユエルも同じくあぶれていて、1人でいたところをフィーエに声をかけてもらって3人組ができたと言うことだ。


バニラは拳闘士で、バリバリの前衛型。

フィーエは槍と妖術を混ぜて使うロングレンジ型の前衛。

セイは知っての通り中衛として、俺は再び後衛に回る。

ユエルはアサシンビルドなのでサポート型の中衛として機能してもらう。


「班が決まったら班ごとにまとまって席についてくれ。大まかな作戦を決める。」


再びオーレンが号令をかけ、全員がそれに従った。

教壇に立つオーレンの作戦は単純。

見通しの悪い森の中で()()()()()()チームが敵を本陣に誘い込み、まとめて迎え撃つ。


「それで、この誘い込み役をやってくれる班、誰か立候補はいるか?もちろんチーム内の()()()()()くないとつとまらないものではあるが。」


この形を正確に予想していたわけではなかったが、オーレンが俺の前を立ち去った時点でこういうことになることはわかっていた。

馬鹿だなぁ、勝ちたいならもっといい作戦にしろよ。

俺を陥れるためにこれだけの時間割いちゃったけど大丈夫なのかな?

オーレンは教室を見渡して誰も手を上げない状況にニヤリとわかりやすく感じの悪い笑みをした。


「いないみたいだな。それじゃあ、俺から一班推薦したい班がある。」


オーレンはこちらをじっと見つめる。


「ノアの班だ。班のうち3名が亜人で()()()()()()()身体能力()()は高い。それにノアは特別推薦枠だ。能力は申し分ないだろう。受けてくれるよな。」


オーレンのしてやったりという顔がこちらに向けられる。

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