1. 幸せな貧乏ってもんもある、、らしい
なんとか書きました、最低でも週一ペースで頑張ります。
もうちょっとでそれっぽい展開になるはずなんですよね。
精進精進
気付けば、優しげな女性に抱かれていた。
(母さん?)
その雰囲気はもうあえるはずのない母に似ていた。
言葉が出てこない。
視界もぼやけていてよく見えない。
ただ感じるのは暖かく心地い感覚と、そこからくる安らぎ。
(こんなにゆっくりするのは久しぶりだな。)
そういえば、死んだんだったか。
どこかの文献で自殺は地獄行きと決まっていると書いてあったのだが、ここは天国らしい。
「ーーーーー、ーーーーー」
誰かが何か言っている。
でも聞き取れない。
その女性は俺を抱いたまま立ち上がり、少し歩くと、、、て、え?
俺、なんでこんな女の人に抱かれるほど小さいの?彼女は巨人族なの?
、、、
、、、
あ、俺、転生したのか。
いくつかのヒントから、いかにも高校生男子の夢らしいシチュエーションに辿り着いた。
全てが辛かった人生、支えを失った俺はぐちゃぐちゃな気持ちを整理しないまま命を捨てた。
今思えば何もかもが理不尽だった。
よくもまぁあんな生活を17年も、と思う。
状況を分析するに、俺はどっかの一般家庭に生まれたらしい。
転生したんならチート能力か貴族家の生まれだろ。なんて甘い考えは通じるわけなかった。
定番の中世ぐらいの文明で、良くて平民、もしかしたら開拓奴隷みたいなものかもしれない。
意識が覚醒してから10日経っても、まだ父親の存在は確認できていない。
(なんか、転生しても状況が変わらないって、嫌な話だな。)
貧乏に全てを縛られた少年は再び貧乏と仲良く暮らす羽目になりそうだ。
この赤ん坊の体で最も不快なことといえば排泄に関することだろう。
おむつとはこんなに不快なものなのかと思い知らされる。
早く立ちあがろうと必死にもがくが、今できるのは良くてハイハイ。
それでも無駄にはならないはずと思い、小さな檻付きベッドの中を少しでも長く移動できるように訓練したりもしてみた。
さて、そうして一ヶ月が経ってしまったある日、惰性で続けていたハイハイの途中で、目の前にポーンとウィンドウが出てきたではないか。
突然出てきたウィンドウは水色をしており、ありがちな情報がいろいろ書いてあった。
やはり出たな、異世界転生の醍醐味「ステータスウィンドウ」
俺は興奮気味にウィンドウに目を通す
種族名:人間
性別 :♂
年齢 :0
名前 :ノア=メルクリウス(真名偽装中)
レベル:1
スキル:〈金こそ力〉〈交感〉〈洗脳〉〈心読〉
ステータス
STR :100
VIT :100
INT :10000
MEN :1
DEX :1
AGT :1
LUK :0
金こそ力て、、ネタかよ
俺はピコピコ光るスキルの文字を右から順に押していった。
〈心読〉
通算10秒以上視線を合わせた者の心を読む。
〈洗脳〉
自分より合計ステータス値が低い者の額に触れることで、1つだけ絶対の命令を下すことができる。
できる命令の重さはステータス値の差により変わる。
〈交感〉
しゃべっている時間が長くなればなるほど相手が自分にもつ印象が向上する。
〈金こそ力〉
金やそれに準ずるもの*を入手することで『ポイント』を入手する。
『ポイント』を支払うことで『成金商店街』にて様々なものを購入することができる。
*ポイントに交換できるものはレベルの上昇に伴って増える
交換レート
1ファム/10ポイント
生命格*2 /100ポイント
*2生命格とは生命力のことであり、生存力が高い生き物ほど多くの生命格を持っている。
〈金こそ力〉ってのはまだよくわからないけど、社会生活をしていく上での問題はおおよそスキルで解決できそうな感じはする。
まぁ、お金がないんじゃあ話にならないが。
ところで、父親の件だが、それらしき男性が最近家に出入りしている。
出稼ぎにでもいっていたのだろうか。
ある日突然男が家に入ってくると、ここの母親とその男は長い抱擁を交わし、その次に俺をその男に引き渡すと、男は快活に笑い出した。
一ヶ月もすれば言葉も聞き取れるようになる。
ここでの俺の母はサティ、父はシュークというらしい。
そして俺の名前はステータス表示通りノア。真名偽装というのは気になるが、まぁ、支障はなかろう。
ないと信じたい。
サティは黒髪の女性でかなりの美人だ。
整った目鼻に奴隷には似つかわしくない白い肌。
黒い瞳には活力があった。
シュークは狩人にしては線の細い男で、銀色の美しい髪を持っていた。
瞳は緑色で、もしやと耳を確認してみたが、エルフのような長耳ではなかった。
俺の容姿はまだわからない。というか自分の赤ちゃん顔などみたくない。というか鏡がない。
それからさらに数ヶ月、俺の単調なバブちゃん生活は少しずつ変貌を始めていた。
まずは、現状の分析。
時々、サティが俺をおぶって買い物に行くことがあるのだが、その時には決まって喜んでる風を装い、なるべく外に出る時間を増やすように誘導して、情報収集に努めた。
予想通り新しい我が家は開拓奴隷で父は狩人、母は編み物をして生計を立てている。
ここは辺境の集落っぽいところらしく、まだ開拓奴隷ばかりでそれ以外の人間といえば、個々の管理を任されている騎士爵の一家ぐらいしか聞かない。
最近は口も回るようになってきて、積極的に喋るようにしている。
「ノアちゃんパンですよー」
この村の主食はパンだ。
サティーがニコニコでちぎった柔らかいパンを俺の口に運ぶ
「ぱん!」
そう言ってからパンを口に入れる。
やはり廃棄パンとは格が違う。
うまい。
しんなりして弾力のない廃棄パンとは違い、
焼きたてふわふわ、バターの香りはしないが、とても美味しい。
「おいしい!」
自然を装って、ちょっと言葉の早い子ぐらいのペースにしておこう。
「美味しい?すごい!美味しいのね!美味しいのね!」
サティはニコニコしながら俺の頭を撫で、興奮気味に何度も繰り返す。
やれやれ、親になったこともない身からすれば、大袈裟だな。
貧乏は貧乏、ささやかな食事しか取れなかったが、それだけで十分に思える程度の生活しかできなかった。
だからこの生活は割と幸せに感じていた。
「幸せな貧乏」ってもんもあるんだな。
夜が訪れ、両親が寝た頃、俺は自然と目が覚める。
両親の就寝時間を計算して、昼寝を多くとってさらに夕飯の後すぐに寝ることで大体この時間に起きれるようになったのだ。
目的は『トラップ』の回収。
俺は農奴用にしては広すぎるこの家中に虫を寄せ付けるトラップを仕掛けている。
おやつやご飯をおんぶされている間に少し拝借して虫を呼ぶ餌に。
角のある深い器の底にそれをおき、安いランプの油を塗りたくる。
底に降り立った虫は羽がなければ確実に足を取られて抜け出せなくなる。
そして夜、俺はその集まった虫をすり棒で潰して殺す。
こんなど田舎。虫なんてわんさかいるから毎日気持ち悪くなってもまだ続けなくてはならない。
あ、ちなみにすり棒はもちろん捨ててあったものだ。
週に一回行われる掃除では毎回注意深く痕跡を消して、一旦ベッドの中に隠す。
さて、なぜこんなことに勤しんでいるのか。
「生命格」のためだ。
虫は大体1から20の生命格を持っている。
バッタのような見た目の虫が20の生命格を持つ一番「おいしい」虫。
これを毎日続けて少しずつ生命核を溜めていくつもりだ。
虫をすりつぶすというのはなんともきつい作業だが、暗闇と向上心が相まってなんとか我慢できている。
器を水瓶の水でこっそり洗い、再びセッティングをしてそろりと檻を登ってベッドに戻った。
布団をかぶって俺が行うことはただ一つ。
(ウィンドウ・オープン)
心の中で念じると、例の水色のウィンドウが浮かび上がる。
注目すべきは〈金こそ力〉の詳細
〈金こそ力〉
金やそれに準ずるもの*を入手することで『ポイント』を入手する。
『ポイント』を支払うことで『成金商店街』にて様々なものを購入することができる。
*ポイントに交換できるものはレベルの上昇に伴って増える
交換レート
1ファム/10ポイント
生命格*2 /100ポイント
*2生命格とは生命力のことであり、生存力が高い生き物ほど多くの生命格を持っている。
所持ポイント:20189
これがこの数ヶ月の成果だ。
正確にいえば二ヶ月ほど。
最初は安定した収穫はえられなかったが、慣れもあって徐々に数を増やしてきた
これからは月に安定して15000ほどの供給は容易。もしかしたらさらに増やせるかもしれない。
そして、『成金商店』。
まだランクが低すぎて帰るものがすごく少ないし、よくわからないものばかりで、ポイントは全く使っていない。
ステータスポイント 10ポイント
ランダムスキルブック 1000ポイント
HP回復薬 1ポイント
SP回復薬 1ポイント
EXP増幅薬 100ポイント
ほぼ確実に失敗しないであろう投資先はこのへんだ。
ステータスポイントといえば、俺のステータスは随分偏りが強いように思える。
というかそうに違いない。
もし初期値が1だとしたらかなり有能な部類に入るし、初期値が100だったらINT以外は全く役に立たない。
前者であることを祈るばかりだが、だとしたら10:1の交換率でステータスポイントが手に入ってしまったらかなりまずいことになるのではないだろうか。
つまりだ。
もし初期値1の世界線で現状のように2000ほどのステータスポイントを手に入れたとすると、相当強いってことになってしまう。
まぁ、強すぎて困るという事態は実際には起こることはないと思うのだが、アニメや小説の世界ではよくあることだ。
まだ世間のことを何も知らない俺はとりあえず毎日虫をすり潰し続ける毎日を過ごすしかなかった。
4年が経った。
俺は4才になって一人で外にも出られるようにもなり、世界がグッと広がった。
うちは村の中でも森の近くにあり、森から出てきたいろいろな生物と交流する機会があった。
森の中に入ってはいけないと厳命されているので、怒られない範囲で走り回り、ポイントを稼いだ。
日本人の感覚だと、4歳の子供を放っておくなどあり得ないことのように見えるがこの世界では割と当たり前。
近所の子供たちも親の付き添いなしで村中を駆け回っている。
俺は同年代の子供たちの中でも浮いた存在で、いつも1人でいることを両親は少し心配しているようだ。
そりゃもう当然、4歳児のレベルに合わせた遊びなんてやってられるわけなかった。
鬼ごっこやチャンバラに誘われたことがあったのだが、やはり初期値1説は濃厚なようで、同級生の力は俺には全く通用せず、たいした勉強にもならいので軽くあしらって、それから二度と参加していない。
俺が課外活動でおこなっているのは罠の設置だ。
中型程度の生物を捕まえるために廃材置き場から木材と紐を調達してきてありがちな捕縛型の罠をいくつか用意した。
父の活動圏は主に森の中。見つからずに実行するには森から少し離れた、森と開拓済みの地帯の境目付近。
人的痕跡の少ない場所を選んでいくつも仕掛けている。
罠の成功率は今の所40%ほど。
大体は大型生物によって破壊され、使い物にならなくなって見つかっている。
それでも40%の成功から得られるものの方が遥かに大きい。
狸や狐のようなただの野生動物でも一体で生命核50はくだらない。
格段の進歩である。
結果4歳現在のステータスをおさらいしよう。
種族名:人間
性別 :♂
年齢 :4
名前 :ノア=メルクリウス(真名偽装中)
レベル:19
スキル:〈金こそ力〉lv3
〈交感〉lv1
〈洗脳〉lv1
〈心読〉lv2
ステータス
STR :133
VIT :111
INT :12490
MEN :19
DEX :107
AGT :152
LUK :0
〈金こそ力〉
金やそれに準ずるもの*を入手することで『ポイント』を入手する。
『ポイント』を支払うことで『成金商店街』にて様々なものを購入することができる。
*ポイントに交換できるものはレベルの上昇に伴って増える
交換レート
1ファム/10ポイント
生命格*2 /100ポイント
*2生命格とは生命力のことであり、生存力が高い生き物ほど多くの生命格を持っている。
所有ポイント:439945
ステータスポイント 10ポイント
ランダムスキルブック 1000ポイント
HP回復薬 1ポイント
SP回復薬 1ポイント
EXP増幅薬 100ポイント
鉄インゴット 100ポイント
青銅インゴット 100ポイント
いまだに買い物はしていない。
必要性を感じないからだ。
仮に強くなったとしてもあの親バカどもがモンスター相手に戦うことを許すとは思えない。
モンスターの持つ生命核にも興味はあるのだが、こっそり処理するには少しハードルが高いと感じていた。
どうしたものかと考えていると、完璧なタイミングで父から提案がきた。
「ノア、村長が今度村の子供向けに剣術教室を開くらしいんだけど、行ってみないか?」
俺がサティとおやつを食べていた時、獲物の血抜きを終えたシュークがつぶやいた。
サティはこちらの表情を伺う。特にサティから口出しするつもりは無いようだ。
「やる。」
俺は甘い汁が出る葉っぱを吸いながらその提案に乗った。
「そうか。」
その後はいつから始まるだとか、何を持ってくとか、いじめられたらどうしようとか、親バカが炸裂した会話が延々と続いた。
今日も平和だな。