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プロローグ

えー。テステス

小説書くのは初めてなんですけど、まぁ、なんとかやってみるんで生暖かいめでじっとり眺めて行ってください。


小学校から中学校までは、朝食を抜きで給食をしこたま食べて、夜は廃棄パンで凌ぎ、風呂は3日に一回、筆記用具は塾の勧誘が配っているもの、靴や服はゴミ捨て場からもらい、なんとか目の前の1日を生きてきた。

「お金さえあれば。」

俺が5歳の時に父は愛人を連れて蒸発、残してくれたのはボロいアパートと4000万円の借金。

母は毎日文字通り朝から晩まで働き、日に日に衰弱していった。

お金、お金がないからこんなに不幸なんだ。

臭い、きもいと毎日いじめられても、ご飯を食べるためには学校に行くしかない。

かといってそう何度も風呂に入っては生活費が嵩む。

このことを母に知られたら母が悲しむ。

小学生にはあり得ない忍耐力と自制心が俺から子供らしさを奪っていった。


「ごめんね、智愛来(ちあき)。」


母はいつも俺に謝っていた。

なぜかはわからないが、やはりいじめのことはバレていたのかもしれない。



いつかお金持ちになる、



そう思い出したのは小6の頃で、ビジネスについて近くの古本屋で立ち読みしながら勉強を始めた。

最初はわからない言葉ばかりで図書館まで辞書を目当てに走ったり、いつしかそれは「勉強」という苦行から趣味へ変わっていった。

幾度となく店員に追い出されたが、めげずに毎日通った。


辛くても僕がきっとお母さんを幸せにする。


趣味から発展して、小さい頭で考えた人生の最初で最後の大目標だった。



それから3年が経ち、進路の決定が迫っていた頃から、

「今晩は帰ってきちゃだめ、公園で勉強しててね。」

ちょくちょくそう言われるようになった。

俺は日に日に迫る入試の日程に半年も前から焦っていた。

どんなにいじめられても、俺には勉強があると思って生きてきた。

ボロの制服で毎日登校し、誰にも話しかけられないでのけものにされ続け、修学旅行は費用返金を狙って全て病欠。

それでも勉強だけは時間を捻出して続けていた。

なるべくお金のかからない公立高校で、ビジネスについて学べる高校。

大学の進学なんて考えていなかった。

公立は一発勝負、私立高校には行けない。

これで失敗するわけにはいかない。

そんな思いが、俺の視野を狭め、母の異変には全く気付けていなかった。


母は美人だった。

それはやつれても変わらず、もっとまともな服を着せてあげられたら、皆が振り返る美人になるだろう。

その評価は子供の目から見た母親の美化現象を抜きにした物だった、、ということは、後から痛いほどわかった。


帰ってきてはいけないと言われた日。

その日俺は特別酷くいじめられてなんとか家に辿り着いた。

言いつけをすっかり忘れて7時ごろに家に帰ると、部屋の奥で母が裸で倒れていた。

昔は綺麗だった黒髪は気付けば白髪混じりになって床に投げ出され、痩せて一回り小さくなった乳房も横に垂れている。

開かれた足の間には、白い液体を吐き出す穴。



心臓が止まる思いでドアを閉め、走っていつも勉強している公園まで逃げた。



その日からしばらく、母の顔が見れなかった。

年頃の俺はそれだけで全てを理解してしまった。

あの光景は、トラウマとなって夢に幾度も現れた。


会話も減った。

いつも通りを装うなど到底できなかった俺の様子から、母も気づかれたと悟ったのだろう。


高校に入ると、俺は学校に通いながら週6でバイトを入れて、身を粉にして働いた。

そのせいで、母との時間はさらに減り、週に一度の休みに顔を合わせる程度になった。


そんな生活が一年続き、高校2年生になった夏のある日、

母は自殺した。

俺の目の前で、屋上から飛び降りた。



僕がお母さんを幸せにする。


そんな幼子の幼稚で単純な夢は、まだ俺を支えていた。


それがポッキリ折れてから、俺も母の跡を追うまで時間はかからなかった。

いじめ、疲労、不眠、ストレス、子供が経験していいレベルではない過酷な状況を支えたただ一つの細い柱。

俺の人生の糸も共にぷっつり切れた。



「金が全てだ。」



「金が全て。」

そんな強い欲望が俺の第二の人生への扉をこじ開けた。






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