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Body Change  作者: 秋元智也
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第二話

俺は高校2年、橋本悠人。

今日から斉藤の姓に変わり、斉藤悠人になる。

母の再婚相手にも高校1年になる子供がいて今日から一緒に住む事

になっている。


「母さん、荷物ここでいい?」

「適当に棚に入れておいて。それと紹介がまだだったわね、この子

 が今日からあなたの妹になる優香ちゃんよ。仲良くするのよ?」


そう言われて母の隣に立つ優香を見ると腰までありそうなストレー

トの黒髪が目に入った。

空手をやっていると聞いていたのでもっとごっつい想像をしていたが

可愛かった。


「よろしくな!悠人だ、好きに呼んでくれていいからな。」

「よろしく、お兄ちゃん…」


照れながら話す仕草が可愛い。愛らしい小動物のように可愛い!

いつしか、食事や暇な時に話かけに行くようになった。

最初は戸惑っていたが、すぐに懐いてくれた。

高校は引っ越したおかげですぐ近くになった。電車で通っていたのが

近所になったので通いやすくなった。

優香は隣の女子校に通っている。


「ゆーと♪お前妹ができたんだって?写真ねーのかよ?」

「あるぞ?驚くなよ?」


そう言って一緒に映った写真を見せてやる。

こいつは昔ながらに幼馴染で谷崎達也。いつも近すぎる距離に少し

戸惑うが流石に慣れてきた。

たまに抱きついてきたり尻を触られたりと異常なほどスキンシップ

が多いのが残念ではあるが、顔だけはイケメンであるだけに、実に、

残念すぎる。


「可愛いじゃん。俺と結婚したらゆーとはお兄様ってわけか〜」

「誰がお前にやるって言ったんだよ!」

「いいじゃん!お兄様〜」


クラスメイトが見ている前でも平気でくっついてくる。

周りからは笑いが漏れる。

達也のこういうところは和みはするが、絶対に妹には近づかせない!

と心に誓った。


「おはよう。今日も仲がいいわね。」

「おはよ!山尾さん!」


いつも誰にでも優しく声をかけてくれる山尾麻子。

彼女はすっごく美人で俺の憧れの人だった。

今日こそはと手紙を下駄箱に忍ばせておいた。

帰りに告白すると決意しホームルームを待った。


「あのさ、山尾さん!俺と付き合って下さい!」

「ごめんなさい。私貴方の事そんな風に思った事ないの。多分これか

 らもないと思うわ。でも、友達としてなら今まで通りでいましょ!」


呆気なく玉砕した。

可能性すらない。

確かに山尾麻子にアタックした男性は数あれど誰も付き合って貰えた人

などいなかった。

もしかしたらもう、年上に彼氏がいるのかもとも噂が流れていたが、そ

んな人は見たこともなかった。


「お兄様〜元気出せって!」


そう言って後ろから抱きついて来る達也に、今日はちょっぴり癒された

気がした。

人の温もりに癒されたいだけかもしれないが、今だけは涙を見られたく

なくて達也に抱きついて泣いていた。


「元気出せって、今は泣きたいだけ泣けばいいよ。俺は未来の兄貴なん

 だからさ。」


どこまで冗談か分からないが、ただ抱きしめられるのにはホッとした。

日も暮れて泣き腫らしたまま帰る訳にもいかず公園で顔を洗った。


「悪かったな…」

「いいって!少しは元気出たか?」

「あぁ…」

「なら、よかった。明日も学校でな!」


それだけ言って何も聞かない達也に少し安堵していた。


次の日は朝練もある為、急いで学校に向かっていた。

信号が点滅し赤になりかけるも走りきってギリギリセーフ。

前を歩く妹の優香の姿が見えると手を振った。

振り向いた優香の顔が一瞬曇った。

何事かと思うと近くから悲鳴が聞こえて来て、振り向いた時にはガード

レールを飛び越えて目の前まで迫ってきたトラックが見えた。


大きな音を立ててぶつかる音と、悲鳴が混じる。

全身に痛みと衝撃が走り、動かさこともできない。

ぶつかる一瞬の間に優香が目の前に見えた気がした。

俺はどうなったのだろう?優香の目の前で死んだのか?


高校生活もこれからなのに?優香とももっと仲良くなりたいのに。

こんなところで終わりたくない!

まだやり残した事はいっぱいあるのに…達也にもまだお礼すら言えて

ない。

剣道部も今年こそは全国大会優勝したい!その為にずっと練習してき

たのに…。

こんなところでは、終われない…。


遠くから救急車のサイレンが聞こえて来る。

死にたくない…。


いつしか意識が消えていった。

次に目が覚めた時には真っ白な部屋の中にいた。

消毒液の匂いがしてここが病院である事を知る。


「助かったのか…。」


手足は重くて動かない。側には点滴が一定のリズムを刻んで落ちていく。

隣には誰か眠っている。

カーテンが閉められているが誰かいるようだった。

医師の先生が入って来ると、診察し何かを書いていた。


「あの…俺は…」

「気がついたようだね?君は事故にあったんだよ?分かるかい?」

「はい…」

「たいした事がなくてよかったよ。優香ちゃんだったね、お兄さんも

 無事だから安心しなさい。」

「はい…?お兄さん?」


カーテンを開くと隣で眠っている俺の姿があった。

先生曰く、お兄さんも助かったと…なら、今の俺はなんなんだ?

手足を見ると何故か少し小さい気がする。

肩から長い髪がするりと流れ落ちてきた。


「…!?」


周りを見回すと鏡を見つけ、点滴をしっかり持ちながらベッドから抜け

出した。

見たくない、信じたくない事だったが、そこに映っていたのは紛れもな

く、妹の優香の姿だった。


「なっ!…なんでだぁぁぁぁーーー」




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