幸せはあまりにも優しすぎる。不幸がやってくるとすぐにその席を譲ってしまうのだから。
幸せは本当に優しい。みんなを良い気持ちにさせてくれる。その心地にいつまでも浸っていたい。幸せにはそんな温かみがある。しかしその優しさがかえって思わぬ結果を招くこともある。
自分の人生という狭い列車に不幸が入ってくる。しかしこの列車に座席は一つしかない! 幸せはその席に座っていたが、苦しそうな不幸を見るやいなや、すぐにその席を譲ってしまう。そして自分が列車の中にいると相手に気を使わせてしまうことも考えて、途中下車していく。目的地でもないのに……。不幸はニヤリと笑ってそこを占拠して暴れ出す!
……幸せよ! ……どうかお元気で! ……お前の優しさは決して忘れない!
不幸が一度占拠してしまうと、幸せが次に舞い込んできても、不幸は席を譲るどころか追い出してしまう。不幸の独占列車である。それを追い出すには、とにかく右往左往、波瀾万丈に人生を突き進み、不幸を酔わせて自発的に出て行くようにするしかない。
追い出せば、次はゆっくり平常運転。そうすると新しい幸せが列車に入ってきて座席につく。ゆったり良い旅夢気分! しかし時間が経つとそこにまたヤツが……! そして幸せはまた笑顔で席を譲ってしまう。
幸せよ! ……どうしてお前というやつは!
しかし誰に対しても笑顔で席を譲ってしまう幸せだからこそ、あなたのところにもやってきたのだ。あなたのところにやってきた幸せは、きっとどこかの誰かの列車で席を譲った幸せだったのかもしれないのだから。