第22話:決斗・日灯の神
足元に落ちたお菓子の箱を虹が拾い上げる。どこにも異常な点は見られず、普通に市販されている物との区別はつかなかった。索が落とした訳ではないという事は、完全に自然発生したという事である。他の人が居ないという事を考えると、その犯人は確定的である。しかし私が犯人だと思っているその存在は、もう既に虹の力によって消されている。
「虹、それも消した方がいいかも。多分、あの仏像擬きが出したんだと思うんだ」
「食べちゃダメ?」
「ダメに決まってるじゃん!? 普通に買えるでしょコンビニとかでも!」
「……ちょっとアンタ達」
「え?」
結の緊張した声色を聞き社の方を見てみると、先程消された筈の仏像擬きが同じ場所で再び浮遊していた。相変わらずちぐはぐな顔のパーツをしており無機質な質感をしているにも関わらず、その両目は微笑む様に細くなっていた。
「う、そ……」
「ヤバイわよアイツ……ちょっと目を離した隙に復活してた……」
「そんな、虹の力が通用しない……?」
「お~神様仏様って感じだね~」
「……索、やりなさい。直接やるしかない」
「う、うんっ……!」
索は相手が仏像の姿をしているという事もあってか、少し申し訳なさそうな顔をしながらロープを振るった。彼女の手から放たれたロープは生物の様に不規則な動きをしながら仏像擬きの腕の一つを砕き飛ばした。こうした攻撃を食らっても尚、それは悲鳴を上げなかった。不気味な笑顔を向けたまま、ただそこに漂っていた。そして地面に落下したその腕は、塵の様な空中に霧散していった。
「どうなってんのよ……! 何なのよこいつ……!」
「おかしい……高次元存在なのは間違いない……。何で攻撃してこないの……?」
「ムム~これはあたしの後継者ですなァ? ふむむ~いい笑顔だァ……」
「どど、どうすればいいの縊木さんっ……!?」
「続けるのよ! 今までそれで倒せない奴なんかいなかったでしょ!?」
結の指示を受けた索が再度ロープを振るい出す。それによって残っている他の腕も全て破壊されていき、仏像擬きの六本の両腕は全て失われた。しかしそれでもそれは笑っていた。これだけの危害を受けているにも関わらず、笑顔を止めなかったのだ。まるでどんな時でも自分のペースを崩さない虹の様に。
「全部よ! 全部壊しなさい! そんな奴ッ!」
「う、うん! ごめんなさいっ……!」
ロープは仏像擬きの体に蛇の様に巻き付き、索が受け継いだ異常力学の能力によって締め付けられていた。やがてその体表にヒビが入っていき、全身がバラバラに破壊された。
「神様相手の緊縛とかちょっとマニアックじゃな~い?」
「うっさいわね! じゃあアンタも手伝いなさいよ!」
「さっきやってダメだったしねぇ~。じゃあこういうのとか?」
そう言って虹がステッキを振るうと社が音も無く消失した。考えもしなかったが、社が本体かもしれないというのも有り得る話だった。今まで私達が相手をしてきた高次元存在の中には、姿見や操作板の姿をしているものも居たのだ。そういったものの仲間が、建造物の姿をしていないとは言い切れなかった。
地面の上に転がった仏像擬きの頭部を結が見下ろす。
「何……笑ってんのよ……」
「縊木さん、私、どうすれば……」
「何ニヤニヤ笑ってんのって聞いてんのよ!? 何が神様よクソ野郎ッ! そんなもんこの世に居ないの! アンタがそうだってんなら、今すぐあの人蘇らせてみなさいよッ!!」
そう叫び頭部を踏みつけようとしたその時、結の足はピタリと動きを止めた。そしてその理由は、私達の目にもはっきりと映っていた。
私達の目の前には一人の女性が立っていた。虹と索はキョトンとしていたが、私と結には彼女が何者なのかすぐに分かった。いや、分からざるを得なかった。特に結が彼女の事を忘れる訳がない。
「え……」
「何で……」
その人は、以前結のサポーターを務めていた人物だった。私自身は少ししか会った事が無いため詳しくは知らないが、あの結があそこまで心を許す程の人格者なのだろう。綺麗な黒い長髪をしている彼女は、人の好さそうな笑みをこちらに向けていた。
「絖本、さん……」
「久し振り結ちゃん」
索の戦闘装束は突然解除され、結は索の手から伸びるロープを手にし絖本さんの所へとフラフラと歩いて行った。索や私が声を掛けてもその声は届いていなかった。
結は絖本さんへと抱き付くと、まるで子供の様に泣き始めた。
「ごめんなさいっ……ごめんっアタシっ……!」
「よしよし、もう大丈夫だからね」
「アタシあの時っ……」
「誰も悪くないよ。だから泣かないで。もうお姉さんはどこにも行かないからね……」
その優しい笑みも振る舞いも、私がよく知る彼女と同じだった。しかし彼女がここに居る筈がないのだ。私の技に巻き込まれた時、結が死亡すると同時にサポーターだった絖本さんは完全に消滅した。メインテイナーの理は絶対である。彼女もこの条理には逆らえなかった。それを一番よく知っているのは結本人の筈なのだ。
「や~ん! あたしも甘える~!」
「いやっどういう理屈で!? 虹、あれはもう居ない筈の人なの!」
「く、縊木さんっ……! どうしちゃったのっ……!?」
「でも目の前に居るじゃ~ん? あの結ちゃんがあそこまで甘えるとかもうあたしのママでしょ……」
「意味不明だよ! 結っ! 戻ってきて!」
結は絖本さんに抱き付いたまま、こちらの声を無視し続けていた。
「ほら結ちゃん。お友達が待ってるよ?」
「やだ! もう、もうやだよ……どこにも、行かないで……!」
どうにも奇妙だった。既に結はあの人がこの世に存在しないのを認め、私を許していた筈である。彼女自身もメインテイナーの理は理解している。絖本さんの死、そして消滅に向き合っていた。高次元存在を相手にしている際にこういった現象が起きているのであれば、すぐに罠だと気が付く筈なのだ。
「おかしい……。虹、結をこっちに連れ戻して!」
「オッケー」
虹はすぐにステッキを振り力を行使しようとした。しかし、何故か何一つ異変は起こらなかった。虹がこの手のミスをするとは思えず、虹自身も上手くいかなかった事に困惑している様子だった。
「あ、あれっ!?」
「ひ、日奉さんどうしたのっ……!?」
「うーんおかしいな~。上手く出来ないや~。あれかな、ママ味が足りなかったのかな?」
「マ、ママ味……?」
「ユイた~んこっちでちゅよ~。ママのとこにおいで~?」
「虹の中の母親像雑!」
絖本さんは慈愛に満ちた表情のままこちらへと顔を向ける。
「ごめんね循ちゃん。結ちゃん、戻りたくないみたい」
「いやっ何言ってるんですか!? 結がそんな事言う訳っ……!」
「そうだそうだ~! 結ちゃんはツンデレなんだぞ~! 戻りたくないイコール戻りたいって事なんじゃないのか~!」
いくら結が絖本さんの事を大事に思っていたとしても、今の彼女の態度は明らかに異常だった。責任感が強く面倒見のいい彼女が、後継者である索をそのままにするなど有り得ない。一度心を許した相手には愛情を尽くすタイプの彼女が、見放す筈がない。
「私もそう思うんだけどね……でも結ちゃんがそう言うなら、守ってあげたいから」
「結ちゃんまさかお姉さん属性に弱いのか~!? しゃっ来い! あたしがお姉ちゃんだよッ~~!!」
やはりおかしい。詳しくない私ですら、あの絖本さんがこんな判断をするとは思えない。結が心を許す程の人物が、務めを捨てようとしている結をそのまま許す訳がない。きっとあの人なら叱る筈だ。だから結は彼女を愛していたのだ。こんな結にとって聞こえのいい言葉を吐くだけの人では無かった筈である。そしてあの仏像擬きの姿が見えないのもおかしい。これだけの異常な状況になっているにも関わらず、どこにも姿が見えないのだ。もしかするとアレは、結を引き込もうとしているのはないだろうか。
「わわわ、私ど、どうすればっ……」
「……索、落ち着いて。多分だけど、今の結はあの高次元存在に誑かされてる。今見えてるあの人も……いやっあの人があの仏像擬きなんだよ」
「えっで、でもさっき……」
「そうだね、壊した。でも虹がやっても消えなかったし、社が消えてもこんな状況になった。多分アレはまだ生きてる」
「あたしの方がお姉ちゃん力高いからッ!! あたしの方がお姉ちゃん力高いからッッ!!!」
「虹っ!」
「は~い」
「手伝って。虹じゃないと頼めない。他の人じゃ絶対出来ない事なの」
「え~いいけど今お姉ちゃん力合戦してるんだよねぇ~。なかなか苦戦しててさ~。治ちゃんとはまた別方向のお姉ちゃん力だぜ……!」
「そういうのいいから!」
「冗談冗談。それで何すればいいの?」
「あのね……」
私が頭の中で作り出した作戦を二人に耳打ちする。本当にこの作戦が上手くいくかは分からなかったが、純粋な火力では倒せない存在が相手となればこれしか方法は浮かばなかった。そしてこれによってどれだけの事が発生するかも想像出来なかったが、もしこのままにしておけば結が返って来なくなるのは目に見えていた。
作戦を聞き終えた索は早速行動を開始する。
「く、縊木さんっ……!」
「……」
「わ、私っ縊木さんと会えて良かったって思ってるよ! あ、会えなかったら、今でも私、昔のままだったと思う! 日奉さん達とも会えなかったと思う!」
「索ちゃんだっけ? 今まで結ちゃんと仲良くしてくれてありがとう」
「索、聞く耳持たないで続けて」
「でも私っ! ま、まだまだこんなのだから! 縊木さんが居てくれないと、きっとダメダメになっちゃうと思うんだっ……! もっともっと教えてもらわなきゃいけない事っ沢山あると思う!」
索の普段上げない様な大声を聞いてか、結の視線が少しだけこちらを向いた。それを見て索の背中を軽く押し合図を送る。
索はずんずんと結の所へ歩いて行くと、彼女の左手を両手で掴み、鼻が触れ合いそうな程にぐいっと顔を近付けた。
「縊木さんっ!!」
「索……?」
「私、まだまだ縊木さんといっぱいお話したいっ! もっと色んな所に行ってみたいっ! もっと色々教えてもらいたいっ! それから、それから……もっと一緒に色んな物食べてみたいっ!」
絖本さんらしき存在に抱き付くために使われていた残りの手も、その体から離された。それを見て好機と捉え、虹に合図を出す。
「虹、今っ!」
「どうなっても知らないぞ~っと」
虹がステッキを上に掲げ、その先端が虹色に発光したかと思うとその光はやがて天へと昇っていき、空中で花火の様に弾けて街中へと降り注いでいった。すると数秒後、絖本さんは叫び声の様なものを上げ始め、その姿は少しずつあの仏像擬きへと変化していった。そしてそれはもがき苦しみながら六本の腕をバタバタと動かした。
「やれやれ仕方あるまいな~」
虹がステッキをもう一振るいすると空に差す雲間から一本の糸の様な物が垂れてきた。仏像擬きは救いを求める様にしてそれにしがみつき、その場から逃れようと上へ上へと上っていったが、それを見ていた虹が唐突に糸に向けて駆け出した。
「うおーーっ! 俺も連れてってくれーー! 連れていくんだよォーーー!!」
虹は勢い任せに糸へとしがみつき、仏像擬きの後を追う様にしてえっさえっさと上り始めた。彼女の身体能力が成せる技なのか、それとも何らかの改変を使っているからなのかは分からなかったが、そのスピードは相手を遥かに凌駕していた。
そして丁度糸の中間辺りで追いついた瞬間そこで糸がプツリと切れ、揃って地面へと落下してきた。しかし虹は落ち着いた様子でこちらにステッキを振り、地面に蓮が浮かぶ池を作り出した。
仏像の姿をした高次元存在はそのまま着水して姿を消し、虹は池に浮かぶ大きな蓮の葉の上へふわりと着地した。
「何と浅ましい事か……。我先にと上ろうとするとは、浅ましき事なり……」
虹は心底残念そうな顔をするとステッキを振って池を消していく。水面が完全に消滅する前に微かに聞こえたのは、あの高次元存在の助けを求める様な叫び声だった。
「己が結ちゃんを助けようと恨むまいな? 己もそうしなければ、友を失う身なのだ」
「誰の真似それ……」
結と索の方を見てみると、どうやら結は正気に戻っているらしく索に優しい目を向けていた。
「結た~~んお待たせ~~! お姉たんだよ~~!!」
「気っ色悪っ!? 今度は何の真似よ!?」
「ガーーンだな。出鼻をくじかれた。お姉ちゃん力の見せ所だったのにさ~」
「ハァ? 何よそれ……」
「第一回お姉ちゃん属性人気投票結果発表!!! 第一位、日奉虹、5071票。『みんなありがとう』。第二位、日奉虹、3072票。『フン』。第三位、日奉虹、1802票。『神に感謝』。第四位、日奉虹、721票。『くっ! 虹に負けた……!』。第五位、日奉虹、514票。『順当な順位ですね』。第六――」
「もういいわよくどい!!」
いつもの調子に戻った結を見てホッと胸を撫で下ろし、三人の下へと近寄る。
「覚えてない結? さっき絖本さんの偽物が出てきてたんだよ」
「覚えてるわよ。ただ、何か頭がポ~っとして、アンタ達の方まで見えてなかった……」
「あのね結、さっきのあの人は……」
「知ってるわ。……アイツが擬態してたんでしょ」
「うん……多分そうだと思う」
「……アンタが気にする事じゃないでしょ。引っ掛かったアタシだから分かるけど、あのキモイ仏像みたいな奴は、人の願いを叶えてそこから発生した感情エネルギーを食べてたんだと思う」
やはりそういう事らしい。昔からここの山は信仰の対象だったという話を思い出してあの対処法を思いついたのだが、結の言う通りアレはそういった力を持っているのだろう。人の願い事を聞き入れ、それを叶える事によって感情エネルギーを増幅させて捕食する。虹が引き継いだ力と同じ、一種の改変能力の類なのだ。そして社に参拝しなかった結が引っ掛かったという事は、人の心の中を覗く力もあるという事だ。
「私もそうだと思う。思えばあのお菓子の箱もアレがやったのかも」
「あれを? まあそりゃそう考える方が合ってるでしょうけど、でも誰がそんなの……」
索が恥ずかしそうに小さく手を上げる。
「……アンタってホント食い意地張ってるわね」
「か、勘違いしないで欲しいんだけどっ……私、美味しい物が食べられますようにって思ってただけだよっ……!」
「どっちにしたって同じよ」
「しょうがないな~索ちゃんは~。じゃあ今度美味しい物食べに行こうよ~」
「い、いいのっ……!?」
「うん。治ちゃんも呼んでさ~」
「虹また天道さんに払わせようとしてない!?」
「え~あたし達の中だと一番お姉ちゃんなんだしちょっと甘えたっていいじゃんかよぉ~」
結は相変わらずの虹に呆れた顔をしていたが、すぐに先程の存在の話に戻す。
「ところで、アイツどうやって倒したのよ? こいつでも一発でやれなかったワケでしょ?」
「うん。ここの山が昔信仰の対象だったって話、覚えてる?」
「ええ」
「信仰が先だったのか、それともアレが先だったのかは分からないんだけど、あの高次元存在は人の信仰の感情を餌にすると同時に自分の存在の補強にもしてたんじゃないかなって思うんだ」
「補強?」
「そう。神様なんてものが本当に存在するのかどうかは分からないけど、神様は人からの信仰があるから存在出来るんだと思うんだ。普通の生物とは違って、存在が未確定な存在だと思う。信じられないと生きていられない存在。それが神様なんじゃないかって思ったの」
「……何か難しいわね。それで結局どうやったのよ?」
「それはあたしから説明しよぉーう! 循ちゃんから命令を受けたあたしは、街中に居る皆の記憶からここにあった社と神様に関する全ての記憶を消去したのだッ!」
信仰が無ければ生きられない。もしアレが信仰を糧としているのなら、それを完全に遮断してしまえば倒せるのではないかと踏んだのだ。完璧な消滅とまでは至らなかったが、虹にいいように扱われてしまうレベルには弱体化させる事が出来た。
「……ハァ~~~!? じゃ、じゃあアンタ記憶弄ったっていうの!?」
「そだね~」
「町の人間全員の!?」
「そだね~」
「一瞬で!?」
「そだね~。昔日本で作られてたチーズの名前は~?」
「そ、蘇だね……?」
「正解っ! 索ちゃんは賢いなぁ~~!!」
結は虹が行った行為を聞いて眩暈がしたのか頭を押さえていた。
「あの、結大丈夫?」
「……頭が久し振りに痛くなってきた気がするわ」
「えっでもっ……エーテル体になるとそういうのは無くなるって……」
「そんだけヤバイ事したって事よこいつが……」
結がそういった反応をするのは予想していた。正直私としてもこれが通用しなければ絶対選ばなかっただろう。アレに関する全ての記憶が抹消されたという事は、必ずどこかで記憶の齟齬が生じてしまっているという事である。もちろんメインテイナーである虹が変身中にやった事であるため違和感などは起こらない。だがあの高次元存在がどれだけの願いを叶えていたのか分からない以上、何らかの問題が発生する可能性があるのだ。
「……アンタ、自分が何を指示したのか分かってんの?」
「ごめん。でもあれしか無かった。あのままだと結が……戻って来ない気がしたんだ」
「……明日から見回りするわよ。どうせそいつも夏休み中暇でしょ」
「ムッ! 失礼だな~結ちゃんは~! あたしにだって予定はあるんだい!」
「あっそ。じゃあ言ってみなさいよ」
「まずは皆と海に行かなきゃでしょ~? 皆とお祭り行かなきゃでしょ~? 皆と肝試ししなきゃでしょ~? 皆と動物園行かなきゃでしょ~? 皆と水族館行かなきゃでしょ~? 後は~……」
「ぜ~んぶ遊びの予定じゃないの! しかももうアタシらが同行するの確定みたいになってるし!」
「え~いいじゃ~ん。索ちゃんも行きたいよね~?」
「そ、そうだねっ……! で、出来れば色んなとこ行きたいな……」
「ほら~」
「アンタね、自分がやった事分かってんの? ああするしかなかったのは分かるけど、だったら後始末も手伝いなさいよ」
「ヤダヤダヤ~~ダ~~! 皆と一緒に遊びにも行くんだ~~~~!!」
「な、泣いちゃったっ……!」
「あ~うるさいうるさい!! 分かったわよ遊びには付き合ってやるからちゃんと始末はつけなさい!!」
「はい言質取った~。逃がしませぬぞ~?」
一瞬で涙を引っ込めた虹はいつもの様に笑顔を見せ、結がぐったりとしていた。
「ごめん結……」
「……いいわよ謝らなくて。ハァ……ホント、神様なんてやっぱり碌なモンじゃないわね」
「いやっ、ま、まあ考え方次第だと思うけどね……?」
「まっ、信じたい奴は信じればいいのかもね。アタシはこれからも信じないけど……」
「もう~結ちゃんは頑固ちゃんだな~」
「当たり前でしょ。あんな悍ましい奴が神様とか勘弁よ」
「ん~? 見た目が気に入らなかった~……ってコト?」
「見た目もやる事もよ。まんまとやられてみっともないとこ見られたし……」
「とんでもねぇそれならあたしが神様だよ。お姉ちゃんに甘えておいで~~~~~ッ!?」
「二回目じゃないのよそのネタ! やめろ触んじゃないわよ!」
「先っちょだけ! 先っちょ甘えるだけでいいから!」
「意味分かんないわよ! てかその手つきやめなさいよ気持ち悪いっ!!」
「虹~結疲れてるんだからやめたげて~……」
「神っていう文字も『こう』って読むから虹のあたしも実質神様だと思うんだけどなぁ~」
「そういう根拠だったの!?」




