第15話:結は天下の基礎番だ
魔箕による雛菊へのメインテイナーの継承が行われた翌日、高次元存在に敗れた魔箕の肉体は霊界堂家の庭の一端に埋められる事になったらしい。メインテイナーとなった人間が死亡すると、新たに継承された人間かあるいは同類のメインテイナーでもない限りはその人物を認識出来なくなる上に記憶からも抹消される。いつ誰が決めた事柄なのかは私にも分からないが、これは不可逆の事実なのだ。つまり血分魔箕の遺体を認識出来るのは私達だけであり、他の人からは認識してもらえない。そのためまともな葬儀を行う事すら出来ないのだ。
日曜日という事もあって虹は自分の仕事をするために部屋で録音を行っており、まるで昨日あれだけの大事があったとは思えない雰囲気だった。まだ魔箕を殺害した高次元存在の残党がどこかに残っている可能性が高い。魔箕や雛菊曰く、誘拐の実行犯は一人では無かったらしいのだ。つまり、人間に憑りつける存在は一体だけでは無かったという事である。
合間を見て声を掛ける。
「ねぇ虹」
「ん~どしたどした~?」
「昨日血分さんを殺した高次元存在の事についてなんだけど、まだ他にも居ると思う」
「あ~何かそんな事言ってたね」
「うん。この後、霊界堂さんと血分さんが来るでしょ。分かってるとは思うけど、先輩としてサポートしてあげて欲しいんだよ」
「え~~あたし奢れる程稼いでないよ~……」
「先輩=奢る人って図式でもあるの!? そういう意味で言ったんじゃないよ!」
「冗談冗談。あたしに出来る範囲でね~」
虹は最初からとんでもない素質を持っていたため私が何かを手助けするという事は無かったため、そんな自分が偉そうな事を言うのはどうかとは思うが、それでもメインテイナー全体の総数が不明な以上、少しでもしっかり戦える人員を確保しておきたかった。
正午を過ぎ、午後の一時辺りになった頃、日奉家の玄関を叩く音が聞こえてきた。虹はまだ少し仕事が残っていそうだったため、何とか離れられるギリギリまで移動して壁をすり抜けると来訪者を出迎えた。そこには件の魔箕と雛菊だけでなく、索と結も来ていた。
「失礼しますわ。本日はお日柄も良く……」
「いやっそんなに気を遣わなくていいよ。そんな索みたいな事言わなくても……」
「わ、私あんな風に言ってたっけっ……!?」
「言ってたわよ。ガッチガチでね」
「現夢循様、でしたか。昨日はご迷惑をお掛けしました」
「だ、だからいいってば血分さん……。相手が高次元存在となればお互い協力し合うのは当然だよ」
「ねぇそこのおバカさん達~? 一体いつまでそこで突っ立ってるつもりかしら~? ここで日差し食らって倒れて欲しいの?」
「あ、ごめんごめん。ただ、ちょっと待ってくれない? 虹が今仕事しててさ。もうちょっとで終わると思うから……」
結は小さく溜息を吐く。
「人を待たせていい御身分ね……」
「そ、そんな事言っちゃダメだよっ……日奉さんだってお仕事が忙しいんだからっ……!」
「ほんとにごめん……でも、ほら、私達サポーターってエーテル体だから暑さで体調崩すとかは無いから大丈夫だよ結」
「……ここのバカが倒れるかもって言ってんの」
「わ、私ぃっ……!?」
確かに索は体も強くなさそうだしあまり長時間外に立たせたら倒れそうだ、と思っていると玄関が開いて虹が姿を現した。彼女は結達を見るなり靴も履かずに外へと飛び出して雛菊の手を握るとブンブンと握手をし始めた。
「やぁーやぁー待ってたよぉー!!」
「せ、先日はありがとうございました……! それで本日はですね……」
「魔箕ちゃんもあーくしゅっ!」
「いえ自分は……」
「あたしの握手が飲めねぇってのかよえーーー!?」
「何その酒宴みたいな絡み方!?」
結が咳ばらいをする。
「重役出勤ご苦労様ねーほんっといい御身分だわ」
「………………何で来てるの?」
「アンッタがメールで『来い』っつって呼び出したんでしょーが!!」
「ひ、日奉さん、忘れちゃったのかな……? これ、ほら、昨日メール送ってくれたよね……?」
「ん~~~~~~? …………思い、出した……!」
「考えるまでも無い事でしょうがそれは……」
「ほら虹、皆待ってたんだしそろそろ中に入ろうよ」
「そーだったそーだった! ようこそ! ホワイトハウスへ!」
「ここ日本だし自分の身分なんだと思ってるの!?」
「え、あたしって大統領なんじゃないの?」
「そんな訳ないじゃん!」
「まぁっ……日奉さんは高貴な生まれなのですね」
「いやっ違うって乗っちゃダメだよ霊界堂さん!?」
「え~でもさっき結ちゃんが『重役』って言ってたし……」
「アンタそこから今の引っ張って来たの!?」
皆が来た事によっていきなり虹のエンジンがかかってしまったが、今回の目的は雛菊の戦闘訓練なのだ。本来であればすぐにでも憑依型高次元存在を倒しに行った方が良いのだろうが、どこに居るのか手掛かりがまるで無い上に、まだメインテイナーになったばかりの雛菊に無茶をさせれば無駄死にになってしまう可能性が高いため、まずは一人でもある程度戦える様になるために色々と教える必要があった。
靴下を玄関に脱いでいき皆を居間へと通した虹は台所へと向かうと人数分のコップを取り出し、冷蔵庫に入れていた冷えた麦茶をそれぞれに注ぐと盆へと乗せていった。
「そういえば今まで気付かなかったけど、この家って食器類多いんだね」
「うちの一族は大家族だったみたいだからね~。まっ、あたしは会った事無いから知らないけど」
居間へと戻り全員のコップを机に置くと、虹一人だけ座布団も敷かずに畳へと腰を降ろした。
「さてさて~何のお話だったっけ? 未確認飛行物体の情報公開についてだっけ?」
「霊界堂さんの訓練でしょ……」
「そうだったね~。能力の使い方云々を知りたい感じ?」
「そうですわね。昨日日奉さんに御教授頂きましたが、やはりまだ上手に出来ませんもの」
「えっとえと……れ、霊界堂さんの力って……」
「昨日血分が使ってるの見たでしょうが……そいつのは――」
「You're fired!!!」
「水よ水!! てかアンタそれそういう意味じゃないからね!?」
「え? 『お前は炎使いだ』って意味じゃないの?」
「『お前はクビだ』って意味よ! どういうタイミングで使うのよ炎使いって!」
「また一つ、勉強させて頂きました。そんで雛菊ちゃん、まずはどういう事からやりたいとかある~?」
「どういう事と申されましても……私には何が出来るのかさっぱりですわ……」
「では、自分から意見させて頂いても宜しいですか?」
そう言って雛菊の後ろに居た魔箕が手を上げる。彼女曰く、雛菊の母親である柳から様々な技を受け継いでおり、中には二人で共同開発したものもあるのだという。それを一度に全て覚えさせるのは困難であり不可能に近いため、まずは能力を使う上での基礎中の基礎を教えたいとの事だった。私が昨日見た限りでは初心者にしてはかなりの素質だったが、魔箕からすればまだまだ粗削りな部分が多いのだという。
「基礎ですか……魔箕、まずは何をすれば良いのかしら?」
「お嬢様、お嬢様の素質は自分が見込んだ通りのものでしたが、まだまだ改善の余地があります。初歩として、精密なコントロールが出来る様になりましょう」
「そうだね。私達メインテイナーの力は人の感情を糧にしてるものだし、上手に使えるに越した事はないと思う」
「っしゃあ! あたしの出番だなぁ!?」
「いやっ虹はいいから」
「オイオイオイオイオイオイオイ。さっきの発言と矛盾しちゃあいませんかねぇ?」
「いやっほら……虹はさ、ね……」
「……そうね。そこのバカには向いてないわ」
「NO! YES I CAN!」
「NO YOU CANよ。アタシと索が教えるわ。ほら立ちなさい索」
索は結に促されるままに立ち上がると、ロープを手渡され戦闘装束へと姿を変えた。
「感情エネルギーは繊細なものなの。そこのバカみたいに規格外の奴も居るけど、基本的には難しいもの。こういうのはアタシの方が向いてるわ」
「縊木様、ありがとうございます。ではお嬢様、ここでは良くないので外に参りましょう」
「そ、そうですわね」
四人は雛菊に力の正しい使い方を教えるために玄関から外へと出ていった。虹は自分に任せてもらえなかった事がショックだったのか、拗ねる様にゴロンと転がっていた。
「……虹、外出ようよ」
「……何だよ何だよ、あたしだけ仲間外れかよぉ」
「いやっ、そうじゃないよ。虹は私や結から見てもとんでもない才能があるの。天才って言い方が正しいのか分からないけど、少なくとも人に教えるのに向いてないんだよ」
「……ほんと?」
「うん。正直、あの蟹を倒した時びっくりしたもん。まさかあそこまでだとは思わなかったし……」
「……っしゃーねぇなぁ! んじゃ、そういう事にしてやりますか!!」
簡単に機嫌を直した虹は素足のまま靴を履いて外へと飛び出した。
庭では既に雛菊と索が向かい合っており、争い事が得意ではない索は戦わなければならないのではないかとおどおどと怯えていた。
「まず、アンタの受け継いだ力は水なのよね?」
「そ、そうらしいですわね。昨日一回日奉さんに見てもらったキリ使っていませんが……」
「血分、アンタ昨日追跡してる時に雨粒を操ってたわよね? あれ、出来る様になるまでどれくらい掛ったの?」
「雨が降る度に少しずつ鍛錬を重ねました。大体……三か月程でしょうか」
「……マジで言ってる?」
「はい。何かおかしい点がありましたか?」
「いや……まあいいわ。霊界堂、多分アンタがあのレベルになるには相当時間が掛かる。もっと簡単なところから始めるから」
「分かりましたわ。それと、雛菊で宜しいですよ」
「そ。じゃあ雛菊、まずは手の平に水を出してみなさい。細かいコントロールは考えなくていいから、出来るっていう意識を持ってやってみなさいな」
「水をですね……」
「お嬢様、意識を集中させてください」
雛菊は自身の右手の平をジッと見つめ、眉間に皺を寄せて体をプルプルと震わせ始めた。相当力んでいるのか顔も赤くなってきており、昨日見せた様なシンプルな攻撃技以外ではここまで苦戦してしまうらしかった。
「お~出来てるじゃ~ん!」
「ほ、ほんとですの!?」
「いやっ……え、出来てる?」
「日奉様、自分には見えないのですが……」
「わ、私にも見えないかな……」
「え~でもおでこの辺りにさ~……」
「汗よそれは!! 邪魔だから黙ってなさい!」
それから五分もの間ずっとプルプルと力んでいたが、突然手の平から溢れる様にして綺麗な水が湧きだ出した。あまりにも突然の事だったためか雛菊はあわあわとしていたが、魔箕がすっと手の平に触れる事でそれは収まった。
「で、出来ましたわ!!」
「……ねぇ雛菊。アンタ、今の何かイメージしてやった?」
「え? 縊木さんが出来るという意識だけを持てばいいと仰ったので、それだけですけど……」
「それだけで……?」
結が引っ掛かっている点は私にも分かった。恐らく彼女は攻撃技をする時だけ簡単に出力出来るのではなく、下手に力んで内側に溜め込んでしまうという性質があるのだろう。昨日のあの技も、本人が無意識の内に水の力を溜めており、指示された際に溜められた分が一気に放出した結果、初めてであるにも関わらず素質があるかの様に見えたのだろう。まさに今の彼女はダムと言ってもいいかもしれない。
「ねぇ霊界堂さん。今度は今出した水を操ったり出来る?」
「雛菊でいいですわよ現夢さん。もう次に行くのです?」
「ちょっと循、まだ早いわよ」
「いやっ、もしかしたらなんだけど、雛菊さんの力って血分さんとは少し方向性が違うんじゃないかって思って」
「方向性ですか?」
「うん。血分さんは雨粒を固定して操れるくらい精密な事が出来てたけど、雛菊さんは逆方向のコントロールの方が向いてるんじゃないかな」
「やっぱり循ちゃんもそう思うか~実はあたしもそう思ってたんだよね~……」
「……ほんとに思ってた?」
「つまりだねぇ! 魔箕ちゃんのは『静流』! 雛菊ちゃんのは『激流』! って事よ!」
「あ、ほんとに分かってるんだ」
「アンタらマジで言ってんの? まだそいつは自分の力をコントロール出来てないのよ? 方向性の前に基礎をやらないと……」
「うん。それも大事だと思う。だから今から同時進行でやっていこうと思うんだ」
私は虹へとステッキを渡し、虹はすぐさま戦闘装束へと変身する。才能だけで全てを抑え込む彼女はまさに『激流』の体現者と言っても過言ではない。基礎を教えられるのは結と索だが、雛菊本来の力の使い方を教えるのは虹ではなくては出来ないだろう。
結は呆れた様に溜息を吐く。
「それで? どうすんのよ」
「結はそのまま続けて、教えられそうなところがあったら追加で教えるから」
「あっそ。……それじゃあ雛菊、今から水を使って索がやってる事の真似しなさい」
「分かりましたわ」
「ほら索、やりなさい」
「えっえっ……何すればいいの……?」
「アタシが教えてやった技の中で一番精密なやつって言ったらアレしか無いでしょうが……!」
「あっ、あ、アレねっ……!」
索が手にしているロープを地面に這わせる様にして放ると、そのロープは意志を持っているかの様に一人で動き始めた。先端部分がまるで蛇の頭の様に動き、空中に見えない壁でもあるのかと思わせる様に縦横無尽に動いていた。それは『黄金の姿見』を倒している最中に校舎内で彼女が使っていたあの技だった。
「お嬢様、先程地面に零れた水がまだ残っております。それを使いましょう」
「そ、そうですわね。うーむむむっ……」
「雛菊さん、力まないで。もっとリラックスしてみて?」
「深呼吸だよ深呼吸~! ひっひっふー、ひっひっふー」
「それ出産の時にするやつだよ!」
「でも雛菊ちゃん水を自分の力で生んだし、実質ママでは? 需要では? お嬢さママでは?」
「……虹、暑さで参ってるならお水でも飲んできなよ」
雛菊は少しでも動かそうと必死に呼吸を整えながら手をかざしており、僅かにだが地面に落ちている水が見えない力に引っ張られる様にして上へと動いていた。しかしやはり彼女にとっては相当難しいらしく、それ以上そこから動く事は無く、何とも中途半端な状態で止まってしまっていた。
「……血分さん。刀、渡して上げて」
「ですが今は……」
「もしかしたら武器を持たせた方が上手くいくかもしれないよ。昔共闘した事があるメインテイナーの人にそういう人が居たからさ」
「分かりました。お嬢様、これをお手に」
「い、今ですの?」
「雛菊ちゃーん、その先っぽの方をさ~水に浸けてからやってみ~?」
「こうですか?」
そう言って雛菊が刃先を水に接触させた瞬間、まるで弾ける様にして地面に落ちていた水は空中へと飛び上がり、索が見せているロープ以上に機敏な動きで飛び回った。一見すると無茶苦茶な動きで飛んでいる様に見えるが、よく見てみると先程から索のロープの動きを模倣する様にして軌道を完全に再現している。少しずつ動かすやり方よりも、雛菊にとっては一気に解放するやり方の方が向いているのだろう。
「どどど、どうなってますの!?」
「お嬢様、流石です! 完璧です!」
「す、凄いね縊木さんっ…………!」
「……雛菊。じゃあ今度はそれを空中で静止させて変形させてみなさい」
「難易度上がり過ぎじゃありません!?」
「アンタの実力を見込んでよ。その刀は握ったままでね」
「お嬢様、自分が付いております。安心して、冷静にです」
「そうですわね……」
雛菊の手によって剣先が空中に向けられると、飛び回っていた水はその剣先が指し示す先で急停止し、微動だにしなくなった。その後雛菊が目を閉じて何やらぶつぶつと唱え始めると、水は急激な外力が加わったかの様に変形し始め、ついには扁平な形へと再構築された。どうやらダムの様に一気に力を解放しないといけない反面、その状態であれば精密で急激なコントロールも可能になるらしい。かなり癖の強い力の使い方だが、それが一番合っているのであればそれでいいのかもしれない。
「お見事って感じね。これアタシ要らなかったんじゃない?」
「ううん。この中じゃ結が一番基礎を教えられると思うし、私達だけじゃ無理だったよ。虹が持ってる力は結構特殊だしさ」
「うーん来てる、来てるね~。宇宙からの電波来てるよ~」
「虹それUFOじゃないよ!」
「お嬢様、流石です! 完璧です!」
「君はさっきからそれしか言わないね……」
「それでどうすんの? まだやりたいってんなら付き合ってあげなくもないけど?」
「お願いしますわ縊木さん! 是非、ご指導ご鞭撻のほどを!」
「厳しくいくからね。覚悟しなさいよ」
「でも結ちゃんって索ちゃんには甘々だよね~」
「うっさい!! 何を捏造してんのよ何を!!」
「え~でも明らかに態度があたしに対するそれと違うし~……」
「アンタが特別なのよ!!」
「えっ……そんなっ、あたしには循ちゃんという心に決めた方がっ……!」
「何でポジティブな方に捉えてんのよ逆よ逆!!」
「私をどうしたいのさ虹は……」
結は怒りながらも雛菊に対する指導を続けようとした。しかしその時、一番気をつけなければいけなかった事が起きてしまった。
「く、縊木ひゃん……」
「何よ?」
「およ? 索ちゃん顔真っ赤じゃん。何えっちな事考えてるの?」
「そんな訳ないじゃん外に居過ぎたんだよ!」
「ちょっと索! 大丈夫?」
「う、うん……頑張る、よ……でもちょっとだけ喉乾いたかな……」
「虹! お茶持って来よう! さっき注いでたのがあるよね!」
「心配とは、取り越し苦労をする人々が支払う利息である」
「は? いいから取ってきなさいって!」
「ヒュンヒュロをください。くださらないと改変するてす」
「え、ちょっと虹……?」
「日奉さん? 大丈夫ですの……?」
「非常識ナ! アマリニモ非常識ナ!!」
そう言うと虹は笑いながらフラフラとその場に腰を降ろしたかと思うと、地面の上に倒れてしまった。
「……これは日奉様も熱中症なのでは?」
「いっつもふざけてるから分かりにくいのよ! ややっこしいわね!!」
「ひ、雛菊さん、悪いんだけど運ぶの手伝ってもらえないかな!? エーテル体の私一人だと結構大変で!」
「わ、分かりましたけど緋縅さんはどうなさいますの!?」
「……先にそっちを優先しなさい! 索はまだ軽症よ! そうよね索? もうちょっと頑張れるでしょ? アンタは強い子なんだから……」
「うん、うん……後でいいよ……」
雛菊が虹の肩に手を回して立ち上がらせる。
「じゃあお願いしてもいい?」
「はい! 日奉さん立てますか?」
「国をぉ……国を建てるぞぉ……あたしは建国の母だぞぉ~……」
「お可哀想に……暑さでこんな……」
「いやっ……虹は普段からこんな感じかな、うん」
「あたしが当選した暁にはUFOの情報を解禁しまぁす!!」
「もういいよ大統領ネタは!!」




