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道半ば  作者: ナダ
6/11

備えあれば憂いなし

それは、突然の連絡だった


好きなだけ寝られると散々夜更かしをした春休みの早朝、携帯が鳴り響いた


「…はい」

かすれた声で美紀が電話に出ると、姉の由美だった


「美紀?美紀の貯金、10万円位あるよね?」

と、唐突に言う

嫌な予感しかない

だから何?と答えると、


「10万円貸して」

と言う

昔から姉に貸して返ってきたものはない

この前貸したワンピースも姉のものになったようだ


「何に使うの?」

とがらがら声で美紀が聞くと、姉の由美は黙った


「とにかく、今日中に10万円持ってきて」

詳しい話は、会ってから、と電話が切れた


美紀は、はあ?と思ったが、とりあえずもう一度寝た


お昼過ぎに母親に起こされた美紀は、ぼーっとする頭で着替えて家を出た

姉の住んでいるアパートまではバスで20分くらいだ

由美は交通費がかからないし、バスが嫌いなので自転車で向かった


寝不足の身体で30分程自転車をこぐのは、けっこうきつい

若くても、疲れることは疲れる

自転車を駐輪場にとめると、姉に連絡した


すぐに、二階の部屋の扉が開き、姉が顔を出した

美紀は階段を上がって、姉の部屋へ行った

玄関を閉めるなり、


「お金、持ってきてくれた?」

と由美が言った


美紀は、休みの日に人を呼び出して、開口一番それか、と心の中で思ったが、家にあるよ、と答えた


「えーっ!持ってきてないの?」

と不満げに言う

由美は困りきった顔をして、ベッドに座り込んだ



「何があったの?お姉ちゃん」

と床に腰を下ろすと美紀は聞いた


歳が六歳も離れている姉妹は、妹の美紀が生まれた時から、姉は絶対的存在だった

大きさに差がありすぎて、ケンカにもならなかった

物心ついた時から、姉には逆らえなかった

対等に話せるようになったのは、まだ最近だ


由美は、立ち上がると、何か飲む?と自分用のマグカップにコーヒーをいれた

美紀は、持ってる、とペットボトルのお茶を飲んだ


ひとつため息をつくと、姉の由美は話した


「ばれちゃったの」

ふふ、と笑いながら言った


「ファミレスの店長の奥さんに、浮気がばれちゃったの」


美紀は開いた口がふさがらなかった





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