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道半ば  作者: ナダ
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祖母はる

北野美紀、高校一年16才

北野ファミリーは父方の祖母と同居している


父親の健一は長男だ

日本のしきたりとして、両親の面倒をみるのは長男とされている

長男の嫁になる場合、そのことは暗黙の了解だ


現代において、経済的、健康的な問題により、同居するか否かは多様化している


さておき、祖母のはるはぶっ飛んでいる

小さな頃から、兄と近所の悪ガキと共に野山を駆け巡っていた

早くに母親を亡くし、道楽者の父親に育てられた


風呂にも入らず、読み書きもせず、朝食は饅頭だった

じゃじゃ馬のはるは、猫をかぶり気のいい夫を捕まえた

世間体で離婚はせず、苦労した夫は定年後早死にした


そして、父親によく似た長男に世話になり、呑気な老後を送っている


80才になる永遠の()()

戦後の焼け野はらを生き延びた

いくつもの時代を、劇的な変化を遂げた国を生きてきた


あまりにも変化する価値観が、この世代の高齢者に思案するということをやめさせたのだろうか

怒鳴る、暴れる、反省しない

はるは、認知症ではない

健康過ぎる老人だ


しかし、行動はやんちゃな5才児だ

三つ子の魂とは、よく言ったものだ

そこから、成長していない…

美紀は、おばあちゃんのことは、嫌いではなかったが、常識外れなことは知っていた


子どもの頃は、おばあちゃんがおやつをたくさんくれるのが嬉しかった

しかし、高校生になった今は、祖母の主食がお菓子だということがわかった

同時に、母の苦労もわかった気がした


祖母はるのモーニングルーティンは、ラジオ体操から始まる

そして、甘味をつまむと、朝の情報番組を見る

家族は皆それぞれ、慌ただしい朝の支度をして出かけていく

日中は、はる一人だ


だからといって、家事はしない

そもそも若い頃からずっとしていなかった

病院へ行き、医者の先生相手に無駄話か、散歩に行ってご近所さんと井戸端会議だ


はるが大人になることはない

もう祖母なのに、ずっと子どものままだった

子どものまま、死んでいくのだろう

かわいいおばあちゃん、といえばそうなのかもしれない


生きる、とは死なないこと

幸せとは、生きていること

単純明快だ

ただ、生きることに精一杯だった時代

美紀たちとは、まったく価値観が違う




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