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神獣たちと狩りをしよう。後編

「おっ……らぁ! 四発目ぇ!」


 俺の大弩弓から放たれた矢がワイバーンの眉間に突き刺さる。

 ワイバーンはその巨体をよろめかせながらも何とか岩場に着陸した。


「153685ダメージだよ。クリティカルヒットだね。お見事ポン」


 ちなみに部位によって与えるダメージは異なるのだが、別に狙ったわけではない。偶然だ。そんな余裕はないからな。

 とはいえラッキー、これで三割以上は削っただろう。

 即座に反撃できるようにだろうが、こっちからすると距離を測りやすくて助かるぜ。


「サイファ! モンスターは近づいてないか!?」

「来てるがよ、ちゃんと排除してるぜェ。大賢者殿」


 面倒そうに返事をするサイファだが、ちゃんと仕事をしているようだ。

 モンスターに纏わりつかれると距離調節をミスってワイバーンの攻撃射程に入ってしまうかもしれないからな。

 奴のブレス攻撃は最大限離れて受けたなら大したダメージはないが、ある程度近くで受けたら即死である。

 地味だが重要な仕事なのだ。


「しかし、こうも真面目にやってくれるとは思わなかったな」


 何だか嫌われているようだったし、サイファは俺の言うことなんて無視しそうだったのに案外素直に従ってくれている。

 そうでないと俺のお手並みを拝見したことにはならない、ということだろうか。

 ともあれこちらとしては助かっているのだが。


「主よ……目が回りそうだぞ」


 弱気な声を上げてくるジルベール。

 むしろこっちの方がヤバそうである。

 数十メートルの前後往復運動を、しかもかなりの速度で行っているのだ。

 ジルベールはゼェゼェと息を荒らげながら、何とか走っている。


「もう限界なら早めに言っておけよ。そうしたら休憩を挟むから」

「ぬぬぅ……主に心配されるとはなんたる不覚。だがこのジルベール、神獣の意地にかけて走り通して見せるぞ! うおおおお! まだまだぁぁぁ!」


 俺の言葉に逆にやる気を出したようで、ジルベールは動きに精彩を取り戻してようだ。

 ……ま、大丈夫ならいいけどさ。

 あまり時間をかけると自動回復で時間がかかるし、逃げられる可能性もある。

 出来るだけ早く仕留めたいところだな。


 ◇


「くっそ……いつになったら倒れやがるんだぁぁっ!?」


 撃ち込んだ矢はとうに二十五を多分超えている。

 自動回復しているとはいえ、もう倒れてもいい頃だろう。

 魔術師のジョブがあれば『魔物情報』のスキルを使って敵のHPも見れるんだがな。

 ないものねだりしても仕方ないのだが。


「主よ……まだか? まだなのか!?」

「もう少しなはずなんだ。あとちょっと、頑張ってくれ!」


 ここまで来たらもはや気合いの勝負だ。

 最悪ミスってもジルベールが本気を出せば逃げられるしな。ギリギリまで粘るとしよう。

 サイファも頑張っているようだし、簡単に諦めるわけにはいかない。


「ところで主よ、さっきからサイファの気配がないが……」

「遠くまでモンスターを捨てに行っているんじゃないか?」


 恐らく俺たちの近くに集めたモンスターをまとめて、遠く離れた場所に置き去りにしているのだろう。

 昔ボス狩りパーティの連中がそうやって集めたモンスターを引っ張っている光景をよく見たものである。

 その時は俺がソロ狩りしている最中で、大量のモンスターのタゲが移って轢かれかけたっけ。

 とっさに離れて事なきを得たが、もし戦闘中だったら危なかったな。

 しみじみ考えながらも大弩弓に矢をセットする。

 冷静にセルを読んで、ワイバーンの視認範囲ギリギリから幾度目かの矢を放った。


「グァァァァァ!?」


 怒り狂ったように大きな口を開き、ヒートブレスを吐こうとするワイバーン。

 よし、すぐに離れて――ジルベールに合図を送ったその時である。

 どどどどど、と地鳴り音が聞こえてきた。


「な、何の音だ!?」


 音の方、森の木々の合間には土煙が立ち上っている。

 音は徐々に近づいてきており、やがて茂みを破って現れる。

 それは大量のモンスターを引き連れたサイファだった。


「悪ィな大賢者殿、しくじっちまったぜ。ははっ」


 こちらに突っ込みながら謝るサイファ。

 モンスターを集めたはいいが、捨て損なったのだろうか。

 まさかわざと……? いや、そんな邪推している余裕はない。


「すまねぇ! こっちはもう限界だぁーっ! あとはそっちで何とかしてくれぇーっ!」


 サイファはそのまま走り去り、モンスターの群れがそのままこちらを向く。


「ど、どうする主!? 戦うのか!?」

「そんな暇はない! それよりジルベール、ヒートブレスの範囲から早く離れろ!」

「駄目だ! モンスターどもが邪魔で動けぬ!」


 気づけば既にモンスターで囲まれており、動けそうにない。

 どうする? どうする? あぁくそ、こちとらコンマ数秒でいいアイデアが出てくる程、上等な頭はしてないんだよ。

 そうこうしている間にもワイバーンが距離を詰めてきている。

 射程ギリギリどころか、距離は六セルもない。確実に死ねる距離だ。

 しかもその口元は赤く光っている。ヒートブレスが来る。


「くっそおおおおおっ!」


 俺は咄嗟にジルベールの背から飛び降りると、その首根っこを掴んでぶん投げた。

 STRバグによる投擲だ。俺たちを囲んでいたモンスターすら貫きながら、ジルベールは飛んでいく。


「主ぃぃぃーーーっ!?」


 遠ざかっていくジルベールを見ながら、俺は安堵の息を吐く。

 よし、射程外だな。そう思った次の瞬間――俺の視界が赤く歪んだ。



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