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3『ケーキ屋』

放課後にアイツの宣言通り、例のケーキ屋に連れてこられた。

もちろん、エンジェルさんも着いて来ている。


「どのケーキにしよぉ!!どれも美味しそぉ!!」


2階のバルコニーにある4人掛けのテーブル席に案内され、向かい席に座ったエンジェルさんがメニューを悩んでいる。メニューを見るために下を向いた天使さんの睫毛なっがぁ………しかも量も多いし最高かよ…。見た目ほんと天使。声も可愛いし、何この子。天使か。天使だ!天使は性別さええ超越され……ないないない。しっかりしろ俺。


てか、バルコニーって客寄せに使われてる気がすんなあ。日本人離れしたはっきりした顔立ちの王子様(アイツ)と誰もが2度は必ず振り返ってしまうほどの可愛さを持つ天使(エンジェル♂)と何故ふたりと一緒にいるのか分からないほど平凡な俺。自分で言うのはなんだが、2人と違って惹かれる見た目ではないがブスでもない、可も不可もない普通な感じのおまけで外にならないから客寄せとして使ったんだろう。許せん!!!!!!俺一人だったら絶対店内の目立たないとこに座らせんだろ!!!?


「ジロウちゃんはぁ、決めたぁ?」


メニューから目を離し俺に聞く天使。あぁ、天に召されても良………くねぇな。落ち着け。こいつは男だ。男だ男だ男だ男だ(自己暗示)。

ところでお気づきだろうか?天使が(ジロウじゃあねぇんだが)ちゃん付けで呼んでくることに!実はこのケーキ屋までの道のりで仲良くなり、呼び捨てになるほど(俺は未だ呼び捨てできずエンジェルさんのままだが)、意気投合したのだ。………本当に声まで可愛いのになんで男なんだよぉぉおおおお!!!!!!


はあ……。


「俺はこの“真実の愛の前では障害はなし!~お互い惹かれあったあの日の(メロン)風味~”にしようかな」

「ジロウはそれにするのか。なら僕は“ファーストキスは?甘酸っぱい!~口の中に広がる彼女の香り(レモン)風味~”にしよう」

「ええ、2人とも決めるの早いよぉ。じゃあ、私ぁ、“あの日を思い出して見た夕焼け~人知れず泣いた(ラズベリー)風味~”にしよぉーっと。あ、店員さぁん!注文いいですかぁ?」


近くにいた“男”の店員を呼び止める天使。あの店員、絶対天使♂目当てで、あわよくば注文取ろうと先程からずっとこちらの様子を伺いながらフラフラしてる。ぶっちゃけ気持ちわからなくもないがこいつ男ですよ。声を大にして叫びたい。


こいつはあああああああ!!!!男なんだよおおおおおおおおおおおお!!!!!ちくしょおおおおおおお!!!


注文を受けた店員が素早く1階に降りていった。1階にキッチンや、商品(ケーキ)があるのだろう。


「…………てかさ、今更だけど、このケーキ屋ネーミングセンスやばすぎないか?何があったんだ?“忘れられない君との思い出の場所~今もケーキが好きだった君を思い出す~”っていう店名もどうかと思うんだが」


本当になんだよ、無駄に長すぎだろ店名。誰も覚えられねぇよ!!!しかも重い。愛が重いんじゃあ。

てかなんか思い出す、とか使うってことは相手の人どこか遠くに行ったのかなって思っちゃうよね。


「そのままの意味らしいよぉ~」

「は?」

「ああ、僕もジロウが気になってるって聞いて天聖(てんせい)クラブの人達に調べてもらったら店主の思い出を元にした作品(ケーキ)を売りにしてると聞いたことがある。だから名前が長くなったとしても変えれない、と。それだけは譲れないと言っていたと聞いた。」


天聖(てんせい)クラブとはアイツのファンクラブだ。まあイケメンだしあるよな、ファンクラブぐらい。しかも会長が同級生にしか見えない童顔と背の低さで顔も可愛く人気な担任の先生。そう、先生公認のファンクラブ。うん、イケメンならあるよね?いやねえよ、軽く500回は滅べ。イケメンだ全滅しろ!!!!くそ!!!


「私もぉ、神使会(しんしかい)にみんなが教えてくれたよぉ!!」


神使(しんし)(かい)とはこれまたエンジェルさんのファンクラブ。エンジェルさんが男だと知らずにファンクラブに入った男が3割。エンジェルさんが男でも、それでも好きなんだ!!と入った男が4割。腐った女子が2割。普通にエンジェルさんのことを友人としても異性としても好きという女子が1割程で構成されているファンクラブだ。あれ、あんな見た目だが、エンジェルさんも苦労しそう…。頑張れエンジェルさん。応援はしないけどな。


「俺だけかよ、なんも知らないのは。てか、店主どうしたん?君を思い出すとか遠くに行ったのような言い方じゃねえか?」

「えっとねぇ、奥さんと別居?したらしいのぉ~」


死別ぐらいしてるかと思ったよ!!!!!!ただの別居でよかったよ!!!?いや、良くないか!?!?良くないな!!!!


「そんな遠くに?」

「いや、奥さんは実家に帰られたらしいんだが、奥さんの実家は自宅から徒歩5分ほどだそうだよ、ジロウ」

「いや、ちっか!!!!!?え!?!?いつでも会えんじゃん!?!?!?」

「それでもぉ、悲しいんだよぉー。きっとぉ。」


そんなどうでも話をしていたら店員が1階から上がってきたようだ。足音がする。

しばらく待つと、40代ほどのダンディなおじ様が来た。体型は仕上がっていてがっちりとしていて、モテるだろうなあと思う容姿をしていた。

手には3つのケーキを置いたお盆を持っているんだが全然に似合わねえ!!!?!?


「……………お待たせしました。…………こちらケーキになりま

す。……………ゆっくり食べてください……。」


「声ちっっっっっっっっっっっっっさ!?!?!?!?!?今なんて言うたん!?!??」

「ジロウ、店主に失礼だぞ」

「そうだよぉ、ジロウちゃん~。思っていても言わないのがぁ、約束だと思うなぁ?」

「いや普通になんでなん!?!?聞けへんかったんよ!?!?」

「エセ関西弁失礼だぞ、ジロウ」

「せやかてぇ、ジロウちゃん~」

「エンジェルさんはいいんですか!?!?」

「ミーコもからかうのは程々にしないと」

「ミーコじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああい!!!」

「今更感すごい」


騒いでいたら消え入りそうな声が聞こえた。店長さんだった。


「………………じゃ、あの……………失礼します………」


話すのをやめて、店長さんをお見送りながらケーキを口に入れる俺たち。


「あ、店長さんありがとぉ~。ラズベリー味のこれ美味しい~!!名前忘れたけどぉ、ほっぺた落ちちゃいそうだよぉ~」

「ありがとうございましたー。あ、美味(うま)。このメロン味のケーキすっご。名前忘れたけど美味。」

「店主、騒がしくて済まない。……美味しい。ジロウ一口やるからそれもくれ。ほれ、あーん」

「いや嫌だけどぉ!!?何が悲しくて誰にも見えるバルコニーの席で男にアーンされきゃならないの!?ほらあそこに天聖クラブか、神使回の人達いるよ!?!?」


そう言って窓の外を指さし、アイツの提案を拒否する。


「いや、あれは……」


アイツは心当たりがあるのか、口篭る。それを代弁するようにエンジェルさんが爆弾を落とす。


「あれはぁ、“腐人の集い(ふじんのつどい)”だよぉ?」

「なにそれ初めて聞いたんだけど、腐ってて嫌な予感しかしない…」

「基本的にぃ、アイツくんとジロウちゃんの絡み待ちだよぉ?稀にぃ、私とアイツくんやぁ、私とジロウちゃんの絡み待ちしてる時もあるよぉ?」

「嫌だ聞きたきなかった。なんでエンジェルさんとアイツ絡みがメインじゃないんだよ。通りで最近いつもより女子が話しかけてくれないと…。俺は異性が好きなんだよぉぉおおおおおお」


「まあ、そんなわけで食べさせてやるよジロウ」

「私もぉ、あーんしてあげるぅ~」


「俺は!!!女の子が!!!!好きなんだよぉぉおおおおおお」



この心からの叫び声を、駅周辺の人通りが多いこの場所で叫んでしまった。

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