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1 『人違い』

俺の隣の席には異世界から転生してきた天星(てんせい) 愛津(あいつ)という男がいる。

いま厨二病だと思ったろ。絶対思ったろ!?俺、高校生だから!?いや違う!そうじゃない!年齢的な問題じゃない!

違うんだ、本当に異世界から転生してきたんだよアイツは!!多分!いや絶対!いや、俺、誰に言い訳してんだろ……。まあ、いっか。

とりあえずアイツは男女ともに惚れる程の美形だ。日本人では有り得ない天然の金髪に青眼という色彩に王子様のような顔立ち。(両親は生粋の日本人らしく、アイツが生まれた時は母親の浮気が疑われたがDNA鑑定で調べた結果浮気ではなかった。なのにあの色彩!?おかしくね!?)

ぶっちゃけ、そこら辺の女より……いや、俺の記憶にある女の中でアイツに勝てる者は存在しないぐらい、アイツは綺麗だ。男にモテてるのは同情するが、女にモテているのが羨ましい。これだから美形は……。


「ジロウ~~~~~!」


何故か心の中で少しでもアイツの事を考えると本人が来る。例えトイレでも。トイレはプライバシーなのでやめて頂きたいのだがな。あ、さっき男にもモテるという話をしたが俺は至って普通の男子校生だからな。同性じゃなくて異性が好きなんだ。そこんところヨロシク。いや、だから誰に言ってるんだ俺。……まあ、毎回お目当ては俺じゃなくジロウさんという人らしい。いつも叫んでいる。……うん、そしてこの化け物並みの肺活量。いま、タイマーで測ってみたんだが45秒だった。マイク無しのあの大声でその秒数叫べるとか人間じゃない。


「ジロウーーーー!」


お、今度は35秒。タイムが縮んだな。疲れが出てきたのかな。


「ジーーーーロウーーーー!」


なん、だと。1分超えだと……?


「ジロウ?」


段々近づいてくるアイツ。遂に目の前まできやがった。まあ、いつも通りに(俺が)通り過ぎるだろう。


「ジロウ」


初めて叩かれた。


「それ俺だったのぉぉおおおお!?」

「ジロウ?」

「俺がジロウ!?」


1週間が経ち漸くジロウが俺だとわかった。じゃあ、まじで、今まで俺のことを目当てに来てたんっ!?!?


「ジロウ?大丈夫?」

「いやお前の頭が大丈夫かよ」

「……っ!」


いや、気付かなかった俺が悪いけど1週間フルシカトしてたのによくめげずに話しかけられるな。俺ならメンタルズタボロの粉砕骨折してるとこだ。そんな事考えてると、思わず本心を言ってしまった。泣かせてしまった。男泣かして誰得だよ!クソ!

言い過ぎたかもしれないと謝ろうとすると、ボソボソと聞こえてくる小さい声。お前、さっきのおっきい声どこ行ったん!?


「…………ジロウが…………ジロウが……返事してくれた……っ!…………それに……心配まで……グスッ…………ジロウゥゥ」

「いや、うん、なんか多分思ってる心配と違うと思うけど、なんか、すまん」

「ジロオオオオオオオ」

「おい、来んな!汚ぇええ、いや鼻水制服で拭くなよ!?やめろぉぉおおおお!!!せめて、せめて自分ので拭けぇ!」



泣きながらアイツに抱きつかれる。女子たちのキャーという声が聞こえるが、どうしようこれ、恋敵認定されたら……。いや、俺は異性が好きなんだからね!?……待て!?アイツが同性愛者だとしたら!?非常に不味い。女子にモテたいのに、妬まれたらどうしよう女子怖い。てか、まじ離れねぇコイツ。俺も男なのにビクともしねぇ!なんだよコイツ。


てか、まじでジロウ誰だよ




****


ー入学式ー


「きゃあー!あの人カッコイー!」


女子が噂をする方を見ると、そこにアイツがいた。目が合った気がした。女子ならときめくかもしれないが俺は男だ。そこんとこ宜しく。


「ねぇ、君、名前なんて言うんだい?」

「……」


学校から帰ろうと校門へ向きを変え歩き始めると、後ろから声が聞こえた。少し振り返ってみたがアイツだった。俺に話しかけてる訳では無いだろうし、そのまま歩き始める。


「僕はね、愛津っていうんだ」

「……」


前に進んでいるはずなのに一向に遠くならない声。今も尚、後ろで話してる様な。流石に考えすぎだと思い気付かないふりをしてまた進む。


「気軽に、愛津って呼んでくれ」

「……」


気の所為ではない、様な……。いやしっかりしろ俺。恐怖を感じ始めたので、少し早歩きにする。


「君の名前は?」

「…………」


離れない、なぜだ!怖すぎる。絶対意地でも振り向いちゃいけない奴だコレ……。


「ジロウって呼ぶね!」

「……」


ジロウって奴が後ろに一緒にいるのか。成程、声が小さいからアイツが1人で話してるのかと思ったがもう1人いるならおかしい事ではないか。帰りの方向が同じだったんだろう。


ってジロウぅぅぅぅ!?!?!???




****



あれか……何も言ってねぇのにジロウってどこから来たんだよ。いや、そもそもあれずっと後ろに張り付いてたってこと!?怖すぎる。まじで怖すぎる。いや、恐怖しか感じないんだけど!?いや、今の嘘!身の危険も感じてるんだが!?!?いやこれも恐怖か!?恐怖だわ!!!!


いい加減離れろよぉぉぉおおお!!!!俺が泣きそうだわ!!!



「ジロウ……」

「いやいやいや!?だからジロウって誰なんだよ!!!!!?」

「……?ジロウはジロウだろう?」

「いや俺ジロウちゃうし!?!?」

「なん、だと。いやジロウだろ!?」

「いやいやいやいやいやいや!?待て待て待てえ!?もう入学して一週間経つよ!?!?座席表フルネームで書いてあるやん!?なんで俺の名前のとこ見なかったん!?」

「ジロウだから」

「いやジロウじゃねぇって!!!!!」


なんなん、こいつ!?何言ってもジロウにしたがる。怖すぎる。ジロウに執着でもあるのか!?いや、ジロウって俺の事らしいし、え?何?俺に執着してる?怖すぎ。



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