ここから始まる異世界生活・1
私、高橋葵27歳どこにでも居る普通のOL。
ちょっと腐が入ってはいるが、まぁ普通のOLってことで!
少しブラック気味な会社なせいで会社と自宅の往復だけの生活の中唯一の
楽しみはある人気アニメのBL同人誌。心の癒し!生きる糧!これの為に私は生き
ているんだ!と思うくらいにハマってしまった。
そして3日後には夏の一大イベントが開催され当然私もお目当ての
同人誌を買うために2週間前から準備をしている。準備というのは毎日寝る前に
お目当てのサークルがある場所に行く為の最短ルートを地図で覚えること。
現地で地図を広げながら行くなどありえない!そんな事をしていたらお目当ての
本が売り切れてしまうからである。その為事前にどこに目当てのサークルがあるか
把握しておかなければならない。なので2週間前から毎日寝る前の日課として地図
と進行ルートを覚えるべくサークル配置図とにらめっこしているのだ。
「むふ」
自然と笑みがこぼれる。
「むふふふふふ」
このにらめっこしてる間の至福な時間は最高の癒しである。これのお陰でいやな
会社にも我慢して行くことが出来るのだ。
そして今日の癒しも終わり布団に入り目を瞑る・・・・・・・・・。
だが今日に限って何かが違う。何が?と言われても説明しにくいのだが体全体に
いやな違和感を感じて目を開けようとしても目があかないのだ。
浮いているような沈んでるような、体の感覚があるようなないような、なんとも
言えない不快な感覚に身悶えていると瞼を閉じていても分かる光のようなものがあ
たり、さっきまで開かなかった目が開けれることに気が付きそっと目をあける。
目の前には見たことの無い天井があった。
体の方はさっきまであった違和感が消えた代わりに倦怠感がすごかった。
光に目が馴染むまで何度か瞬きをし、あたりをキョロキョロと見渡すと近くに人
がいる事に気が付いた。
「目を覚まされましたか異界人様」
「・・・・・・・・・」
そこにはアニメで出てくるような澄んだ水色の腰まであるサラサラヘヤーと金色
な瞳に見たことの無い衣装、その脇に控える二人のメイドのような人。その横には
なんと!なんと!宝塚顔負けな男装の麗人が騎士の姿で立っているじゃないか!
艶やかな漆黒の髪に青みがかったブルーの瞳!そして美少年のように整った顔立
ち。超私好み!!!
(実は宝塚もファンだったりする)
これはがんばってる私にご褒美の夢を見せてくれているのか!
「あの・・・お体の方は大丈夫でしょうか?」
「ああ~大丈夫大丈夫!」
水色の髪の少女が恐る恐る声をかけてきた。15~16歳くらいに見える少女は
見た目も可愛いが声も可愛い。
なんてすばらしい夢なんだ!お姫様ならこんな感じで!というのをそのままにし
た可愛い少女は片膝をつき左手を胸に添えて頭を垂れている。
「私はこの王国の第一王女ラウラ・アグドラル・ハームズワーと申します」
やっぱりお姫様のようだ。
たとえ夢でもここは一応名乗っておいたほうがリアルな感じでよさそうだ。
上半身を起こした状態から正座をしてラウラ姫の正面を向き軽くお辞儀をする。
「私は高橋葵と言います、よろしくね」
ラウラ姫は頭を垂れたまま話を続けるのだがその話の内容がとんでもなかった。
「葵様、この世界は葵様のおられた世界とはまったく別の異世界でございます。」
「は?!」
異世界とな!
よく漫画や小説で見ていたので一度は行ってみたいなぁ~とは思ったけど、夢で
まで見るとは「どれだけ行きたかったんだよ自分!!」と、ちょっと恥ずかしい気
もする。
「この世界は海を隔てた大陸も合わせて10の国があり、その国々には必ず1個の
召喚の珠を所有しております。その珠はある一定の期間が経つと使用可能になり
異世界から一人召喚をする事が出来るのです。」
「へぇ~すごいな」
設定もあるなんて随分細かい夢だなぁなんて気軽に話を聞いていたら。
「諸事情により使用可能になるとすぐに召喚の儀を行う決まりになっておりま
して、このたび葵様が召喚されました。召喚される方は毎回夢だと思うようなの
ですがこれは現実でございます。」
「へ?」
現実?夢ではなくて?そんな馬鹿な話は物語の中だけで十分です。
「またまた~これが現実なわけないじゃない」
と笑っているとラウラ姫は頭を上げてこちらをじっと見つめてくる。こんな可愛
い子にマジマジと見られると同じ女性でもちょっと照れてしまうものだ。恥ずかし
くて顔を横に向けると鏡があり自分の姿が映っていた。
そこには15歳くらいの見たことのない美少年が映っていた。どういう事か意味
も分からず顔に手を添えてみたが、映っている少年も同じ動作をしていた。手を
上げてみたりほっぺたをつねってみたり色々してみたが、1番実感がわいたのが
皮肉にも正座をしたままだったために足が痺れてしまうというとてもリアルな感覚
であった。
あまりの痺れに前につんのめっていると心配したラウラ姫が近寄ってきてその花
の様な香りにギョっとした。
痺れに匂い、ここまでリアルな夢は今までに1度も見たことは無い。あまりの
出来事に頭の中がパニックを起こしていると
「ご心配には及びません。
葵様のことは我が王家が誠心誠意お世話させていただきます。」
そう言って微笑んでいるが問題はそこじゃないんだ。いやそこも一応問題では
あるんだけどその前にここがもし本当に現実だとしたら1番の問題がある。
「あのぉ~どれくらいで帰してもらえるんでしょうか?」
そう言ってお姫様の顔を見ると何故かすごく驚いた顔をしている。
これってまさか・・・・。
「申し訳ございません。
文献では今まで召還された異界人様はこちらの世界に召喚されたことを大層
お喜びになって誰も帰るということを言わなかったと・・・・・」
召還された奴等どんだけ異世界好きなんだよ!
元の世界そんなに嫌いだったのかよ!
たしかに仕事はイヤで何度も逃げたくなったけどBL同人誌が読めない世界など
私は認めない!というか異世界は夢の中だけでいいのでマジで帰してください。
「言う人が居なかっただけで帰れないわけじゃないですよね?」
と一縷の望みをかけて聞いてみたが現実は厳しかった。
「帰したことがないのでその方法があるのか存じ上げません」
頭の中が真っ白になった・・・・。