天界序列
「おはようございます。キリエル様。
私は、天界序列第三位のクルルフェ。
私どもに何かお役立てできるようなものはございますでしょうか?」
自分の序列をひけらかすように自信満々にいうクルルフェ。
俺がハワブカイ島に引っ越しをして来て一晩明けたあと、大きな船で天使どもがやって来たのだった。
代表で話をしているクルルフェを過去に見たことはある。
天界を制圧したときに城の奥で隠れていて、天界が制圧したあとに媚びへつらって来た奴だ。
正直うざったい。
早々に帰ってもらうのが一番だ。
「うん、ただちに帰ることだな!」
と笑顔でハエを追い払うように手をひらひらさせて言うキリエル。
キリエルの対応に焦り出すクルルフェ。
まさかすぐに追い返されるとは思っていなかったのだろう。
「しょっ、少々お待ちください。
我々は何もキリエル様に対して厄介ごとを持ち込みたくてやってきた訳ではございません。
引っ越して来たばかりで何も準備もできておらず、なにかとやることが多いだろうと愚考し、ささいなことでもお手伝いでもできれば……、と心から思いこちらにまいった次第。
ご覧ください。
あちらに天界で選び抜いたメイドを用意いたしました。
どのメイドも家柄はも間違いなく第一級天使
にあたります。
メイドとして使うもよし、奴隷として使うもよし、家畜として使うも良しですよ」
とさらっと恐ろしいことをのたまう天界序列第三位のクルルフェ。
天界は貴族としての順位の中に個別の序列の順位がある。
その序列は絶対であり、下位の者は逆らうことができない。
序列が一つ違うだけでボロ雑巾のように扱われている奴を過去に見たことがある。
だから、天使どもは下克上の精神が強い。
表では自分よりも上の順位相手に媚びへつらい。裏では自分よりも上位の者を絶えず蹴落とそうとしている。
そのギスギス感はとても好きにはなれない種族だ。
どちらかというと魔物たちの方が仲間意識が強い部族があり、自己犠牲をしてでも自分たちの集団を守ろうとする強さがあって脅威に感じることもある。
少し話はずれたが、天使どもは序列に対する縛りがあるものの、仲間意識が全くない奴らで、気を許せない奴らだ。
とっとと帰ってもらうに越したことはない。
「もうそういうのはいいからさっさと帰ってくんないかな?」
イライラしながら言うキリエル。
俺はもうめんどくさい奴らと関わりたくないんだ。
それなんで、この無人島であるハワブカイ島に来たっていうのに。
「ちょ、ちょっとお待ちを。
ここに取り揃えましたメイドたちは必ずキリエル様のお役にたつはずです。
ですので、こちらに置いて行かせていただきます。
また、一緒にあの船も置いていきますので。
ちょっと豪華な贈り物になりますが、引っ越し祝いだと思っていただければ……。
なあに、次回の天界の序列選定のときに私を一位にしてくれればお釣りがくるってものですから、遠慮せずに受け取ってください。
ほかに欲しいものがあればじゃんじゃん持って来ますので……」
と勝手に言いたいことを勝手に言い出すクルルフェ。
まあ、結局、本音はというと、贈り物をするから自分を偉くさせてくれって話だ。
事実、俺が持っているスキルに『役職の選定』がある。これは、この世界の支配者がキリエルといことになっているかららしい。
だから、この世界の領地の設定などこの俺が誰かに許可を求める必要もないし、勝手に王や地域の支配者を決めることだってできる。
仮にもしもこの目の前にいるクルルフェを天界序列第一位にしようと思えばできるのだ。
だが、それはしない。
俺が勝手に決められるといったって、その後うまくいくものといかないものがあるからだ。
クルルフェの場合、昔から天界序列第三位だっったこともあってそのまま放置して来たが……、こうも来ると実害しかない。
「よしわかった」
「ありがとうございます」
一礼をしながら嬉しそうに言うクルルフェ。目を輝かせている。
天界序列第一位になれると思ったのだろう。これから奈落の底に落ちるとは知らずに。
俺はクルルフェに残酷に告げる。
「クルルフェ、お前は天界序列を剥奪し、最下位に落とす」