働かない
かつてこの世界は人の力では決して立ち向かうことのできない魔物や悪魔、天使などが徘徊していた。
人間は決してあらがうことのできない力の差に絶望し、ただただ、怯え、ひっそりと暮らすしかなかった。
だがしかし、ひとりの英雄の誕生によって人間の世界が変わる。
英雄の知略や今まで人間が持っていた力を引き出し、この世界に人としての権利を手に入れた。
人としての権利を手に入れるということは、領土が作られ、小さな村ができ、町ができ、国が生まれていく。
自然と国と国との連合が生まれていった。
ひとりの英雄によってかつてないほどの人間にっとっての栄華が始まったのだ。
だが、英雄はこの人間の栄華を築くために働き続け疲れ果てた。
そこで一つの結論に至る。
『もう、絶対に働かん』
そう確たる意思を決めた英雄の行動は早かった。
この世界の権力者たちを呼び集め、
「この世界で一番バカンスに向いている島、ハワブカイを俺の領土とし、もう二度と世界のために働かない。
自由に過ごさせてもらうから、俺のとこに厄介ごとを持ってこないこと!」
と宣言をした。
世界中の権力者たちは急に呼び出され、予想だにしなかった話を聞かされ、気絶したものや、泣き崩れたもの、野心に溢れた表情のものなど様々だったという。