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小妖精(ピクシー)

すみません。少し忙しかったため、今回はかなり短いです

「それに関しては、私からお答えいたしましょう」


 突如として降臨したララエルの第一声が、これであった。


「天使、様……」


「はい。

 あなたが幸生ですね。私はラルム様に仕える天使で、ララエルと申します。我が主より、あなたに現在の状況を説明するよう、仰せつかっております」


 部屋の中央に横たわるビクトの亡骸の前で、宙に浮いたように立つララエルは、そう言うとわずかな笑みをこぼす。

 金髪碧眼、容姿端麗、更に女性らしい丸みを帯びた美しい肢体と、正に天使と呼ぶに相応しい彼女から発せられる癒しの波動は、彼らの心を落ち着かせた。


「幸生、さん……」


「ああ、すまない。ちょっと驚いてしまって……」


 不覚にも見惚れてしまった幸生は、レーナからの呼び声で我に返る。

 だが、それは彼だけのことではない。


「天使……、本物なの?」


 同じようにララエルに見惚れる唯は、まるでアニメの世界から飛び出してきたかのような彼女の美しさに、ただ視線を注ぎ続けている。


「唯、あなたまで……」


 初対面となる2人と違い、レーナは彼女と面識があった。数日前に会ったリリエル、そしてこのララエルとは、彼女たちが誕生して――リリエルとララエルは生まれてまだ十日ほど――すぐにリナーテから紹介されていたのだ。そのため、彼女だけはその影響を受けないでいる。


「ララエル様、現在の状況とは、ビクトに関してのことなのでしょうか?」


「ええ、リナーテ様が何故このエルフの男を幸生に託したのか、その理由をお話ししなければなりません」


 果たしてビクトは生きているのか、それともやはり死んでいるのか。

 仲間であっただけにレーナは彼を心配していた。


(生きていて欲しい)


 そう思いはするものの、目に見えてわかる現実がそこにある。胸に穿たれた大きな穴。その状態で生きているなどあるはずがない。


「そうよね」


 現実を受け止めよう。彼女はそう決心した。






「それじゃあ、説明していただけますか?」


 うっかりララエルに見惚れてしまい、しばらく思考停止していた幸生が話に復帰する。幼女趣味と思われていた彼であったが、どうやら大人の女性にも反応するようだ。これは密かに彼への思いを寄せるレーナには朗報である。

 最愛の妹、夢愛を溺愛する様子に「大丈夫かしら?」そう思っていた彼女だが、実は正常だったのかも、と改めて見直すことが出来た。


(うふふ、まだチャンスはありそうね)

 

 そんなことを考えていたのだが、もちろん表情には出ていない。

 




「では、これまでの経緯を順に追ってお話しいたしましょう」


 ようやく唯が会話に復帰できたところで、ララエルは話を始めた。


 まず彼女が話した内容は、エルフの村リベルタで起きた『破壊の魔人アウル』による惨劇である。


「そんな……、酷い……」


 レーナはショックのあまり崩れ落ちた。というのも、その村にはまだ多くの仲間たちがいたはずなのである。村が襲われたという話は聞いていたが、ここまで酷いとは想像していなかったのだ。


「生き残った者たちはいないのですか?」


「女性や子供、戦えない老人などはすぐに避難しましたが、残った者たちは彼らを逃がすために犠牲となりました」


「そうですか……」


 ララエルから伝えられたつらい現実。

 彼女の仲間であった者たちは、間違いなく死んでいるだろう。それを悟ったのだ。


 一方、その話を聞いていた幸生は『彼を止めなければ』と、改めてそう誓いを立てた。


 破壊の魔人アウル、その存在を作り出したのは紛れもない幸生自身である。そのため、真実を知った今も、彼はアウルを憎めないでいる。


「これは僕の失態だ……」


 勿論そんなはずはないのだが、そう思わずにはいられなかった。

 本来の性格を知っているだけに、なぜ彼にこんな役を押し付けてしまったんだと、後悔しているのである。




 とはいえ、ここまではまだ本題ではない。ビクトがここに連れてこられた理由、それが問題であった。

 

 ララエルはビクトの身体に両手をかざす。


「見ていてください。【アピアー】」


 その言葉と共に、彼女の両手から淡い光が漏れ出し、ビクトの身体を覆いつくす。その後、徐々に露になる小さな体。彼の胸に穿たれた穴を覆い隠すようにピッタリとくっつき、まるで心臓の代わりでもするかのように小さく揺れる。それはとても小さな妖精とでも呼べるような生き物だ。


小妖精(ピクシー)?」


 幸生の目にはそう映った。だが、レーナは驚愕の表情を浮かべている。


「まさか、世界樹の……」

 

「ええ、彼女の名はミライ。幻影の森を守る世界樹の精です」


 名前のある妖精。それが意味するところは、名を付けた者がいるということだ。


「もしかして、彼が……」


「そうですね、その恩なのでしょう。この死にかけのエルフの男を、彼女は自らの命を削り守っているのです」


 ララエルから語られた衝撃の真実。世界樹の精がこの地にいるということは、つまり……。


「幸生様! エルフの里が危ないわ!」


 夢愛やマリナが助けに向かったエルフ族の里。そこは守り神となるべき世界樹の精が離れてしまった危険な土地なのである。


 



    

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