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新しい仲間

今回は少しわかりにくいかと思いますので、軽く流していただいて構いません。

 幸生たちの新たな仲間として、マリナが加わった。彼女の正体は、AI将棋の第3期生だ。おっとりとした性格で人当たりも良く、対戦相手からは理想の花嫁と呼ばれ大人気であった。そんな彼女になぜ緑小鬼(グリーンゴブリン)という役が与えられたのかというと、それは彼女のイメージによるものだ。棋士時代のマリナは、特に美人というわけでもなく一般的な顔立ちをしていたため、スタッフの間では人気が出ると思われていなかった。それを証明するかのように、初期の段階では彼女と対戦するものがほとんどいない。それでも、数少ない対戦相手を敬い誠実に対応し続けていた。その結果、マリナは第3期のメンバー中、1番人気を獲得したのである。


『私が今あるのも、優しく見守っていてくれる皆様方のおかげです』


 これが彼女の口癖であった。常に対戦相手を尊重し驕ることなき姿勢は、彼女を支持する者たちに安らぎを与えた。結果、癒しを求めた者たちが殺到したのだ。カンビオエルフとは進化する妖精という意味である。苦労した結果、報われる。そんな役どころが彼女なのである。




 檻に閉じ込められたパンプキンちゃんを救出した幸生たちは、マリナの道案内で廃坑を出る。その間、幸生は彼女に事の詳細を尋ねた。ここで何が起きていたのか、それを明確に知る必要があったからだ。

 彼女が語った内容はこんな感じである。


 数日前、この辺りを散策していたマリナは、カボチャのマスクを被った男に捕まってしまった。男は自分をパンプキンヘッドと名乗っていたが、それが嘘であることは明白であった。というのも、男は彼女をゴブリンと呼んでいたのだ。本物のパンプキンヘッドであれば、カンビオエルフである彼女を知らないはずがない。そもそもパンプキンヘッドは上位精霊だ。彼女に手伝わせたいのなら、命令すればいい。マリナを捕らえた時点で偽物確定なのである。

 男は自身の持つスキル調教師(ティマー)で、彼女を使役しようとするが失敗に終わる。というのも、その能力は魔物や動物が対象であり、妖精である彼女には効果がないからだ。本来ならマスクの本体であるジャスティスが何か言いそうなものだが、彼が伝えた言葉は「隷属の紋を使え」だけだった。これにより、マリナはこの男の奴隷となったのである。


 彼女に与えられた仕事は、キラープラントたちへ魔力を注ぐこと。と言っても、彼女が直に行うわけではない。廃坑前広場に設置された特定の場所にキラープラントを連れていくことで、魔力を与えることができるのだ。その仕組みはラフレシアにある。

 3体のラフレシアのうち、真ん中にいたのが本体だ。右側にいるラフレシアの根は広場全体に広がり、左側にいるラフレシアの根はパンプキンちゃんの囚われていた檻とつながっている。檻から吸収された魔力は左側のラフレシアを通り、本体である真ん中のラフレシアに蓄えられ、右側にいるラフレシアの根に少しずつ送られる。地中とはいえ、浅い位置に伸びた根からは魔力が漏れ出ているため、キラープラントたちをその位置へ連れていくだけで魔力を与えることができるのだ。

 上位精霊であるパンプキンちゃんの魔力を与えられたキラープラントたちは、新たな進化を遂げるはずだった。しかし、男の目論見むなしく、キラープラントたちの進化は見られない。もっと大量の魔力を与えられたのなら、違った結果が出たかもしれない。だが、もし一度に大量のキラープラントが進化したら、彼の身が危険にさらされる。上位種ともなれば、彼の支配から外れる可能性もあるからだ。とはいえ、パンプキンちゃんの魔力も残り少なくなく、新たな進化は見込めなくなってしまった。そこで、危険を承知で麓の町を攻め、戦いの中で進化を促そうとしたのである。


「じゃあ、魔力阻害装置が起動していても魔物たちが動けた理由は、ラフレシアの根から魔力を得ていたから、ってことでいいかな」


「はい、そうです。ただ、起動スイッチは常に男が持っていましたので、止めるには装置そのものを壊すしかないと……」


「それで、自分を犠牲にしようとしたわけか」


「申しわけありません。幸生様をお見かけして、本物のパンプキンヘッド様を救出するなら今しかないと思い……」


 自己犠牲の精神、それを尊重するわけではないが、彼女の行いを否定する気持ちは幸生にない。ただ、平和な日本で暮らしてきた幸生には割り切れない思いもある。それを行ったのが、ゲーム時代の記憶がある元AIというのなら、なおさらだ。


「ありがとう」


 彼の口から出た言葉は、この一言だった。その理由はパンプキンちゃんを救出できたからではない。AIでしかなかった彼女が、この世界に適応し大切な心を育んできた。彼女の人としての成長を感じることができ、幸生は嬉しかったのだ。

 とはいえ、お礼の言葉を述べる幸生の意図が分からないマリナは、戸惑った表情を浮かべていた。





 一方、地上の様子はというと、すでに魔石の回収は終わっていた。廃坑前広場には丸テーブルと椅子が用意され、ハヤトとロイが腰かけている。シンノスケはハヤトが乗ってきた馬を回収し、子猫モードとなって一緒に遊んでいた。

 テーブルにはお茶請けのクッキーが用意され、今は唯がティーカップに飲み物を注いでいる。


「ハヤト様は紅茶でよろしいですね」


「おう、すまねえ。いただくよ」


 ハヤトはまだ湯気の出るカップを手に取り、口へ運ぶ。少し熱そうにしながらも、彼の表情は満足そうだ。美味しそうに一口飲むと、お茶請けのクッキーにも手を伸ばす。


「おう、さすが嬢ちゃんだな。うめぇわ!」


 そう言って、美味しそうに食していた。

 次に唯は、まだ怠そうにしているロイにココアを渡す。魔石の回収を手伝ってはいたが、まだ体調はすぐれないようだ。


「お疲れのご様子ですので、ロイさんにはココアを用意しました。疲れた時には甘いものが一番ですよ」


「ココア? ……ありがとうございます」


 聞きなれない飲み物に首を傾げながらも、鼻先をくすぐる甘い香りに誘われた彼は、カップに手を伸ばす。温かなココアを口に含むと、目を丸くした。


「うまい‼ なんですかこれ?」


 カカオ豆から作られるココアは、まだこの世界に普及していない。カカオの木を生産しているのは、オオエ男爵領のタワイ村1つだけであり、その利用方法も調味料の一種としてである。最近では【喫茶ヤマガール】の店長がケーキに利用しはじめ、徐々にその知名度が上がりつつあった。とはいえ、実際は唯やドルチェの手によって、チョコレートに加工され、クッキーなどにも使用されている。


「カカオ豆から作った紅茶です」


「へえ~、こんな紅茶もあるんだな」


 本来、平民である彼が高級な紅茶を飲む機会は、あまりない。普段は白湯か茶葉に適した野草を使った花茶のようなものだ。そのため、何の疑いもせず、美味しそうに飲んでいた。もし、その原料がレアな調味料であると彼が知ったなら、卒倒するに違いない。


 こうして3人で寛いでいると、ハヤトのもとにシンノスケが近づいてきた。


「ハヤト殿、こちらに向かってくる気配がありますぞ。その数、5人でござる」


 常に周りを警戒していた彼が、人の気配を感じ取ったようだ。


「ああ、心配するな。たぶんアイツらだ」


 ハヤトは近づいてくる人物に心当たりがあるらしく、気にする様子もない。それを聞いた唯とロイも警戒を解いていた。


 そこへ、まだだいぶ離れてはいるが、5つの人影が姿を見せる。彼らは辺りを見回し、現場の惨状に驚きの声をあげる。


「ひでぇな、これは……」


 がタイのいい男がそういうと、隣にいた女性がそれに答える。


「一面焼け野原といった具合ですね。一体ここで何があったのでしょうか……」


 魔物の死体がごろごろと転がっている凄惨な現場にも関らず、彼女は冷静な様子だ。だが、一緒にいる少年と2人の少女の顔は青ざめていた。


「ロイは大丈夫なの?」


「もう、アイツどこ行っちゃったのよ! あれほど、あそこから動かないでって言ったのに!」


「ロイのことだから、きっと無事だよ!」


 仲間のロイを心配するのはノアとその姉のニア、それにレントである。彼らは冒険者ギルドに報告した後、2人の人物を連れ、またここに戻ってきたのだ。3人が案内するのはジョワラルム冒険者ギルドのマスター【グラン】とサカオ町の冒険者ギルドで受付嬢をしていた【サオリ】である。グランは元Aランク、サオリは元Bランクの冒険者で、一時期同じパーティに属していた。そのため、Cランク冒険者パーティ栄光(グランツ)が全滅したと聞き、自らこの場に赴いたのである。


「おい、あそこに誰かいるぞ!」


「3人のようですね、休憩中でしょうか?」


「「「あっ!」」」


 その時、何かを見つけたのか、急に少年と少女が走り出した。そんな彼らの行動に驚き、グランとサオリも慌てて後を追う。


「おい、待てよ!」


「あなたたち危険よ! 戻ってきなさい」


 2人は少年たちを止めようとするが、興奮した彼らの耳には届いていないようだ。だが、グランの目にもそこにいる人物が映ると、彼は足を止める。


「ハヤトか!」


 彼の呟きを聞き、サオリも同じように足を止めた。ノアはハヤトと一緒にいる少年に飛びついている。


「ロイ! 無事だったのね」


「もう、心配したじゃない。大丈夫? どこかケガしてない?」


「まあ、俺は信じていたけどな……」


 3人がそれぞれ安堵の溜息をつくと、ロイはバツが悪そうに答えた。


「心配させてすまない。協力者が見つかって、一緒に戦ったんだ」


 そう言うと、彼の視線はハヤトに向いた。少年たちも彼の視線をたどり、ようやくハヤトの存在に気が付いたようだ。


「「「ハヤト、さん……」」」


 ロイにばかり意識が向き、3人とも彼の隣にいる人物が誰か、分かっていなかったのである。


「よう、お前たち。無事だったようだな」


 気さくに話しかけるハヤトに、驚きで固まる3人であった。


 

 


 

 

 

 

幸生の複雑な心境を表現する言葉が難しいです……。

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