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異変発生! 1日前 ②

グダグダです。

 こうして始まった、夢愛のデザインした衣装に着替えるだけのファッションショー。


 ラインナップは浴衣やチャイナ服、アオザイ、アロハシャツと多岐に渡る。ただ、そのほとんどに異世界らしい魔物の姿が刺繍されており、レッドドラゴンやラフレシア、クラーケンなどをモチーフにした斬新なデザインとなっていた。


「でもまあ、いくらゲームだからといって、魔物のデザインってのはどうかと思うぞ」


「そうかな~」


「あら、私はいいと思うわよ。ほら、身近で出会えるものじゃないし、どれもボスクラスの魔物でしょう。ああ、こいつを倒すんだなって認識が広まれば、プレーヤーのみなさんも気合が入るんじゃないかしら?」


 夢愛に対してダメ出しをする幸生と違い、レーナはそれを擁護する。

 もちろん、実際に異世界人が魔物のデザインされた衣装を着ていたらドン引きであるが、あくまでもここはゲームの世界だ。やり過ぎるくらいで丁度いいのかもしれない。


 




 と、そんな感じで夢愛のデザインした新作衣装を十分堪能した彼らは、元の服装に戻ることにする。


 幸生はチノパンにポロシャツ、その上に白衣。夢愛は赤のパーカーにショーパン、ニーハイという姿で、靴は二人ともスニーカーだ。

 

 二人の衣装は翔(かける)と同様に装備品で、魔法が付与されている。

 スニーカーにはスピード補正50%アップ、チノパンとショーパンにはスタミナ補正50%アップと、翔と変わらないが、幸生の白衣には魔法耐性70%カット、夢愛のパーカーは魔法攻撃無効となっていた。

 さらに二人はプロテクトリングと呼ばれる指輪をつけており、使用することで目の前に大きな見えない盾を作り出すことができる。

 そんな彼らの衣装は、攻撃、魔法と、どちらに対しても有効なチート装備であった。


 




 その後、三人で雑談していると、魔法陣が黄色く輝きだす。

 これは誰かがここに現れるということであり、出ていくときは青く光る。


「兄貴!」


 魔法陣から現れたのは翔だ。


「話があるんだが、ちょっといいか?」


 どうやら彼には深刻な悩みがあるらしく、その表情は硬い。


 けれど、この場には問題児の妹がいるわけで。


「カケルお兄ちゃんモフモフ~‼」


 と、すぐさま兄に飛びつき、犬耳や尻尾をモフりだす。

 というのも、彼のアバターは犬耳人族という亜人種であり、モデルとなった犬種は秋田犬だ。


「くっ、やめろ! 離せ! コラっ、モフるな!」


「あらあら、ユアちゃんたら」


 先ほどの深刻そうな表情はどこへやら。翔は必死で妹を引き剥がそうとするが、彼女はなかなかにしつこい。

 そんな兄妹の仲睦まじいやり取りを、レーナは楽しそうに眺めていた。


 そもそも幸生が自分そっくりのアバターを使用する理由の一つがこれである。その姿を初めて見た時、ドン引きしたのだ。可愛い妹が甘えてくるのは嬉しいが、さすがに部下の前では示しがつかない。

 ここは弟に被害を被ってもらおうと、今の姿にしたのである。


 とはいえ、放置していたらずっとこのままなので、幸生も手伝い夢愛を引きはがし、彼の話を聞くため二人には席を外してもらう。

 というのも、もしかしたらその内容が、ゲーム内の禁則事項に触れるかもしれないからだ。


「で、話ってなんだ?」


「ブラックユニコーンと一角ベアの件なんだけど、どうなったかと思ってな」


「ああ、そのことか……。まず、結論から言おう。いないんだよ、どこにも……。カネダ子爵邸も調べたが痕跡もない。まあ、NPCたちが僕に嘘をつくことはできないからね。一角ベアも存在していた履歴がないし、魔物の数だって把握しているが、一角ベアは一頭も減っていないんだよ」


 当然魔物たちもデータとして管理されているが数も多く、調べるには時間がかかる。そうして苦労したにもかかわらず、おかしな点は見つからなかったのだ。


「現に僕がそのユニコーンの姿を見てるから、おまえの言うことを信じてないわけじゃないが、まだ謎だらけだと思ってくれ」


 翔の送った映像をその場で幸生も見ており、それが真実であることは疑いようもない。

 けれど、その証拠がないのだ。


「わかった、あとは兄貴に任せるよ。また何かあったら教えてくれ」


「ああ、その時に」


 ゲームシステムとなれば翔は管轄外だ。これ以上は彼にできることなど何もない。あとは兄に任せるだけである。


 とはいえ、彼の疑問はそれだけではないようだ。

 

「それともう一つ、さっきまでジョワラルムの冒険者ギルドでギルマスのハヤトさんと話してたんだが、ずいぶん流暢に話すなって思ったんだよ。他の連中は、まだぎこちなかったり、変な間があったりするんだけど、彼は普通に話すぞ! AIってあそこまで進歩するもんなのか?」


 そう、それは幸生自身も不思議に感じていた。


「あ~、やっぱりそう思うか? 僕も、レーナさんが自然すぎて不自然っていうか、なんか違和感があるんだよなぁ」


「実は二人共アバターで、開発課のスタッフの誰かなんじゃないのか? まあ、俺達に隠す理由はわからんが……」


 二人が知らないだけで、実はスタッフだった。その可能性も否定できないところではあるが、幸生はその考えに違和感があるようだ。


「う~ん、どうかなぁ。なんか違う気がするんだよなぁ。なんとなくだけど……」


「そうか。まあ、いずれわかるだろ。じゃあ、これも保留だな!」


 そういって話を終えた。

 




 その頃、隣の部屋にいるレーナは幸生について夢愛に尋ねていた。


「ねえユアちゃん。ユキオさんは、まだ私のこと気がついてくれないの?」


「ごめんなさい。お兄ちゃんは頭はいいけど、ポンコツだから」


「……ポンコツって」


 そんな話をしていた。





お読みいただき、ありがとうございます。

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