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タイプライター
(潮崎レオルさんから頂いた単語で)
どうしたんだろう
浮かない顔をしているな
泣いてはいないけれど
どこかが痛いのだろうか
悲しいことでもあったのだろうか
完成させなくちゃ と
とりあえず君は僕に紙を差し込む
難しい顔
お隣の意地悪なおばさんに何か言われたのか
堅物編集者に急かされたのか
カタカタカタ
タイピングはいつもよりゆっくりだ
黙って打ち込む姿
たまにカフェオレを一口含んで熟考
打ち続けて休まない指
微妙に潤む瞳
見惚れるばかりの僕は何も出来ないし言えない
一文字だけでも自分で打つことが出来たなら
楽にできるだろうか 君の心
ローラーを引く手は冷えて とても寒そうだ
だからと言って 僕には温めることもできないのだけれど
独り言でもいいから、聞かせて欲しいよ。
浮かない顔をしながらも、仕事を続けるその理由を。




