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新月
(天理さんから頂いた単語で)
めぐる年月の中
陰を見せるその日を待つ
月明かりが嫌いなのではなく
暗闇が深くなる瞬間が好き
窮屈な思いをしているだろう星屑
ずっとなりたかっただろう主役
くっきりとその姿を魅せる星座は
遥か遠く遥か昔の光のハルモニア
明るい空が持ちえない温かみ
見入って数分間こぼれる溜め息
きっとどこかで寂しいんだわ
私は星だけの美しさの中
勝手な願いを口にしてしまう
「ウサギの姿がまた見たい」
「いつものあなたに会いたいわ」
私の我儘は届いたのか
確信がなくても次の夜には月が昇り
理屈がなくても次の夜から恋焦がれ
レールの上を滑るような軌道に心奪われるのは
波乱の生を送る自分を落ち着かせるため
月が無い日は新鮮だけど寂しい。




