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ルポルタージュ
(涼葉さんから頂いた単語で)
これから事実だけを書き記そう
嘘だと思われても仕方ないほど
どこか浮世離れした話さ
才能というものを僕は持っていた
確かめる術はもう無い
生きていく上で何も苦労はなく
くじけたり膝をついたりもなかった
大衆の羨望を全身で受け
決定権は常に僕へ差し出された
たらふく旨いものを食べ
便利なツールを与えられ
連絡一本で誰もが動いた
確かめる術はもうないが
がらくたのように僕を見たのは
離れ小島から来た旅人
突然の出来事に順応する間もなく
朽ちていく自身を認めたくなくて
天国のような世間をもう一度
どれほど願ったことだろう
泡沫のさだめを知った落ち穂
亡霊に取りつかれわめく幼子
「ご自分でどうぞ」その言葉に怯え
選ぶことができない
生きていくのに迷ってばかりで
出られないのは無力になった証拠




