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境
(詩央さんより頂いた言葉で)
水平線を辿ったその先
キセキの街があるらしいんです
健やかな生活を送る人々
とても透き通った心と瞳
皆の笑顔が輝くような
名もなき町があるらしいんです
すぐにでも行こうとしたところ
老人に声をかけられました
魂の抜けたような声で彼は私に言いました
「宝物など見つけられないよ」
よく分かりもしないまま
まずは一目見ようと赴きます
水平線を辿ったその先
キセキの街は壊れていました
民は泣きながら文字を学び
ビルを建てるため荷を背負い
生きる意味を探し回り
隣国の発展を羨んでおりました
確かめようとしたキセキの形は
遥か昔に亡んでいたようです
水平線を辿ったもっと先より
利害という言葉を得たとのことでした
宝物は他の街に移ってしまったそうです
踏み越えたら最後。




