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天ぷら
(自分で繋ぎます)
たっぷりの天つゆに浸すようにして
天ぷらの衣を柔らかくして食べるのが好きでした
単価105円のお野菜たちよりも
もっと高値の海老や穴子や鱚ばかり注文しました
たいそう面倒な子供だったでしょう
美味いものの味わい方を知らない無粋な孫だったはずです
好き嫌いの激しい我儘っ子だったでしょうに
憎まれ口などただの一つもなく
「食え、食え」と恵んでもらいました
たくさんの親戚が野菜と魚介を交換してくれました
楽しそうにみんな笑っておりました
太鼓の音が聞こえてきて
手拍子が始まりました
確かに私はあの日を生きており
料理を一緒に囲む大人がずっと一緒にいればいいと
とんでもない願い事をお空にしたのでした
浜松のおばちゃん、おじちゃん、ありがとう




