されど父
第四章・・・されど父
ゆういち・・・ユウサクの実の父親
よしこ・・・・ユウサクの母親
りつこ・・・・ユウサクの叔母(よしこの妹)
祖母・・・・・よしこの実の母親
おんちゃん・・祖母の弟
ゆうこ・・・・おんちゃん娘(よしこの従姉弟)
たつや・・・・ユウサクのおじ(よしこの弟)
ひでき・・・・スナックのマスター
ユウサクが高知にきて4年目に入っていた。
ゆういちは離婚後会社を倒産。高知にでてきて所帯を持っていた。たびたびユウサクに会いにきては服やおもちゃを買い与えてくれていた。が・・・幼年期の記憶が色濃く残っていたユウサクはあまり父のことが好きではなかった。またゆういちの再婚相手にはユウサクより一つ年上の男の子の連れ子がいて、その兄のような相手は一生懸命ユウサクにやさしく接していたが、ユウサクが心をひらく事はなかった。(自分にはお父さんもお母さんもいない。なのにこいつは両方持ってる。)そんな思いがユウサクの心の中で「嫉妬心」として作用してしまったのも仕方がない事かもしれない。
ある日祖母がユウサクに告げる
「※おとうさんが迎えに来ると!明日来るきね、お洋服やおもちゃばぁかたづけとかないかんよ」
あきらかに不機嫌な祖母の態度にユウサクは疑問を口にする。
「おとうさんがくるなら、僕はお母さんとこには行かれんが?」
少し間があり祖母は答える。
「まっことユウサクはませちゅうね!※おとうさんがよしこのところまで連れて行ってくれるきね!なーんも心配はいらんわえ」
納得できた訳ではなかったが(母に逢える)それだけ確認がとれればユウサクには後の事はそれほど大事な事には思えなかったので、それ以上詮索はせず、素直に祖母に従った。りつこがいっしょに(というかほとんどりつこが)片付けを手伝い、涙ながらに「ユウサク、ねえちゃんの事忘れたら承知せんきね!」なぜ泣くのか?わからぬユウサクはこう言う。
「うん、僕大きくなったらりつこ姉ちゃんと結婚するき!迎えにくるきね!まっとうせ」
「ほんに・・・どれぐらい待つろーね、ユウサクが大人になるまで」
泣き笑いしたりつこに胸をはってユウサクは笑う。
次の日、早朝に※おとうさんはやってきた。「御苦労さんやったねぇ・・・※ひできさん、よしこの具合は?どうですろー」
「ちょっとしんどいみたいやから置いてきましたけど・・・ほんまは迎えにきたいってゆうてたんですけど、一人やないんやから、ゆうて置いてきました。」
そこには父の姿はなく・・・・そうあのスナックのマスターがいた。
(お父さんと違う)
「ユウサクくん久し振りやな!今日からおっちゃんがおとうさんやで」
頭をなでられながら説明をうける。どうやら母はこの男と夫婦になっているようだ。あのおばちゃんは?(ひできの元妻)あの女の子は?(ひできの娘)どうなったんだろう。ひできが仮眠をとっている間、悶々と考え続けるユウサクであった。
夕方になり(一泊していけ)という祖母を振りきり、ひできはユウサクをつれて出発する。フェリーが出る港まで何時間もかけて山道をゆく。ユウサクが車酔いするようになったのはこの日からではないだろうか。
丸一日かけて西宮のスナックについた時まっさきにあいたかった母は迎えにも出ていなかった。(お母さん!)靴を脱ぐのももどかしくかんじながらスナック(昼は喫茶店)の裏口から上ろうとすると・・・誰かに突き飛ばされる!
転んだユウサクが上を向くと女の子がこちらを見下していた。
「あんた誰?勝手にうちに上がらんといてや!」それを見たひできは、
「こら!ちえ!きょうからユウサクは兄妹になるんやから仲ようせなあかんでってゆうとったやろ!!」
「うちそんなんしらん!」
バシイッ!ちえはひできに頭をはたかれた。「パパぁ、うち悪ないのになんで叩くん!うえーん」泣きだしたちえを横目にユウサクは家に上がりこみ「お母さん!」
部屋に上がると母がベッドに座っていた。
赤ん坊に乳を飲ませながら。
「ユウサク、しんどかったやろ。おとうさん運転荒いからなぁ」
「お父さんやない!おっちゃんや。」
「あかん!今日からお父さんっていわな!ええな!」
厳しい口調でそう告げられ、なにもいえず抱きしめてももらえず。
(高知へ帰りたい・・・)
久し振りに枕を濡らしながら眠りにつくユウサクだった。
つづく




