別れと始まり
最終章・・・・別れと始まり
この章で、ユウサクの少年期の話はほぼ終わるのだが・・・それに伴いユウサクが小学校の時にトラウマになった事から語らねばならない。
ユウサクの母よしこには姉のはるこ、妹のりつこがいる。そして物語に登場していない弟(ユウサクの叔父)たつやがいた。りつこは3人とは父が違い、一人娘として育ったが、親思いの素直な娘に成長していた。
一方たつやは末っ子としてわがままに育ち、中学の頃から素行が悪く、ロクに高校もいかないまま悪い友達とヤクザの事務所にいりびたり、そのまままるで「就職」するかのように構成員になっていた。
ユウサクが初めてたつやに会った記憶はたつやが結婚した時だ。まだ小学校にあがったばかりで記憶もあいまいだが「盛大」な式だったのは覚えている。そしてたつやの妻のりこが美しかった事も・・・
ユウサクはたつやが苦手であった。恐ろしかったのである。うちに来て酒を飲んではよしこと大ゲンカし(兄弟のうちこの二人は大変仲が悪い)激昂するが、ひできに諭されておとなしくなる。(たつやはひできの事をほんとの兄のように慕っていた。)そして酔いが覚めると必ずいやがるユウサクを無理やり連れて風呂に入る。その時に半身にくまなく描かれた「刺青」がまたユウサクをおびえさせた。
それから何年かたち、たつやがひできの世話でまっとうな会社に就職する事になった。(今思えば足を洗ったのであろう。)そのお祝いにたつやとのりこがうちにやってきた。心ばかりの料理と酒をひできにすすめられ、たつやが泣き、のりことよしこもつられて泣いていた。不思議な光景だった。(いっつも喧嘩してんのに・・・)ユウサクには理解できなかった。
そして夜も更け、ユウサクは寝ていたが、話声や物音からしてどうやら二人は泊っていくらしい事がわかった。(やったー♪)ユウサクは喜んだ。たつやは大の苦手だが、のりこは大変美しく、やさしかった。ユウサクはのりこが大好きだった。そのまま眠りについたユウサクは朝早く目が覚めた。(おしっこ・・・)むくっと起き上がったがとなりにはたつやとのりこが布団を引いて寝ている。起こすまい・・・とゆっくり脇を抜けようとするが、せまい部屋なのでうまくいかない。しかたなくまたいでいこうとしたそのとき、のりこが寝返りをうち布団がめくれた。
よしこから借りたであろうネグリジェ姿に目はくぎづけ(ませた8才です。)まっ白いすきとおるような肌が透けてのぞいた。うつぶせのその背中でユウサクは完全に息が止まってしまった。美しい肌のうえに、同じく美しい千手観音が描かれていたのである。(のりこおばちゃんも?)これからしばらくユウサクはこの光景を夢に見る事になる。
たつやが結婚したのりこは所属していた事務所の幹部の娘だった。
「足を洗いたい」というたつやの願いを聞き、ひできが骨をおり、その幹部のもとに出向いて話をし、組の許可をもらい、はれて「堅気」になれたのである。
それから7年、ユウサクが高校に入学してまもなく、よしこの元へりつこから電報が届く。「ハハキトクスグカエレ」
高知の祖母が倒れたらしい。よしこはとにもかくにも、自分より先にユウサクを飛行機に乗せた。「後悔せんように、あんたは世話になってたんやから!」久しぶりの高知行きであった。
あれだけ頻繁に通っていた高知だったが、中学も2〜3年になると「おばあちゃんち」にいくのは億劫で恥ずかしくなっていた。しばらくは電話などがあったが、「男の子やきね、しょうがないちや」祖母はよしこにそう漏らして、高知にこさせるのをすぐあきらめた。
ユウサクがひとりで病院までいくとたつやが待っていた。「おれは30年おうてへんかったけど・・・いちおう生みの親やからな、お前はさんざん世話になっとったんやろ!はよ顔みしたれ。」
たつやにそういわれて病室にはいったが・・・・もう口にまでチューブが差し込まれていた。もちろん意識はない、テレビでよく見る光景をまのあたりにして(もう助からないんだ)ユウサクにもそれはわかった。
その晩祖母は亡くなった。不思議と涙は出なかった。(自分は冷たい人間なのだろうか?)まわりはみんな泣いているというのに。お通夜が次の日になったので、ユウサクはたつやと同じ部屋で眠りについた。しらふでひどくまじめなたつやといろいろ話した。高知の事、高知に住む親せきの事。次の日は朝早くにたつやに頼まれて、一緒に親戚のうちを尋ねて、たつやは自己紹介をしては頭を下げてまわった。(おつやでみんな会うのに・・・)ユウサクはそう思っていたが、たつやはその前にみんなに顔を見せたかったようだった。
通夜が始まる少し前にひできとよしこが弟二人を連れて到着する。
またもやよしことたつやが、来るのが遅い、だの遅くない、だのと言い争いをはじめるが、姉、妹にたしなめられてすぐに終わった。
喪主はりつこか、りつこの主人が務めるのが筋なのだが、りつこの主人はたつやに、と願い出た。当のたつやは固辞していたが、祖母の弟であるおんちゃんに一言いわれてしまう。
「おんしゃあが息子っちゅうんはみいんなわかっちゅうき、せっかく立派な長男がおるのに娘婿が喪主じゃあ、本人もうかばれんろ?筋はちごうちゅうかもしれんけんど・・・黙ってやっちゃりや」
高知の親戚筋もこの一言で納得。本意ではないながらも見事喪主を務めた。(たつやのおっちゃん・・・けっこうかっこええな。)
葬儀その他無事とどこうりなくおわり、ユウサクは家族とともに福岡に帰る。そして休んでしまった学校へと戻り日常がはじまった。
それから数カ月の後、仲のよい友達と集まって話し合いをすることが多くなっていた。もうすぐ高校二年という頃である。議題は「どうすれば、女の子にもてるのか?」である。何か趣味を始め、ついでに彼女をゲットする!というなんとも稚拙な作戦会議であった。
(ちなみに小学校からの仲のあの3人組とは、高校に入ってあまり遊ばなくなっていた。中二から友達が増えたユウサクは他にも交流ができていた。そして・・・今思えば、この会議に参加していた4人が、ユウサクにとって生涯の友、と呼ぶべき存在になるのである。)
結果・・・サーフィン、バンド、このどちらかに的を絞っていこう!
そう決定したのであった。ユウサク16才の春、あと4か月で17才を迎える頃であった。
少年ユウサク物語・・・・・・・完
ここまで読んでいただいた方へ・・・どうも有難うございます。これから第二部にむけて構成を考えていきます。(実は先に書いた完成稿があるのですが、完成度が低い為書きなおそうと思っています。)ご期待下さい。