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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

もかまき。

作者: 珠洲鈴涼理

「マキちゃん大変! わたしとマキちゃんが付き合ってるって噂が流れてる!」

「落ち着いてモカちゃん。何か問題でも?」

「いやどう考えても問題だよ? だってわたし彼氏いる! 浮気じゃん!」

「彼氏いなかったら問題ないみたいな言い方ね」

「うん問題なんか何もないよ! だってマキちゃんのこと好きだし!」

「私はモカちゃんのこと嫌い」


「うそおっしゃい! 噂流したのマキちゃんでしょ!」

「んーん、違うわ」

「だっていつも体育のお着替えのとき凝視してくるし! たまにロッカーから制服とか取り出して匂いかいでるよね!」

「ええ。それが噂を流したって証拠になるの?」


「開き直った!」

「だって本当のことだし隠しても」

「じゃあ噂は流してないっていうんだ!」

「ええ。私に何のメリットが?」

「このわたしと流れで付き合える! ひょー」


「だから私はモカちゃんがきらいなの」

「なんで!」

「嫌いな人に嫌いな理由言ってどうなるの?」

「改善します!」

「されたくないから言わないの」

「言い方悪かったかな! じゃあモカの悪いところ善処します!」

「善処しますって説得力ないわよね」

「そうだね!」

「……そのテンション高いの、どうにかならないの?」


「きらい?」

「うるさいもの。苦手」

「お、嫌いなところ言った! 直します!」

「直ってないわ」

「だってこれが私だし! ほんとーの私がイヤならそれはそれで仕方ないよね!」

「善処しますって言ったのはどうなるの?」

「知ってる? 善処しますってのはするつもりないけどとりあえずその場を取り繕うために言い放つ逃げ文句だよ! よく偉い人が使うね!」

「さっき私が説得力ないわって言ったじゃない!」


「どうだ説得力ないでしょ!」

「有言実行ね」

「とりあえず噂を流したのはマキちゃんじゃないんだ!」

「って言ってるじゃない。じゃあもし私が『三組のマキとモカが付き合ってる! ぱねー!』って噂を流したとして、そのメリットは何かしら」

「なんだ今のセリフ!」

「……モカちゃんの真似よ」

「わたしそんなにうざい言い方か!」

「再現したの」


「うん、うるさくてごめんね」

「いきなりしおらしくならないで」

「だってマキちゃんがうるさいわたし嫌いって」

「だからってほんとーのわたしを捻じ曲げるの? さっきそれがイヤなら仕方ないよねって言ったじゃない」

「でもマキちゃんに嫌われるなら静かにします。さっきはウソつきました」

「そう」

「ごめんなさい」

「なんで謝るの」


「だってうるさくて気分害したでしょ?」

「あなたが隣にいるだけですごく心が乱されてるわ」

「そっかー」

「とりあえず噂を流したのは私じゃない。いいわね」

「はい」

「すごい心外。モカちゃんと恋人みたいな関係って不快」


「いや?」

「イヤ」

「じゃあなんでわたしの制服とか勝手に持ってったりするの」

「いじめるためよ」

「じゃあなんで匂いかぐの。体育の途中で抜けだしてわざわざトイレでかいでたの知ってるよ」

「なんで知ってるの?」

「様子が変だったから追いかけた。そしたら人の制服持ってってトイレいくし」

「覗き見してたの」


「うん。別にちゃんときれいなままで戻ってたからそれに関しては何も言わないよ」

「そう。それはそれとして噂はイヤ。そんな不快なことが広まったら変な目で見られちゃうじゃない」

「私は変な目で見てないよ」

「知ってる。変な子」

「ごめん」

「そのわざとらしい口調、どうなの」

「だってマキちゃん、うざいのイヤって」

「そのしおらしいの余計いやだわ」

「うん、そっか、ごめん……」

「謝らなくていいから。その噂、なんとかしなさいよ」


「なんとかって?」

「噂を流した張本人を呼んできて」

「探してってこと?」

「そう。そんな噂を流布した意図を問いたださないと」

「だっていつまでたってもマキちゃんが素直にならないから、ちょっと試しに吹聴しただけなんだけど」

「モカちゃんなの」


「そうだよ」

「ウソついて隠さないの」

「だって本当のことだし隠しても」

「……どっちが。どっちが、本当のことなの」

「噂のソースも、その内容も」

「おかしいわ。女の子が女の子を好きって」


「そう? たまたま好きだった人が女の子だっただけじゃん」

「相手の気持ちを考えないの? 私がそんな奇異の目で見られてどうなるか」

「と思ってずっと静かにアプローチしてたし、マキちゃんから告白してこないかなと思って我慢してたのに」

「まるで私がモカちゃんを好きみたいな言い方」

「ちがうの?」

「ちがうってさっきから言ってる」


「嫌いな人の制服くんくんするのに?」

「嫌いだからするの」


「苦手な人のこと着替えの度に凝視するのに?」

「あなたの貧相なカラダを見下してるの」


「わたしマキちゃんより大きいよ」

「うるさい」


「本当は好きなんでしょ」

「嫌いだって。本当のことは隠さないって何度言わせたらわかるのかしら。ばか」


「バカだよ。だから一番いい方法がわからなくて、こんななし崩しな方法しか取れないの」

「マキちゃんのことが好きだよ」

「クラスの中で一番わたしのこと知ってるから」

「マキちゃんが悪いんだよ」

「人のことを恋する乙女みたいにじろじろみるから」

「マキちゃんだからいいんだよ」

「くしゃくしゃの制服に別の匂いがついてても」

「マキちゃんはどうしたいの」

「人に告白させてさ、ほんとにいじめてるの?

「マキちゃんがいけないの」

「どきどきして、夜眠れないのはマキちゃんのせい!」

「マキちゃんが嘘つきだから」

「どうしてわたしががんばらないといけないの!」

「マキちゃんじゃないとやだ!」

「他の女の子ならこんなこと言わないよ! 人になんでもかんでも言わせないでよ! 誰のせいで女の子好きになっちゃったと思ってるの!」


「モカちゃんが悪い」

「私を誘惑したから」

「モカちゃんがいけない」

「私を惚れさせたのモカちゃんだよ」

「モカちゃんが助けてくれたから」

「男子のいじめから助けてくれて、それで」

「モカちゃんがかっこよかったから」

「あの日からずっとずっと、モカちゃんしか見えなくて」

「モカちゃんが受け止めてくれるから」

「絶対気付いてるのに、気持ち悪いこと、悪口も」

「モカちゃんが私を変にしたの!」

「こんな変な気持ちにさせたのモカちゃんなの! わけわかんなくて、どうすればいいかわかんなくて! そしたらいつの間にか彼氏なんか作ってる!」


「だってだって! マキちゃん思わせぶりなことばっかして、まるで気のないフリをするんだもん! そしたら告白されるじゃん! いっそ彼氏作ったらどんな反応するかなって思うよね!?」

「そんなのずるい! やっぱり私がおかしいのかなって、ずっと悩んで、それで、それで、ぐす、諦めようと思ったけど、もう、できないし、」


「じゃあわたしのこと奪って! モカのこと奪って!」

「やだ! モカちゃんのことなんかきらいだもん!」


「じゃあいいよ! もう彼氏と一生過ごす! マキちゃんのことなんかしーらない!」

「ぐず、うぅ」


「デートとかまだしてないし週末でも誘おうかな! 買い物行って映画見て、帰りにキスとかしちゃうんだ!」

「……」


「きっと楽しいだろうなー! 楽しいだろうな。……マキちゃんと、一緒に行けたら」

「モカちゃん……」


「変なことしてごめんね。もう、帰るね。噂のこと、ちゃんとなんとかするから。今日大げんかしたのに付き合ってるわけないってことにするから」

「待って……」


「袖引っ張んないでよ。きらいなんでしょ。放っといてよ。わたしのこと嫌いな子とずっといるの、モカだってやだからね」

「もっ、もかっ、」


「離してよ! モカがこれだけさらけ出して一人だけ黙ってるの!? 最後までバレバレのウソついたままでいるの! いい加減そのすました態度やめて! 自分がなんでもしってるみたいな、自分が偉いみたいな態度きらい! わたしだからいいと思ってるでしょ!」

「ちが、ちがう……」


「ずっときらいきらい言われたら好きなのに傷つくのわかんない!? 好きな子いじめる小学生か! 中学生でしょ! あああああ!!」

「マキが黙ってるからって言いすぎだわ! 好き! 好き! モカちゃんのこと好きに決まってるでしょ! モカちゃんみたいになんでもずけずけ言えないの理解しなさいよ!」


「自分こそなんでもたんとーちょくにゅーになんでも喋るくせに!」

「好きって言ってモカちゃんに嫌われるのが怖かった! 隠れて変なことして、変な気持ち持ってて、素直になれなくて……。だから――」


「だから?」

「す、すす、す。すき」

「きこえない」

「すきっ」

「声がちいさーい」

「好きっ!」

「誰が?」

「モカちゃんのことが好き!」


「わたしもマキちゃんのことが好き! ちゃんと言えるじゃん」

「ずっとずっと、好きだった。女の子とか、関係ない。モカちゃんのつよさも、私よりも大人っぽいからだも、髪の毛も匂いもぜんぶ」

「私のことを想ってくれてるマキちゃんのことが、好きになったよ。あんな彼氏なんかより、ずっと私のこと見てる。本当の私のこと、知ってるから。だから、いいの」

「モカちゃん……」


「やっと、マキちゃんの気持ちが聞けた。だから、もう、したいようにするね。んっ」

「モカちゃ――んっ」

「……」「……」「……」「……ぷはっ」


「モカのファーストキス、奪われちゃった」

「自分からチューしてきたくせに、ひどいわ」

「女の子のくちびる、すっごい柔らかい」

「まるで男の子のを、知ってるみたい」


「知ってるわけないじゃん。これからわたしの唇は、ぜーんぶマキちゃんのもの。それっ」

「いたっ、押さないで、んーっ!」

「ガマンできなくて、押し倒しちゃった」

「どっ、どいてよぉ」


「やーだ! いっつも人のこと上から目線で見てるバツ。マキちゃんのぜんぶ、やわらかいのも、きもちいいのも、ぜんぶぜんぶぜんぶ、モカのもの。ちゅ」

「んぷっ」「んっ」

「――」「――」

「……」「……」

「~~!」「ぷはぁっ!」

「モカちゃん、ちゅう、しすぎ。いき、きれるかと思った……」


「んふ、マキちゃんもこんな声で、こんな顔するんだぁ」

「もぉ、見ないで」

「よわくなったマキちゃん見てると、なんだかおかしくなっちゃう……。これからもずっと一緒だよ」

「こんなえっちなモカちゃん、きらいっ!」

「わたしのこと好きなら、全部受け止めてよ!」

「やっぱきらいものはきらい! でも、もっとチューしてくれなきゃ、もっともっと嫌いになっちゃうから」

「素直に言えばいいのに~。でも、そんなマキちゃんも好きだよ」

「うるさいうるさい。誰のせいで、こんな――」



「じゃ、黙らせてあげるね。マキちゃん、だぁいすき!」


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