第五話 介入
1923年9月2日1150時 東京
前日に打診されていた緊急会議に出席する為に横須賀鎮守府から車が八両、東京に向かって走っていた。乗っていたのは帝国軍連合艦隊司令・竹下勇大将や、後の連合艦隊司令・山本五十六大佐の姿があった。
なぜ、このような海軍の重鎮達がたかが陸軍の一大佐である寺内大佐の召喚を受けたかと言えば・・・。
昨日、相模湾沖合に出現した超弩級空母四隻を含む艦隊が気になる事を言っていたからであった。
前日、9月1日に演習があったため連合艦隊大半が相模湾沖に停泊していた。そして、突如目の前に現われた所属不明の大艦隊に停船を求めたが・・・。
「我、日本帝国軍第一強襲機動艦隊旗艦【天城】ソチラノ要求ニハ答エラレナイ。尚、明日、東京ニテ緊急会議ヲ催ス。ソチラニ出席サレタシ。」
と返されて駆逐艦でも追いつけない速度でそのまま東京湾に消えてしまったのだった。
そう、突然、二十隻もの艦隊が消えてしまったのだ。それも狭い東京湾内で・・・だ。
東京湾内に侵入したところまで連合艦隊各艦でも確認していた上、房総半島や三浦半島の住民にも確認が取れている。謎の「第一強襲機動艦隊」と名乗る一団が何処に消えたのかは分からなかったが、半島の一部住民と最後まで艦隊を追尾していた第11駆逐隊の見張り員達が気になる事を言っていた。
それぞれが口裏を合わせたように「船が幻のように消えた。」と言っていったのだ。
これを聞いたもの達は「そんなことはありえない。」などとその見張り員を「不名誉除隊にしろ!」と、言うものまで現われた。
最終的には一刻も早い被災者達の救助を行なわなければならない為、議論は一時中断された。
もし、見張り員の言う通り、何らかの技術によって船体を隠す事ができるので有ればその技術を有する国が世界の覇権を手に出来るだろう。
しかし、どう考えても今の日本、いや世界中の技術を持ってしても艦隊が消えるような装備や技術は作れるはずが無い。おっと、今は被災した市民の救助に当たらねば。
それからしばらくして例の電文が届き、東京湾へ向かった連合艦隊の主だった人物が会議に出席する為こうして車で移動していたのであった。
同時刻、帝国陸軍第三軍第四師団長・村岡長太郎中将を始めとする第四師団の参謀たち数名が車で同じく移動していた。
「しかし、寺内は何時、我々を呼び出す権限を持ったのか。知っておるものはいるか?」
突然、村岡中将が同乗していた参謀や運転手に質問をするが・・・誰も答えられない。
「誰も答えられるわけがないか。あの見慣れない装備で全身を固めている部隊を見れば・・・。」
自棄気味に本音を漏らす中将に車内の全員が心の中で頷いていた。そして、沈黙に落ちていた内に目的地に着いたのか運転手が驚きながら「どうやらここが目的地のようです。」とやっとの事で声に出した。勿論、中将達も目の前の光景には驚いていた。
そこは周りが廃墟であるにもかかわらず、時代錯誤を感じさせる五階建てのビルが建っていたのだった。
そのビルの入り口には【日本帝国軍特別派遣教導技術部隊臨時仮設司令所】と書かれ、ビル周辺には迷彩色の天幕がいくつも建ち、被災者たちが補給部隊と見られる見た事の無い軍服を着ている
軍人から炊き出しのおにぎりや、味噌汁を食べている姿があった。
「・・・・これはなんだ。・・・・これがあの大地震に見舞われた者達なのか?これでは寧ろ片田舎の方よりもいい生活を送っているではないか。」
それを見た村岡中将が呟いき、参謀達もまた頷いていた。配給品と見られる食料やそれの入った器、寝泊りをしている天幕に至っては陸軍が採用しているものよりも丈夫に見える。
そして、後ろから声を掛けた人物が居た。
「そうでしょうね。でも、一部の陸軍将校がこの姿を見たら激昂して罪のない民達を平気で切り捨てるでしょう。」
「ん?貴官は誰だ。」
「これは失礼しました。中将。私はここの総責任者である日本帝国軍特別派遣教導技術部隊、通称特派の総隊長を務めている崇宰広和と申します。階級は斯衛軍大将です。」
広和は自分の所属を言った後、流れるような動作で敬礼した。それを見た村岡中将や同伴の参謀達も見た目は若いが一連の動作と五摂家に連なる名を冠している事でそれ相応の地位にある人物だと思ったのか全員が驚きながら一斉に敬礼した。
「いえ、こちらこそ失礼致しました大将閣下。無礼な口利きをしてしまい。何卒、平にご容赦を。」
「いえ、初めて顔を合わせたのだからそれは仕方の無いことですから。それにまもなく裕仁様と実篤将軍がこちらに御着きになられるので準備をされたほうがいいかと思いますが。」
昨日の寺内大佐と同じように畏まる村岡中将に頭を上げさせて、まもなく裕仁親王がこちらに御着になられると聞き中将達は首を傾げた。
中将が「それはどういったことでしょうか閣下。」と広和に聞こうとした時、遠くから何かが風を切る音が聞こえていた。
そして、広和が「ご到着されたようです。」と言って手を指した方向に顔を向けると空に大きな見慣れない航空機が三機飛んでいた。
それは見る人が見れば分かるものだった。
「あれはオートジャイロ!?」と数人が声に出して驚いていた。
そう、回転翼機・・・この時代で似たようなものと言えばオートジャイロと呼ばれるヘリコプターの元型になったものがある。
しかし、遠くの空に浮かぶそれはオートジャイロよりも大きくとスリムな形をした胴体、操縦席がある部分に至ってはこの時代では作れない大きさの機体だった。
そのは広和達が居た2031年に登場したばかりの帝国軍最新鋭攻撃ヘリ二機と広和が個人で所有する旅客ヘリが編隊を組んでこちらに向かって来ているところだった。
三機の編隊は先頭にMHP-131VIP、その後ろにMH-31B二機が護衛に就いていた。やがてヘリはビル前の大通りに着陸し、中から魅耶を先頭に男女数人がヘリから降りてきた。
その光景を見た村岡中将を始め、事前に到着していた海軍の竹下勇大将達も総員総出で出迎えた。
そして、広和はヘリから降りてきた人物の前に片膝を着き、頭を下げた。
「殿下。遠路はるばるようこそ御出で下さいました。多忙な中失礼を承知の上で御連れした事を深くお詫び申し上げます。」
「よい、そなたがこれからの日本を良くしようと私を呼び出したのだろう。この後、あの立派な建物で、これからのことについて話してくれると九條中将から聞いておるぞ。」
「はい、では、参りましょうか。裕仁親王殿下。」
裕仁親王は広和に連れられビルの中に入っていった。しばらく、裕仁親王の付き添いで来た者以外は「何故?摂政官が・・・。」と放心していたが魅耶の呼ぶ声に反応し全員がビルの中に入った。
そう。魅耶が連れて来たのは次代天皇・現摂政官裕仁親王だった。裕仁親王以外にも当代征夷大将軍九條実篤や、現首相山本権兵衛、その他陸・海軍両大臣ら数名も同行してきたのだった。
いつも御覧いただきありがとう御座います。
私が会話文を作るのが苦手な為に更新が遅くなってしまいました。また、これから半月に一回程度しか更新できなくなると思うので先に読者の皆様には謝らせていただきます。
酷い文ですがこれからも書き続けますのでご意見ご感想など御座いましたら御気軽に投稿ください。