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第二話 決意

今回は文章の量が膨大になっています。ご注意ください。


1923年9月1日1245時 帝国軍初島基地司令所


「大将!今から介入しては日本が他国から狙われる事になります。考え直していただけませんか?」


 この司令所で参謀の一人が声を大きくしていた。


 それはあらかた地震と現在の情報が集まりこれからの行動を決めるために広和は初島基地に居る幹部将校を集めて会議を行なっていた。議題としては『もし、我々が過去にタイムスリップした場合。現地の政府や軍と接触するか、しないか。』といったものだった。


 会議は概ね現在が広和達の2031年から見て過去ということを認めて、現政府に接触する方向で固まったが。今後、我々が介入する事に伴い起こりうる歴史の改編や他国への影響を考えて、この震災から介入していくか、多少時間を置いて徐々に介入するかで意見が分かれていった。


その中で声を大きくする参謀は時間を置く方が良いといっている人物だった。


 その背景にはBETA大戦後の2020年に起こった・・・日本の技術を欲した世界各国が日本へ技術の放出を求めた。日本は段階的ながらも徐々に開示したが、それを我慢出来ずに我が物にしようと大国アメリカ・ソ連が日本に侵攻した・・・所謂、第三次世界大戦が勃発した。


最終的には開戦から一年後の2021年、日本帝国が辛勝した。当事者であるアメリカは多大な犠牲を払い敗北し、その代償として技術の開示することが無くなりさらには莫大な賠償金を課せられた。また、ソ連は国家自体が崩壊し、さまざまな国や地域に分離して世界各国にあった社会主義国家はどんどん崩壊していった。


それから数年後、いろいろな事が起こったが日本は平和を噛み締めていた。また、そんな事があって人々の考えは変わり大国には屈しない独自性の強い軍隊や国政に繋がってゆく。

細かい事は追々話す事にするがアメリカに対して日本国民は憎悪の感情を抱くようになった。そして、それは帝国軍に所属する広和達も同じであり少なくとも今後起こる大東亜大戦で日本帝国が降伏することはよしとはしなかった。


そんな事があって現在から介入するリスクと後々介入するリスクについて話し合われているのがこれまでの状況だ。



おっと、自己紹介がまだだったな。


俺の名前は『桝谷広和』一応もう一つ名前があるけど今は秘密にしておいてくれ。

職業は軍人、日本帝国軍の四軍(陸・海・航空宇宙・斯衛軍の事)に所属している階級は実質トップの大将だ。あと、桝谷技術研究所って言う会社の社長もやっている。

家族構成などはまた機会があれば・・・。



「・・・・・・確かに俺もに下手に動いて政府や軍を刺激したくないのもわかる。

・・・だが、それよりも今は助けを求めている人々が居るのであれば俺達が助けに行かないといけないだろう。・・・違うか?」


「・・・いえ、それは・・・。」


 広和の真剣な目に声を荒げていた参謀を含めて司令所にいた全員が息を呑んだ。


「それに俺は俺達がいつ、元の時代に戻れるのか分からないし、手段がないのであれば・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・皆にはすまないが・・・・俺は歴史に介入する。」



「しかし!それは!」


 参謀の一人が声を張り上げて静止するのを落ち着かせ、広和は自身の考えを口にする。


「まあ、待て。いくら俺でも全てを晒すわけじゃない。それに今現在を大切にしないと俺はいけないと思うんだよ。

助けられるのに助けないのは人として違うだろう。」


 やはり根本的なところで助けられる命があるのなら助けたいと思うのか参謀も黙る。


「俺だって技術を公開するのに時間を掛ける事が悪いとは思ってない。だが、三度もアメリカに裏切られるのは皆も嫌だろう。」


 広和の言葉に司令所に居た者たちは全員が頷く。


「だったら今から介入した方が良い。力を蓄えて対米戦をやったほうが楽だろ。

 それに俺が最初にしようと考えているのは帝国軍の意識改革だ。粉骨砕身・挺身攻撃の精神でとか言っているのと陸軍の拡大主義を直してやるのさ。・・・もちろん俺達の技術を見せるのは徐々にだが、妄想を抱いている奴らには現実を見せてやるのも忘れない。


・・・それで、改革が第二次大戦開戦までに出来なければ最悪、我々はここに独立国家を建てる。この時代の政府がどう言おうとも手立ては有るからそこは安心してくれ。」


流石にBETA大戦を生き抜いた英雄の言葉には誰も反論できないでいる


「それと話をかえるが俺達の現代戦において重要な事は何だ?・・・じゃあ、・・・・織田中佐、時間がないから手短にな。」


 広和が隣に居た女性中佐を指名する。

だが、彼女の顔つきが何処と無く広和に似ている・・・。いや、横に並べば兄妹と見間違えるだろう。


「はッ、それは情報・物資・戦術・士気の四つであります。閣下。」

「OK。正解だ・・・魅緒「閣下!」悪い、悪い・・・癖でな。」


 広和が答えた女性仕官の頭をなでて怒られながらも思わず口にして魅緒と呼んだ女性は苗字が違うが広和の娘だ。顔が似ているのは当たり前だろう。

彼女の名前は織田魅緒、階級は中佐。性格が委員長っぽく規律には広和以上に厳しい。


「・・・では、その中で情報を手に入れるのにはどういった方法がある。分かるものは手を挙げてくれ・・。」


 再度、広和が質問するが参謀達はお前が答えろと視線でやり取りしていた。


「はい。」


 静かに成っていた司令室に斯衛軍の制服を身に着けた銀髪の白人女性が手を挙げる。


「よし、桝谷中尉。」


広和は呆れるようなやり取りの中に手を挙げた自分の義娘に微笑みながら指名する。


「ありがとう御座います。閣下。情報を入手するのは通信の傍受・文書等の奪取・会話での直接入手があります。

それと閣下の考えはこうではないでしょうか。

 震災の救援とついでに現地住民からの情報収集を行なうことで現状の把握を行なうのではないですか?」


 自信満々に答える桝谷絵里栖中尉。彼女は広和がロシアから引き取った義娘だったりする。(2031年で30代後半の筈だが。やはり二人とも若返っている。)


「うーん、ちょっと惜しいな。」


 絵里栖は残念そうにしているが何処となく嬉しそうだった。


「とりあえず、絵里栖の説明でいくらか分かってもらったと思うが。

一つは情報収集、二つ目は現状把握、三つ目に俺達の技術力を軍に見せ付けるためだ。

一つ目と二つ目は中尉が答えた事だから説明は要らないだろ。


残る三つ目については二つ理由がある。一つはさっきも言った歴史への介入、理由が知りたければ後で俺の部屋に来い。とことん説明してやる。

もう一つはここに居る人員の生活を支える為に行なう。」


 広和が指を折りながら説明して最後の理由のところで別の参謀が手を挙げた。


「それは資金の問題ですか?」


「そうだ。別に俺の金から出してもいいが出来たとして十年ぐらいだろう。それにこちらで使えるかといわれれば確実に使えないだろうからな。

 それともう一つ住居の問題がある。いくらフロートや基地の宿舎があるって言っても10万人近く居る人間をこの狭い島に詰め込む気か?」


 資金の問題も有るが居住スペースが限られているのも確かだった。


「広和様。そろそろ出発のご用意をしなければならないのでは?」


 魅耶が会話を断つように広和に進言する。


「ああ、そうだな。椿、用意はどれくらいで出来る?」


「はっ、航空戦力・戦術機部隊は直ぐにでも発進が可能ですが。現状の準備と安全を考えますと厳しいかと、それと海上戦力は停泊中の第一強襲機動艦隊を除き、各艦隊は未だ相模湾海上をこちらに向かっているところで御座います。」

「分かった。」


 基地の準備状況を聞きながら広和は思案する。


「では、基地全体に防衛基準体制2を発令!宿舎内の人員を総員起こせ!

戦術機部隊は東京・千葉へ、第63輸送艦隊並び、富士教導団部隊は横浜・熱海・小田原へ先行し被災者の救助に当たれ!

また、全機械化歩兵部隊は30分以内に第一強襲機動艦隊に分乗し東京に向かえ!

 残る第二・第三強襲機動艦隊は当基地に寄港後、機甲部隊と救援物資を乗せて第一強襲機動艦隊と共に東京湾・相模湾に展開し救助と治安維持に当たれ!

 各ヘリ部隊は消火装備を装備して被災地の消火活動に当たれ!それと歩兵・警備歩兵部隊は第901航空輸送隊の輸送機に搭乗、空から降下して被災地で救助活動を行なえ!

 当基地には警備として警備歩兵一個中隊・一個機甲中隊を残し、全戦力を被災者救助に当てる。

 それと余震には十分注意して行動してくれ、最後に行動時は情勢が安定するまで絶対に複数で行動せよ。最後の命令は厳とせよ。1923年9月1日1255(ヒトフタゴゴ)発令!

尚、この命令は帝国軍参謀本部を通さず、帝国斯衛軍大将・崇宰広和の独自の判断による命令である。以上!」


『ハッ!!』


 命令が発令され基地全体にアラームが鳴り響く、休暇で寝ていた者や休憩していた者も一斉に所定の場所に向かう。


広和と魅耶は戦術機格納庫に向かう為、外に出た。流石に基地司令が歩いて来る為に隊員たちが一々敬礼してくるのを「さっさと持ち場に行けー!!」と広和は一渇してしまう。


「だぁー、めんどくせえー。」


「フフフ、まあまあ、落ち着いてください。それではまともな判断が出来ませんよ。」


「ああ、すまない。・・・ところでお前は反対しないのか?歴史に介入する事を・・・。」


 落ち着いたところで広和が魅耶に歴史について聞いてみた。


「私は広和様について行くと。昔、申し上げたではありませんか?」


「いや、俺が言いたいのは桝谷魅耶では無く。九條魅耶としての意見が聞きたいんだ。」


「フフフ、そういうことでしたら広和様と意見は余り変わりませんわ。

 私として申し上げるのでしたらこの国がどう変わっても潰えぬ誇りと伝統が残ればいいと思いますわ。」


「そうか。それを聞いて安心した。後はこの事が終わってからだな。よし急ごう。」


「はい!」





 二人は息を合わせて走り出す。より良き未来を掴む為に・・・・・。


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