第十三話「反撃の狼煙♪」
俺はまた電車で目を覚ました。
見慣れた光景、聞き飽きた会話、
死ぬ時の感覚はまだ残り、今にも吐きそうになるのを抑える。
「必要な情報は集まった。ここからは──」
【反撃の狼煙を焚き付けてやろう♪】
*
いつも通り、みんなに作戦を話した。電車から降り、相変わらず足が痛くなっているユイナを横目に遊園地の近くに来た。
「遊園地」
とツムグは行きたそうにしているのを見て、キョウは悩んでいたが、俺が提案することにした。
「いいんじゃないか?時間的にも余裕があるし、キョウとトウマが子守なら大丈夫だろ。」
「子供扱いしないで!子守されるほどの年齢じゃ無いし。」
ぷんぷんと頬を膨らませ怒っているが、トウマがツムグのほっぺを指で押して、遊びながら、
「了解。トワとレイはゲームセンターで遊んでいていいんだぞ。レイも行きたそうにしていたろ。」
トウマはレイの過去のこともあるから言葉を選びながら提案した。
「いいの?行くわよトワ!まずはクレーンゲームよ!!」
「クレーンゲームってなに?」
「それはね──」
ものすごいスピードで二人はゲームセンターの方に行った。
「.....あいつら前のループでもああだったのか?」
「いや、多分相当ゲームセンターに行きたかったんだろうな。」
「はあーまあいいか。俺らはカフェの方に行ってるから、なんかあったらキョウの能力で来てくれ。」
不意にキョウの方を見たが、ツムグとキョウは遊園地の前でなにに乗るか考えている。おいおいリーダー大丈夫か?と思いながら、
「まあ、あいつらは俺に任せてくれ
なんとかするさ。」
「──ああ!」
なんやかんやでみんなの思考を読んで立ち回ってくれるから、毎回やりやすいんだよな。と思いつつユイナと俺は歩き出した。
*
俺は何回目かわからない廃墟に来ていた。もちろんユイナは近くのカフェに置いてきている。
「やあ!君がサクかい?てっきり
トワと来るのだと思ったけど.....」
「俺はあいつらを裏切った。そしてお前がリグレット部のところに盗聴器を仕掛けていたのは知っている。」
「そしてお前の都合の良い場所にリグレット部のやつらを置いてきた。」
「何が望みだ....?」
疑惑の目で俺を見た。それに俺は
ニヤリとして──
【取引をしよう。アークの幹部さん♪】
*
一方その頃、レイたちは
「取れない!」
──ドン!
とクレーンゲームを叩き、苦虫を噛み潰したようにレイは言った。どうやらクレーンゲームの腕は変わらないそうだ。
「ねぇもう諦めたら?レイそろそろ.....」
その瞬間、「助けて!」と大きな声が聞こえた。子供を二人連れ去ろうとしている屈強な男達を見て、私は、あの時の光景を思い出していた。
「観念しなさい、クソ野郎──!」
と手を前に出し、そう吐き捨てた。
私の目の前に屈強そうな男が五人、それに、まだサクから聞いたリーダーっぽい人が出ていない。車にいるのか?と考えながら、
感覚を操り少年を捕らえようとしている男は動きを止め、少年は相手の股間を蹴り上げた。男は「はぅ」と情けない声を出しながら、倒れ込んだ。
「アカリは!?」
少年はアカリと言っている。恐らく男に現在進行形で襲われそうな少女の事だろう。
少女の方はトワの反転する能力で
敵を反転し頭をぶつけていた。
その姿に昔コップを逆さにして、
水浸しになったトワを思い出し、苦笑した。
「誰か分からないけどありがとう!」
アカリと呼ばれていた子は律儀にお礼した。それに少年は──
「アホか!お礼してる暇あるならこっちへ来い!」
「アホとは失礼ね──それにお礼は日本人の義務でしょ!」
「わかった!わかった!アカリ様は天才、天才──」
能天気な子供達だ私たちの時は、そんな余裕なかったのに、と思い出に浸っている私もずいぶん能天気なんだろうと考えながら、五人の敵を倒した時──
「──良い能力だね」
同年代の女の人が上から落ちて、拍手しながらこちらに歩み寄っている。
「お初にお目にかかります。アークの幹部──九条リンと言います。」
少し大人びた女の人はまるで貴族の挨拶とはこんなものだろう、というのを体現したような喋り方と佇まいだった。
「なるほど、あの方が言った通りトワが私のことを知らなそうですね。」
と周りには誰も聞こえない声で呟いたのち、
「私たちの目的はその子供を捕まえること──。」
【写す能力】
そう言いながら、アカリの方を睨みつけた。少年は手を広げ守るようにしながら、
「バーカお前みたいな、おばさん!俺がぶっ飛ばしてやる!」
と足を震えさせながら、少年は言った。幹部の人はずっと「私がおばさん?まだ17歳なのに?」とぶつぶつ喋っている。
「目的が変わりました。その少女を持ち帰り、クソガキをぶち殺す」
と言い一気に少年の方に向かいナイフで殺そうとした時、
「カナタ!」
少女は叫び、目を瞑ったがその攻撃は届くことがなかった。
「その子達に何かするなら、まずは私たちを倒しなさい」
トワならこう言うだろうと考えながら、そう吐き捨てた。
「二人とも下がってて、これからはお兄さん達の時間さ」
トワは二人の頭を撫でて、レイの元へ歩いた。
「感覚を操ると物体を反転か.....面倒な相手なこと。」
「まずは一人目といきましょうか。」
そう言うとリンは小手調べに落ちているナイフをトワに投げ、私に接近してきた。私はリンの足の感覚を無くし、体勢を崩したところに一撃を入れたが、あまり効果はなさそうだ。
そろそろ能力が切れるから一度離れようとしたが.....
リンはナイフを一本投げてきて、それを避けた。
「そいつは避けてもまた来るぞ!」
とトワの声が聞こえて咄嗟に避けた。頬から少し血が流れる。どうやらトワは最初に数本投げられたから、対処に時間がかかったらしい。
「惜しいわね、もう少しであなたを殺せたのに」
と殺し合いをしてるとは思えないほど楽しそうな表情をしていた。
追跡する能力?当てる能力?それらに等しいだろうと私が相手の能力を考察していた時、
【私の能力は狙う能力】
「どんな距離、どんな武器、外したとしても当たる。」
「.....なんで今それを言ったの?」
どう考えても言う必要がない。メリットがないのだ。
「だって私はあなた達の能力を知っているのにフェアじゃないじゃない」
とあっけらかんと言って見せた。
私はサクにこいつの能力を教えてもらえなかったが、こいつが言うという確信があったのだろうか?
「それに私の能力を知って負ける。
その方がゲームとして楽しいでしょ。」
リンは手で頬触り、妖艶な笑みでこちらを見ていた。
「──狂ってる。」
その姿を見てそんな感想を抱いた。
*
一方その頃キョウたちは
「あれ!乗ろう!!」
ツムグは楽しげにキョウを引っ張っていた。しかしさっきのジェットコースターで死にかけている。キョウを見ながらトウマはニヤニヤと録画していた。
──その時、ドゴンと大きな音が鳴った。
「来たか。」
僕はそう呟き、音がした方向に行った。僕たちはその惨状を目の当たりにした。
観覧車は壊れ、人が挟まっている。
子は泣き、大人は自分のことだけ
考え逃げ続け、老人は癇癪を起こしている。
まさに──
「地獄.....」
ツムグの言うとうりだ。
こんなことするやつはそれこそ人間じゃない。バケモノと言ってもいいだろう。
僕らは辺りを見渡し、真ん中に小さな子供が立っていることに気がついた。
「助けないと──!」
ツムグはそう言い、行こうとしたがトウマに止められた。
「.....あいつだ」
それを聞いた瞬間、僕らは戦闘体制に入っていた。
「ふ、ふ、ふははははは!」
と狂気じみた声が聞こえた。
それは初めておもちゃを手に入れた。純粋な子供のようにも見えた。
「お兄さん達見た?これ僕の能力!すごい?すごいよねー!あははは」
純粋悪とはまさにこのことだろう。
まさか小学生ぐらいの相手をするとは思わなかった。
「お兄さん達──遊ぼう?」
と言い、上にあったジェットコースターが分裂したかのようになり、
増えた。重力に従って落ちていく。
「境界!」
と僕は能力を使い、その場所から避難した。
「トウマは僕たちの援護、ツムグと僕はあいつを食い止めるぞ!」
少なくとも、僕らが居なくなるまでに遊園地の人達は逃さなくちゃ。
ツムグは復元を使い、体を復元しながら走った。人としての速さを優に超えている。足は大地を蹴るたびに
骨にヒビが生じているが直ぐに治されている。
ツムグは右拳で殴ったが敵は床にあるコンクリを10枚複製し、耐え抜いた。その直後敵自身も増えて分身体を出した。
「分身も出来るのか!?」
僕は驚きつつ、十人ぐらいまで増えたのを見て、境界を使って分断をした。
「ツムグ後ろ!」
とトウマが言ったが、どうやら瓦礫の破片が飛び散り、ツムグは見えていなかったらしい。分身が背後に回り本体と同時に攻撃をしようとしていたが、
「境界──」
と言って、分身体を境界の中にいれ、本体の頭にぶつけた。
次第に分身体は塵になって消え、
敵は可笑しそうに笑った。
「すごい!あの方から能力を強化させて貰ってないのに、これだけ強いなんて、あのね僕の名前はカイ!
さっきは急に攻撃してごめん、でもさ君達と仲良くしたいんだ!」
この子はなんなのだろうか?狂ったかと思ったら仲良くしたいんだと?
──ふざけるな
怒りが沸々と湧いてきたのがわかる。
「お前のせいで何人死んだ!?怪我人は!その人の未来は!」
それを聞いてカイは
「なんで、今そんなこと聞くの?いいじゃん楽しければ!」
キョウはそれを聞いて、
「そうか.....」
とだけ口にし、境界を出し近づいたら、
「お兄さんは遊んでくれないんだ.....じゃあもういらないね♪」
僕はあいつに触れられて、
増やす能力。その本質は、ものを増やすだけではない。人間としての機能、質量、そして、【臓器】も増やすことができる。
カイは自身の身体能力を増やすことでいくらでも増やせるが、普通の人間は違う。
人間は昔から進化を繰り返していた。進化を遂げるうちに今ある臓器の数が一番生きやすいようになっている。
「グッ、はあはあはあ」
その臓器が増えてしまったキョウの体は圧迫され、鼓動が早く、血液が循環し続けている。
「今、お兄さんの心臓を増やしたの!案外いいでしょ?二つあれば一個ぐらい潰してもいいよね♪」
僕はそいつに蹴られて、数百メートルは飛んだのか、頭から血が出ている。後ろにあるお店の壁に身を預け朦朧とする意識の中でゆっくりと
近づいてくるカイと僕の名前を呼ぶトウマの姿があった。
カイは僕の胸に手を当てて──
【僕の心臓を抉った。】
比喩とかではなく、そのままの意味で.....
トウマとツムグが怒ってる声がする。もう上手く聞き取れない。
目は充血してよく見えなく、耳からはキーン.....と耳鳴りが酷い。
ああこれはダメなやつだ。
血に染まった視界で最後に浮かんだのは──みんなのことだった。




