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夜に属する  作者: マエタロウロア
第一章 敗者の街
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道頓堀・再起の底

大阪、道頓堀。


ネオンは相変わらず下品なほど明るく、

川は何も知らない顔で流れている。


(……戻ってきたな)


笹山慎二は、

一人でその街に立っていた。


上山はいない。

今の俺は、

誰かを守る立場じゃない。


ただの――

負けた男だ。


修行のため、

一つだけ当てがあった。


昔、世話になった知り合いがいるビル。

表の商売をしながら、

裏の人間も黙らせる――

そんな男だ。


(あそこなら、何か掴める)


そう思い、

橋へ差しかかった、その時だった。


「おい」


背後から、

聞き慣れた、だが不快な声。


振り返ると、

数人の男が立っている。


スーツ。

歩き方。

目つき。


――松山組。


「……まだ生きてやがったか、慎二」


「警察署から逃げたって聞いたぞ?」


「組のツラ汚してくれたなぁ」


(……最悪のタイミングだ)


笹山は、

深く息を吐く。


「俺はテメェらに用はねぇんだ」


低く、はっきり言った。


「どけ」


そのまま、

歩き出そうとする。


だが――

肩を掴まれた。


「逃げる気か?」


「随分、偉くなったもんだな」


「裏切り者がよ」


(……やっぱり、こうなるか)


笹山は、

ゆっくりと振り返る。


「……離せ」


「嫌だね」


次の瞬間。


拳が飛んできた。


――遅い。


前なら、

焦っていた。


だが今は、

違う。


体が、

自然に動いた。


受け流し、

懐に入る。


腹。

顎。

膝。


一人、倒れる。


「なっ――」


二人目。


足払い。

地面に叩きつける。


三人目が、

ナイフを出しかけた瞬間。


手首を掴み、

そのまま壁へ。


鈍い音。


「……っ」


数分も、かからなかった。


橋の上に残ったのは、

倒れた松山組の男たちと、

一人立つ笹山だけ。


「……」


拳を見下ろす。


(……強くなった?)


違う。


(まだ、足りねぇ)


十分後。


目的のビルに辿り着いた。


だが――

そこにあったのは、

無残な光景だった。


ビルは、

半分以上が壊され、

立ち入り禁止のテープ。


(……潰された、か)


知り合いの行方も、

分からない。


「ちっ……」


当ては、消えた。


フラフラと、

裏道を歩く。


ネオンの届かない場所。


その時。


「兄ちゃん」


声がした。


振り向くと、

数人の男。


だが――

さっきとは、違う。


空気が、

冷たい。


「……どこの組だ?」


「松山組じゃねぇな」


男の一人が、

笑う。


「さすがだな」


「俺らは――関東連合だ」


(……来たか)


予感は、

当たっていた。


「沢見さんがよ」


「お前、道頓堀に戻るって

踏んでたんだわ」


「だから、

俺らが迎えに来た」


笹山は、

静かに構える。


(数は……五)


(だが――)


違和感。


「……っ」


背後。


気づいた時には、

遅かった。


後ろを取られ、

重い衝撃。


バット。


視界が、

白く弾ける。


「……っ」


膝が崩れ、

地面が迫る。


(……まだだ)


そう思った瞬間――

もう一撃。


意識が、

闇に沈んだ。


――――


「……起きたか」


低い声。


目を開けると、

薄暗い空間。


椅子に縛られた自分。


そして、

目の前に立つ1人。


立ち姿だけで、

分かる。


――格が違う。


関東連合、

最高クラス。


部屋の真ん中に、

腕を組んで立つ男。


「よう」


沢見拳だった。


「また会ったな、慎二」


「……」


「相変わらず、

目だけはいい」


沢見は、

薄く笑う。


「修行しに来たんだろ?」


「残念だな」


「ここが――

お前のスタート地点だ」


笹山は、

唇を噛みしめる。


(……ここからだ)


(ここから、

這い上がる)


ネオンの街、

道頓堀。


その底で――

本当の修行が、始まろうとしていた。

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