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魔術学園にて

クラスメートの視線から逃れて二人きりの逢瀬。

そのはずだが、春日井のほうはともかく内津にはそのような意識は全くない。

今も春日井の視線がちらちら突き刺さっているはずだが。


仕方がない。このイベントは彼にとって、

義務感で始めた学級委員の厄介な仕事、

自業自得に舞い込んできた宿題としか認識していない。


しかし、年頃の乙女、春日井 結愛は彼女で内津に話しかけ続ける。

振り向いてほしい一心でだ。


まあ、内津にとっては集中力を保ち寝落ちを防ぐセーフティ、

としてしかとらえられていないのだが。


「ねー。ここどうするー?」

「ああ、坂井か。不明にしておけ」

「なんで見てないのに坂井のカルテってわかったの……?」

視線すら寄こさず春日井の補助をする内津。


「あ。シャー芯落としたー」

「探す時間がもったいない。一本あげる」

「……うーん……?ありがとう……?」

言葉足らず過ぎて親切なのかぶっきらぼうなのか不明だ。

春日井の首も傾いている。


「──よし、終わった」

「リアクション薄くない……?」

「……明日もあるからな……」

「あ、そっか」

紆余曲折ありながらも二人は何とかノルマまで終え、

帰り支度を始める。


その時、唐突に春日井のつぶやきが聞こえる。

雑談、だったがそこには気になる噂が立っていた。

「このまま下校時刻まで眠ってしまうと校内に閉じ込められて翌朝まで帰れない。

生徒間ではそのような噂が立っている」


いわゆる魔術学園の七不思議だ。


いつの間にそんな情報を。

噂話好きな女子らしい。


魔術学園。

ここの歴代在校生が暴発してこびりついた魔法は、

現在に至って周囲に影響を及ぼす場合がある。

だからだろうか。


胸の奥に不穏な胸騒ぎが楔のように刺さって取れないのは。


◇◇


翌朝、クラスメートの一人がいない。

いないのは坂井 修。あの活発バカが……?


「いつも元気有り余らせてます!

って感じのあいつが?」

「風邪……?いやいや、ないない。寝坊だろ」

「万が一があるかも?」

「万で済むか?」

とかクラスメートが駄弁っている。

その最中に。


──ガタッ!ガラガラ!

教室の扉に突然噂の中心人物、坂井が現れ景気よく扉を開ける。

クラスメートの背中が急な騒音によってびくつく。


……正直面白い。


「寝坊したと思ったらここにいた。さぼってやろうと思ったんだがな」

「おい」

相変わらずの不真面目な言い様にツッコミつつ安堵する。


しかしその安堵に反して胸騒ぎは消えない。


◇◇


「で~?春日井との二人きりの空間は楽しかったか~?」

うわ、坂井に絡まれた。

とりあえず迷惑そうな表情を作っておく。


「そう邪険にするなよ」

「そうだぞ、俺らの気遣いを活かしてくれたか?」

「といってもお前ら宿題のカルテを押し付けたってだけだろ!」


「あ。ばれた」

「内津がお怒りだー」

「逃げろー」

クラスメートが蜘蛛の子を散らすように逃げてゆく。

まったく。


あ、春日井側も女子に絡まれてる。

……横顔が淡い赤色に染まっている。

見なかったことにしよう。


春日井のこと見てるー!とか取り巻きの女子に言われても困る。

視線を逸らしておこう。


そんな俺の背中を春日井は不満げにみていたということは、

そのあと、その取り巻きの女子に耳打ちされた。


◇◇

そんなこんなで……放課後。


寝不足気味の頭に今日の授業内容を叩きこむ。

いつもの習慣だがよくないのは分かってる。

寿命が削れるような頭痛がする。


加えて今朝からの胸騒ぎだ。


今日は早めに終わろう。

とおもいつつ、いつも通りに春日井に睡眠魔法を頼む。


……眠りに落ちる直前、自身同様に眠りに落ちる春日井を視界にとらえる。

──暴発?


だが、もう抗えない。

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