善と悪、幼なじみと転校生
あらゆる技術、あらゆる計画、そしてあらゆる実践や選択は、何らかの善を目指している。——アリストテレス『ニコマコス倫理学』
昨晩はよく眠れた。普段のように太陽の夢を見ることもなかった。
通学路は長くはない。歩きながら、歯の隙間に残った焼き鮭の身を舌で舐めとる。
デンタルフロスを使えば早いのだが、それでは物足りない。
人間はそもそも、なぜ学校に行くのだろう。
教育を受けるため? 同年代の友達を作るため? それとも、僕のような子供が街をぶらつかないようにするため?
わからない。
時計を見ると、遅刻にはまだだいぶ早い。
少し散歩することにした。
ぶらつくと言っても、目に入るのは見慣れた街並みばかり。自由を標榜する人間が、足に枷をはめられているようなものだ。
行く当てなど、どこにもない。
内面の倦怠、退屈が身体に反映され、足は鉛のように重く、ほとんど上がらない。
やはり学校に行くしかないのか……。
教室には誰もいない。窓際の後ろから二列目が僕の席だ。
そこで干からびたようなランドセルを下ろす。
僕が使っているのは小学生のときのものだ、本当だよ、防犯ブザーも付いたままなんだ。
本はあまり入らないけど、通っている高校自体がまあまあな学校というわけでもないからいいんだ。
周りの連中は、ほとんどが進路調査の時だけ、短期的に未来について考えるようなタイプだ。
はるかな未来より、今を大切にする、団体競技で全国大会に出場しようものなら感激の涙を流すような連中だ。
って、うちの学校一度も全国大会に出たことないじゃん!
ああ、弱すぎる。
じゃあ運動部の先輩たちが毎日汗を流してるのは何のためだ?
三島由紀夫みたいに、筋肉だけ鍛えて一日も兵役につかず、クーデターを夢想して失敗したら切腹する、なんてわけじゃあるまいし。
それはあまりにも恐ろしい。一個人が、古典的で肉体的で普遍的な言葉で、私的な言葉を置き換え、世界と対話しようとしたのに、そんな結末を迎えるなんて。
文武両道の統一には、三島ももっと努力が必要だったようだ。
???「わあ、青葉君、今日は随分早いね」
青葉「あなたは?」
???「また冗談言ってる。私の名前は???だよ」
???「覚えた?」
???「……」
眼前の見覚えのある奴が、一気に色々と話しかけてきた。今朝10キロ走って学校まで来た経緯まで含めて。
運動部の熱血バカは嫌いだが、スポーツ美少女には拒絶反応はない。
特に、引き締まった肌が汗で輝き、活力に満ちて見え、健康な体の下に動物的な欲望を潜ませている様は。
まぶしいほどだ。一瞬、昨日幻想した、落日が金を熔かす海面を思い出した——あれは僕には永遠に到達できない、あまりにも灼熱の世界だ。
言い忘れてた。私たちは幼なじみ(幼馴染)なんだ。
小学生のときから隣同士だった。
でも中学卒業の夏休みに、彼女の家族はみんな山の中に引っ越した。
僕のこの幼なじみ、体調が良くなかったらしくて、巫女か神主か牧師か、あるいは和尚さんに頼んだんだ。
山の中に住んで、自然に近づけば良くなる、って。
……
今は体、めっちゃ元気じゃん。
彼女の名前、なんだっけ? 忘れた。
僕は他人の名前を覚えられない。「名前を呼ばない変人」とか「変人さん」とか呼ばれることが多い。
看板のポーズや奇声を考えたほうがいいのかな。
「マンボ!」
「愛羅武勇」の刺繍が入った特攻服を着た怪人のKing、堂堂登場!
「オマギリマンボ!」
祈願、心の浄化、内なる平穏を求める意味で。
"オマギリマンボ"はチベット仏教に由来する咒文で、実際には「オンマギリマンボ」の簡略版で、祈願、心の浄化、内なる平穏を求める意義を含んでいる。また、この言葉はネット上ではネタとしても使われ、若者の生活態度へのからかいとユーモアの表現を反映している。
もし検索エンジンのAI検索機能を使った奴がいたら、上記のような内容が出てくるかも()。
時間はあっという間に過ぎ、朝のホームルームになった。
電波女教師の抑揚のない声音の下、ホームルームは整然と進んでいく。
もしこれが小学校低学年の時の国語の先生だったら、一文に四字熟語を多用した僕の行為を褒め称え、文に縁取りまでしてくれたかもしれない。
話す内容はかなり退屈で、タバコとお酒の禁止(そういうこともあるよね?)くらいだ。
ここで金髪のお嬢様的な転校生役が来るべきなんじゃないか。
電波教師「ああ、それとね。今日、新しいお友達がクラスに加わりました。みんなで歓迎しましょう。」
って、このダイアログみたいなもの、???以外も表示されるんだ、名前じゃないけど。
ついでに言うと、僕は人と親密な接触がないから、こんな機能が進化したんだ。
くそっ、もし何十年か早く生まれていたら、ガラゲーの会社に著作権料を請求できたかもしれないのに。
なんて大きな損失だ!
なに? 選択肢がないとダメだって?
美少女と恋愛なんて、俺の身に起こるわけがない。
それに、俺は十分なシスコンだ!
年下じゃないと断る~超超超大好きな妹100人、は最近大ヒット中の学園ラブコメ漫画だ。
静かな環境は僕の思考を彷徨わせ、放課後に漫画を買いに行くことまで考えさせた。
みんな「わあ、きれい!」
(さっきの静寂は見とれていたからか?!)
???「私の名前は???です。みなさん、ヴィーナスと呼んでください。」
???「ヴィーナスさん、アフロディテ(ギリシャ神話の愛と美の女神、ローマ神話のヴィーナスに相当)と呼んでもいいですか?」
そう言ったのは前列に座るメガネをかけた同学だった。
正直言って、僕はメガネという純粋な道具自体に一切の差別意識はないが、このメガネ君は好きになれない。
自分の知識量をひけらかしているように思えるからだ。
僕は「君子慎独」の信念を持ち、過去16年間、行動がこの信条から外れることなく過ごしてきた。
???「ダメですよ、メガネ君。腕のないアフロディテなんて言う人がいますか? 変ですよ。」
ああ、出現だ。クラスの小集団で最高位の存在——金髪に染めたギャルキャラ。
彼女の威圧の前に、メガネ君は苦笑いで誤魔化すしかない。
メガネ君を牽制し、転校生に恩を売り、自分の地位を強調するとは、さすがに強い。
実際のところ、アフロディテとヴィーナスのどちらが優れているかという問題にこだわるより、
原典に戻ったほうがいい。ヘシオドスの『神統記』によれば、彼女は白い泡から生まれ、天神ウラノスのOXから化したものだ。
それに金色のさらさらしたショートヘアが、頭全体をOXのようにしている(首のあたり、冠状溝みたいじゃない?)。
それに金髪属性はギャルとかぶるし、ダイアログでの重複もよくない。ならばOX女神と設定するしかない。
電波教師「ヴィーナスさん、そこに座ってください。」
OX女神「はい。」
……
幻想から現実に戻り、振り向いたら輝く陽に照らされて金色に光るOXが見えて、唾に溺れ死にそうになる救済感、わかる人いる?
その日残りの時間、僕は笑みを浮かべてはヴィーナス同學をちらちら見ていた、本当だよ、僕の謝罪の意を表して、敬称まで使ってるんだ!
文化の違いのせいかもしれないが、ヴィーナス同學も僕のこの同席者の行動をよく理解してくれた。
笑顔は人類共通の言語だ! ナイススマイル!
……
え? 『ニコマコス倫理学』を引用した目的は何かって? あれは最近失眠の時に眠りを助けるために読んでる読み物で、とても効果がある(笑)。




