表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫華の付与師は今日もお留守番。ダンジョンで無双する最強支援職  作者: さくさくの森
第五章 月影国で探る真相

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/93

第47話 ――工房ダンジョン第四層――

カクヨム側の近況報告にクー子の挿絵2つ入れてるので気になる方はどうぞ(タイトル同じです)

 扉が光を吸い、ゆっくりと開き始めた。


 内側の空気が、すっとこちらへ流れ出る。音はほとんどない。金属が擦れる気配すら薄くて、向こう側の空間そのものが形を変えて通路を作ったみたいだった。


 一歩踏み込んだ瞬間、白い広間の奥で何かが立ち上がる。


(……いる)


 広い円形の部屋。

 そこに、三つの存在がすでに鎮座していた。


 気配だけで背筋が冷える。

 深層の階層主を見た時と同じ重さ。いや、それより一段、分厚い圧だ。

 場の空気が、私たちを試す前に「ここが境界だ」と告げている。


(最後の関門……て訳ね)


 ◇


 まず左側にいた一体。


 金属でできた樹木のような形だった。幹に当たる胴は細長く、そこから刃のような枝が何重にも伸びている。枝先は節ごとに角度が違い、近づけばどこから切り込まれるか分からない。足元は根の束のように広がっていて、歩くというより、床の上を滑るように位置を変えている。


(範囲と軌道で叩くタイプ。ラナたち向きね)


 次に、右奥の一体。


 巨大な壺だった。白い空間に浮かび上がった陶の胴体は、表面に工房の刻印みたいな筋が走っている。底は割れていて、そこから黒い粒がぽろぽろ落ちている。粒は床に触れた瞬間、消えるでも跳ねるでもなく、じわっと広がる。場の密度をゆっくり変えるような、嫌な沈み方だ。


(地形系か、状態の撒き散らし系か。抑え役が必要)


 そして正面。

 私たちの進路を塞ぐように立つ、三体目。


 ◇


 そいつは人型に近い。

 でも、どこか作られた人型という感じが強い。


 肩から背にかけて黒い金属板が何層も重なり、鎧みたいに組まれている。関節は細く、無駄な装飾が一切ない。胸の中心に、淡く脈打つ核の光がひとつ。顔の部分は滑らかな面で覆われ、目も口もないのに、こちらを見定めている感覚だけが鋭く刺さってくる。


(……こっちが相手するべきなのは、たぶんこれ)


 他の二体とは質が違う。こいつだけ、戦うために形を整えたような気配がある。動き出す前から、こちらの呼吸や立ち位置を測っているみたいで、本能が警告を鳴らした。


 ラナが小声で耳打ちする。

「クー子、正面のやつ、やばいね」


「うん、同感」

 視線を逸らさないまま返す。

「小細工を弄する感じが薄い。純粋に戦うための形だ」


 氷雨が小さく息を吐く。

「動かないのに、空間が張りつめる。あれは……強いよ」


 私は胸の奥で一度だけ呼吸を整えた。


(強力な相手ほど、周囲の魔力への影響は大きくなる。そこを拾えば、有利に立ち回れる筈)


 ◇


 エルドが全体を一瞥して、すぐ指示を投げる。


「分隊ごとに受け持つ。予定通り三つに割るぞ」


 声に従い、全員の動きが同時に切り替わった。


「第一分隊、左の金属樹を受けろ! ラナ、氷雨、ロシャ。動きが読みにくい相手だ、機動と幻影で削れ」


「了解!」

「うん、やるね」

「手数を減らすくらいは出来るだろう」


 三人が左へ散り、間合いを作っていく。


「第二分隊、右奥の壺を抑えろ! トゥリオ、オーリス、ヴァルク。場を汚される前に足場と結界を固めろ」


「了解」

「結界、展開します」

「オーリスを補助しよう」


 三人は右へ寄り、壺の落とす黒い粒に警戒を向けた。


「第三分隊、正面の人型を俺たちで受ける。俺、クーデリア、リディア、ファルマ。初動は俺が取る、クーデリアは付与準備、リディアはいつでも撃てる位置を」


「はい」

「分かったわい」

「解析の時間をください。魔法は私が無効化する」


 正面の人型へ向けて、私たち四人がゆっくり歩幅を揃える。


 階層主たちは、まだこちらへ踏み込んでこない。

 けれど、三体とも今から動くという張りだけは部屋全体に満ちている。


(……階層主との同時戦闘なんて初めてだ)


 息の音すら、三つの敵に届いてしまいそうな静けさ。


 エルドが私の視線を一度だけ確かめる。


「クー子、いけるか」


「大丈夫。正面は私たちで崩す」


 リディアが肩を鳴らす。

「儂は火を溜めておく。動いたら焼くぞ」


 ファルマが足元の式を滑らせながら、淡々と告げた。


「三体とも、すでに起動済みですね……これ以上は待ってくれないようです」


 言い終える前に、正面の人型の核が一度だけ脈動。

 それを合図に、白い空間の階層主達が動き出す。


 左で金属樹が枝を一斉に開き、刃の森が起きる。

 右奥で壺が傾き、黒い粒が床を這う。

 正面の人型が、間合いの内側へ滑り込んだ。


 三体が同時に動き出し、第四層の戦闘が始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ